あり得たかもしれない時間軸 02
Chapter 04±01
Scene Unknown01
Side ミウ
『...よっと。あれ、ウィアさん...ですよね? あれ...え?』
「...えーと、これには海より深い理由がありまして...その、今の事は無かった事にしてもらわないと困ると言うか...」
『...どういう事ですか? ウィアさんに言われて見に来てみれば、コッチにもウィアさんが居るなんて...まさか、何かしらの手法で二人になったのですか? あの、黙っていられても困られますし、事は進まないのですが?』
「いや...そ、そのぉ...」
『あっ...すいません、少々詰め寄って聞きすぎました.........』
何故こんな事になっているのか気になって、詰め寄りつつ強い口調で私はウィアさんに聞いてしまった。だからか少し体を震わせ、涙目にウィアさんはなってしまって後退りしつつ謝った。
まずい、最近になってお尋ね者を言葉だけで戦意喪失させた癖が抜けてない。そもそもに救助隊でも無く探検隊でも無い私が勝手に力試しとして捕らえるか討伐して、その後は刑務所にテレポートで何度も飛ばしてるからニュースになってるらしいけ...
「...あの、泣かすとか最悪だと思うのだけど、ねぇミュウ?」
『へっ...え、わ、わたしがもう一人!?』
ふと声が聞こえ、振り返るとそこには私の姿...一体何がどうなって...。いや、そもそもに私が二人居るなんて事はまずありえない...そうなればコイツはニセモノ。
だとすると一撃で大きい火力を当てれば、堪らず相手の変身は解ける。そう思った私はニセモノとウィアさんに気が付かれないように拳へ力を貯める。特殊技でもいいとは思ったけれど、一番に技の出が早いのは物理攻撃と思った結果だった。
「そう、私は貴方で貴方は私よ。出来ればココで見たことは忘れてくれると助か...いえ、忘れてちょうだい。知った状態だと未来に影響があるから」
『...そんな事を言いましても困ります。私は何があったかウィアさんやライトさんに伝えなければならないのですから』
「だから何も無かったと伝えるのと、今あった事は忘れるのよ。私が貴方ならこの状態がどれ程ヤバい事か把握が出来るでしょ? だって神種ポケモンが二人も存在しているのだから」
『...確かにそうです。この状況を一言で言うならば以上と言うべきでしょう。ですが...ふふふ、果たして本物なのでしょうか?』
「ええ、本物よ。そして貴方も本物である。だからこそ覚えられていると未来に影響があるの。それくらい説明しなくても分かるわよね?」
『...そうですね、よーく分かります。ですが...ふんっ!!』
私の周りをニセモノの私を中心にゆっくりと左回りしながら呟いてくる。このままじゃ力を溜めている右手に気が付かれるのは時間の問題...ならば。
そう思った私は身体正面から少し左側に来たあたりで飛び込みつつ、右手に溜めた気合パンチをニセモノに振るった。だけどニセモノは.........
「...残念ね。言い忘れたけど私は未来から過去に渡ってきた貴方よ。だから貴方の行動なんか丸分かり。だって私だから」
「そ、そんな...し、しかもこの感じは.........まさか本当に私...?」
焦る顔を一つもせず私の右手を少しの横移動で避けつつ私の背中に周り、密着すると右手で私の右手を掴んだ。そして左手は優しく胸の中心あたりに置かれ、ゆっくりとあやすように優しく何度も同じ場所を叩いた。
その行動に驚いて固まるとニセモノ...ニセモノと思っていた私がネタバラシをしてくれる。さっきまでの私ならばまたニセモノと言って身体を振払っていたけれど、触れた事によって本当に未来から来た私なんだって気が付く事が出来た。
「ええ、分かってもらえたのね。私の話を少しでも聞く気にはなった?」
『はい、異論無く。今あった事と何事も無かったと伝えれば良いのですね?』
「そうよ、だけど完全に忘れても駄目。いま私が覚えているように、来たるべき時が来たらちゃんと思い出さないといけない」
『...ふふ、無茶を仰っしゃりますね。ですが未来の私がそう言うならば、私はそれに従って今はこの事を忘れます』
「ありがとう。コレで影響が出なくなるわ。さあ、ウィアちゃん...行くわよ」
「...えっ、もういいのですか?」
ウィアさんをウィアちゃんと呼んでるんだ、未来の私って。それに話し方も今の私とちょっと違う...と言うより接しやすくなった気がする。
そう思っていると未来の私はピジョットに変身して、ウィアさんを背中に乗るようにと急かしていた。その事にウィアさんは驚きつつも返信した未来の私に飛び乗った。それを確認した未来の私は。
「じゃあバイバイ、過去の私」
そう一言だけ未来の私は言い残して、二人は私の前から飛び去っていた。その翼が見えなくなるまで見送ると、私は"ど忘れ"を重ね掛けして今の記憶を消し去った.........。