あり得たかもしれない世界軸 01A
World ???
Time ???
Scene ???
Side ???
「...こんな事、ありえない。なんで、なんで...何で私だけ...」
私はそう言葉を漏らすけれど、今の私の言葉を理解してくれる人は誰もいない。いや、コレから先も理解をしてくれる人なんて現れない。それに、私はこのまま実験動物としてもうまともな生活をする事なんて出来ない...。
『...だいぶやさぐれてきたな』
『それはそうです! 普通に考えてこんなの同意の無い人体実験に代わりきゃっ!?』
ドカッと大きな音が聞こえて、私はゆっくりとその方向を見るけれど、また防音ガラスの先で人間二人が争ってる姿。年配の男と若めの女、ぶっちゃけどうでも良い。それに止めてよと言ったところであの二人には通じない...いや、そもそもに.........
通 じ る わ け が な い
『...はあ、お前はなぜ分からない。この実験動物で成果を出せば一生暮らせる金がでる。お前だってそれ目当てで来たのであろう? いや、答えなくても顔に書いてあるわい...』
『ぐっ...違う、私は違うっ!! 私は友達になれるかもぎゃっ!!?』
『うるさい黙れっ!! 実験動物なんかに友達など無いわっ!! いいか、次に口答えしてみろ? お前の配属を無理矢理にも剥奪してやる。それもあの実験動物と共に実験箱に突っ込んでもいいんじゃぞ? ココはデータを取るならば何をしても許されるのじゃからな!!』
...今日は長く言い争ってる。けどこの部屋、四方八方スケスケなプライバシーも無い部屋に居る限り何もする事も、助けを呼ぶことも出来ない。また感情を表に出せば床下の穴や、側面の壁からガスを噴射されて苦しい思いをするだけ...けど、分かったこともある。
それは何処の世界でも必ず屑野郎は居るって事。ポケモンの世界でも私の事を面白がって実験した奴が居たけど、この糞老人はそれと同等かそれ以上だ。アイツにとっては自分以外すべて駒や操り人形...それに従わなければ平気で手を挙げるゲス野郎って事。
『ぐすっ...わかり、ましたぐすっ。 博士...』
『ふんっ、分かれば...ん? にしてもこの時間は実験動物のバイタルチェックの時間だが、あの野郎また来とらんのか。おい桜、お前もバイタルチェック認証って受けてたよな?』
『は、はい...まだ研修中の身ですが.........』
『ならお前がやって来い。間違いなく出来たら申請を通してやる。その代わり変な事をしたら...分かってるじゃろな?』
『...はい、畏まりました』
ーーーーー
Side 桜
...まさか、こんなタイミングでチャンスが巡ってくるなんて。かなりの年月が経ってしまったけれど、私の事を覚えていてくれてるかな...。ううん、覚えてくれてるわけないよ。それにこの世界では初対面とまではいかないけど、私の声だってあの時よりもかなり変わってる。見た目だって、全く変わっちゃってる。それ以前に親しかったときと姿は違うから。
けど、けど心の奥底では私が誰なのか分かってくれるんじゃないかって、期待しているところもあったりする。でも...仮に分かったとしてもあの仔の声は分からない。それ以前に私に対し、同じく実験をする危ない人として威嚇される場合だって...
『...あっ』
考えながら歩いていると、いつの間にかに私は先ほどまで見下ろしていた部屋のドア前に着いていた。扉はかなり頑丈にロックされていて、内側からは開ける事の出来ない構造。仮に対象が暴れた場合、処理という名の溶解液にされて跡形もなく消されてしまう...。
けど私は対面で会うためにかなりの時間と犠牲と協力を利用し、この研究所に配属されるように頑張った。最悪言葉は通じなくてもいい...心だけでも通じる事だけでもできれば.........。
「グィィィィィィ...」
『...すぅー...ふぅー.........怖くないよ、落ち着いて。私の声...分かる?』
入ってすぐ、やっぱり威嚇はされてしまった。けどそれだけで心が折れるわけにもいかない。私はゆっくりと深呼吸してから、なるべく小さな声でゆっくり、そして動きもゆっくりで...私はずっと会いたかったその仔に問いかけた。すると少しは警戒を緩めてくれて、威嚇だけはして来なくなった。私は安心しつつも、会ってからずっと訪ねたか...いや、違っていたらと思うと怖い質問をしてみるとした。
...けど言おうとすると突っかかったみたいで、なかなか声に出すことができない。流石にこの仔もいつもの感じじゃないと思ったらしくて、静かに私の口から発せられる声を待ってくれてるようだった。けど流石に一分ほど口ごもって、挙動不審な私の姿に嫌気が刺したのか
『ぶぃ、ぶぃぶぃ』
「...へっ? えっと、言うなら早くして...って?」
その仔が小さく鳴いてくれた。その声に私はビックリしつつも、多分言ってくれたであろう言葉をそのまま返した。するとその仔は目を少しだけ見開いて、少しだけ私の方に近寄ってくれた。どうやらその通りだったらしい。
『ぶぃ』
「...わ、わかった。えっと...ま、まさかで聞くけど.........名前って、あったり...する?」
名前...あるのは当たり前、私ったら何を聞いてるのか。確かにこの仔に名前はあるけど、今の状態じゃ答えられない。仮に答えられたとしても...
『いーぶぃ』
そう、種族名が帰ってくるだけ。この仔の本当の名前は聞き出すことは出来ないのだから。だからこそ...自分で聞かないといけない。この仔があの...苦楽を共にしたあの仔なのかを。
「...イーブイか。け、けどあなたには違う名前が...あるはず、でしょ?」
『ぶ、ぶぃっ?』
どうやら私の問いかけにビックリしたようで、透明なゲージの中で一番近づけるところまで寄って来てくれた。最初こそお互い怖がっていたと言うか警戒をしていたけれど、いまは最初の恐怖が嘘のように薄くなっていた。そう、だからここから先は私の勇気次第。
ここまで来たら違っていたっていい。この仔、いや彼女を安心させることが出来るならば、もうそれでいい。そう思ったら急に肩の荷を下ろすことができた。うん、これならもう聞ける。
「...名前、あるんだね。当ててみても良いかな?」
『ぶぃっ』
私の問いに頷きながら彼女は答えてくれた。私は小さく『ありがとっ』と呟いてにこっと笑って見せた。その表情に彼女も安心してくれたみたいで、少しだけ尻尾を振りながら笑ってくれた。
けど、その笑顔に私の方が驚かされることとなった。何故ならその笑顔、その笑い方は私が良く知ってる...いや、知っていた人と瓜二つだったから。もう名前を聞かなくても分かる。そして...私はその笑顔で溢れ出る涙を堪える事は出来なかった。
突然の私の涙にオロオロと心配する彼女、誰に対しても心配してくれるその優しさは変わってない。そして私は涙声になりながらも、彼女の名前、本当の名前を...
「アーちゃん、ぐすっ...わたしだよ.........」
to be continued…?
ーーーーー
っと言うことで、もしアーシアがイーブイの姿で人間世界に戻ってきてしまって、長きに渡って実験させられていたというシチュでした。ちなみに桜と呼ばれた女の人はスイレンで、本当にアーシアなのか生物学を学んで見事なって見せたって感じです。
一応本編が終わらない繋ぎとして一時間くらいで執筆しましたが、続けて欲しいかもとの声がもしあれば続くかもしれません。