意外な接触者
...うぅ......ここは一体...私は確か.........
痛む身体を無理に起こさせながら影は辺りを見渡す。中は四方を囲まれていて、机、電源が付きっぱなしのパソコン、中に飲み物であろうピンク色の液体が置かれたペットボトルと同じくその液体が入れられたコップ、そして今寝ているベットには...
...リ、リザードン......
そう、先ほど影の子を探していた人物...まさにその人だった。けれど、先程は無かった左手の包帯が目に止まり、その包帯は影の子と同じ包帯であることに気が付くのは簡単だった。
...この人...もしかして......
助けてくれた?そう思いながらも影の子はゆっくりとベットから降りようと藻掻く。降りれそうな所まで来たところまで来ると、足を下にして地面に着地しようとするが...
「...うぎゃあ!? あ、足が......」
全く着地できず、寧ろ力が全く入らずそのままの硬い床に転がり落ちたような感じになってしまった。しかも落ちた衝撃で身体に涙が出るくらいの激痛が走り、痛みに耐えきれず声を出しながら悶え、収まらない痛みに何がなんだか分からなくなって行く...。
そんな時、同じく布団からバサッと動く音がして、その瞬間には影の子の身体は柔らかいベットの上に戻されていた。そして、
「まだ後遺症があるからダメって言おうとして待ってたのに、まさか私も寝ちゃうとは...。 あ、私の名前はライリアと言います。アナタは...」
「あっ、えっとアーシアと申します...。 あの、貴方はまさか...」
「えっ? な、なに?」
声と名前を聞いて、影の子アーシアは頭の中に残る記憶の断片から次に言うべき言葉を考える。とある人から聞いた話、ヒトカゲの進化系、そしてライリア...判断材料はたっぷりとあった。
が、ココまで揃うものかと思いながらも導き出した答えを口に出す...
「あ、あの...もしかしなくても、ライリアさんには...ヨーテルと言う子供が居ます...よね?」
そう、まさしくヨーテルが探していた母と一致したのだ。右の翼に生まれつきの傷あるのも大きな特徴だという事をヨーテルから話を聞いていた。
そしてそれを問われた本人は...
「な、なんで私の娘の名前を...? そ、それは良いとして!ヨーテルは元気なの!?怪我してないの!!?」
「うぐぁ...いた...い......」
「あっ...ごめんなさい...。 それでど、どうなの...?」
うっかり強く持ち上げてしまった手を緩めながらライリアは問う。その問にコクンと縦にアーシアは返答を返した。
すると、ゆっくりとベットに寝かしながらライリアは机の引き出しから何かを取り出し、横たわらせたアーシアに見せた。それは写真...そしてその中にはライリア本人と、
「ヨ、ヨーテルさん...」
ライリアに抱きつき、とびっきりの笑顔を見せるヨーテル...まさに本人の姿が映し出された写真だった。が、その姿はライリアがリザードの時の写真で、ヨーテル自身もまだまだ小さい時かと思われる。
それはともかく、やはりライリアは...
「やっぱり貴方は...」
「そう、正真正銘ヨーテルの母よ。まさか...あの、人見知りの娘を知っている子が居るなんて思っても無かったわ...。 ねえ、ヨーテルとはどんな関係なの?」
「友達...ですね。ヨーテルさんからはよく、ライリアさんの事を聞いていました。ついでにこの島、アルトマーレに来ています。 ドリームメイカーズ、この組織を止める為に」
ドリームメイカーズを止める、その言葉を聞いた途端にライリアは目を丸くしてアーシアの事を見てから、パソコンがある机の前の椅子に座って何やらカタカタと打ち始め、驚きの声を漏らしたあとに調べていたノートパソコンをアーシア横に持ってきて見せた。
ディスプレイにはアーシアの写真と何やら色々と書かれていた。それを見てアーシアは、
「こ、これは私のデータ...?」
「そう、貴方のデータ。今まで調べることは無かったけど、まさか娘のデータまで入ってるなんて...。 ねえ説明して。なんで、なんで私の娘が貴方達みたいな反逆侵略者の手に収まってる理由を!」
「反逆侵略者なんかじゃない! それにヨーテルさんは貴方を探す為に、自分自身を強くする為に、私達の旅に付いて来てくれたのっ!! ヨーテルさんはずっと、ずーっとお母さんのライリアさんが帰るのを待っていたのですよ!?」
「っ! わ、わたしだって帰りたかった。帰りたかったけど帰れなかった!」
「じゃあなぜ、なぜ無理やりでも...うぐっ! か、帰ろうとしなかったのですかっ!!」
動かすごとに走る全身の痛みに顔が引きつりながらも、無理に身体を起こしてライリアに対して問う。
「...逃げれなかった。逃げたら娘を殺すと脅されていたし、逃げてもすぐに捕まるのは分かっていたから...。 ココの組織は自分にデメリットがある存在なら消すことを躊躇わなかった。私の目の前で殺された人も居た...入って後悔した、ミスしたら私は殺されてしまう。そうするとまだ幼い娘を残して死ぬ事になる...そんなの絶対に嫌だった。 けど、結果的に...離れ離れになってしまった......」
...それなりに理由あったんだ。ちょっと強く言い過ぎたかも......。
そうだよね、お腹を痛くまでして...産んだ?孵した?どっちでも良いけど、そんな子をポイッと捨てる人なんて居るはずないものね...。
「...少し言い過ぎました。ごめんなさい。 改めて話しますと私達は、導かれし者達はドリームメイカーズを止めに来たのです。 そちらの組織が私達の事をどのように呼んでいたり、悪い存在なのかと流し入れられていたりしたら、それは完全な嘘。みんな、この星を守りたいからという意思で集い、協力しあってるから」
「...そう、なのね。私こそ怒鳴って大人げなかったわ......。 あ、貴方がココへ来た目的。あらかた察しは付いてるわ。そしてギアの娘に関しても。コレは返すわね」
そう言うと、テーブルに置かれた箱からギアを取り出し、アーシアの腕に取り付けた。
「あ、有難う御座います」
「良いのよコノくらいの事。さて、貴方の目的はココの破壊でしょう。けれど、何故あなただけしか居ないの? それとも来ているけど他に居るってこと?」
「...私だけです。悪いとは分かってましたが、自殺覚悟でココの爆破を予定してました。伝言は残してあって、爆破時に送って貰おうと設定されています」
「.........」
ペシッ!
「...いった!? な、何するのですかっ!?」
急に顔をビンタされ、痛む頬を両手で抑えながらアーシアは抗議する。が、その言葉は直ぐ消されるものとなる。
パシッ!!
なんと自分で自分の頬を腫れ上がる程、自分が受けたのとは比べ物にならない程のビンタしたのである。流石にこの行動に対し、アーシアは突然の行動に全く理解することが出来なかった。
「...ふう。貴方も何だかんだで酷いことしてるじゃない。 それに、爆破したら送信?もし送信されなかったら?貴方が言う仲間はどうなるのよ? 全ての事において、最悪なパターンは考えておくべきよ。危険な場所に両足を突っ込んだのだから、そのパターンくらい考えているものでしょ」
「...え、えーっと......」
「感情のままって事ね...っ!。 さてと、貴方に最終選択肢よ。ココへ今、貴方を捕らえるために腕っ節の強い奴らが雪崩込んでくるわ。そうなる前に私が貴方、アーシアさんを仕留めるか逃がすかは私の気まぐれ次第。 貴方はどうしたい?本当ならバックアップを取って外部に送信するところを、私はしないで居る。けれど、このエンターキーを押せば送信完了。貴方がココへ来た意味が無くなり、ただの死に損になる。 勘違いして欲しくないのが、あくまで私と貴方は敵同士。娘の事をしれて嬉しかったけど、余計な事をして私自身が殺されたら意味も無い。だって、外部からの応答無視してるから、もし協力やら助けたなんか知ったら確実に殺される。でも逆に私が貴方を仕留めればそれを回避出来る」
「.........」
「さあ、どうするの。貴方が決めなさい。 貴方自身の意思を、意見を、思いを、私にぶつけてみなさい!」
「わ、わたしは.........」
「ライリアさんをココから逃す。そして、この場所を爆破したい!」