ポケットモンスターズファンタジー 彼女の願いと一つの宝石











小説トップ
Chapter 00
招かれざる巨躯
Side アーシア


「...さてと、そろそろ抜けられるかしら。けど、気を抜かずにもう一回層行くわよ」
「あれ? ココって三回層だった気がするのですが?」
「そうだったけれど、ちょうど半年前かな...なんか階層がなぜか増えたんだ。前までは三階層の入門級侵入ランクから、今は六階層までのノーマル侵入ランク程みたい。今回の任務はその調査として僕達がこのダンジョンを割り当てられたのだけど、このエリア以外にもこのダンジョンと同様に階層、場所によっては広さや天候まで変わったとされているんだ。僕とレイはその変化を聞いて、居ても立っても居られなくてギルドへの入団を志願した感じかな?」
「とは言ったものの、ランクは下から三番目のシルバーだから深く調べられないのよね。ところでアーシアちゃんはランクどこ?」
「わ、私はプラチナランクです...」

 うわぁ...またレイエルさんから怖い視線が...。そうですね、ランクが高いという事は、高難易度で危ない依頼やお尋ね者中で危険な人物を優先して回されますし。けれど、これでも望む情報にはまだランクが足りないと先ほどにジバコイル警官に言われたばかり...また上を、私は目指さないといけない。
 もしこれでチームを結成する際は、強制的に統合して低い方のランクにされるのが決まりとなっている。ただし例外もあって、例えば同様なランクならば一つだけ剥奪、ダイアモンドランクはプラチナになるけれど、適性試験で合格ならばダイアモンドのままで降格を逃れる事が出来る。その上のギルドマスタやマスターランクと呼ばれる、通称免許皆伝と呼ばれるクラスは知らない。ただ過酷とは聞いたような気がする。

「...はぁ、もう呆れてものも言えないわ。ソロだし、身分は隠すし、他にも何か隠していること...あるでしょ。怒らないから話してくれないかしら?」
「...分かりました。私はDM事件が終わってから装置を動かすまでの間、エレナさんのカフェを手伝いながら、休日は独自調査していました。侵入レベル問わずのダンジョンの状態観察と潜入、闇に飲まれし者の状況と観察、アルトマーレの地下探索とシルクさんのチームで起こった霧の再現、ドリームメイカーズの工場だった場所...あらゆる場所を調べていました」
「えっ、そんなに調べていて時間は...」
「...分かりました、すべてをお話いたします。そのためには...少し待って居てください。今ならお呼び出来るかと.........」

 私は二人にそう伝えながら前足で地面を地から強く蹴り上げて、後ろ足だけで立ち上がった。その状態で自由になった前足を胸の上で重ねながら目を瞑りながら、ミウさんとシードさんの姿を思い浮かべつつ心の中で二人の名前を呼んだ。その数秒後に緑色の眩しい光と、白色の眩しい光が目を瞑っていても感じ取れて、収まった辺りで目を開けた。目を開けると、そこには心の中で願った人物でミュウことミウさん、そしてセレビィことシードさんが空中から私の事を見下ろしていた。けれど、いつもとはちょっと違うのはシードさんがレイエルさんとモルクさんを見て、一瞬だけ驚いた顔をした事していた。

「...ふぅ、久しぶりレイエルさんにモルクさん。この様子だとアーシアさん、レイエルさんに問い詰められてバラしちゃった感じです?」
「うっ、ストレートに言わないで下さいよ...」
「まぁいつかはバレるというか、言わなきゃとは思っていましたけど。取り敢えずは、君達がレイエルさんとモルク君だね? 話はアーシアさんから聞いているよ」
「まさか人たちとチームを組んでいたんだね...えっと、シードさんでしたっけ? 初めまして、僕の名前はモルクで、コッチはレイエル」
「初めまして、僕の名前はシード。ミウさんや僕達の存在は良く知っているってのも凄いことだけど...一応説明をしておくとセレビィという種族だよ。よろしくね」
「ええ、よろしくシードさん。簡単にアーシアちゃんの口から聞いたけど、調べていたってホント?」
「はい、調べていました。でもその話を持ち掛けたのは私達からです」
「実言うとアーシアさんは本当に世界の影響が無いのかの観察を兼ねてでした。ですがいつの間に異変の調査観察、時には闇に飲まれし者を捉えて行動や思考の観察調査、はたまた自我を直せるかどうかまだも調べていました。その他にもダークアイテムと言われていた、ご存じの通りレイエルさんが前まで所持していたオカリナや様々なアイテム、及び異国の技と分類された物との関連性など、シルクさんが纏めた以上に僕達は調べていたんだ」
「ん? シルクって...あのエーフィのシルクで間違いないわよね?」
「あれ、シルクさんの事を知っているの? ...あぁ、なるほどね。確かシルクさんもDM事件の解決者だっけ。一応、僕の事を詳しく言うとしたら、シルクと同じ時代である二千年代のから出身だよ」
「二千年代って...今からか計算するに五千年前? けど、そんな人が何でこの世界に居るのよ?」
「なんでって...さっきも話した通り、観察だよ。他に言うならば、他のセレビィ経由で僕に伝言が回ってきた感じかな。まったく、ミウさんは直接言ってくれれば良かったのに」
「あの、それってどんだけ骨が折れるかって知っていて言っています? 他のセレビィを探すだけで丸々一週間も探し回ったのですからね? 貴方達は時の回廊を開いたら直ぐに閉じて遠くに行ってしまうし、開いたのを感じ取っても...って、なにか来る」
「へっ? な、なにかって?」
「...分からない。でも、確実にコッチへ向かってくる」

 分からない何か...そう言われて辺りを見渡したり、気配を感じ取ってみても、何も感じ取れない。けれど、ミウさんがそう言うなら何処かに居るって事ですよね?
 私はそうだとして、スピードスターを身体の周りに停滞させ、いつでも発射できる体勢で構えた。それを見て、レイエルさんとモルクさんも構えて、シードさんもリーフストームを使える様に構えていた。因みに立ち方としたら、背中は任せるような感じで五方向を見てる感じ。
 それから数秒後くらいだった頃、近くの草むらがガサガサと音を立てて揺れ、ミウさんが感じ取った強い気配の正体が明らかになった。それは色味が黒いバンギラス...って、あれ?

「ま、まさか...あの時の.........」
「あの時の...って、まさか!? 三年前のこの場所、四苦八苦して戦ったアイツって言いたいの!? でもアイツは...フィリアとリファルさんに...」
「えっ? あの、一体どういう事ですか?」
「...ミウさん。私達は前にも、このバンギラスと対峙した事があったんです。忘れもしない、化け物じみた耐久力と攻撃力を...」

 まさか、この場所で因縁が残っているバンギラスと出会うなんて...。しかも、三年前にモルクさんとレイエルさん、そしてシルクさんと接触した時よりも雰囲気が恐ろしくなっている。
 毛並みが黒かった場所は更に黒みが増し、しかも身体の所々に赤黒くなって固まってそうな毛並み...考えたく無いけれど、あれは紛れも無く返り血でそうなったに違いない。あれ、ジバコイルさんが言ってた規格外ってもしかし...

『...グアァアアァアアァァァアアア!!』
「っ!? 皆さん私の後ろに! 守る!」
「わ、わかったわ!」
「わかったよ!」
「はいっ!」
「分かりました!」

 急にバンギラスは叫び出したと思ったら口にエネルギーを凄い勢いで貯め始めた。それを見てミウさんは避けられないと思ったのか、私達を自分の背中に回らせながら"守る"を発動させた。

『...ガァアアアアアッ!!』
「来た...って早い!? ぐっ!?」

 私達がミウさんの後ろへ移動し終わったと同時にバンギラスから破壊光線が放たれた。けれどその威力は凄まじく、ミウさんが張った守るのバリアはあっという間に亀裂が入った。それを見てすかさず私はミウさんの真横に歩み出てから、

「私も...守る!!」
「ア、アーシアさん!? 早く後ろに...あれ?」

 私はミウさんの真横に立って"守る"を発動...そして直ぐに入れ替わるようにミウさんの守るよりも大きく発動。途端にかなりの圧力が来たけれど、耐え切れないほどの火力でも無かった。私の"守る"は言うならば特殊技特化のバリアを貼る事が出来て、一方で物理技は子供の体当たりくらいで砕けて弾けてしまう特殊体質...。
 何故そんな事が起きるのかは良く分からないけれど、どうやら同じ種族や同じ技でも得意不得意の個人差が存在し、威力や技自体のスピードや発動スピード、必ず個人差が生じるらしい。
 例えるならば、とある人は国語は得意だけど数学は苦手、けどもう一人は数学が得意な代わりに国語が苦手のように、得意不得意があるようなものだと思う。
 因みに努力すれば出来るようにもなるし、幅を広げる事だってできる...だから、私はたまたまに特殊技に対するバリアが強かったってだけ。

「え、ちょっ...す、擦り変わるなら擦り変わると仰ってからと!?」
「くっ! わ、私の性質を知っていて説明...要りますかぁっ!! はぁ...はぁ...みな...さん、大丈夫です...?」
「アーシアさんが大丈夫じゃないで...って!? あのバンギラス、まだ仕掛けて来ますよ!?」

 私はミウさんのバリアと完全にすり替わったことを確認し、それから"守る"の形状を可能な限り小さくする。それにより、ほぼバリアに対して直撃していた破壊光線を反らすことができた。
 だから少しだけ休めると思いきや、バンギラスは逸らされたことに気が付いて破壊光線を止めて、身体にまたエネルギーを溜め始めた姿...。やばいと思って立ち上がろうとするけれど、先程の事で意外と体力を奪われて居たようで一瞬よろけてしまった。その事に気が付いたシードさんは、私が倒れないように寄り添ってくれつつも、バンギラスの事も気が付いて慌てている様子だった。

「やっぱりあいつヤバいじゃないっ! ...シャドーボール、サイコキネシス! モルク!」
「わ、わかった! エレキボールっ! レイ、頼んだよ!」
「シードさん! アーシアさんを少し安全なところへ! 波動弾ッ!!」
「わ、分かりまし...アーシアさん?」
「...私は大丈夫。反動でふらついただけですから...」
「でっ、でもっ!」

 シードさんに連れられて戦線を交代されそうになるけれど、私はその腕を振り解いて立ち上がった。無茶をするべきではない事は分かっている...分かっているつもりだけど、このタイミングで戦線を離れるわけにも行かない。だから私はシードさんの言葉も耳を傾けず、電光石火を発動する為に風を纏い始め...

「...電光石火っ!」

 タイミングを図って、今出せる最高速の電光石火で私はバンギラスに向かって力強く地面を蹴って突っ込んだ...。


■筆者メッセージ
2020/09/03 - 誤字脱字と物語の微修正
ティア ( 2020/09/03(木) 22:52 )