狂い出した歯車 - 前編
「ふう...食べた食べた」
「ラ、ライトさんコレからだというのにそんなに食べちゃって動けるのです?」
「大丈夫だよ。確かに動くけど僕とリーフ、ウィア、ココミは電子戦なんだから。特に甘い物を食べて脳にエネルギーをあげないとね」
口元を拭いてからゴロンと寝っ転がりながらリーフに答える。因みに今居る場所は宿の大広間で、貸し切りにしているので特別に用意してもらったっと言うより、交渉して用意と片付けは自分達でやるとお願いをしたのが正しい。
それに食事の用意、お風呂掃除、部屋をきれいに使ってくれたりまでしてくれて女将は大助かりらしく「ことが終わったらまた利用して頂戴。貸切なんてする事は普通無いんだけど、貴方達みたいな良い子なら貸し切りしても良いわ。 けど、その時は通常の1/3で使わせて上げるわ!」と大盤振る舞いするほど。
それはさておき、現在今はその大広間で全員と食事をとっている。テーブルの上にはココ、アルトマーレで取れた新鮮な木の実や野菜、穀物類を主体とした比較的ヘルシーな物に、決戦と言うことで女将さんが人数分のカロリーがあるものと、オリジナル料理を振るってくれた。しかもデザートもあり、そのデザートはマコトとモルクが女将さんと話して、その弟子と一緒に作ったそう。
「確かにそうですね...わ、私も食べとこ......」
「食べておいた方が良いよ。 ...さてと、そろそろ作戦を話すかな」
「うぐっ......ふー。えっと、待ってて下さい直ぐ食べるので...」
「当然待ってるよ。それに急がなくても良いよ。 詰まらせても困るし、時間はまだあるしね」
「あ、ありがとうございます...」
そうお礼すると、リーフはポフィンを一口ではなく、二口三口で食べ始める。ポフィンはそれほど大きめなサイズじゃない為、リーフのくらいならば一口でも行けるが、やはり口の中が一杯になってしまって喋るのは少々辛いものがあった。ちなみに大体の大きさは直径10cm無いかなくらいである。
「そろそろやるの?」
「あ、うん。やるよ。シルク、大変だとは思うけど現場指示を宜しくね。 ただしくれぐれも無茶をしないように」
「ええ、分かってるわ」
「...ふぅ、大丈夫ですよライトさん」
「分かった。さてと...えー、お喋り中またはお食事中だけど耳傾けてね。今日に関する作戦を発表するよ。リーフ、お願い」
そう言われて前に出るが、ちょっと緊張した様子だった。総勢15任弱、全員の目が一斉にリーフへと注がれているのだから。
けれど、一つ深呼吸するとまるで別人のように話し出した。さすがライトが認めているだけあって、凄い。
「は、はい。えっ、えーっとー...ちょ、ちょっとすいません...。 すー...はぁー......今回の作戦ですが、まず皆さんは見つけたアジトへと向かってもらいます。到着と準備が良いか確認後、私とライトさん、ココミさん、ウィアちゃんがドリームメイカーズのネットワークに進入し、中への突破口を開きます。そして中からは取得出来たマップとエネルギー反応などの様々を頼りにターゲットを無力化してください。なお、内部に不明な巨大反応を確認していますので注意して下さい。 .........え、えーと...つ、次はシルクさんお願いします」
「分かったわ。 えっと、私が担当するのは現場指揮で基本前で指示を飛ばすことになるわ。言うならば潜入組のリーダーと言えば分かるかしら。宜しくね」
「ありがとうリーフ、シルク。じゃあ最後に僕から話すよ。 ...みんな、危険と思ったら引くんだよ。確かに君たちはココ最近の特訓で見違えるほど強くなった。けれど、リファルやギラファ、シルクやウォルタなど一部を除いて日は浅い。 それに相手は本気で殺しにくる可能性も低くはない。何故なら奴等にとっては君達はイレギュラーで邪魔な存在だからね...説明は終わり。作戦実行は正午ちょうどに開始するからそれまでに各自用意をすませておくこと。 そうそう、ギアの更新があるから全員必ず当てておくこと。じゃあ話しは以上。食べるなり喋るなり戻って良いよ」
そう言うとライトは大広間を出て行く。その後に続いてリーフ、ギラファ、ココミと時間差がありながらも続いて出て行った。
「作戦実行...いよいよなんだね」
「.........」
「アーシアさん?」
「.........」
「アーちゃん!」
「...へっ!? あ、えーとどうしたのスイちゃん」
「どうしたじゃないよぼーっとしちゃって。アーちゃん『中庭から戻ってきてから』なんか様子が変だよ?」
「そ、そんなわけ無いじゃないですか。私はただ今日の事を...考えていただけだから」
「あれ、行くんですか? なら僕も」
「ううん、まだ居て良いですよ。朝風呂入ってくるだけだから」
「...そっか、行ってらっしゃい」
「私も行こっか? 洗えないでしょ?」
「大丈夫。シルクさんと同じ方法使うから一人でも洗える。じゃあね、あとで」
ーーーーー
人の通りがまばらな町並みの中を走り去っていく一つの影。人の目があっても気にせず走り去り、何処からか聞こえてくる女性の声の案内に従って進む。途中息切れを起こしながらも構わず全力疾走をし、石畳の出っ張りに転びそうになりながらも構わず前へ足を出し続けていた。
それを見ていた、先ほどから案内している女性が「...あ、あの......本気なのですか?」っと、訪ねてみる。けれど耳に入っていないらしく足は止まらなく、質問の返答も帰ってこない。するとその反応に諦めたのか「そう...ですか......」と、悲しそうに案内の女性が呟いた。
暫くして、その影と案内人はとある工場前に立ち止まっていた。
「あ、あのー...ほんとに行くのですか?」
「...うん、私はもう迷いはない。無茶は承知の上だし、危ないとなったらちゃんと引くから」
「...絶対ですよ。 ドア、施錠します」
確認を取ってから短い電子音の後にロックが外れたような音が鳴る。その扉に影の物は手を伸ばして捻り、中へと進入する。すると中は町中とは全く似合わない近代的で、まるで秘密基地のような廊下に出た。外は煉瓦作りや石造りなのに中は鉄のような材質な物で上下左右が作られていた。しかも遠くの方にはカメラなような物が天井近くの壁に設置され、左右に動いていた。
「ココが...」
「そうです。私がスキャニングして得られたデータとココでの活動データを合わせて発見した基地です。 本拠地...ではないですが、それと同等の規模があると推測。破壊出来ればかなりの大打撃を食らわせることが可能です」
「そう...なら早く用意しないとね。みんなが来る前に」
「...分かりました。私はもう何も言いません。貴方が願う方法に私は最後まで付き合います」
「ありがと。それじゃ...いこ」