技術力
「ま、まさかこんなに簡単に折れちゃうなんて思ってもなかったわよ...」
そう言いながらお風呂場の床に寝かすと、氷袋を取って楽な体勢にする。けれど、アーシアは次は何されるのかが怖く、逃げようと藻掻く。だか、それを逃げないようにライリアは片手でアーシアの胸あたりを軽く押し捕まえて、仰向けにさせると足をバタバタさせて、騒ぐ。
「もう静かにしてっ!! 折りたくて折ったんじゃないし、今からする事をすれば治るから!!」
暴れるのにイライラしながら、持ち込んだ液体と、何故か脱衣所に置いてあった液体を抑えていない手で入れ混ぜ、軽く中に炎を吹き込む。すると真っ青な色をした液体が完成し、それを追ってしまった患部へゆっくりと流し込む。
すると...
「うぎゃぁぁあああ!!?」
先程以上に暴れだす。何故なら炎を入れて熱湯になっている液体を冷やさずそのまま掛けたのだから無理も無い。暴れ続けるのを見ながら、ドバっと行かず、同じ流しになるようにゆっくりと、時に行き過ぎた時は少し控えるなどして平均的になるように流し込み続ける。それを十秒ほど続けると、直ぐに氷袋を液体を流したところに当てながら、蛇口を捻って冷水を掛け続ける。もちろんその間も押さえ付け続けていた。
それをかれこれ五分ほど続けると...
「...ふう、お疲れ様。荒治療だったと思うけど、効果は完璧よ。腕を出して」
「.........やだ」
「や、やだって...治ったかどうか試すだけだから......はぁ、もう」
「やっ!やめて触らな...い、で? ...えっ、痛くない...動かせる......」
出された手から逃げるように、手を無意識に動かすと、先程まで全く動かなかった腕が動かせるようになっていることに気が付いて固まる。それから何度か折り曲げしたり、自分で押したりしても全く問題なく、まるで嘘のように治っていた。
「こ、これは一体...」
「ココで作った超万能で、一ヶ月にバケツ五杯分しか作れない高額の治療液体よ。今使ったのが一杯分丸々だから...値段にして百万くらいかしら。 ほんと、予備で材料残してて良かったわよ」
「ひゃ、百万っ!? そ、そんな物を私なんかに...」
「別に良いのよ。大目玉食らうけど、貴方達が逃してくれるのでしょ?だからもう関係ないわ。 ...さてと、やっぱり臭う。意外と独特だから、臭いを残しとくと厄介ね」
液体を垂らした腕をクンクンと嗅ぎながら蛇口に手を伸ばし、先ほどの冷水がお湯に戻っている事を確認してからアーシアの腕にゆっくりと掛け始める。次にシャンプーに手を伸ばし、手の平で広げながら優しく洗い込んでいくが、
「...端末裏に入ったから汚れてるわね。ついでに身体も洗っちゃうわね」
「へっ!? べ、別に自分で洗えますから大丈夫ですって!!」
「ダメよ。お詫びもしたいし、第一に背中とか洗えないじゃない。それにうちの娘、一緒にお風呂入りたがらないく...その話しは今はしなくて良いわね。 ところで、うちの娘のヨーテルは貴方達と出会ってどう変わったの?」
「あ、えーっと。実は最初に行動を共にしていたのは私ではなく、リトと言うポカブの女の子なんです。なので詳しい事は聞いていないのですが、最初に出会った時よりはオドオドした感じは無くなってます。 意見とかもよく出してくれます」
「へぇ、あの娘がねー。意外というかびっくりね。 さっきも言ったかもしれないけど、あの娘は人見知りが激しくて、私の他に話す事など滅多にしなかったのよ。学校でもそう。けれど別に困ったという訳ではなかったみたい。勉強は出来てたし、友達も向こうから来てくれたりとかして。 ふふ、なんか貴方だとペラペラ話しちゃうわね。聞いてくれてありがと」
「いえ、ライリアさんが心優しいお母さんと分かっただけでも充分でひゃっ!?」
急にビクッと身体を飛び跳ね、ちっちゃい悲鳴を上げて頭をブンブンと振る。どうやら耳にシャワーのお湯が入ったらしかった。
「あ、ごめんね。 ...ふと思ったけど、アーシアちゃんは元々は他次元から来て、大昔に滅び、今や絵本では妖精の扱いをされているニンゲンという身体だったわけでしょ?」
「そうです。それがどうかしたのですか?」
「えっとー...あ、でもどうしよ」
言いかけた口を閉ざし、洗い終わったアーシアの身体に付いた泡を洗い流しながら考え込み始める。その顔は妙に赤いと言うか、目が挙動不審というか、凄く聞くのを躊躇している事は単純明快だった。だから、
「...何を考えているか分かりませんけど、私はどんな事でも構いませんよ?」
などとアーシアは言ってしまったが、その言葉にすぐ後悔する事となる。それは中々に際どい事だったからだ。その事とは...
「...良いのねその言葉。 なら聞くけど...アーシアちゃんの胸とか、その...アソコとか通常個体のボディーと違うのかな...って。ほら、ニンゲンだとボディーが全然違うじゃない? だから、その、調べたいとは思っていたのよ」
「な、何を言い出すかと思ったらそんな事を聞くのですか!!? い、一緒に決まってます///」
距離を離し、慌てて前足でキュッと前を隠しながら抗議する。が、直ぐにアーシアはこの人が何者なのか、薄れてた意識が現実へと引き戻された。
それはまだ、現役ドリームメイカーズ側の研究員だという事である。確かに逃げようとしているが、その事はまだ知られていなく、もしやめたとか言って本気で挑んで来られた場合に勝ち目が無い事にも。
なら従うべきなのか、けれど聞かれている事はかなり際どいところで、実際かなり恥ずかしい。
こ、これはどうすれば...///
それに、人が変われば簡単にライリアは簡単に性格が変わる事を、身を持ってアーシアは体験もしている。しかも、先ほどの液体によってその骨折を直してもらっている。何ヶ月も掛かるであろう時間をあっと言う間に。その他にヨーテルの事を嬉しそうに話していたとかなどと色々と考えた結果、アーシアが導き出した答えは...
「...い......す///」
「え? なんて...言った?」
「...良いですよその、調べても/// そ、そのかわり...お手柔らかに御願い致します...///」
ライリアの要望に従う事だった...
ー後書きー
ティアです、先はココでは書きませんよ。にしても際どいかアウトかなこれ。でも割りと本屋においてある普通の小説でもたまにこんなような表現があったりするから、ありっちゃありなのかな...?
さて、なんだかんだ続いている別次元でのお話ですが、そろそろ終えようかと考えてたりします。