記憶のカケラ
「マコトさん!! う、うぁわ・・・だ、誰か・・・誰か助けてっ!!!!」
「・・・・・・うぅっ・・・こ、こんなところで・・・・・・こんなところで!!負けてたまるかッ!!」
あちらこちら痛い体に鞭を打って無理やり起き上がると、群がる敵を尻尾で吹っ飛ばしたり、キックで蹴り飛ばしながらスイレンの下へ・・・その時にマコトの身体には風が纏わり付いていような感じで、尻尾も思いっきり振り回すごとに薄白く光っていた。そう・・・このタイミングで、仲間を守りたい・助けたいっという気持ちが"アイアンテール"と・・・覚える覚えることが出来ない筈の"電光石火"が、マリルの特性である"力持ち"と共に発動したのである。
「お願い・・・とどけぇッ!!」
そのまま突き進み、その途中で放たれた技を見て叫びながら"アイアンテール"を使ってスイレンの目の前ギリギリ滑り込みで技を打ち飛ばして着地・・・跳ね返したのは綺麗に放った張本人に直撃して伸びていた。安心したのもつかの間、まだ周りには数匹が二人のことをロックオンしていた。
「まだこんなに・・・・・・うぅ・・・」
「マ、マコトさん!! こんなに身体がボロボロだから・・・・・・あっ、だからこれ以上動いたらダメ!!」
「大丈夫・・・こんなのへっちゃらだよ・・・」
「でもっ・・・」
「・・・僕ね、このままやられちゃってスイレンさんを守れなかったら・・・なんだか、後悔するような気がするんだ。だから僕は・・・この状態を打破出切るまでは倒れる気なんて・・・絶対に無いよ」
きっぱりとマコトは言い切ると、先ほどスイレンを助けたように尻尾を振り回しながら高速で体当たりを繰り返す。それを見て決心がついたようにスイレンは負け時と動き回り、両足蹴りを決め、何度かカウンター攻撃を喰らおうが吹っ飛ばされようが着実に数を減らして行った。
それを続けて10分以上戦うと、ようやく・・・
「えいっ!! ・・・・・・やっと終わったぁ・・・」
「終わったね・・・スイレンさんお疲れ様・・・っとと・・・・・・もう疲れたのと身体の痛みで僕、フラフラ・・・・・・」
「アタシも・・・オレンの実・・・まだあったよね? いくつ残ってるのっ?」
「えーと・・・ちょうど二つありますよ。はい、スイレンさん」
隅に置いてた木の実が戦ってる時に幾つかダメになってしまっていたが、奇跡的にオレンの実が二つと、モモンの実が一つだけ無傷で残っていた。それを持ってくるとスイレンに二つとも渡し、マコトはオレンの実一つだけ持って、
「ボクはコレだけで十分だよ。ボクは甘すぎる木の実はちょっと苦手だから」
っと笑ながら一言。でも先程始めて木の実を見つけて初めに口にしたのはモモンの実・・・しかも甘くて美味しいって言ってたのをスイレンは横で聞いているので聞き逃しはしていなかった。それなのに 苦手 って言った事にスイレンはどうしてか分からなく、聞こうとした時にはマコトは食べ始めていたので自分も食べることにした。そしてマコトが食べ終えてから数秒後にスイレンも食べ終えた。そして残っているモモンの実に手をかけ、その手を口元に運んで食べ始めたと思いきや・・・
「んんっ・・・よし。 マコトさん半分食べて?アタシそんなにお腹空いてないの」
「えっ・・・そ、そんな事より今・・・木の実をどう割りました・・・?」
「どうやってって、手だと上手く出来ないし潰しそうな気がしたから口で半分に割っただけだけど・・・それがどうかしたの?」
「いや・・・その、それってー・・・ううん、やっぱりなんでもない・・・スイレンさんありがとうナリーっ!!」
スイレンに対して思いっきり突っ込みたいことがあったが、スルーして受け取ったモモンの実を受け取り、座り直して食べ始める。そこで改めてマコトは自分とスイレンの身体を見てみると所々二人は傷だらけで、特にスイレンに至っては蔦で縛られた後がくっきりとあり、軽く脚を地面から浮かしていた。
「足首・・・やっぱり痛む?」
「う、うん。ちょっと痛むけど直ぐに治っちゃうと思う」
「良かった。えーと・・・これから本当にどうします? 今日どうするかも含めて」
「どうするって言われても・・・まずは森を抜けて町に出ることだとアタシは思うよ? それと今日どうするか? えーと、つまり寝床はどうするってこ・・・ぁっ」
急にスイレンは改まった顔をしてマコトの事を、少々首を傾げながらじーっと見始める・・・どうやら何かを考えていたようで、数秒してからゆっくり口を開いた。が、先程のようにマコトをじっと見るのではなく、少し目線をずらしながらだったが。
「マコトさん・・・なら問題無いかもなの。 ちょっとね、知らない人と一緒ってどうなのかなーって思ったの」
「えーと・・・え? そのー・・・つまり、立場は同じでも他人だからって事?」
「えぇっとそ、そういうわけじゃなくてっ!! そのぉ・・・察して?」
「・・・う、うん。 でも、今日決まってることは、僕たちお金ないから野宿だね・・・見張りしてるからスイレンさんは寝てて」
「えぇっ・・さ、流石にそこまでしてもらうのも悪いよ・・・・・・アタシも起きてる。 それか・・・森、抜けよ?」
スイレンは腰を上げると進行方向の方へ身体を向け、顔はニコッとした感じでマコトを見ていた。が、蔦に縛られていた足を小刻みに震えてるのと、顔が痛みに多少顔が引きつっているのを見て作り笑顔なのは直ぐに分かったのだが・・・言おうとした時には既に向きを戻して歩き始めようとしていたので諦めた。
そして、急いでスイレンを追いかける時に、なんだか頭に引っかかりがありながら追いかけるマコトであった・・・・・・。
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人を思う力・・・願う気持ち・・・声援・・・そしてその気持ちを受け取る者、渡す者・・・・・・不思議である。なぜ思いが強ければ通常より数倍力と勇気が沸くことに。
そもそも願いとはなんなのか?心とは何なのだろうか?想いとはなのなのか?
考えてそんなに簡単に出るわけがないことなど分かっている。だが、気になることはしょうがないことであり、考える事は面白い事でもある。そして一つだけ言えることがある。
それは、辛い痛みや苦しみも2人なら半分で嬉しさは2倍味わえることである。そしてこれは誰でも一度は経験したことがあるはず。苦しいことを一緒に相談して乗り越える事を・・・。
「準備は完了したか?」
「ええ。いつでも・・・動作可能・・・」
「どうした?別に身体に影響出ることじゃないだろう。 それともアレか?今更になって可哀想などと言うか?」
「そう・・・よね・・・設計者の私たちが分かってることよね」
「ああ、そうだ。こんな事で死ぬわけじゃない。 安全かどうかは何度も確かめただろう?」
「・・・そうね、ごめんなさい。 えーと、メットとアダプターの最終確認をフェネさんお願い。一本でも抜けそうになってないことと、万が一頭を動かされないように固定されてることも確認宜しく」
フェネと呼ばれた者は頷くと、言われた通りに確認をし始める。そして、アダプターの先には約50cm×50cm×50cmの正方形の箱に繋がり、そこからまたモニターやキーボードへと繋がっていた。その確認作業を横目で見ながら、指示を与えた者はそのキーボードの前で何やら打ち込み、相槌を打った者は横からモニターを覗き込んでいた。
「これで・・・よし。サナさん、アダプターとメットの確認終了しました」
「了解、お疲れさま。ザンガ、起動スイッチ・・・お願い」
「ああ・・・・・・えー、コレから実験を開始する。もし・・・いや、ないと思うが、装置が暴走した場合はどんな事よりも実験者の身体を最優先する事。 そして、実験者が目覚めて暴れた場合は宥められれば宥め、無理な場合は催眠術で眠らせること。 最後に実験が通常に終了した場合、マニュアルに従って迎え入れると共に・・・新しい記憶をゆっくり教えること。それは性別の関係上、女であるサナとフェネがその子の面倒を見ること。イイな?」
問いに二人は少し間があってから頷くと、青くて、厚さが殆ど無いマニュアルとは呼べない薄い本を開いて読み始める。数秒後、改めて彼女達の口から分かったと答えたのを聞き・・・
「そうか、じゃあ改めて。 これから記憶の書き換えを開始する。サナ、フェネ、それぞれ対象者のヘルスの確認よろしくな」
「了解」
「了解です。ヘルスの数値、しっかりと目を離さず確認して知らせます」
「ああ、頼んだぞ・・・」