込められた想い
ー前書きー
ども、いきなり謝罪から入ります。前回お正月ボケでアーシアはリファルの背中に乗せていた筈なのに、何故か次のシーンで台風の中に居るになっていました。それを訂正し、今はシルクがアーシアをサイコキネシスで浮かせて運んでいるに変更します。
失礼致しました...
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Side シルク
竜巻によってバラ撒かれた物を掻き分けながら、私とウォルタ君とマートル君にスイレンちゃんは長い廊下を移動していく。途中何度か吹き飛ばされそうになったりしたけれど、何とかみんな持ちこたえている。だけど私はアーシアちゃんとリトちゃんをサイコキネシスで浮かせた状態で逃げているから、体力的にかなり辛くて、どこまで体力と集中力が持つか分からない...。
それ以前に、せっかくみんなで特訓して、強くなって、やっとここまで来たのに逃げている私達はどうなのかしら...。私達の世界と、アーシアちゃん達の世界の危機と言う重荷をリファルさんだけに託してしまっている。しかも逃げろと鋭く言われただけで.........うん、やっぱり。やっぱり戻らなきゃ。
でも、この状況で戻るのは自滅行為。っとなるとやっぱり、方法はコレしか...。
「...みんな、よく聞いて。やっぱり私はリファルさんを助けに行くわ」
「っとと、それならとうぜんボクもいくよ! リファルお兄ちゃんもアーシアお姉ちゃんも助けたいもんっ!」
「僕だってそうだよ! それに、世界が大変な事になるって言うのに、逃げるだなんてっ!」
「アタシもナノ! リファルさんを助けたい!」
「ダメよ、危険すぎる。危ない事は大人に任せて。何よりスイレンちゃんとマートル君、二人は何か起きてからじゃ遅いの」
「そのためにボクたちリファルお兄ちゃんに強くしてもらったんだよ! いまやらなきゃどうするの!?」
「そうだよ! それに僕な...」
「私だって皆と戦いたいわよっ!! でも...お願い、今回ばかりは信じて。前はそう言って生死を彷徨う怪我を負った...だけど、今回はその比じゃないの。 それにダークライは何をするか分からない。分からないのに複数人で行って、アーシアちゃんみたいに操られて、大切な仲間同士で殺し合いなんかしたくないのっ!!」
「シルク...」
「...ごめんなさい。でも分かってウォルタ君、スイレンちゃんとマートル君も」
「分かる訳が無いよ! 僕たち仲間だよね!? それに、あの事が起きてからシルクは変だよ!? 前は自分の事も大事にしてたし、もちろん仲間だって大切にしてた。けど、今のシルクは仲間が良ければ、自分の事より仲間の助けになれればで、無理してるの知ってるんだからね!? ねぇ、もっと僕達を頼ってよ!! 絆を大切にするシルクはどこ行ったのっ!?」
「.........」
「ねぇ、ねぇシルクってばっ!!」
「...ごめんなさい、今回ばかりは分かって。ウォルタ君、ライトさんに連絡して。あと、リトちゃんとアーシアちゃんを...任せたわ」
後ろから聞こえる声に心を痛めながら、私はリファルさんを追い掛けて竜巻の中へ駆け込んだ。中はとても風が強く、少し踏ん張りが足らなければ簡単に吹き飛んでしまう程の強さ...。
それでもめげずに、一歩ずつ着実に中心部へと向かって歩いて行く...。中心部は目と言ってそこだけは風も吹かず、台風の場合なら上を見れば雲一つも無い綺麗な空が見える。だから、もしリファルさんやスガマサさんが居るとしたらそこしかあり得ない!
「くっ.........見えって、いけない!」
暴風域を抜ける手前で見えたのは、攻撃が弾かれて、仰け反っているリファルさんの姿...私は飛ばされないように耐えながらシャドーボールを放って援護をする。その後に抜けた先では私の想定外の事が起きていた。それはアーシアちゃんが持っていた短剣で刺された筈のスガマサさんが立ち上がってリファルさんと対峙している事...こんな短時間にいったい何が?
けど、そんな事よりも!
「シャドーボール! サイコキネシス!!」
乗り移ったであろうスガマサさん、ダークライに向けてシャドーボールを数発放って、放ったシャドーボールをサイコキネシスでラジコンのように操って攻撃。この技はレイエルがやっていた技を見よう見まねで再現した技...。レイエルは七発以上を操っていたけれど、私には三つ同時に操るのが限界みたい。他に放っていたシャドーボールは暴風に巻き込まれて事前消滅...。
でも、優先したかったリファルさんの安全の確保は出来た。いま私は相手を睨んでいるけれど、横並びのリファルさんから睨みを何度も感じていると、
「てめぇなんで来た。他の奴らは」
怒鳴りはしないけれど、震え声の低いトーンで質問され、私は少し怯んでしまった。でもその威圧に負けじと私は口を開いた。
「...逃がしたわ。来た理由はリファルさん、スガマサさんを助ける為。一人じゃ重荷だろうし、それに連れ帰らなきゃフィリアさんに顔合わせ出来ないわ」
「ほー、気が強いねぇ? 流石はシュエリが呼んだ考古学者とか名乗るだけはある。まぁ噂に聞くとお前、回復が出来ないらしいなぁ?」
「わ、わたしは一言もそんな事を言った事は無いわよ」
「...シルク、もう一度だけ言うが、俺の近くから去れ。お前の命の保証まで出来ん」
「何を言ってんのよ。それに、中途半端な気持ちじゃ来てないわ。私は貴方を止めて、私達の世界とアーシアちゃん達を誰も死なさずに送り返す事よ」
「お前が私を止めるか、笑わせてくれる。例え人数で不利になったとしても私の勝ちには変わらん。 それにお前が傷ついた場合...リファルはどうするかねぇ?」
「...っ!?」
「シ、シルク!?」
「おっと動くなよ? 動いたらコイツの首が飛ぶぞ?」
「て、てめぇ!!」
...早すぎる、全く動けなかった。しかも、私の自由は喉元に当たる短剣で奪われ、首には手が回されて動けない...。しかもダークライは正当に戦う気なんて無くて、時間を稼がれば思い通りになってしまう...。ウォルタくんの言う通り、私はいったい何やってるのかしら。一番足を引っ張ってるのって、私じゃない...。
「...ふん、やはり動かないか。ククク、仲間思いでこの世界を壊れるのは更にどんな気持ちだろうなぁ?」
「くっそ...」
「.........」
「シルク、てめぇ大人しいじゃねぇか。くくく、諦めってやつか?」
...私のせいでリファルさんが手出しが出来ない。つまりこの状況が続くならば時間切れは確実。それにしても、さっきより急激に息が苦しくなってきたわね...っとなると、もう時間は残されていないかもしれない。
そうなると手段はもう一つ...
『...リファルさん、聞こえますか』
「っ!?」
「っ? どうした。ククク、今頃に残さられた時間とやらに気が付いたか?」
『リファルさん、要件だけ言うわね。リファルさん...私を構わず攻撃して。大丈夫よ、私はコイツなんかの攻撃じゃ倒れる気は無いわ...。 こんなのも変だけど、お願い。私達の世界とアーシアちゃん達の世界を...頼んだわ』
私はそうテレパシーで伝え、身体の奥底でエネルギーを密かに溜め始めた。こんなに密着しているこの状況を逆に利用して、捉えたままにしておけば...。リファルさんの命中能力の高さと、明らかとも言える戦闘経験のノウハウ、そして私が捕らえられている状態でダークライの余裕、それらのピースが上手くハマってくれれば必ずリファルさんは攻撃を当ててくれるって信じてる。私自身はどうなるか分からないけれど...私の命で私達の未来の世界とアーシアちゃん達の世界を救えるなら、この命を捧げても良いわ。
「ん...おい、血迷ったか?」
「...ああそうだ。オレはこの世界と奴らの世界を、お前を倒して救わなきゃならん。覚悟しろよ、ダークライ」
「それ以上前に出てみろ。コイツがどうなっていいのか?」
「...こいつは、シルクは、お前なんかの攻撃じゃくたばらねぇ。行くぞっ!!」
「なっ!? 身体が...このクソ女!!」
私はありったけの力でサイコキネシスでダークライを押さえ付ける。それと同時に、耳に付けていたフィリアさんから貰った青のひし形のイヤリングから不思議な力を感じて、私はそれを答えるようにサイコキネシスに力を入れた。いつもとは違う間隔...まるでフィリアさんから手助けを受けているような......。
「くそっ! はなせっ! 離せぇ!!」
「...ジ・エンドだ。シャ、シャドーボール! リーフブレード!!」
リファルさんは顔が引きつつながら、種族上は使える筈の無いシャドーボールを放って、直ぐにそれをリーフブレードの剣先で触れた。途端に緑色のブレードが真っ黒に染まって、そのまま私のところへと突っ込んでくる。私は逃げようとするダークライへコレでもかとサイコキネシスへと力を叩き込むと、急に息が苦しくなって、視界がぼやけ始めた。
まだよ...まだここで倒れる訳は......倒れるわけには行かないんだからっ!!
「覚悟しろ! ...ダ、ダークブレード!!」
距離、あと5メートル...4メートル...3メートル...2メートル......。