任される者
Side アーシア
「だいぶ情報は集まったわね。それに、こんなに大きな地震なんて初めて経験したわ」
「わたしも...ですね。最初はなんか揺れてる程度でしたが、急にドカンと縦揺れが来て横揺れに変わりましたね」
「その通りね。一応ギルド内の施設は幾つか窓が割れたりドアが歪んで開かなくなって壊したりしたけど、特に問題は無さそうね」
「え、ドアをやったのリーフ!? あのさぁ...この施設まだローン返済が出来てないんだから程々にお願いしたいんだけど...」
「じゃあさ、閉じ込められた弟子達はどうすれば良いのよ? 壁でもぶち壊せばよかった?」
「ごめんなさいそれだけ早めてください...」
「あはは...」
なんだろう、ツッコミと言うか問いかけが全く思いつかないし、そもそもに追いつかない...。
それにこのギルド...ローンなんてあるの?
『あの...親方様方? 私達の事をお忘れでは...』
「ん、忘れてないわよ。さて、集まって貰った理由は言うまでもないわね? 今回発生した内陸地震は諸島中央を分断するようにあるプレートで発生。マグニチュードは分からないけれど、震度は5強で一番の被害はセントラルパーク。怪我人は何人も出たけれど、迅速な救命な活動により死亡者は無し。そしてグレース、私達の町での致命傷は無しで怪我人は少しだけと...みんな、感謝するわ」
「補足すると、この諸島での全体怪我人は600人程度で致命傷が150ちょっと、残念ながら死亡者は36人との報告。その他あるとしたら"闇に飲まれし者"なんだけど、何体か漏れてたようだから既に討伐済みで、先日に話した"レイド系の闇に飲まれし者"は存在が未確認。こんなもんかな、他に聞きたい人?」
『ダンジョンとかはどうなってますか?』
「ダンジョンは幾つかは残ってるみたいだけど、地下系統の迷宮は八割程崩落して、その時に居たメンバーはテレポートで難を逃れたチームも居るけど...残念だけど、間に合わなかったチームと今でも音信不通のチームが居る状況だよ...」
『そう...ですか...』
「悲しい事だけど、これが現実よ。救助隊や探検隊に憧れとして入った人が居るかもしれない。けどね、これだけは覚えておいて欲しいの。救助隊や探検隊言えど、それだからって無理に人々を助けない事。運命という歯車は遡れないし、止められないし、操る事もできない。軽く否定的になってるから補足するけど"自分の身を守れないなら相手の身は守れない"事をよく覚えておいて頂戴」
自分の身を守れないなら相手の身は守れない...なんだろ、とても自分の胸に強く突き刺さる...。確かに私は振り返ってみると、自分の身は置いといて挑みに行ったり、仲間を傷付けたくないからって無茶してるからかな...。
『で、でも時には自分の身を犠牲にしてても助け...』
「まだ言うの? 私はね、貴方達を失いたくないの。極力それが無いようにする為に色々とやって、力と自信と心を鍛えてるの。私から見るとね、弟子とかじゃなくて私の子供達なの。ここまで言わせてまだ反論があるなら、うちのギルドには適さないわ」
『...異論無いです。親方の言う通りでした』
「なら良いの。仮にその状況になったのなら...死ぬのは私だけでいいわ。皆が無事なら、その人が無事なら、私は満足よ...。 ごめん、ちょっと暗い話にしちゃったわね。話題を変えるわよ。スウ、改めてアーシアちゃんの紹介を」
「きゅ、急に来たね...。えーっと、仮戦闘場に居た人なら分かったと思うけれど、今日このブラッキーであるアーシアが、このギルドの専門コーチとして資格があるかどうか親方と戦闘しました。結果、戦いに勝利して免許皆伝と同時にコーチとして皆を鍛えてくれます。それじゃ、挨拶ヨロシクね」
「は、はい!」
き、来たぁ...つい昨日までみんなと同じだったのに、全部過程を飛ばして来ちゃった自分。それに改めて自己紹介とか恥ずかしいと言うか、なんと言うか...。
いつも通りの感じでいいのかな...駄目そうならフレンドリーで行こうかな...。
「...えっと、改めましてアーシアです。このたび私は皆さんの戦闘コーチとしてご指導させ頂く立場となりました。至らぬ点が多々あるかと思いますが、もしありましたら直接いつも通りに...お願いします。えっと、そのぉ...宜しくね?」
や、やばい盛大にやっちゃったかな私...みんなの反応が全く無いよぉ...。や、やっぱり硬すぎたのが駄目だった...?
『...アーちゃん』
「は、はい!? な、なんでしょうか?」
声が掛けられて、私はビクッとしてその声の主の方向を見た。その人は私が何度も一緒に行動を供にしたチームであるバブルズのチームリーダーのポッチャマ。名前はダイラム君という名前だけど、私や皆はダイ君と呼んでる男の子だった。
ダイ君は私の名前を呼んだ後、一番前に来て私の事を見据えてくる。じーっと見られて少し恥ずかしい気がして顔を反らしそうになるけれど、ダイ君が言う言葉を私は待った。それが数秒続いた後、ダイ君は口を開いた。
『...えっと、そのぉー上手く言えないかもしれないけれど。免許皆伝おめでとっ。実は僕達ね、アーちゃんの様子がちょっと変だったからメンバーで後を付けてたんだ。そうしたら親方と戦うって聞いちゃって...その、心配だったけどアーちゃんなら出来るって信じてたよ。ほんとにおめでとっ!』
『おめでとうーっ!!』
「ダイ君、みんな...えへへ、ありがと! わたし、頑張るからね!!」
「ふふふ、私からもお願いするわねアーシアちゃん。みんなの事、宜しく頼んだわよ?」
「はい、もちろんです! 頑張らさせて頂きます!!」