コピーとオリジナル
ー前書きー
前回は二話を纏めて一話と言ったな?あれは嘘だ(
結局三つで一話っぽい構成になっちゃった...
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「...嘘でしょ? た、倒されたっ!?」
そう声を上げるのはコピーのモルク。そして声を出さないものの、コピーのヨーテルも口元に手を持ってて、ありえないとでも言いたそうに身体を微動作に震えていた。
「嘘じゃない、私は勝ったの。 ...で、本物の二人は何処に居るか、そもそもこの場所が何処だか吐いてもらうわ」
「...はあ、しょうがない。約束しちゃったもんね。 まずオリジナルがどこに居るか...うん、二人共自分に打ち勝ったみたいだから無事だよ。 じゃあヨーテル、ワープホールの用意頼んだよ?」
「え、私がコンソール使うのです? できるか不安なのですが...」
「出来るからやって。まぁオリジナルをそのままデータ化してるから、同じようにネガティブに考えることは一緒なのか」
「...あの、せめて聞こえないように言ってもらえます?」
「あ、ごめん。 さてと、次にココは何処かだね。君はこの世界の住民ではなく、他世界から来てるから説明がちょっと多いよ。 うーん、なるべく絞って話すけど、時間掛かるかな。構わない?」
「分かるなら」
「了解だよ。まず結果から話すと...ココはネットワークの中。言うならばライトが作り出した、言わずともウィアと言う『自立思考型情報収集プログラム』と一緒の状態さ。 ネットワークを権限がない所なら動き回れ、自分で思考して判断し、自由にジェネレートして、デリートも出来る権限まで持つ...言うならば僕達も同じような存在かな」
「...えーと、もうちょっと砕くか補足してくれる?」
「っとなると...うん、ライトが生み出したウィアと同じ世界に居るが最も簡潔な答えかな。 補足の場合は...まず君が元居た世界、ライトによって導かれたこの世界、そして今がネットワークの世界。君は今データとしてこの世界に存在し、動き、思考しているんだ。僕達を生み出したマスター...そのマスターが作り出した仮想世界に君は居るんだよ。 もちろん身体はこっちには来れないから、君の身体をスキャニングしてデータ化し、意識だけは作り出した君の身体データに埋め込んで、動いているという訳。で...大丈夫?」
「ごめん、聞かなきゃ良かった...全然分からなくなった...。 と、取り敢えずこの身体は私の身体だけど、私じゃないってことで...良いのよね?」
頭を抱えながらミミアンはコピーに言われた事を整理して絞り出した。
「そうそう、それで良いんだよ。 っで、ヨーテルは出来たの?」
「...はい。では説明ですが、このリングをくぐれば二人の元へと行くことが出来ます。けれど、何も考えずに、逸れる事無く真っ直ぐ光る足場を歩いて下さい。もし落ちた場合、貴方は消滅します。 そして...貴方は目覚められないでしょう。システムがかなり不安定ゆえ、コチラの世界で何かが起きた場合身の保証は出来ません」
「ちょ、ちょっと待った!? じゃあさっき負けてたら...私は消えて、コピーがほんとに私の代わりになってたって事っ!!?」
「うん、最初にそう言ってたでしょ? まあ、心配しなくても落ちたりしないさ。だって君の場合なら横幅三人分あるからね。 ...それじゃ行っておいで。君の、本当の仲間達のところへ」
「私達は良心的に作られた、言わばチュートリアルです。だから貴方がここに入り、向こう側に出る時...役目を終えて消滅します。 別に悲しいとか、怖いという思いはないですが...私達も一応は感情を持っているので、一応は寂しいっという感情はありますね......」
壁に開かれた、円形のポータルを見ながら名残惜しそうに言う。その顔は正に、本物のヨーテルそのまんまで、入ろうと歩を進めていた足を止めてしまった。
確かにコピーと言えど、完全に見た目や行動、声に思考も同じ...言うならば卑怯である。まさに本人達に言われているようで、心に突き刺さって仕方が無かった。そのやりとりを見ていて、コピーのモルクが
「...名残惜しなんてしなくて良いよ。寧ろ、コレからオリジナル達と出会うんだから。コピーはコピー、役目は役目...それを終えられたのだから僕達は本願だよ。 ヨーテルも迷う事を言っちゃダメだよ。送り届けるのも僕達の目的なんだから」
っと、止まった足を押してホールへと歩を進ませた。不意に押されて驚きながら、ミミアンはホールへと導かれる。その手は温かみがあって、まるでデータとは思えなくて、また歩を緩めてしまったが、もう一つの手...ヨーテルの手も加わり、ちょっと無理に推し進められてしまった。
そして、最後で強く押されて突っかかりそうになりなるが、直ぐに立て直して振り返ると
「ふう、僕達はココまで。オリジナルの二人に宜しくね」
「何度か迷うことがあると思いますけど...今みたいに悩まないで下さいね? 貴方らしくないですから...」
「...そうね、ありがとう。 じゃ最後に一言だけ...」
「ありがと...」
そう言うと答えも聞かずに、言われた通り落ちないように光の一本道を駆け抜ける。暫くすると、入り口と同じような所へ到着し、躊躇なく潜り抜ける。
そして潜り抜けた先では...
「...あっ! ミミアンさんっ!!」
「よかったー! ミミアンも自分に打ち勝てたんだねっ!!」
っと、喜びながら駆け寄る正しく、コピーでも無い本人の姿...。ミミアンはいつの間にかに流れてた涙を拭き取り、とびっきりのスマイルで「遅くなってごめんねっ!!」と、頬を赤く染めながら駆け寄った二人を抱いたのだった......。