異国の技 - 前編
ー前書きー
前回も含めて色々と会話がリンクしてきます。途中自分も忘れ掛かっている出来事もあって、何度も読み返して、その場面を頭の中で再構築するという。
いやー、自分が執筆したものを改めて読むと色々と四苦八苦している場面がありますねぇ...。ちょっと振り返りというか、そんな事をしながら今回は執筆しています。
ん、なんか話しが真面目だって?そんな事もあるよ?
ーーーーー
Side スガマサ
「サイコキネシス! シャドーボール!!」
「...うぉっ!?」
「きゃあ!?」
俺が扉を開け放って合図をした直後、シルクは浮かせていた複数の種の形をした爆弾を高速で投げ込み、直ぐに紫色の球体を投げ込んだ種へと当てた。すると当ててから瞬きする瞬間も無く凄い風圧が俺達を遅い、何人かは壁に吹き飛ばされて目を回していた。俺はふっ飛ばされなかったが、娘がふっ飛ばされる前に腕を掴んで軽く腕が抜ける所だった...。
にしても威力強すぎるだろ...確かに最大と聞かれた時に頷いたが、普通ココまでの威力など想定していない。それより風圧に吹っ飛んだ鉄やらステンレスやら分からんが、とにかく硬くて頑丈なドアに誰も当たらなかったのが救いどころか。当たっていたら骨など簡単に砕けるぞコレ。
「いったぁ...こんな爆風力なんていたた、出るはずが無かったのに...おかしいわね......。 みんな、大丈夫?」
「ちょっと痛むけど...問題ないナノ」
「ビックリしたけど、僕も大丈夫だよー」
「ぼくもおっけー! どーんとした後に、びゅーんってふっ飛ばされたけどっ!」
「いってぇ...完全に受け身失敗だこれ...。 と、ところで中はどうなってる?」
「離れててこの風圧ならかなり中が凄い事になってそうですけど...えいっ! うーん、やっぱりグチャグチャになってますね。それにこの部屋、なんだか物が多い印象と言いますか、書個室でも無いのに本が凄く多いのですよね。あとは天井は高いし、中も広めになってます。えーと、他に気になる事は.........っ!?」
アーシアはリファルの問に答える為、俺達の上をを軽々飛び越えた後に人間のように立ち上がって、壁に張り付いて中を覗き込んだ。その後に中の状況を教えてくれたのは良いのだが...本が多いの一言に俺は引っかかった。確か前にこの部屋へ来た時には本など数えるほどしか無かったはず。物も多いとも言っていたが、そんな事も無く開けていた寂しい空間だったのを覚えている。まさか短い期間に模様替えでもしたのか?
まあ、一番に早いのは自分の目で確かめる事だな。取り敢えず俺もアーシアの元へ...
「アーシア。俺も見るからちょっと退いてくれ」
「.........」
「ん? おい、アーシア聞こえてるか?」
「...はい、何でしょう」
「反応が無かったから何か見つけたのかと思ってな。それで何か見つけたのか?」
「.........いえ、特に何も。少し中を見てきます」
「ちょ、ちょっと待て! ...はぁ、みんな動けるか?」
「行けるぞ」
「コッチもよ。まだ衝撃の余韻が少しだけ残ってるけど...あ、痛みがあるなら言ってくれれば治すわよ?」
「アタシは大丈夫。けど...アーちゃんが何か変じゃない?」
「うん、なんかそれはボク思ったよ。さっきの時よりなんか...うーん、言い方が難しいけどサバサバしてると言うか、素っ気ない感じを感じたかな。みんなはどう思った?」
「...わたしも同じ感覚よ。それに突入前もなにか考えていたようだったし、シュエリさんの事を話してから様子が変なような気がする」
「うん、ぼくもそう思ったよ? それに、アーシアお姉ちゃん怖い顔してたもん...」
「...ねえ、だとしたらアーシアさんを一人にしちゃってる訳だけど、やばくない? アタシちょっと行って来る!」
「ちょ、ちょっとリトちゃん!?」
「おいおいバラバラとか勘弁してくれよ...。 はぁ...ともかく行くぞ!」
シルクはリトの名を呼んですぐに後を追いかけ、その後ろに俺とスイレン、ウォルタ、リファル、マートルと続く。にしてもこんなにバラバラで不安しかない。なんと言うか出しゃばる奴が多い。どんな仕組みでココに来れたかは知らんが、今はここが俺達が生きている世界で、この世界で行動する身体だ。もしココの世界で何かあった場合現実の身体がどうなるなど、全く知ったこっちゃない。そもそもに意識だけ来てるのか、身体ごと来て形が変わったのかすら情報が一つも無い。何度聞いたとしても答えなどは帰ってこなかった。
因みに何度もメインサーバー目掛けて検索掛けようとしても、やはり上位権限が無ければアクセスが不可能。ネットワークの主導権は完全に上部しか操れないし、閲覧しか出来ない。上層部が本当の黒幕というわけだ。噂によるとライトに対して抹消命令を下したのも上層部らしい。一番の犠牲者はグラエナのギラファだろうがな...。まあ、それは置いておくとしてあの小娘だ...アイツはどこ行きやがった。目を離してからほんの数秒しか経っていないのにも関わらずだ。
この世界では、つまり少しのミスで生命に瀕する怪我を負った場合どうなるか分からない。同じように人間の奴が居たら良かったが、確認出来ているのは俺とリッカ、それと導かれし者達とされたアーシア、俺の娘ことスイレン、マコト、リト、マートル、人間で救う側として来た筈だったガーディのライア、あと一人程は何故か女でロコンしかデータが無いのを含めて合計七人。
おかしい...確か掻き集めたデータでは七人の他に何名か巻き込まれていた履歴が残っていた筈だ。何人かは分からなかったが、確実に数名はログに残っていた。だとしたらその者達は何処へ...
「...ぎゃぁぁぁぁああっ!!??」
「っ!? リトちゃんの声よ!! 何処!? 何処なのリトちゃん!!」
急に悲鳴が聞こえて、俺の意識は現実に戻された。しかもその悲鳴をトリガーに、忘れもしない強い悪寒が俺の脚の動きを鈍らせた。コレはまさか...お願いだ、この予感が違っていてくれ......。
「リトちゃっ...!! アーシアちゃん!!?」
「...あはっ、あはははは.........」
「っ!? うそ...アーシアちゃん...まさかそのナイフ......しかもその血...誰...誰なのよ!?」
「.........っ!」
「シルク避けろ!! 間に合えリーフブレードっ!!」
ガキンっ!!
「...リ、リファルさん!?」
「ぐぉぉぉぉぉぉ重めぇぇぇ...。 ぜ、全員合図出した後に倒れたリト連れて離れろ! ...でいやぁ! 今だ!!」
「お、おう!!」
くそ、悪い予感的中かよっ...!!
ひとまず俺はリファルがアーシアが持つ短剣を弾き、怯んだところの合図を聞き逃さずリトを回収、攻撃をギリギリ回避して戻る。にしても最初はコイツからは全く気配が無かった筈だが、多分リトを刺してから急激に悪寒を感じた...つまり、アイツの心の中にダークライが潜り込んで、この時を待ち浴びていたわけか...厄介な事をしやがる!
「そいつにはダークライが入り込んでいる! 気を抜いたらコイツのように殺られるぞ!!」
「ぬ、抜く気なんてねぇ!! こちとら防ぐだけで精一杯だっつーの!! くそ、どっからこんな力がっ!?」
「ちっ...スイレンはそのままリトの回復を! シルクはヤツに対してサイコキネシス使えるか!?」
「う、動きを鈍らせるので精一杯よ!」
「それで充分だ! あとは...ん?」
「あ、Gギアが鳴ってる! 代わりに僕が出るよ! ...もしもし?」
『あれ、そこ声はウォルタ...いや、そんな事よりリトのヘルスが危険値になってるんだけど何かあったの!?』
「...リトさんは、心を飲まれたアーシアさんにナイフで......」
『や、やっぱり! 悪い予感が当たっちゃったよ...』
「え、やっぱりってどういう事!?」
『それが...フィリアに、フィリアの中にダークライが混じり込んでいたんだ。今は気絶していてリーフが面倒を見ているけれど、倒れる時に黒い靄なのが凄い速さでフィリアから飛び出で、君達が居る方向に今さっき飛んでったんだ。その事を伝えようと通話してもみんな繋がらないし、繋がったと思ったら......』
「後悔は後だよ! とにかく今は僕達、どうすれば良いの!?」
『...ナイフ。ナイフをアーシアから奪えればひとまずどうにかなるかもしれない。 よく聞いて、いまアーシアが持っているナイフはシュエリと共に埋めた筈のナイフなんだ。理由として墓が掘り起こしてみると、偽物のナイフが入っているとさっき連絡が入ってきたんだ...』
「に、偽物って...じゃ、いまアーシアさんが持つあのナイフって...」
『そう、そのナイフ...いや、短剣が異国の技を使う為の道具。そしてダークライの力を半分以上引き裂いただろう魂が入っている器だよ。何故アーシアがオリジナルを持っているのかは分からないけれど、手放す事が出来ればダークライからの侵食を止める事が出来る筈...でも、絶対とは言い切れない』
「じゃ、じゃあどうやって...」
『...最悪のケースを考えておいたほうが良いという話だよ。それと、耳に入れておいて欲しい事として、君達が居る場所を中心として巨大な低気圧の塊が生成と、猛烈な突風、低気圧を中心とした上昇気流が観測されているんだ。コレの発生により気圧と温度の急速低下を確認していて、もしこのまま下がり続けるとなると...生態系が破壊されて取替えしの付かない事になる!』
「...どちらにせよ、早くこの状況を打破しないといけない訳ね」
『うん。無茶なことを言っているのは承知だけど...そこに居るみんなでアーシア、いや...ダークライを押さえ込むんだ! 僕達も向かいたかったけれど、さっきも言った通り低気圧の塊のせいで猛烈な風が吹いていて不可能なんだ。この世界を救えるのは今、君たちだけだよ! 大したアドバイスも出来なかったけれど...任せたよ!!』
「...みんな、今の話は聞いていたわよね?」
通信を切った後、シルクの問に俺を含め全員が頷く。少し遠いが、リファルが奮闘している声が聞こえる...防ぐだけで精一杯と言っていたが、どうやらそのよう。それに少し無駄話がしすぎだ、早く行かなければ。
「...作戦として、まず私が抑え無しの全力を込めたシャドーボールを放つ。当たった場合はリファルに多分余裕が出て距離を取るだろうから、マートル君とウォルタ君はその援護を頼んだわ」
「じゃあアタシはリトさんの治療を続けてるナノ」
「ええ、任せたわよ。スガマサさんは私のバックアップで動いてもらっても良いですか?」
「ああ、構わない」
「助かるわ。それじゃ...行くわよ!」
ー後書きー
今回、前回と合わせて色々と過去の事にリンクしているけれど、特にシュエリさんの事が強く絡んでいます。一部は番外編も混じってたりもしますけど。後は詳しく語られなかった事がちょこちょこ交じるようになって、集結してきた感があります。
次回は謎に包まれていた〈異国の技〉について、ダークライについてが判明する...?