狂い出した歯車 - 後編
「...なかなか進みにくい」
「カメラ多いですね...けど、もう一つ下のフロアが電源ルームです。その場所で恐爆の種を使えばそこは完全に破損。同時に隣のサーバールームでも破損が起きるはずですが、一応その場所も投げ込んだ方が良いと思います。 けれど、縛はしますと構造的に...ごめんなさい、もう覚悟を決めていたのですよね」
「ええ、私は死ぬ覚悟でココに来てるの。皆が傷つくならその前に事を終わらせちゃえばいい。今頃みんなはまだまったりしてて出れるはずじゃないは...どうしたの?」
「...気を付けて下さい。この先に誰か居ますちょうどそこはカメラが無いエリアらしく盗み見が出来ないです」
「ありがと。けど、回避して突破は無理なの?」
「既に検索しましたが下へ行くにはその人の前を通過するしか方法が無いみたいです。しかも通路も幅が狭くなってますね...」
「...倒せそう?」
「残念ながら不明です...って、何しているのですか?」
「...瞬発的に最高火力を相手に打ち込んでみる。ココまで隠密だったけど、もう私の精神的にもう耐えられない。 ...いくよ、はぁぁぁぁぁあアイアンテール!!」
影から飛び出し、左右の壁を蹴りながら立体的に動いてアイアンテールを発動させる。そして、そのまま動揺している相手に全力を叩き込む。相手は思いきり吹っ飛び、階段を転げ落ちてピクリとも動かなくなった。が、かなり物音が大きかった為に、何事かと後ろの方から走ってくるような音が聞こえてきた。
「やっぱりバレた...正面突破するから案内お願い!」
「わ、わかりました! まず階段を下りたら次を右に曲がり突き当たるまでまっすぐに走って下さい! 途中カメラがありますが...いまダミーを送信しましたので走り抜けて下さいっ!!」
「ありがとっ! 電光石火っ!!」
お礼を言いながらその影の者は身体に風を纏って言われた通りにダッシュする。カメラは全て動いて見られているのでは無いかと心配するが、案内人が細工したという言葉を信じて堂々と真ん中を突っ切っていく...。
「突き当たりを左! その後の厳重な扉が目的の場所です!施錠にちょっと時間が掛かるので、その前の防火シャッターを閉じて時間を稼ぎます!! 滑り込んで下さい!!」
「了解っ!! ...ええいっ!!」
言われた通り閉じられる防火シャッターの下ぎりぎりを走り抜けて目的の部屋の前まで到着する。因みにシャッターの暑さは相当分厚く、破壊は一人では不可能と判断するのは簡単だった。
取りあえず、火照った身体と息を整えるために、まるで大の字のように寝ころんで休息をする。
「はぁ......はぁ......危なかった...けれど、後は爆発するだけ...。 ありがとね......」
「........」
「...あれ? はぁ...はぁ...どうしたの?」
「...ホントに良いのですね? コレが貴方が考え出した答えなのですね?」
「...そう、コレが私の答え......一人を、自分の身を、それだけを犠牲にして大勢を助ける...。 それにね、元の世界の私は友達なんて居なかった。ホントの自分を見せられたのは素性の知らない画面の向こうの人のみ......」
「っ!? き、記憶が戻ったのですか!?」
「...ええ、掠れたり黒い雲に隠れていた嫌な事も全部。私が何者で何なのか...せっかく忘れてたはずなのに...最近になって思い出しちゃうなんてね......」
腕で目を隠しながら、多少涙声でそう影は話し出す。
「...私ね、実は人を一人殺しちゃってるの...けれど正当防衛だった......。でも学校に行くとそれまで連んでた人達が全員私から離れちゃった...話しもしてくれなくなっちゃった......」
「...でも、その事を知らない人達を置いていくのも無責任で酷いことだと私は思います」
「...分かってる。分かってるつもり...けれど、さっきの無反応時に録音機能入れたでしょ。それを送ってくれれば充分だから。 ...さあ、開けてこの扉を」
「気が付いてたのですね...では、ドア解錠を開始します。 暗号パターン解析.........判明。システムに問い合わせを実行.........権限取得。コードの転写を開始.........転写完了。セーフロック解錠開始.........解除完了。ターゲットドア解錠開始.........」
暫くしてスライド式のドアが自動で開き、影の子はその中へ入っていく。中は真っ暗だが、影の子には闇などへっちゃらで隅々まで見えていた。
「...逝こう。沈めるために。 早速だけど中に人は居ない?」
「...いえ、一人だけ居るようです。場所的にはサーバールームかと」
「分かった。そうだ、壊す前に中身見た方が良いよね? 私には必要が無いけど、皆には必要なデータがあるかもしれない。それに、録音データを送ってもらわないと。 ふふ、結局前に書いた日記通りに遺言になっちゃった」
「遺言にするしないは今からの行動次第ですよ。やめないことはもう知ってますが...。えっと、データでしたっけ?それじゃあ...このコードを操作盤の横にある穴に差し込んで貰えますか? それを経由し中へのアクセスをするのですが...その間、私は反応することが出来ません。それに防火シャッターの解除パターンは変更しましたがいつ突破されるか分かりません」
「大丈夫、じゃあ終わったら教えて。送信も当然し...まずいっ!」
ふとサーバールームの方向からドアを開くような音が聞こえ、コードを言われた場所に差し込んで物陰へ隠れる直ぐに隠れる。状況を察したのか、接続した本体のディスプレイ証明が真っ暗へと落とされた。
び、びっくりした...。
取り敢えず倒しておかないと危険なんだけど...どんな奴か確認してからじゃないと...
身を隠しながら影の子は相手が顔を出すまで、物音を立てず、息を殺して待ち続ける。すると大きさはその子の三倍から四倍程ありそうなリザードンが現れた。が、最初こそ男だと思っていたがどうやら違うらしい。胸があり、オスよりは身体が丸みを帯びていて、筋肉質ではなかった。
それと顔が何となく何処かで見たことあるような、そんな感じの優しい顔をしていた。
あの顔...何処かで見たことあるような顔付きな気がする......誰だろう...。
って、やばいコッチ来た!
リザードンは方向転換をし、まさに隠れている影の子の方へと歩いていく。それに慌ててもう少し奥まった方へと逃げる。するとギリギリ入れる基盤のコードを通す穴を見つけてその中にお尻から入っていく。
...うわぁ...きっつぅ...それにホコリ凄い......
けど、もう少し後ろに入らなきゃ.........
物音立てぬように無理に後ろへ下がり、リザードンが来るまでに身体全部をその隙間に押し込み終える。徐々に近づく足跡に心臓が押しつぶされそうになりなりながら、なるべくもっと奥へ、もっと奥へと入っていく...
が、それは間違いだった。
「...きゃぁぁぁあっぁぁぁあぁあぁあっ!!?」
何があったか分からなかったが電気が漏電し凄まじい電圧の電気が体中を駆け巡った。その電気は一瞬のうちに影の子の意識を飛ばした...。
ー後書きー
どうもティアです。コチラのストーリーはパラレルとしてメインから分離しました。
つまりこんな運命もあるよという分岐の一つとして執筆するという事です。だから、このストーリーがメインに干渉することなく、全く別物と派生します。