あり得たかもしれない歴史 01
From Chapter04-責任
Side ???
「ス、スキャン終了まで残り5%...4...3...2...1...スキャン終了です、ね」
「ありがとう。さて、この検査でドクロが出るかヘビが出るか。結果はどんな感じリーフ?」
「少々お待ちくださ.........えっ!? うそ、ライトさんこの反応って、まさか」
「...やっぱりか。申し訳ないけど、装置の起動をさせてもらうよ。活かしておくのは危険因子すぎる」
「け、けど! あれはっ!」
「リーフ、この装置を調整したのは君でしょ。やろうと思えばどんな結果であれ、検出無しにすることも出来た筈。だけど君はそんな事はしなかった。少なからず疑いを持ってたのと同義じゃないか。それとも、この世界をもう一度絶望の淵に立たせるつもり?」
「.........少しだけ猶予を、少しだけ考える有余を下さい」
「分かった、だけどこれだけは言っておく。使わなければ多くの人が死ぬ。そして残り続けると言った導かれし者達、アーシアを今度は破壊者として歴史に名を刻まれる。もちろんアーシアだけじゃない、本を執筆してくれたシルク達や関係した人全員が追われる事になる...僕はそんな事をさせたくない。アーシアにそんな事をさせたくない...」
関係した人...全員...殺さなければ悲劇が繰り返される。確かに私は装置の調整をしてたけど、検出しても検出なしとレポートを出すことは簡単だった。だけどアーシアさんの中にダークライが居ることを拭い切れなかった。だから私は装置に加工せず、完璧な結果を出せるように調整し続けていた。
その結果が...ダークライの因子がアーシアさんの中にある事。装置のバクはありえない、フィリアさんと共に何度も確かめたり、因子の研究にシルクさんも協力してくれた。それなのに、それなのに.........
「...リーフ、僕もスイッチを押したくないのは変わらない。けど、ウィアとミウが今すぐ帰ってくる保証は無いんだ。安定剤や鎮静剤も耐性を作られて、どんどん効かなくなってる。君も見たでしょ、アーシアがアーシアに無くなる瞬間を。そんな姿を見たくないんだ...アーシアのままで、僕たちの手で看取りたいんだ」
「...ライトさん、お願いがあります。安定剤と鎮静剤の投与を止めてください。そして...ぐすっ...生命維持装置も.........」
「.........分かった。じゃあ...ぐすっ、3カウントで回すよ...?」
「はい.........」
メインキー...アーシアさんに繋がっている生命維持装置の主電源管理用カードキー。これを回すと言う事は、自分専用のカードキーと、管理者用ギアをカードキーの右側の窪みに押し当て続けなれけばならない。そしてそれを扱えるのはライトさん、ウィアさん、フィリアさん、私だけ...。
「3.........2.........1.........」
「...くっ」
『.........管理者二名による認証を確認しました。装置型番LifeSafe01の指揮系統をメインコンピュータに直結中...完了、メインコンピュータよりLifeSafeのコントロール奪取...完了。メインコンピュータとLifeSafe01への直列接続...失敗。再接続中...失敗、管理者へ通知送信...完了』
「...そっか、ポリシー設定で最終決断権は僕か.........OKと」
『...管理者権限による承諾を確認。LifeSafe01に繋がる全ての指揮系統を停止します。停止完了まで後30秒です』
「...アーシアさん...ぐすっ.........」
無機質な機械音声が現状の状態を教えてくれる。その声が余計に私を悲しみに突き落とす。もう装置の停止は出来ない、それはライトさんの権限を持っても停止は出来ない。出来たとしてもそれは止めた後で、その頃にはアーシアは既に...。
いや、これは私が決めた事。私だけじゃなくて未来に進む為のカギ。絶望を振りまく前に、知ってる人が知らない人になる前に止めてあげただけ...。
.........装置、止めて...くれて...ありがと...
いま、アーシアさんの声が...私は恐る恐る立ち上がって、アーシアさんが入っている水槽を見る。だけどそこには脱力した状態のアーシアさんの姿...そして、脈拍を伝える装置は0を示している。
間違いない、もうアーシアさんは...アーシアちゃんは.........。