M_04 真実と絆の英雄
「シルクに負けないように頑張らなきゃ・・・とは言ったものの、どうも胸騒ぎしてならないんだよね・・・。 一応、ココにはインターネットで調べごとも出来るみたいだし、時空の亀裂を調べておこうかな。他のことは直ぐに調べられるし」
ウォルタは今、ギルド近くにあった大型ショッピングモール内の図書館に来ていた。ココには最初に行った図書館より遥かに本の量が多く、しかもココの図書館には置いていない本をオンラインで読めるという、調べるにはもってこいのシステム。それと受付で申し込めば、ネットで調べ物も可能という好都合すぎる事になっていた。だが、ココまで凄いのに歴史の本は全くと言うほど無く、聞いても「ココにはそのジャンルの本は扱いしてません」と素っ気なく言われてしまう始末・・・本当に怪しい。
「さてと、早く調べて印刷しちゃおう。検索ワードは『時空の亀裂』と・・・」
検索窓に調べたい事を入力してEnterキーを叩く。すると直ぐにそのワードにヒットする結果が表示される。結果数は千件以上で、これから絞り込む為に更に絞り込みで条件を指定すると50件位まで急激に減った。コレなら読み漁っても量にもよるが一時間足らずで読み切るであろうっと思ったウォルタは早速検索表示順に読み、情報になるものは印刷し、アンダーラインを引いて行く・・・・・・。
「・・・成るほどね。一応爆発関連を投げ込むか放つかで消滅するのは確かみたい。 でも、奇跡的に出て来た者が自我を失っていたのはどうして・・・」
それは読み漁り始めて40分後のラスト二つ前の実体験を元にして書いたページだった。内容によると、救助隊をしていた自分とパートナーが突然現れた時空の亀裂に吸い込まれそうになった。自分はとっさにツルの鞭で気に捕まり、パートナーもツルの鞭で掴んだ。が、手が滑り、一瞬、ほんの一瞬だけパートナーが亀裂に身体が入ってしまったらしい。収まった後、ぐったりしているパートナーに声を掛けると・・・起き上がった後にいきなり襲って来て、しかも目を見ると光が無く、牙を出して睨みつけてきた。戦って止めようとしたが、厄介な事に吸い込まれる前より格段に強くなり、全く歯が立たなく、命からがらバッチで逃げ帰ってきた・・・・・・その後はコレを書き、救助隊を除隊し、そのパートナーを探している、と書き終えており、そこからの更新は無くなっていた。
驚くのはまだあり、実はこのページは『キャッシュ』いわゆるバックアップで読んでいて、本物のページは削除されていたのである。これだけ重要なページをどうして削除するのか・・・ウォルタは不思議でしょうがなかった。ひとまずそのページは丸々印刷し、クリアファイルに入れ、その他印刷した紙もしまい、閲覧履歴は自分が見たページ全ては削除して図書館を出てからシルクに連絡を入れるのであった・・・・・・。
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「ココね。時空の亀裂の目撃例が多いアファクトの森近くのダンジョンは。 えーと、持ち物は爆発のタネ2個、爆風のタネ5個、オレンの実をベースに作った総合回復薬を10個・・・足りるわよね」
バックを地面に置いて、物を一つずつ出して確認する。市販でも売っている爆発のタネ、それを改造した爆風のタネ、オレンやオボンの実などの回復系と、それの効果を増幅させる木の実をブレンドしたシルク特製の回復薬。実はこれ、ウォルタと別れた後にギルドへ戻って急遽作成した物だった。それらをバックに入れ戻した後、シルクはゆっくりとダンジョンへと突入した。
中は薄暗く、水溜りや苔が生えている為に滑りやすく、とても危険な感じだった。
「コレ、戦闘になった時に迂闊に動き回れないわね。"シャドーボール"はあまり放ちたく無いし、かと言って"サイコキネシス"もあまり使いたくも無いし・・・っとなると"目覚めるパワー"が主力になるわけね」
サクッと考え、聞き耳を立てながら、よく見ながら一歩一歩前へ進んで行く。薄暗く、視界は5m位まで、水滴の音が何度も木霊する為、かなりの集中力と体力を使う。コレだと、まともに判別が難しいし、疲労困憊していたら最悪吸い込まれてしまう危険性もある。
「うぅ、湿気が凄いわね・・・暗いのも重なって全然見えないじゃない。あっ、懐中電灯で照らせばいいじゃ無い・・・って、手足真っ茶色じゃない・・・・・・せめて洗ってから取り出さなきゃ」
泥水で手が真っ茶色なのを見て、近くに比較的綺麗そうな水辺や水溜りが無いか探すが、視界が悪い為全く分からない。取り敢えず歩き始めて、周りを調べて見ることにした。ダンジョンへと入って未だ10分以内、ウォルタと分かれて一時間ほど経過していたが、まだ何も調べていない。自分が勝負と言った割には全く進んでいない自分が情けない。危ないと分かっているが、時間も勿体無いと思い、転ばないように走り始める。
「・・・ん?今の音は?」
走り始めて数秒足らず、岩が崩れるような音が聞こえてゆっくりと停止して直ぐに音のした方向を睨みつける。数秒間睨み、耳を澄ましたが何も聞こえない。
「気のせい・・・よね?でも明らかにガラガラって崩れた音と、ドスっとした足音が・・・・・・・・・っ殺気!!?」
突如して自分後方から強い視線を感じ、左に飛び退いた瞬間に岩石が猛スピードでシルクの身体ギリギリを通過して行った。岩石直径は1mオーバーはしており、直撃したら大怪我では済まなかったであろう。
直ぐに着地し、体制を整えようとするが・・・
「へっ?きゃあ!!? い、いったぁー・・・滑って足が・・・・・・」
地面が滑るので、横滑りしてすっ転んでしまった・・・しかも運悪く足首をくじったようで、痺れるような痛みが右前足に感じた。でも、いつまた攻撃が来るか分からない為、起き上がって"瞑想"で集中力を高め、更に重ね掛けで効果を限界まで上げる。だが雫の音がノイズになり、正確な足音が聞き取れない・・・
「や、闇雲に放っても意味ないし、せめて方向さえ分かれば・・・・・・あっ、爆発のタネの一瞬の光なら!! それっ!!」
直ぐに取り出せるようにサイドポケットに入れていた爆発のタネを取り出すと、思いっきり上に投げ"シャドーボール"を放つ。すると当然ながらタネに衝撃が加わり、破裂。直ぐに周りを見ると右側に一瞬だけ敵の影が見え、そこに"瞑想"で上げた特攻を"シャドーボール"へ叩きこんで放つ・・・暗くなったと同時に野太い悲鳴が聞こえ、どうやら倒れたようだった。
地面に降り立ち、カバンに付いた泥を比較的汚れてない場所で拭き取る。
「ふぅ、初っ端からキツイわね・・・少し、休まなきゃ・・・・・・」
そう言うとシルクは光った時に見えた水辺の方へと歩き、手を洗い、特製薬の小瓶の封を開け、ゆっくりとのみはじめるのであった・・・・・・。