優しさ - 前編
ー前書きー
戦闘が三割に残り会話と言うか心の声だったりします。そろそろ戦闘シーンまだー?と言われそうでアレですが、頑張るから待ってね。
クオリティはお察しだけど...うぅ...(汗)
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Side スイレン
「ほーう、ゴーストタイプがテレポートと来たか。こんな現れ方じゃバケモンそのまんまじゃねぇか。それにしても、お前の仲間は捻くれもんが多くて殺りがいあるなぁ? そこに転がってる水色のやつはまだ息してやがるし、そばの野郎は怪我に対してアロマテラピー使ってやがるし。しかもリファルが呆気なく怒りやら憎しみやらで俺に返り討ち...ふ、バカみてぇ」
...なんなのコイツ、完全に喧嘩売ってる。普通だったらアタシも飛び出て蹴り飛ばしたい...けれど、今はマコトさんの回復をさせないと...。確かに、アロマテラピーは回復技じゃないけど、アタシが使うアロマテラピーには"自然治癒力の活性化"があって、シルクさんが渡してくれた回復薬と合わせるとかなりの回復力を持ってる。だから五分あれば動けるくらいは回復できる筈。
「...言いたいのはそれだけです?」
「ほう? 何だ聞き足りなかったか?」
「いえ、充分です...アナタをココまで殺りたいと分かっただけでも...ね......?」
「え...アーちゃん?」
アタシは少し身体が縮こまるのを感じた。ココまでアーちゃんが睨み怒った顔と、凍り付くような感覚を感じたのは初めてだった。それに、アーちゃんはシャドーボールを一つ生成したけれど、その全てがいつもの紫では無く、黒みを帯びでいた。黒みというより、真っ黒に近いかもしれない...。
それに、確かにあんなことを言われて起こる感情は理解できる、ボクだってそうだから...。けれどそこまで、まるで鬼の形相のようにまで怒るかと聞かれると......ボクはそこまで怒りがこみ上げない.........。
「...レイエルさん」
「な、なによ?」
「...コイツ...許さない......」
「同感だけど......アーシアちゃん...その姿はまるで...」
「まさに"自我を失いし者"そっくりとでも言いたいのかねぇ?」
た、確かに似ている気がす...いやいやいや、そもそも自我を失った者は狭間に吸い込まれて、言葉通り自我を失った者に付けられる異名のはず...。アーちゃんは一度も巻き込まれたことも無いし、さっきまでは普通だったのに......。
「憎しみに心を囚われて、自我を失いかけて...まさにそのまんまじゃねぇーか? 言うなら獣そのまんまか」
「...まれ......」
「おうおう、そんなに憎いなら俺を殺したらどうだ? じゃねぇとお前の糞みたいな野郎ども...あはは、殺しちまうぞ?」
「...だ...れ......だまれだまれ黙れっ!!」
「アーシアちゃん落ち着いて!!」
「アーちゃん...?」
おかしい...明らかにアーちゃんの様子がおかしい......。でも、なんで?どうして...?
これじゃホントに...
「はは、いい感じに飲まれて来たところで少し教えてやる。お前ら、まさか時空の亀裂に巻き込まれるから"自我を失いし者になる"とでも思ってないか?」
「ど、どういう...ことだ...?」
「ほー。マスターランクであるリライトのリーダー様でも知らないのか。なら冥土のお土産に教えてやるよ。 自我を失いし者はな、例え時空の亀裂に巻き込まれなくても、強い憎しみがあれば"誰でもなっちまう可能性"があんだよ。特にコイツは仲間に対して凄い執着と言うか、うまく言えねぇがそんな感情が凄まじく強ぇみたいだな」
「じゃ、じゃあ...アナタはそうなるのを分かっててやったの...?」
「はぁ? そんな身を危険にする事をやるかよ...と言いたいところだったが、ここまでスンナリ成りかけちまうと見たくなるもんだろ? はは、自分から死を作るなんて、マジでイカレタ実験だとは思わねぇか?」
「実...験? アンタ、人を一体なんだと思ってるのよ!!」
「...えっと、言っていいのか? 次に言ったらコイツ、爆発するぞ? 今は微かに残る自我で、飲まれそうな感情を押さえ込んでいるらしい。だが次に俺が言うか、滑らせるかすると完全に飲まれるぞ? そして飲まれ場合...俺は確実に命は無いだろう。その辺の理由なら調べただろうし、全員で情報交換しているだろ?」
...聞きたい事は分かる。自我を失いし者は無差別に、或いは憎しみを生んだ対象に攻撃する事...。そして憎しみを生んだ対処をもし倒した場合、又は倒れた場合はターゲットが無差別に変わる...。
「...さあ、どうする? 俺がここで一言悪口を言って終わらせるか、それとも俺だけを終わらせるか?」
「...当然、アンタを倒す。そうすればアーシアちゃんは収まるはずだわ」
「...最もの答えか。なら、来い!」
「マジカルリーフ!!」
流石レイエルさん...葉っぱの量が明らかに多い...。そしてそれをヒョイヒョイと避けるアブソルもそのまた凄い...。なんだろう、今までやっていた事を全て無駄と感じちゃうこの感じ...。
確かにアタシ達は人間で、感情の揺らぎやその他不明なタイミングで頭に動き方や技が頭に流れ込み、技を覚え、強くなっていく。そして、それは一ヶ月間の強化合宿的なもので、アタシ自信はかなり変われた...けれど、目の前では目で追うのがやっとで、飛び込もうとするのが怖い...。
やっぱりアタシ...弱いままだったんだ.........。
「...ぐすっ......何だか...情けないな...アタシ.........」
「.........そんなこと...僕は...思わない、よ?」
「っ! マ、マコトさん...ううん、アタシは弱いよ......だって、逃げたくてたまらないんだもん...。 あの夜の時のように、ライアの時のように...アタシは......」
「...ライアは......僕も怖かったよ...これが死なんだって...本気で痛感した......。 でもね、知ってるよ僕は...スイレンが強い心の持ち主だって......」
「でも...でも......」
アタシは弱いよ...マコトさんが思っている以上にアタシは......。こんな思いをするくらいなら...アイツの仲間に入っちゃえば......。
「...僕ね、スイレンの事がね......好きなんだ。それに怖いのはよく分かるよ...今、切られたからね...。 痛い、痛い、怖い...そんな感情が今も凄くあるよ...けどね.........スイレンとなら、乗り越えられるような気がするんだ。それもあの夜の時のように...だか、ら.........ぐっ!」
「ま、まだ立ち上がっちゃ...」
「...行くよスイレン。相手は一人なんだ...皆んなで行けば必ず隙が生まれる...。 そうでしょ、リファルさん...」
「ああ...強い敵には手数で挑めば良い。俺が強く教えてきたチームワークを...試す時だ......」
「...ありがと。無傷なアタシが助けられちゃって...ゴメンなの。 でもその分...アタシが頑張って見せるんだから!」
「っ!? い、一気に痛みが和らいだ...」
「...流石と言うべきか。やはり、お前らは決意した時に強くなるみたいだ。 ...よし、取り敢えずマコトとスイレンは足が早いし、何より二人は長いから連携が得意だな? だから急いで、静かに回り込んで近づけ」
「了解」
「分かったナノ」
「俺はそのまま戦闘に割り込む。頼んだぞ二人共」
アタシ達はリファルさんの言葉に頷いて、速やかに、そしてなるべく静かに通路を駆けて、アブソルの所へと回り込むような順路を進む。あれ...そう思えばマコトさん......さっきなんて言った?
普通に聞き流しちゃったけど...なんか......す、すきとか......いやいやいやいや!気のせいナノ!! それに、今はレイエルを助けて、アーちゃんを元に戻さなきゃ。
「...懐かしいね、二人で行動するの」
「へっ? う、うん。チーム別れちゃったからね...でも、その話は後にして、今やるべき事をしよ?」
「勿論そのつもりだよ。その様子なら完全復活だね」
「え...まだ心配してくれてたの?」
「うん。それと決意が固まってるかの確認も含めてね...さてと、戦闘では初めて使うから上手く出来るか分からないけれど、僕のとっておき"未来予知"を使わせてもらうよ」
み、未来予知...けどマコトさんの種族は確か覚えられなかったような...。それに、戦闘では初めてと言ってたけれど、それ以外に使ったことあるみたいだから...もし本当ならアブソルの動きを予知出来るかもしれない。
にしても...とっておきかぁ......アタシだと両足蹴りになるのかな。技じゃないけど、攻撃が決まればかなりの攻撃力を持ってると実感がある。けれど、外したらかなりの隙が生まれちゃう...それだけは何としてても回避しないといけない。
「...ココだ。リファルとレイエルは戦ってるね」
「うん...アーちゃんは苦しみながらだけど、まだ飲まれてないみたい。 アーちゃん...代われるならアタシが変わってあげたいよ......」
「それは僕も同じだよ...じゃあ、カウントで突っ込むよ。準備は良い?」
「うん、マコトさんに合わせる」
「おっけー.........5...4...3...2...」
折られる指を横目で見ながら、アタシは飛び出す準備をする。初撃に関して多分マコトさんは...
「いっけぇぇえ!! ハイドロポンプ!!」
「予測通りナノ! エナジーボール!!」
予測通りアタシが放ったエナジーボールを、ハイドロポンプでマコトさんが強く押し出して加速させた。アタシの場合はコントロールに難があるけれど、マコトさんがその難を無くしてくれたお陰で直球に、奇襲などもあってクリーンヒットした。
アブソルの身体は大きくふっ飛ばしたけど、流石の身のこなしをしていただけあって一発では倒れてはくれなかった。流石にしぶとい。弱体化できる技とか持ってると良かったけれど、記憶上だとアタシ達の中に使える人は誰もいなかった筈...はぁ、覚えておけば良かったナノ......。
「ぐっ...回り込んで不意打ちとは...やるじゃねぇか......。 それに、人数差的に少しは手加減してほしいっての」
「手加減なんかするわけないって、アンタ自身が一番分かってるんじゃない? サイコキネシス!!」
「アナタを倒して、アーちゃんを早く元に戻して、シルクさん達のところも行かないといけないナノ。 だから手加減なんかしないっ!」
「僕達はお前達の悪行は許さない! お前達の実験とかに何人のポケモン達が犠牲になった! そしてそれでは飽き足らず僕達の世界まで...そんなことは絶対にさせないっ!!」
「まあ、この通り無理な話だ。捉えて、身動き出来ない状態にしたのなら別だが」
「...ちっ、分が悪い。 だが...殺らなければ男というもんが廃る。仕切り直しだ、纏めて掛ってこい!!」