その先の向こうへ First-story
ココはとある閑静な住宅街。そのまたとある場所に雌のエーフィーと雄のシャワーズが住んでいた。2人はつい昨日、恋人同士として結ばれ、今日はその為にある場所に行く日・・・なのだが、
「リイル。いつまで寝てるんだ?」
「あと、もうちょっとー・・・」
「はぁ、もう起きろっ!!」
「ひゃんっ!!?」
リイルは布団のシーツを引っぺがされ、床に転がる。が、今頃珍しい床に布団を敷いて寝てるので、ベットから落ちて怪我をすることはない。
「エルザ!!何するのよ!!? せっかく気持ち良かったのに!!」
「だ、だからとはいえ、もう9時だぞ!!? リイルがピクニック行きたいって言ってたから起こしたのによっ!!」
「9時!!? ごめん!!9時だって全く思ってなくて・・・寝癖直してくるから、そしたら行こっ」
「あいよ・・・早くしてくれよ?」
「はーい」
ドアノブを捻って開きながら言う。リイルが出て行った部屋を一回りしながら、はぁーっとエルザは溜息を吐くと、ぐちゃっとなってた本棚の前へ移動し、寝ながら読んで居たであろう薬剤師のテキストを拾い上げてしまい、番号が違うのも直す。
少し離れて大丈夫なのを確認すると、エルザも部屋を出て行った。
エルザが出た時はもう、リイルは持って行く物の最終確認をしていた。お弁当のサンドイッチと飲み物、レジャーシート、それらを入れることの出来る少し幅広なキャリーバッグ。今日は『星降り丘』にピクニックしに行くことになっている。着く時には昼間なので当然星は見えないが、日が出てる出てない関係無しに人気のスポット。何故って夜は名前通り星が良く見え、昼は街を一望できるからである。
しかも、最近簡単に行けるようになった為、行きにくかった人達も行けるようになったのもあり、連日人が多いのである。
「コレで大丈夫」
「おお、そうか。んじゃ・・・行くか」
「うんっ!! えへへ、楽しみだなぁーデートっ。一体どんなところなんだろうなぁー・・・///」
「おーい。モタモタしてると、バスに乗り込めなくなるぞー」
「は、はやっ!!? チョット待ってよー!!・・・ふふ///」
いつの間にエルザは玄関のところに居て、バックを持ちながらリイルの事を待っていた。膨らましていた期待を一回心にしまい込み、走って玄関を出る。その後は鍵を閉め、確認するだけ。
「よし、問題無いな。バス停までチョット歩くぞ。っと言っても5分くらいだけどな」
「そのくらい全然っ!!楽しみでワクワクが止まらない・・・一体どんなところなんだろー!!」
「楽しみだよな。俺も一回は行って見たかったんだけど、なかなかそんな時間も無かったんだよな・・・あっ、リイル」
「んっ?・・・へぇっ!!?///」
エルザは不意に立ち止まり、リイルの横に立つと・・・ゆっくりとキスをした。急な事にリイルはビックリするが、直ぐにそれを受け入れる。5秒ほどのキスを終えると、リイルの顔は緩み、頬がほんのりと赤くなっていた。
「しっかり言ってなかったが、ありがとな。俺のパートナーになってくれて」
「わ、私こそ。そう思えばエルザと会ってもう一年経っちゃったんだ・・・時間って長いようで早い」
「そうだな。時間は本当にあっという間、今日と言う日はもう2度と来ない・・・1日1日を大切に過ごさないとな。 ところで、もうトラウマ大丈夫なのか?」
「うん、すっかり。もう笑って話せるくらい。 ありがとね。あの時、助けが来なかったら確実に私は死んでた。サイコキネシスで生成された水の球体の中で、溺れ死んでた」
「あの状態で助けないのは、まずおかしい。助けない奴の顔を見たいくらいだ」
「で、でも、1/5の状態で突っ込むのも凄いと思う。幾ら他人で、その容姿だったら・・・」
「まぁ、女と間違えるよな。男でシャワーズはあまり見ないし」
軽く自分の身体を見ながらエルザは答える。
「確か、男って気が付いたのって病院で気が付いたのよね。本当にビックリしちゃった」
「してたな。が、リイルの驚きの声で窓ガラスが割れたのも驚き物だったけどな・・・ガラス代、案外高かったんだからな?」
「それは何度もゴメンって言ってるじゃない・・・でも、そのおかげかな。エルザと一緒に居るようになった」
「そう、ある意味運命・・・だな。退院してから探検隊をやることになって、救助隊をして、苦しいことも一緒に乗り越えて、夢だった卒業まで行けた。リイルが居てこそ試練を乗り越えられた。この感謝は返しきれない。 本当にありがとうな」
「ふふ、こちらこそ。 あっ、バス来ちゃってる!!」
「やべっ!!? リイル走るぞ!!」
「う、うん!!」
今にも発車しそうなバスを目掛け、2人とも"電光石火"を使って走る・・・すると運転手は気が付いて発車しないで停車してくれ、そのおかげでバスに乗り込むことが出来た。中は平日の週始まりだったが、そこまで人は居なかった。
「ふう、大丈夫だったかリイル?」
「ま、全く無問題。寧ろコレでダウンしてたら問題、ね」
「・・・そうか。そこが空いてるから座んな」
「うん、ありがと。 ところでエルザ、何分くらいバスに揺られるの?」
「あー、確か8個の停留所に止まるか通過、区間の距離と速度を考えて・・・やっぱり15分から20分くらいじゃないか?」
「そっか。そういえばなんだけど、私たちギルドを卒業したじゃない? 顔出しと言うか、会いに行けたりしないの? 私たちもう『バッチ』持ってないし」
「あー、そう思えば伝えてなかったな。ほら」
エルザは腰に付けていた小さなバックから『白い卵形に羽が付き、そのど真ん中にダイヤ』がはめられている物を取り出し、リイルに手渡した。
「え、コレって、私たちのバッチだよね? でも、コレは返してたはずじゃ・・・」
「特別に返してもらったんだ。それに、ランクがゴールドからダイヤランクに上がってることも気が付いて欲しかったな」
「えっ!!?な、なんで・・・」
「ほら、卒業する時にマスターと話すから先に帰ってろって言ってただろ? マスターにバッチをどうしても持っていたいって言ったら、「厄介なお尋ね者が居るので、そのお尋ね者を捕まえて来て欲しいのです」っと言われたもんで、新人の知らないチームと捕まえて来たんだ。そのご褒美にバッチをランクアップと持つことを許されて、同時に通行許可書も得た。ただし、マスターの独断だから、俺たちが卒業したギルドしか通用しないみたいだけどな」
「そ、そう。ところで新人って? 新人じゃ足手まといになったんじゃない?」
「いや、新人だがレベルは俺たち以上。しかも『サイコキネシスで他タイプの技を混合させて飛ばすエーフィー・変身をするミズゴロウ』とか、よく分からない謎の2人だった」
「えーと、よく分からないんだけど・・・どう言うこと?」
「聞かれても困る。 ただ2人とも『絆の名の下に』とか『真実の名の下に』とか、なんか言ってたのが一番印象が残ってるが・・・」
「そっか、時間があれば今度会ってみたいかも」
バスの窓から10kmは離れている森、そこのにあるプクリンの形をした建物、『プクリンのギルド』を見ながらリイルは答える。プクリンのギルドは森は森でも、少し小高い崖のような場所に建っている、目だつので、開けた場所ならよう見えるのである。今バスはナルトタウン南側の養老の森近くの高いバス専用道路を走っているので、ビルで隠れなければ見ることが出来る。
「ま、俺もだな。実言うとしっかりお礼も言えてないし」
「そうなんだ。もうちょっと聞きたいんだけど、考古学者って何をするとか聞いた?」
「聞いたが、なんでだ?」
「あまり聞かないでしょ、考古学者なんて」
「あれ、リイル知らないのか?親方が考古学者だということ」
「えっ!!?そうだったの!!? 私、知らなかった・・・」
「俺だって聞いたのその日だ。でも、2人組は驚いていなかった。しかもだ、その2人組はその5日前、今日含めて6日前に来たばかりだそうだ。まぁ、俺たちはギルドに住まないで、自分の家から通ってたから、知らないのは当然かもしれないけどな。 お、そんなこと話してたらもう次だぞリイル」
バスの電光案内に目的地の停留所の『星降り丘』と書かれていた。ココからはバス停を降り、トロリーバスで頂上登って行く。だが、道路は山の表面では無く、山の中にトンネルを掘り、その中を通ることになっている。そして当然と言いたげに到着地点はまだトンネルの中。地上まではちょっとしたスロープを登る感じになっており、人工物がなるべく見えないように作られている徹底ぶりである。
2人は早速降りて伸びをしたり、周りを見渡す。だが周りは気で囲まれているため、何かあるとしたらログハウスくらいである。
「な、なんも無いなココ。やっぱりメインはログハウスの中か」
「ログハウスの中にあるの?なんか凄い」
「トロリーバスは排ガス出さないし、音もモーターの音だけだから問題無いんだろう。因みに中に少しだけ売店があるみたいだぞ」
「へぇー、ちょっと見ていこっかな?でも、バスは大丈夫か先に見てからよね」
「バスは1時間で3本出てる。一応放送で来るって言うらしいから、問題無いと思うけどな」
「なら安心じゃない。エルザ、早く行こっ!!」
「こ、こら!!コッチは荷物背負ってるんだぞ!!? 待ってくれー!!」
走れるようにお腹のバンドを止め、急いでリイルの事を追いかける。だが、言葉とは逆にエルザは少し笑っていたのであった・・・・・・・・・