頼り頼られ
Side ホノン
「電光石火! アイアンテール!」
私は走り込みながら直前で身体を捻らせて、鋼のように硬くなった尻尾をししょーであるリファルさんへ叩きつけようとする。でもそこは流石の反応速度で守るを発動されて、悔しいけど私はそれに弾かれてしまった。
因みに今、私達は場所はギルドの外に併設された試合スペースで、毎日二時間修行をした成果を試験戦闘で試している。依頼をこなしながら、ししょーに絞られる毎日...とても辛かったけれど、お陰でかなり強くなれたって実感もあった。
動きが駄目なところを直し、個々の良い所を伸ばす。簡単そうに思えてかなり難しい...それをししょーは約三ヶ月で劇的に変えてくれた。最近は他のチームも面倒を見てるようで、大体一ヶ月ほど修行をしてくれれば全員のランクが一つ上がる程...さすが、世界を救ったチームを育て上げた人だね...。
「今ならもしかしたら...グラスミキサー!」
「で、電気ショック!」
私の攻撃でバリアに亀裂が入ったのを見て、メルカとエルンは正面からじゃなくて、挟み込むようにししょーを攻撃。その間に私は地面に着地して電光石火で走り込むと、今度はアイアンテールを発動状態でキープした。技が切れないように集中しなくちゃいけなくて、かなり難しいけれど、数秒くらいなら保ち続ける事が出来る。
これもししょーのお陰で出来た事で、動き方のベースはアーシアさんと言う人の動き方をそのまま私に教えてくれた。最初は何でと思ったけれど、動き方とかを見て合致するからとか。確かに私にとても合ってて、戦闘が凄く安定したから、人と一緒なんかヤダなんて思ってたのがバカみた...いや、それは後々。
今はししょーに認められなきゃね...他チームよりも長く教えてもらってるのに、成果が出なかったら飽きられちゃうから!
「...行きますよししょー! アイアンテール!」
「ぐっ!? お、おい...マジかよ.........」
よし、ししょーのバリアを破壊出来た。しかものバリアが壊れたデメリットで、混乱状態にあるから振れるのは制限時間的にラストチャンス!
メルカとエルンもそう思ったらしく、エルンが巧みのコントロールでカミナリを操って進路妨害。そこに走り込んだメルカが、蔓のムチで足払いを狙って低めに振り回した。当然避ける為にししょーは上にジャンプ...この勝負、貰った!
「...いけぇ!! 電光石火!!」
「やべっ!?」
空中にいる間は身動きなんか出来ない。私は二人が繋いでくれたバトンをしっかりと受け取って、ししょーのところへ走り込んで、飛び込むと...
「...よし、タッチ!」
「くそ...捕まったか。ぶっちゃけるとタッチと言うより、飛び付かれた感じだが...まぁ、どうであれ強くなったな、ホノン。それにエレン、メルカも」
「お疲れ様、タイムは約10秒残しで48秒。現状のチームで最速ね」
「ギ、ギリギリだったわ...もう少し遅かったら間に合わなかったかも」
「48秒か...まあ、こんなもんか。親方、忙しい中タイム計測してくれて助かった」
「良いのよこのくらい。それに、弟子達の伸び代を見たいと思ってたし、それを確認したりするのも親方の大事な役目」
「はは、ちょっと表現が違うかもしれないが俺も同じ感じなのかもしれんな」
「ふふ、案外親方に向いてる人かもね。副親方がココには居ないし、適任したいくらいだわ」
し、ししょーが副親方?
確かに向いてそうな気がするし、色んなチームに手解きをしたりしてるから、全員どんな人なのか把握してるし信頼もしてる。それに、ちらほらそうなるじゃないかなって、他のチームの人達とお話してたのは記憶に新しい。それに、ししょーが副親方になってくれるならとても頼もしいし、なってくれると良いなぁとは思う。
「いや、何度も言うがそれは拒否しておく。混乱を与えかねないのと、この姿じゃ何が起こるか分からんからな」
「まあ、そうよね。でも気が変わったら言って。私は勿論だけど、多分弟子達も良いよって言ってくれる筈。そうよね?」
「はい! リファルさんでしたら私、大歓迎です!」
「アタシも賛成派よ!」
「私も!」
「お、お前ら...」
「ほらね? きっと、違うチームに聞いても同じ答えが帰ってくる。信頼されてるからこそ、貴方に頼みたい。どう?」
「...そうだな、そこまで言われちゃ断れるものも断れないか。 親方...いや、セネル。セネルと弟子達の意見通り、俺はエルドシティのギルドの副親方として頑張らされてもらう。駄目なところや、相違もあると思うが、そこはカバーしたり助けてくれると有り難い」
「それは当たり前。そうそう、申請云々は後で私の部屋に来て」
「ああ、分かった」
...ホントに、なっちゃった。なんか特別なことが必要かなっとか思ってたけど、指名的なのは私達や親方なんだ。てっきりギルド協会から指名されてなるものだと思ってた。
ん、そう思えばギルド協会はドリームメイカーズと絡んでたらしいけど、その時の役員は全員解雇されて、パートナーが私達が所持するギアを製造する企業になったんだっけ。ほんとに色々変わっちゃったなぁ...。
不思議玉とかアイテムが全部使えなくなって、代わりのアイテムと交換されたり、画期的なものに変わったり、ギアのソフト更新があったりと、その他に三年間で色んな事が変わった。変わり過ぎて目が回っちゃうくらいに...
「ホノンさん?」
「ふぇ? あっ、な、なに?」
「何か考えてたようだったから、どうしたのかなって。親方とリファルさんはもう行っちゃいましたよ?」
「ホノンってたまにそんな感じになるわよね。大丈夫?」
「な、なんかその大丈夫の聞き方に違和感があるけど...うん、大丈夫。じゃあ戻ろっか、もうお腹ペコペコだし」
「そうね。ところで毎回思うのだけれど、依頼を受け終えて終わってからやるのかなり辛かったわね...」
「確かにそうですね...でも、おかげさまでぐっすりと寝れる感じはあります」
「分かるその気持ち。でもエルン、この前お風呂で寝てたね。アレだけはやめて...」
「そ、それは偶々ですっ!! いつも寝てるみたいに言わないで下さい!!」
「まぁ、眠たそうにしてるのは変わらないわよねぇー?」
「もうっ! メルカさんまでっ!!」
「ひやぅっ!? ちょ、ちょっと電撃当てないで!
思わず変な声出ちゃったじゃない!!/// って、ホノンは笑わない!!」
「ふふふっ、だって面白いんだもん。そんな感じのやり取りするんだって。 それに、ずっと思ったんだけど...私ね、ホントに二人に救助されて良かったなて思うの。病院の先生に言われた事も含めて、私の事を真剣に考えてくれて、悩んでくれて、そして今はこうして笑え合える最高の仲間になれた。ううん、ギルドと言う大きな家族の一員になれたんだもん///」
私は二人のやり取りに笑いながら、心の中に入れたままでずっと言ってなかった事を恥ずかしながらに話した。たぶん、自分の顔を見たら真っ赤なんじゃないかって分かる程に...だって、顔が凄く暑いんだもん...。
でもなんでかな、嬉しい筈なのに...何だか涙が出てきちゃった...止まらない.........。
「ひっく...ひっく......」
「ホノン、貴方そこまで...ありがと。そんなに思ってくれてるなんて予想外だったわ」
「な、泣かないで下さいぃ。嬉し涙って分かってるのに、分かってるのにコッチも涙出ちゃうじゃないですかぁ...」
「あー、エルンって涙脆かったわね...。大丈夫、今はエルンの涙なんか求めないし要らないわ」
「...あの、ホントに泣きたくなってきたのですが.........」
メ、メルカきっつぅ...流石にコレが自分だったらホントの涙に変わりそう...
「...はぁ、取り敢えず。ホノンの気持ちは分かったし、コッチも貴方と出逢えて良かったと思ってる。エルンもそうよね?」
「はいぃ...ぐすっ、ホノンさんに会えて、ホントに良かったと思ってまぐすっ。要られるならずっとぐすっ、一緒に居たいですぐすっ」
「...もう、アタシは突っ込まない。二人共、アタシは取り敢えず先に戻るわ。あんまり遅いと心配されるけど、二人は涙や目の赤みを戻してから戻ってらっしゃい」
「は、はい...」
「すみません...」
...行っちゃった。でも、最後の方で私達に顔を見えないようにそっぽを向いたけど、もしかしてメルカ...涙を見せたくなかったのかな。それに思えば、メルカが泣いている姿や落ち込んでいる姿とか、三年間ずっと一緒に居て全く見た事が無い気がする。
結構長く要るエルンすら、そんな姿を見た事が無くて、泣きそうな場面になると強がったり、今みたいにその場から居なくなるみたいだし...何か、特別な理由があるような気がする。誰にも言えない、メルカの心の内に隠れた感情...機会があれば聞いてみようかな。
私を元気付けてくれた時のように、忘れもしない母のような温もりで優しくしてくれたあの時のように...とは行かないかもしれないけど、心の内を吐き出してくれるようにって。
ー後書きー
ども、ティアです。急ですが、一時的にコチラ側のストーリーは停止して、メインのアーシア達にスポットを返します。
元々はリファルとホノン達の合計二話だけで、少し謎っぽい物を残して終わらせるつもりだったのですが、それだと後味が悪そうなのと、今後のストーリーで回想をする必要性が出たので、急遽一話追加の運びになりました。
アーシア「いま時系列ってどうなってるのです?」
ホノン「私も同じ事を思ってたかな」
時系列...うーん、たしかに一度整理が必要ですね。近々にやっておきますね。