懐かしき顔
Side ???
「...ところで、あんな薬どこから情報仕入れてきたのさ?」
「...やっぱり、フィリアさんに持たせたあの薬のこと...ですよね?」
「私も気になるわ。作った本人がどんな物なのかを把握していないのはダメだと思うし」
ウィアちゃんが持ってきた薬...私は言われた通りの材料と、足りないものを何かを特定して薬を完成させた。効果は原子配列的に増強系なのは分かったけど、なんのベクトルに対して増強するのか判断が付かない。予測だと神経系列に関連しそうなものではあったけど...
「えーと、あの薬...いや、最初に出処を話した方が良いですか?」
「どこから始めても構わないよ」
「私もよ」
「じゃ、じゃあ出処から。出処はなんとなく察していると思いますが...ドリームメイカーズの薬品開発チーム、そのチームでも特に優秀で数少ない先鋭チームのデーターベースの深い所にあった薬品データレポートです」
「せ、先鋭チームって...あの?」
「はい、あのチームです。あ、一応分かるように説明しますと、チームが本当に存在していたか不明とまで言われたとても少人数で、他にあったチームの技術力を一人で複数チーム分の技術があった人達です」
「補足すると、だいたい一つのチームが八人くらいで、それが六つくらいあったらしいんだ。けど、その先鋭チームは二人っという噂だよ」
「ふ、ふたり? しかも一人で複数チーム分って...ねえ、私を基準にするとその人は何人分?」
「えーと...か、仮定ですが三人か四人分かと。あの人達はどんな未知の病気でも、調べ上げて治すことが出来たとされていますから。けど、流石に闇に飲まれし者の状態を回復する薬や鎮静薬は不可能だったみたいで...」
さ、四人分...聞いてみて思ったけど、分かりにくい。置き換えるといつもの四倍も物事が進むで良いわよね?
それにしても闇に飲まれし者の状況を回復する薬...引き起こした原因はドリームメイカーズ側なのに、やっぱり良くないものと思って作り出したのかしら。それとも何か別の...
「まあ、それが出来れてばどんなに良かったでしょうね。取り敢えず、連れてきたわよ」
「皆さんお久しぶりです!」
「ん、随分早いね。病院でテレポートでもした?」
「それはともかく、アーシアちゃん歩けるようになったわよ。全く凄いものを作るわねシルクは」
「やっぱり、作ったのはシルクさんだったのですね...それはそうと、いつの日か振りですねシルクさん。前触れも無くこの時代に居るということは、何か調べ事とかですか?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわね。元々は遊びに来ただけだったけど、話を聞くにあんまり様子が改善されてないみたいだから、調べ始めようとしていたところね」
「アーシアは何となく察してる筈だよね。事は全てミウさんと付き添いのシードさんから聞いたよ」
「それって、もしかしてセレビィの?」
「だよ。そう思えばシードはシルクと知り合いとか話してたね。それに、一回目はアーシアをシルクの時代に招こうとしたみたいだけど」
「あの時の事ね?」
あの時...私にとっては一週間以内の事だけど、コッチの世界ではそこそこの時間が経ってるはず。私はその日、シードさん共にポートタウンにあるエメラルドグリーン色の砂が綺麗な海岸でアーシアと待ち合わせをしていた。
何故待ち合わせていたかというと、ライトさんの言う通り私はアーシアちゃんを私達の時代に招待...の言い方で良いのか分からないけど、ともかく招待をしようとシードさんに話しをしておいた。
因みに、その時の会話はこんな感じだったわね...
ーーー
「アーシアちゃん、こっちの世界では十分楽しめたかしら?」
「はい! みんなにもよくしてもらいましたし! ...ええっと、この人は...?」
「ごっ、ごめんなさい。アーシアちゃん、紹介するわね。彼は私の友達で、セレビィのシードさん」
「あっ、はい」
「で、彼女が、前々から話しているブラッキーのアーシアちゃん」
「よっ、よろしくお願いしますです」
「シードさんがいなかったら、アーシアちゃん達とも会えてないし、ウォルタ君とさえ知りあえてなかったわ。 ...一言でいうなら、彼がいなかったら、私はこの時代には来れていない...こういう感じかしら」
「そういえばシルクさん、前に過去の世界の住民だ、って言ってましたよね」
「ええ、そうよ。...それからシードさん? 今更だけど、アーシアちゃんが私達の時代に来ても、大丈夫かしら」
「たぶん、大丈夫だと思いますよ。空間を司っている知り合いに訊いたんですけど、ブラッキーさんみたいに“導かれ”たひとたちは、元々僕達の時代と平行する世界の住民だそうです。空間は違うけど、同じ時間帯に存在しているから、別の世界で何かをしても、その後の未来に影響は出ないそうです」
「アルトマーレのラティオスさん達も伝説同士のつながりがある、って言ってたけど、本当だったんですね」
「シードさんの交友関係は、本当に広いからね。アーシアちゃん、シードさんもこう言ってくれてるから、どうかしら? 改めて訊くけど」
私は当初、来てくれるものだと思っていたし、シードさんの言う空間を司る知り合いってパルキアさんの事。あの人が言ってるくらいだし、それに結構前にアーシアちゃんは私達の自体を見てみたいとも言っていた。けど、アーシアちゃんの口から出た言葉に、私の考えてた以上に心配をしている彼女の言葉の言葉が返って来て、私は答えることが出来なかった...。
言われてみれば確かにアーシアちゃんは、ポケモンだけれど元人間で、元人間だけどポケモンという存在。それに時代を超えて、本当に身の安否が保証される証拠も無かった.........。
「...お気持ちは嬉しいのですけど、色々考えて、シルクさんの時代には人間さんが居るのですよね?」
「そうね。今の姿はブラッキーと言う種族で、ポケモンで、しかもアーシアちゃんの世界ではポケモンはゲーム上の仮想生物で...複雑な気持ちなのは分かるわ。けど、前に行きたいって話してたじゃない?」
「...はい。でも、ごめんなさい。私はやっぱりこの時代に残ります。せっかく来て頂いたのに、申し訳ないですが...」
「...参考までに、理由聞いてもいい?」
「理由ですね。理由は、純粋に怖いんです。ものすごく怖いんです...。この姿で人間さんに出会った時や、時代を遡ったら自分の身は大丈夫なのだろうかとか。 それにドリームメイカーズが無くなっても、問題がまったく解決がしない...その事も全て含めて、私は行かない。ううん、行けない」
「...なるほどね、質問に答えてくれてありがとうアーシアさん。それじゃシルクさん、一旦戻りましょう」
「ええ...」
「...では、失礼しますね。 ...時渡り!!」
ーーー
「っというか、シードさんあれから会ってたのね」
「はい。ミュウさんとシードさんは何度か一緒に行動して、異変を調べたりしていました。だいぶ調べましたけど、あんまり繋がるようなことは見つかりませんでしたね...」
「いや、案外色々とデータが集まってるよ。特にあのバンギラス...とかね?」
「バンギラス...って、私とアーシアちゃんが洋館で出会ったバンギラスの事よね?」
「ええ、そうよ。前にも話した通り、私とリファルは当初に無力化した筈よ。 だけど、それが効かなくてシルクとアーシアちゃんが調べた洋館で現れ、更に直近でまた現れて...あとは、この通りよ」
「あのバンギラス...かなり強くなってました。あれだけは闇に飲まれし者とは別物と思った方が良いかもじれません。いつも通りミュウさんシードさんと行動していたので、事なきを得ましたが...居なかったと思うとゾッとしますね.........」
「それで思い出したわ。ところでフィリア、言った事をやってくれた?」
「...えぇ、まぁ取り敢えずは、ね。怒りたい気持ちは分からなくもないし、私も同じ気持ちだけど...お互いに、嫌じゃない? それに、シルクもアーシアちゃんと似たり寄ったりのところあるわよ。特に無茶をする事とか、思い当たる節があるんじゃない?」
確かに、人の事は言えないわね...前に無茶をして、生死を彷徨ったこともあるし...。
「...さてと、暗い話はそこまでにしようか。気になっているだろう、アーシアを呼んだ理由とシルクを過去から呼び出した理由ね。ウィア、お願い」
「はいマスター。後ろのスクリーンに色々と資料を表示しながらお話しますので、後ろを向いてくれますか?」
「後ろ? 後ろと言われとも、ただの白い壁ですけど...」
「こんなのを見た事あるわ。白い壁をスクリーンにしてプロジェクターを投射するのね?」
「流石はシルクさん、その通りです。では映し出しますね...ポチッと」
カチッと音がして部屋が暗くなったと同時に、目の前の大きな壁一面に色んな情報が一気に映し出された。写真から文章、新聞記事、テレビの報道番組と思われる物、それと全体より薄くされた諸島を上から移したもの。まるでパソコンのディスプレイをそのまま投射したような、そんな印象を受ける程の情報量が一気に投射されて、どれを見れば良いのか迷っちゃうほど。
にしても...流石ね、この時代って。まずは拡張現実言われる、私たちの時代ではやっと出てきた技術が普通に使われてる。仮想現実、別名ARは現実の世界に情報を重ね合わせたり、現実世界で人が感知出来る情報に別の情報を加え、現実を拡張表現する技術や手法のこと。
他にはミミアンちゃんやヨーテルちゃんにマートル君が連れて行かれた電脳世界、そしてウィアちゃんが元々居た場所。仮想現実、別名VRは一言で言うなら仮想の世界に入り込める技術って感じかしら。こっちは詳しく分からないから、こんな簡単表現になっちゃうけど...。
それと、ラストに私の目の前でウィアちゃんが壁に映し出した様々な情報を投射して、それに対して拡大や縮小に移動。複合現実、別名MRはARのように現実を拡張させつつ、VRは仮想世界に対して物がそこにあるかのように見せる技術だったけど、MRは現実世界に対してそこにあるかのように見せる最新技術。この時代では簡単に使っているけど、私の時代ではVRすら存在していない技術。ホントにこの時代には驚かされ続けるわね...。
「なので...シルクさん?」
「えっ、あっ、なに?」
「なにか深い考え事をしていたみたいですけど、大丈夫ですか? 確かに内容は良くないことですけど...」
「えぇっと、うん大丈夫よ。聞いてるから続けて」
「そうですか、なら続けますね。えーと...前置きがかなり大きくなりましたが、闇に飲まれし者達の存在確認状況が色んなギルドから知らされており、先日のバンギラスのような凶悪な存在確認されています。一応、この情報に関してはダイアモンドランクでの提示をしていますが、それ以下のランクやギルドに属さない人達の被害報告も増えている為に情報をパブリックし、出現回数が多い場所に関しては高ランクの人達でレイドパーテイを組み、大人数での討伐を検討中の状況です」
「確かに、大人数ならアタッカーやディフェンダーに別れたり、ヒーラーとかも出来るわけね。そのレイドパーティーって、一応どのくらいの人数を予定してるのかしら?」
「そうですね...予定では10人程でしょうか。大体はペアかトリオでのパーティーが多いので、たぶんそうなるだろうの課程で進めています」
なんか...あんまり状況が宜しくない感じね。まだ完全に調べ切れてないけど、明らかに世界がまた不安定になっている事には間違いないわ。だけど、その根本的な問題であったダークライ、そしてドリームメイカーズは私達の手で終わらせている。
考えてみれば、ドリームメイカーズの壊滅後に様々な役人や従業員が一斉に逮捕されたらしいけど、全員盗られる事は出来てなくて、まだ指名手配で探し続けているってウィアちゃんから聞いたのよ..ね...。まさかとは思うけど、その人達がまた集結し、何かを始めたとか...。
ドリームメイカーズは様々な場所にアジトや工場を持っていて、一応は取り壊されて更地にされているらしいけど、少なからず知られていない場所は存在する筈。ウィアちゃんが言うに、たまにネットワークから変な接続要求や攻撃が来るようで、その接続...なんて言ってたか忘れたけど、パターンがドリームメイカーズが行ってた方法と一緒だとか。つまり、ドリームメイカーズは根絶出来ていなくて、未だに活動を続け、チャンスがあればまた大きく動き出すことは確実...その結果が、バンギラスみたいなレイド対策しないと倒せない存在かもしれないわね...。
「...まぁ、今できる事としたら戦わないで離脱してかな。それに大人数による行動のメリットとデメリットを確認しないといけないし、だからといって挑んできてなんか言えるわけもない。そこでなんだけど、二人には講師をやってくれないかな?」
「こ、講師...ですか?」
「い、いきなり来るわね...でも私達なんかで務まるのかしら? 教えるのだとしたらフィリアやウィアちゃんの方が...」
フィリアには最終調整という名目で、アルトマーレの庭でリファルさんの代わりとして戦った事があった。その時はフィリアに呼吸器系の病状があって、途中で辞めされるような形にはなっちゃったけど...指導というか、指摘に関してはリファルさんを超えていたわね。実際、フィリアの指摘にリファルさんが訂正を入れて私達に教えてくれてた。
ウィアちゃんに関しては、私達の動き方や傾向を元に、どうすれば良いのかの改善や反省点を教えてくれる。私の場合だと仲間の誰かが倒された、傷付けられると、周りのことが聞こえなくなったり見えなくなるのが駄目って言われてたわね。後は、無意識の内に皆へ攻撃が入らないように、敵からのヘイトを取りすぎていたのも駄目って言われたわね...そんなつもり、全く無かったつもりだったけど...。
「一応は病状が落ち着いているけど、またいつ発祥するのか分からないのよ。いつも鎮静薬は持ち歩いているけれど、本当に重要な時に無くて、生死を彷徨うなんかしたくないのが本音ね」
「い、言われて嬉しいのですが...そんなに私動けませんし、それに講師なんか......」
「...とまぁ、こんな感じで駄目なんだよね。そういう事で、頼まれてくれないかな?」
「...うん、分かりました。私で良ければ受けますです」
「ここまで言われちゃうと断れないわね...いいわ、私も受けるわ。それで、誰を教えればいいのかしら?」
「えっとね、教えるのは...」
「ギルドに属する弟子たちにだよ」