中庭にて
ー前書きー
この前投稿していたお話ですがパラレルストーリーとして置き換えました。
理由として執筆不可になりかけているので...。
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「...うぅ......おはよぉ...」
「あ、おはよっ。アーちゃん凄いぐっすり寝てたよ? だから寝た方がいいって言ったのに...」
「ごめんごめん...くぅー......」
布団から出るとゆっくりと伸びをして、身体を解していく。その姿はまさに四足歩行族特有の伸び方で、人間なら立ち上がって腕を上へ持っていき、足はつま先立ちをするような感じでしていた。
けれど今は、まずお尻を突き出すようにして前足を伸ばし、次に顔を突き出して今度は後ろ足を伸ばす動きをしている。それに加えて前を片手で支えながら、支えていない手で目を擦るなどしていた。コレだけを見るならばまさか元人間だなんて分からないだろうなとスイレンはふと思った。
「アーちゃん、落ち着いた?」
「...うん、バッチリ。ところで二人は?」
「二人ならもう起きて朝風呂に行ったよ」
「へぇー、あの二人で行くなんて初日とはかなり距離変わったね。 あれ、今って何時?」
「七時半かな。あと三十分でご飯とかレイエルさんが言ってたかな。なんかちゃっかり馴染んだみたいで、料理の手伝いしているみたい」
「や、やっぱりレイエルさんって凄い...。 んー、ちょっとそのへん歩いてこようかな」
「あたしも良い?」
「うん。行こっか」
そう意見が一致すると、二人は部屋を出て左側の中庭方面へと歩いていく。ちなみに廊下の床は温もりのある木で、所々で軋むような音がする。だが、決して劣化しているわけではなく、わざとそのような作りにしてあるらしい。
理由として、部屋には鍵自体が無く、貴重品は部屋にある金庫にしまうという仕組みを取っている。だからもし忍び足で部屋に進入しようとしても、音が鳴るのでちょっした防犯になるのだ。それと、夜の出歩きを抑制できるメリットもあって一石二鳥などとスイレンはシルクから教えてもらっていた。
「うん、だいぶ大きな音が鳴る。そっと歩いても鳴る...なんか、鳴らさずに行けないのかな?」
歩くごとにギシギシ言うので、アーシアに訪ねてみるが「スイちゃん、多分それは無理だと思う。そういう作りになってるから」と、あっさり返されてしまった。けれど悔しい気がして、鳴らないであろう壁側を歩いてみる。
それでも、やはり鳴るものは鳴る。なんだか悔しい気がして、今度は扉側を歩き始めてみるが、こちらは更に音が大きなった。スイレンは、なんだかんだで一番静かなのは普通に歩く事なんだと実感していると、
「うるさひゃあっ!?」
「きゃあっ!? ...って、ココミさんビックリさせないで欲しいナノ!」
少し怒った顔で思いっきりとドアを開けたところに、スイレンと鉢合わせして二人共悲鳴を上げる。けど、アーシアは少し後ろを歩いていたので、驚かずに済んだ。
「それはこっちのセリフよスイレンちゃん...って、アーシアちゃんも居るのね。 貴方達さっきからギシギシうるさいわよ。どうしたら逆にそんな大きな音が出るのよ...」
「あっ...ごめんなさい...。 なんか鳴るのが悔しくて...」
「気持ちは分かるけど、浮遊できる子じゃないと無理よ。 わたしもや...何でもないわ...」
「やはりそうですよねって、あれ? ココミさん眼鏡なんて掛けていましたっけ?」
アーシアはココミが見える場所まで歩くと、ふと赤いメガネを付けていることに気が付いた。
それも妙に似合っていて、しっくりしていた。
「へ? あー、ちょっとギアの調整というか修理してたのよ。昨日ウォルタ君のギアが壊れたから。それと、ライトが外しちゃった装置の変わりになるシステムの開発よ。終わり次第全員に入れてもらうわ。 ほんっとに、改造するのは勝手だけど重要なパーツを外さないで欲しいわよまったくもうっ!」
「あはは...」
「話してた事ですね...」
「そうよ。あ、立ち話も何だから中に入ってきて。 でもちょっと待っててね。あと少しで作成物作り終えるから」
そう中に招き入れると、ディスプレイ前の座布団に座り、カタカタと打ち込み始める。その姿よりスイレンが気になったのが机にペタペタ貼られた付箋の数と、既に用済みの付箋が沢山ゴミ箱に捨ててある事だった。
「す、凄い付箋の量...」
「これ?いつの間にかにこうなっちゃってたのよ。内容は新アプリのアイデアや、やることのリストとかね」
「忙しいのです?」
「わりと。けれど付いて来たと言うか、一緒に行動したりするのは悪くない感じよ。違う環境でリフレッシュ出きるし、何よりいつも出来ない体験、新しいことに気が付いたり色々あるしね。 スイレンちゃんやアーシアちゃんはこの世界に来てからどう?もう慣れてる?」
「すっかり慣れちゃった。それに毎日が楽しいの。 元の世界じゃ体験出来ない感覚や出会い、発見とか」
「私も同じ感じですね。ちょっと戻りたくないと思っちゃうくらい」
「そう言って貰えると嬉しいわ。 ...よし、コレで多分いけるはず。多分コレでこの前の熱暴走は起こらないはずだから、次は代わりのシステム...だけど、もうそろそろ食堂行きましょ。あと20分あるけど、集中しちゃうと直ぐに過ぎるから」
「確かに...そうだっ! アタシ、今までずっと見せてなかった技があるんだけど、見てもらってもいいかな?」
「えっ? スイちゃんそんな技あったの...?」
「うん。アルトマーレに行くまでの間、詳しく言うとアーちゃんと模擬戦した後かな? 使えるようになってた」
「へー。なら、じゃあその技、中庭で見せてもらっても良いかしら?」
「うんっ」
ーーーーー
「おう、どうした」
「少し話したいなっと思ってさ。こうやって話す機会が欲しかったんだ」
「まぁ、病院出てから全く音信不通にしてたからな」
「ホントだよもう。自分から番号渡しといて出ないなんて」
「基地に進入時に電源落とした後入れるのをすっかり忘れちゃってな...通知何も来ないなと思ったら電源が切れてたってわけだ」
「通話出来たのは確か分かれてから一カ月くらいだったよね。そして急に一週間前に通話...無事で良かったけどさ凄い心配してたんだからね?」
「すまんかったな…。 そうだ、アイツらの情報掴めたか?」
「ほらそうやって直ぐに話題そらす。まあ良いけど。 えーとね...ごほんっ、みんなが持ち帰った情報、調べた情報、ギラファの情報も合わせると...やはりメインはココだよ。ドリームメイカーズの拠点は」
「やっぱりか...ホント、なんでこんな所に拠点を置くかね...。 面倒ったらありゃしない」
「そうだね。けれど、なんとか脱出に間に合ってよかったよ。 ドリームメイカーズ等側からのハードコンタクト、ギアに対しての大規模強制スキャニング。それを使って導かれし者達の反応を見つける方法...それを傍受して慌てて用意し、ココミにコンタクトを取り、倍額でココを貸し切った。ほんとに危なかったよ。 にしても、一応で傍受して良かった。そうじゃなきゃその方法は知ること出来ずに全員アウトだったからね...」
「そうだな...でもアレ大変だったんだぞ。アイツ等にコッチが検知されないように常時セキュリティー設定を書き換えて入ろうとする穴を全て塞ぐの...ウィアが居なかったら確実にバレてたぞ」
「確かにやり過ぎた感はあるよ...けど、早く見つけた方が長引かせるより安全かなと思った結果だよ。ダミーを作ってたとは言え、レベル4まで突破されてたし」
「なかなか突破されてたな...確かレベル1が簡易的なセキュリティー設定。レベル2が企業用のセキュリティー設定。レベル3とがライトが作ったセキュリティーパターン。レベル4がアタックパターンでセキュリティー設定を手動変更、尚且つコチラもアタックを仕掛けるパターン。最終レベル5がウィアによる完全動的防衛システムか。流石強力だったな...」
「パターンやセキュリティーに関することは全て教え込ませたからね。突破するならウィア自身じゃないと無理だよ。だって自分で進化しちゃうんだもん。僕でも突破はもう無理」
「...思ったのだが、ウィア自信はクラックされたりしないのか? それにこの前に感情プログラム強化したんだろ?そうしたらより人らしい振る舞いが出来る事とイコール隙も出ると言うことだぞ?」
「ふふ、言うと思ったよ。今、時点のウィアはバックアップで本物のウィアじゃないよ。本物はココ」
「...え、ギアの中だと?」
「そう、僕のマスターギアの中に居るんだよ。ウィア」
〈はいマスター。命令をお願い致します〉
そう呼びながらライトはディスプレイが相手に良く見えるように傾ける。すると変わりなくウィアの姿が映し出されていた。けれど、口調がいつも通りではなく、聞き取りが可能くらいの抑揚しか無く、感情が全くこもっていなかった。
言うならば、姿は同じなのに中身は別人...そのような感じになっていた。
「...感情プログラム乗っけてないのか」
「うん。当然その辺のバックアップも意味もないダミーコードに埋め込んでるから復旧も容易だよ。それに、感情プログラムは完璧なシステムの上では邪魔になるから」
「そうか...ん、この声はココミとスイレンにアーシアか」
「みたいだね。 なんか...やろうとしてるみたいだけど、なんだろ。行ってみよっか?」
「だな」
ーーーーー
「じゃあ...やるねっ!」
そう言うとスイレンは立ち尽くして何かを待つ。なんだろうと思っていると、スイレン周りの空中でキラキラしたモノが見え始めた。そしてそのキラキラしたものがスイレンの体に吸い寄せられ、突如として近場の岩石に向けて白い光線を口から発射した。その光は直径が三メートル程ある大きな岩石を容易く木っ端微塵にしてみせた。しかもチャージ時間は僅か三秒程。
威力も申し分無く、チャージも早い。敵からしたらかなりの脅威であるが...
「...はぁ......はぁ......はぁ......や、やっぱり体力......が......」
「ス、スイちゃん大丈夫? 確かに凄いけど息が...」
「う、うん......か、かなり威力はあるっぽいんだけど...一発ごとの消費が...激しいみたいで...」
肩を使うほどの大きな呼吸を繰り返しながらスイレンはアーシアに対しての返事に応える。けれど、大丈夫と言いながらかなり消耗は激しいようで、地面におしりをペタンと付けるように座り込んでしまった。
そして、その状態の時に現れたのは...
「それは体内エネルギーを使って発射してるからだよ。本来その技は太陽の力を借りて放つ技...ソーラービームだからね」
解説を交えながらギラファと、少し難しい顔をしながらライトが歩み寄った。
「切札としては有効だが、やらない方がいいぞ。俺は同じ様なことして死に掛けてるからな」
「あ、ライトさんにギラファさん。まさかココで会うとは思ってなかったです。何故ここに?」
「うーん、何故っと言われると気まぐれって感じかな? それは良いとしてスイレン。使うならちゃんとその技を習得してから使った方が良いよ。今使ったソーラービームや破壊光線などの、本来ならチャージが必要な技を体内エネルギーから直接絞り取って放つなんて、リファルが言う通り自殺行為に近いからね。それに、見た限りパワーコントロールも不十分って言う点でも危ないし」
「私も科学者として見たら同じ考えね。けど、見ないとしたら凄いと褒めたいくらいよ」
「う、うん...えっとこの場合アタシはどう反応すれば良いのかな......」
ふとスイレンはアーシアの方へ向いて答えを問う。が、苦笑いされながら首を傾げられただけだった。
少しの沈黙...それを破ったのはやはり、
「まっ。僕と同じように体内エネルギーから技を放つなんて大したものだよ。 その結果、僕は電気技を使えなくなっちゃったけどね」
「あっ、それでアナタは電気技使えなかったのね。新聞やネット内のニュースだと情報曖昧だし、色々ブラックボックスにされてたから探れなかったけど」
「曖昧にさせたのは故意だけどね。僕にとってはデメリット、相手にはメリットしかないこの情報をバラ撒きたくないからね。因みにドリームメイカーズ側からの君達に関する情報公開...つまり導かれし者達の情報配布はウィアが何とか止めてくれてる。 酷いものだよ。君達が異世界から来た侵略者とか流そうとかしてるんだから。それは君たちでしょと突っ込みたいよ!」
腕組みをし、尻尾を上下に動かしながらライトはちょっとだけ怒りを顕にする。が、直ぐにハッとなって平常心に戻り、時間的にそろそろ戻ろうと提案する。その提案に全員は同意して戻っていく。
けれどその中で一人、ライトが言ったことについて気になったが聞けない者が居たなんて、ライト本人が気が付くことは無かった。