夕日の空に
「モルク早く!!」
「わ、分かってるよ!! っと言うか、走るのそこまで速くないの知ってるでしょ!!?」
「知って尚更よ!!それに、この世界来て直ぐのマートルが早いのよ!!? 悔しいと思わないわけ!!?」
「そ、それはアーシアも同じだったし・・・導かれし者は足が速いのは当然なんじゃ無いの!!?分かんないけどさっ!!」
「・・・えっ!!?ごめん聞こえなかったからもう一度言って!!」
「もう良い!!」
今まで来た道を、レイエルが結局ライトを運び、3mほど後ろにモルクは荷物を背負いながら走り、マートルは何故かレイエルを一歩先で先導していた。因みに最初は病院に行くことを考えていたのだが、ライトが「別荘に連れてって・・・」と力ない声で何度も訴えた後、特徴だけ言って気を失ってしまった。特徴は少し谷、近くに他の木に混じって針葉樹・・・コレだけだった。到底分かるはずもなかったが、マートルがそこを知ってると言い出したものだから、先導してもらっているのである。
「本当にコッチなのマートル君?」
「うん、さっきこの道通って来た時に見えたんだ。もうそろそろすれば見えるはずなんだけど・・・」
「・・・ん、もしかしてアレかしら?一人針葉樹。 ええ間違いない、あそこね。マ、じゃなかった、モルク早くしなさいよ!!もう着くから!!」
「そぉ、そんなこと言われたってもう僕クタクタだよぉ!!」
「・・・弱音ばっかり。コレならマートル君の方が逞しいわね」
「たくましいって何?」
「え、えーと・・・つ、強いってこと、ね。 ごめん、しっかりとは説明出来ない・・・」
「大丈夫だよレイエルお姉ちゃん。難しいこと聞いちゃってゴメンね?」
「べ、別にイイわよ。 ・・・さてと、ココね。あっ、道もココで終わってる」
ライトを未だ空中に浮かべながら、率直に思ったことを言う。少しして、モルクが肩から息をしながらレイエルからライトを受け取り、レイエルはバックを受け取って扉の前に。
そして、場所の説明の前に言われた鍵を植木鉢と水受け皿の間から取り出し、キーを回して中に入る。中はたまに帰って来て、掃除をしているのか、埃だらけではなかった。
「中は・・・至って普通ね。モルク、そこのソファーに寝かせて。その間に救護セット用意しちゃうから」
「りょ、了解・・・・・・ふぅ、ライト重たいよ・・・」
「そりゃそうよ。だってモルクの1.5倍?の大きさの訳だから、体重も2倍か2.5倍くらい違うはずだから。 私は初っ端から無理って分かってたわよ」
「し、知っておきながら酷いよレイエル・・・」
「でも、たまにはキツイ運動をしておかないと、身体が鈍っちゃうわよ? 私は・・・うん、なんでも無い。えっと、マートル君は・・・ライトの横にでも座ってて」
「えっ、あっ、うん・・・」
バックの中身を強引にひっくり返し、そのままの状態でバックからいろんな物をゆっくりと落として行く。木の実、飲み物、さっきの病院内の購買で買っていたオレンクッキーの余り、そしてよく分からない道具、救護ツールバック。中身には胸の音を聞く聴診器、傷薬が数種類、包帯、ガーゼ、ガーゼ止めのテープ等が入っていた。
「まずは傷の消毒。んっとにもう、モルクも後で消毒だからね?」
「ぼ、僕は別に・・・」
「つべこべ言わない!! さて、こんなもんね。マートル、ちょっと手伝ってくれる?何か手伝いたかったんでしょ?」
「え、うん!! どうすれば良いの?」
「私がライトの身体を起こしておくから、その間に包帯を巻いて欲しいの。傷口にはそれ、ガーゼを当てて血が滲まないように」
「分かったよ。やってみるね」
「宜しくね。じゃあ持ち上げるわよ? 因みに、先に傷口にガーゼ当てて巻き始めた方が楽よ」
軽く説明した後、レイエルは何時ものように持ち上げながらクッションを床に置いて、その上にライトを下ろし、状態を起こす。壁に寄り掛かるような体制にする。そしてマートルは言われた通りに背中の傷にガーゼを当て、ガーゼがズレないように気を付けながら二重三重に巻き付け、テープで貼り付けて取れないようにする。その後、左腕の傷を消毒して同じようにして終えた。
「サクッと終わっ・・・あっ、毛並み拭き忘れた。案外付いたまま乾くと取れないのよね・・・どうする?」
「次のガーゼに変える時でイイと思う。マートルはどう思う?」
「ぼ、ぼくも変える時でイイと思う。分かんないけど・・・」
「うーん、じゃあ決定。それで行くわよ。 さてと、予定は狂ったけど、アーシアちゃんを探しに行くわよ。マートルはココでライトが起きるまで待機・・・と言いたいところだけど、モルクもここに居て。私だけで探してくるから。私は飛べるし、遅くなっても夜は見えるし、最悪ライブキャスターもあるし」
「あー、そっか。じゃあ待ってるよ。でも何かあったら連絡してよ?コッチも連絡するから」
「りょーかい。じゃあモルクはマートルに色々教えてあげてて。 それじゃ、行ってくるわね」
ドアを開けて出て行きながら2人に言う。そして扉がしまって直ぐ、レイエルは少し不安な顔付きで沈み始めた太陽を見るのであった・・・・・・