黒き波動者(お知らせ付き)
ー前書きー
戦闘描写頑張ってみました。やはり苦手苦手言うなら執筆回数増やして慣れるなり、他の方を読みに行ったりして、技術を磨かないとね!
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Side アーシア
アブソルがスイちゃんに飛びつくのはあっという間だった。全員が取り囲んでいたから近かったのもあるけれど、全員反応が逆に遅れてしまった。途端に小さな悲鳴と倒れ込む姿...守れなかっ......
「...やっぱり、そうすると思ってたよ。ホントに切られたらどうしようかと思ったけど......」
「...へ? スイちゃん...?」
確実にやられた、そう思った矢先にスイちゃんの声が聞こえて私は拍子抜けした。まさかと思い、スイちゃんが見えるように少し横に移動すると、怪我なく、ただ腰が抜けたように倒れていた。でも、どうして...
「...お前、俺を試したのか? 斬り付けないと思ったから避けなかったのか...?」
「うん、そんな気がしたから。だからアタシは避けなかったの」
「...ふっ、やっぱりお前も、お前らもどうかしてる。 行けよ...俺の気が変わる前には役目の前から消えやがれ。それとも俺の無様な死に様でも見てぇのか?」
「見たくない...と言いましたら嘘になりますけど、姿違えどやはり同じ人間だった同士。そしてスイちゃんを傷付けないでくれた...だから何も言わずに消えたりはしません」
「...ふんっ、じゃあコレをくれてやる。ありがてぇと思え」
懐からステック上の取り出し、それを空中へと放り投げた。私は直ぐに垂直に飛び上がってそれをキャッチし、後ろ足だけで着地した。最初は何かと思ったけど、見てみるとなんなのかはすぐに判断できた。それはもとの世界にもあったUSBメモリー...少し形は違うけれど、透けている本体から基盤が見えていたから、私はそう判断した。
でも、中身には一体何が...
「えと、コレは?」
「まあ、物については説明不要だろう。肝心なのは中身だ。 その中には俺がドリームメイカーズの事を纏め上げたレポートと日々のレポートが入っている。中にはお前たちが知り得なかった情報も混じってげほっ!げほっ! ...くそ、急に回りだしたか......」
「な、なぜこんなものを私に?」
「...俺はもう捨てられた。だがせっかく調べた情報が何も役に立たないじゃ、今までの苦労が無駄...はぁ、はぁ......無駄になる。それにお前ら調べられたやげほっ!げほっ!...や、知ってたでも数がねぇだろう? そいつにはそれらを超える悪事が詰まってる。そいつを持って...はぁ...はぁ......もって...俺の目の前から消えろ...。 それとヤツは...この先のN02通路に...居るはずだ...俺からは...以上だ......。 くっ...そ、息が苦しく......」
「...アーちゃんリファルさんレイエルさん。二人はシルクさん達のとこ行って。アタシ達は少ししたら行くから」
「スイちゃん? 一体何を言って...」
何を言ってるのと言いかけたけれど、スイちゃんの顔を見て私は言うことをやめた。よく分からないけれど、ここは任せてと言われているような気がしたから。
でも一体何をするのだろう...予測は出来ないけれど、一つ言える事と言える事として、これ以上は攻撃はしないし、してこないだろうという事。それに早く行かないと、このアブソルさんが言ったことが本当ならシルクさん達が危険かもしれない。なら...
「...うん、分かった。マコトさん、スイちゃんの事を頼みました」
「アーシアちゃん!?」
「お、おいアーシア!」
「...言い争うよりも、私達はシルクさん達の元へ急いだ方が良いかと思います。私達なら電光石火で飛ばすことが出来ます」
「うん、それもあるから言ったの。だから、シルクさん達の事は...頼んだよ?」
「...はあ、分かった。すぐに来いよ! 電光石火!!」
「来なかったら絶対に許さないわよ!!」
「必ず来てね...電光石火!!」
私はそう言い残してN02通路を目指した。今の場所はS04だから、ほぼ通路を直進すれば到着すれば到着できる筈。少し厄介なのは真っ直ぐすぎる事で、マコトさんのように飛び出したアブソルさんに切り付けられる場合や、影に隠れて後ろから狙う事だって...
「...い。おい、もう少し飛ばせるか?」
「は、はい?」
「こっちも行けるわ」
「なら...いくぞ!!」
「そのくらいじゃ追い抜かすわよ!!」
「えっ!」
不意に声が入って、私は意識を戻した。どうやらこれ以上に速度が出せるかと言う質問だったらしく、私はぶっきらぼうに返してしまった。結果的に了承したと取られたようで、あっという間に二人と距離が離れた。
出鼻を挫かれたけれど、スピードなら負けてられない。私はもっと強く地を蹴って、風の抵抗を少しでも低くする為に姿勢を低くし、足を更に早く動かす。これ以上早くしたら足が絡まって転んでしまうのではないかと思う程に。速く、もっと速く。でも勝負は飛ばした結果、意外と早く結果が付いた。それはシルクさん達が見えたから。けれど状況は良いものとは全く言えなかった...。
何故ならシルクさんとウォルタさんは肩で怪我が無い代わりに大きく息をしていたし、リトさんはフラフラしているし、マートル君に至っては壁に持たれて倒れていたから。
けれど気になる事が一つ。それはピカチュウが戦闘に混じっている事で、初めはライト参加と思ったけれど普通に電気を帯びていたし、そもそもに身体のフォルムと言うか、雰囲気的に何か違う感じがしていたから。更に特徴的な眼鏡と真ん中から折れた片耳の特徴が無くて、もっと言うと尻尾の先が真っ直ぐではなくて丸みを帯びている辺り"女性の人"と分かって違う人と判断した。
そんな感じに片隅に考えながら、私は少しだけスピードを落として尻尾の方へと意識を流し混むと...
「...クイックインパクト!!」
その助走のまま、シルクさん達が戦っている相手...ルカリオへと走り込んで、少々突進混じりに無理矢理に身体を捻って尻尾を打ち込む。すると確実な手応えと、相手の唸り声が私の耳に入ったけれど...その後は無理な姿勢で攻撃したのと、いつもの倍のスピードで走り込んだ事もあって、盛大に私は床を転がった。やっぱりちょっと無理があったかな...全身がヒリヒリする......。
「いたた...ちょっと無理しすぎた......って、あれ!?」
「アタイをそんな簡単に倒せると思ったわけ?」
「で、でも確実に当たった感覚が...」
「アンタが当てたのは遠くまで吹っ飛んだアタイのボーンクラッシャー! ったく、反射的に守ったせいか腕やられたなコレ...いたぁ......」
話を聞いて私は軽くあたりを見渡すと、私が吹っ飛んだ方向の更に奥の方に青白く光る、まるでヌンチャクみたいなのが落ちていた。けれど、そんな事よりも私はルカリオの口調と声質に疑問を抱いた。口調は男に近いけれど、声室だけは明らかに女性らしい声...まさかこの人。
「...ま、まさか女の人?」
「ああ、そうだよ悪いか」
「いえ...別に......」
〈...そちらは無事で良かったです! って、二人の姿が見えないけど......〉
「あの二人ならアブソルのところに居ます」
「アブソル? あー、アイツか。ココにアンタらが居るという事は、あいつ失敗した訳か。 だがアタイはアイツとは違う。ここでアンタらの息の根を確実に、止めてやるわ!!」
「っ!? ちょ! ひゃ!? あぶっ!?」
「あーもう! サイコキネシス!!」
「ま、また! サイコキネシス!! 凝縮...発散!!」
りょ、両手から同時に数発の波動弾!?ちょっと待ってこの量はおかしい!!
皆んなも危ないながら全部避けていていたけれど、途中でレイエルさんがサイコキネシスで挙動を変えて、その後シルクさんもサイコキネシスを使うと、一つの塊にさせて破裂させた。無数の波動弾がルカリオを狙うけど、彼女は柱を蹴って反対側に移動して避けた。だけど流石に避け切れなくて何弾か被弾したのが見えた。
「ひ、久しぶりにヒヤッとしたわ...。 っというか、さっきから人が放った技を使うのやめてほしんだけど」
「使える物のは使う、でしょレイエル?」
「その通りよ。例えば自然にあるもの、土、石、葉から敵や仲間が放った特殊技まで、使えるものは使えるに決まってるし、手数が増えるわけだし。どう言われようがそのつもりよ」
「私もそんな感じよ。それに、使わずして仲間の誰かが怪我をするなら躊躇なんかしないわ」
「はぁ...ホントにアンタらはムカつく。仲間、仲間、仲間、そんなに大事かい。 仮にその仲間に裏切られたらどうなるんだい? はいそうですかと言えんのかい? アタイにはそんなことは無理。裏切った奴らを後悔させてやるわ。それと同じで、和気藹々としてるところを見るとぶっ壊したくなる」
「...お前も中々に初回印象最悪だな。っというか、この人数を一人で相手出来るのか?」
「八方塞がりの方がアタイ的には都合が良い。危機感で波動を強く出来るからな! だが...コレを食らいな!!」
彼女は懐から何かを取り出すと、それを空に放り投げた。この場所は先程戦っていた場所より天井が高く、見た目ではフロア一つ分吹き抜けになっている。しかもココは通路と言うより開けた場所で少し広い。しかも奥の方に机と椅子が置いてあるのを見るに、ここはちょっとした休憩スペースか多目的ホールなのではと私は予想していた。
話を戻して...放り投げた物体は不思議玉のような形状をしているけれど、色が青ではなく黄色以外に変わりがない。それに投げたからってルカリオの彼女は何もせず、ただ目を瞑って静かに立ち尽くしていた。最初と違うのは垂れていた四つの何かが垂直になって細かに震えている事...確かあの時は波動を使って周りを感じ取って見ているって聞いた事がある。でも、本当にそんな事が出来るのは一握りと言うか、本当に努力した人でないと無理だとか。普通なら人から放たれる波動の乱れが読み取れ、仲間の波動を読み取れる...それ位らしい。
...そんな事よりも、真上に投げた球体が減速して落ちそ...あれ、さっきまであんなに濃い黄色してたっけ? 何かどんどん赤くなっていくような......
「そいつに精神統一をさせるなっ!! 取り返しの付かない事になるぞ!!」
「へっ? ...って、さっきのアブソル!?」
急な怒鳴り声に振り返ると、そこには毒を打たれた筈のアブソルが駆け寄っていた。そして、何より驚いたのはアブソルの上にはマコトさんが乗っていて、その横をスイちゃんが平然と走っていた。何がなんだか分からないけれど、アブソルが言うアレが彼女流の精神統一で、やらせるなと言うなら止めなきゃ!!
「電光石火!!」
すぐに私は電光石火を使って最初のように突っ込む。だけど、攻撃を当てる瞬間におぞましい殺気を感じて、怯んでしまった。だけどその怯みが動きを惑わせ、またまた盛大にすっ転んだ。その後、直ぐにレイエルさんやシルクさんが球体に対してシャドーボールを放ったけれど、全く当たらなかった。いや、当たらなかったじゃない、当てられなかったが正しい。何故なら、放たれたシャドーボールはその球体を避けるように目の前でランダムに吹っ飛んでしまうから。
それを見てウォルタ君はミズゴロウに変身して水鉄砲を放つと、敵だったアブソルが走り込んで斬り掛かった。でも簡単に避けられてしまう。因みに上に乗っていたマコトさんは斬り掛かる瞬間に跳び下りて、だいたいウォルタ君の攻撃と同時くらいにハイドロポンプを球体へと放って、またアブソルの上に着地した。
やはり...攻撃は球体やルカリオにも当てられない。そう時間が経っていく内に、最初はきれいな黄色をしていた球体は真っ赤を超えて、どんどん黒みを増していく。それに比例してルカリオに青じゃなくて赤いオーラが包み込んでいく...。
見る限りにもう時間が残されていないのは一目同然。だけど球体に攻撃しても駄目、ならばと近接しても駄目な相手に一体どうすれば...
「...くそ、間に合わねぇ。しょうがないから単刀直入に言うぞ。 俺は結局無理だっだが...アイツ、リッカはお前たちと同じ様に技を使える人間だ。更にリッカは異国の技まで会得しやがった。それがあの精神統一。 あの状態が終われば最後、動きは捨て身を捨てた完全な特攻になる。動きも洒落にならないほど早く、コノ中で早い奴だろうが敵わないだろう。俺は一度だけ手合わせいた事があるが...見事に負けた。呆気ない程にな」
「じゃ、じゃあどうすれば...。 まさか、呆気なくやられるしか方法が無いとか言いませんよね...?」
「んー...それしか無い。ちなみに強さだが、多分ボスと同程度か少し下辺りだ。コイツが倒せないならボスは諦めな。倒せるなら案内してやる。 因みに俺は無理だと分かってるからこれ以上の追撃はしねぇぞ」
〈...いえ、アレも心は違えどポケモンとして新たな生を受けた者。何かしら弱点がある筈。 アブソルさん、後どれだけ時間があるとお考えでしょうか?〉
「一分も無いっと言うかお前、一体何者んだ? ライトが性代わりしたとか言わねぇよな?」
〈一分ですか、それだけあれば充分です。 さてと......行きます〉
「...なっ!? お、おま...その...え!?」