怪しき者 - 中編
「...おい、あいつら.....」
「ああ...うわさ通りだ......」
「...作戦通りに行けよ?」
ーーーーー
「...なんか、すごく見てません......?」
「...だな。全員構えとけ」
アーシアの指摘を受けて、リファルは全員に指示を飛ばす。実際、近づくと周りを見るのやめ、怪しい人たちはコソコソとなにか話し出したからである。
今の距離は大体10m程。どんどん近づいていく...
そして残り3mも無いくらいになった時、
「おい、ちょっとお前ら止まれ。 若いもんたちがこんなところで何してる」
怪しい三人組が近づき、初手でゴウカザルが四人に総質問する。その間に二人が逃げられないように後ろへ回りこんでいた。
「何してるって、観光だ。 ココは色々と南地区と違って色々と空気が違うからな。お前たちもそうなんだろ?」
「まあそうだ。ちょっと質問なんだが...いや、後回しに言うのは面倒だ。 チームリライトのリーダーであるリファル。そしてお前たちを捕らえさせてもらう。手荒れな真似はしたくない」
「お、おい作戦を台無しにする気かてめぇは!?」
ゴウカザルの言ったことに対して、ストライクが噛み付くように言う。四人にとっては作戦がなんだかは分からないが、良いことではないことには間違いないだろう。
「要するに、お前たちは俺達を捕まえたい。そう言いたいんだな。 が、俺達は捕まらねぇーぞ」
「ふふ、どうかな。お前たちは絶対敵うわけがない。 いや、既に確定してるんだがな」
ジュプトルは薄ら笑いを浮かべながらそういう。
「どういう事だ」
「まだ分からないのか。周りを確認したほうが良いぜ?」
「...なっ!?」
振り返ると、先程は居なかったフーデンが自慢のスプーンを光らせながら立っていた。とっさにリファルはやられたと思った。今出そうとしているのは"催眠術"で、掛けられたらたちまち寝かされてしまう...。
「...ふっ、お前たちと話して気が行っている間に後ろから更に加勢か。 そんなことするなら力ずくでどうだ。あっさりと事がおもしろくねぇーだろクソども」
「この状態でよく言うじゃねぇーか。 いや、お前はそういう奴とデータが出てたな。悪いがそれには乗らねぇぞ」
「データか、そんなもんに頼ってると柔軟に対処できないって覚えておいたほうがいいぞ」
「ふふ、だろうな。 そうだ、ひとつだけ教えてやろう。俺達の目的はお前なんかじゃねぇ。お前だアーシア」
「わ、私ですか!? 一体なんでわたしなん...」
「アーちゃんっ!?」「アーシアさんっ!?」
急にアーシアが前につまずくように崩れ倒れる。マコトはすぐに起こして見ると、
「...うわっ!? 何このすごい熱...」
それは苦しそうに呼吸を繰り返し、今にも意識が飛びそうな弱々しい目で見てくるアーシアの姿だった。けど、さっきまではそんな様子は全くなく、言うならば接触する前は至って正常だったはず...。
「て、てめぇ一体何したっ!?」
「なにって、過剰な催眠術の念をぶつけただけだ。 催眠術という技は貯めれば貯めるほど対象者に対して大きな効果をもたらすが、過負荷でぶつけると対象に対して身体的な異常をもたらすことが判明してな。実際に試したことはなかったが、まさかここまでとは」
「...みん...な...ごめ...ん.....ゆだん...しちゃった.....」
「アーちゃん、しばらく喋っちゃダメ...。安静にしてて...」
「ごめん...ね......こめん...ね......」
「...あ、もしかしたら...アロマセラピーっ!!」
スイレンはふと気がつき、技を発動する。落ち着くような匂いが全員を包み込んでいく...
「ちっ!! 面倒な技覚えてるじゃねーか。炎の渦っ!!」
「やらせねーよ。守るっ!!」
ゴウカザルの攻撃を咄嗟に緑のバリアで全員包み込む。だがかなり威力が高いのか、バリアがどんどん歪みはじめる。
「おうおう、もう壊れそうだぞ。喰らえ、リーフブレードっ!!」
ビシッっとヒビが入る音が二回鳴り響く。その後連続で鳴り続く…
「くっそ...このままじゃ持たねぇ...。 あ、お前あれ使えたよな?高威力の」
「は、はい」
「カウントするから、0で発射しろ。タイミングは一度っきり。ミスったらただじゃ許さないぞ。 ...3...2...1...今だ!!」
「いっけぇー、ハイドロポンプっ!!」
すっと、壊れる瞬間にマコトがリファルの前へ入って、ハイドロポンプを発射する。その攻撃は見事成功し、ゴウカザルを壁までぶっ飛ばして、なんと一発KOさせた。
「ギルアっ!? おいおい...データと強さが全然違うじゃねぇーか......」
「まさかこのデータ...古いのか...? でも、来る前に最新を当てといたよなマース?」
「あ、ああ...」
ふっ飛ばされたゴウカザルを見て、マースと言われたジュプトルは縦10cmの横15cm程あるタブレットを見て、横からストライクが覗きこむ。多分アレに四人分のデータが詰まっているのであろう。いや、もしかしたら全員分のデータが詰まっているのかもしれない。
「ほー。そのデータは何処で取得したかは知らないが、相当昔のデータが入っているみたいだなぁ?」
「う、うるせえ。 ...ふんっ!! こんな情報いらん。己の拳で直接調べてやる。行くぞサネゴア、ジグ」
「ああ、その言葉待ってたぜマース。 殺さぬ程度に痛ぶってやる」
「また俺の状態異常技で片付けてやる」
後ろでまた何を溜め始めるジグと言われたフーデン、体制を低くして特攻状態のストライクのサネゴア、端末を地面へ叩きつけてリーフブレードを構えたジュプトルのマース。同じく3対3だが、こっちはアーシアがダウンしていて、しかも狙いはアーシアだ。
寝かしていたりしたらそのまま連れて行くだろうし、かと行ってそこそこ重さがあるから担いでいたらまともに動くことなどできない。ある意味絶体絶命だ。だからとはいえ、ずっとこのままだとやられるのも時間の問題...。
「...しかたねぇ。こっちもやるぞ。 マコト、お前はフーデンを。スイレンはストライク。俺はジュプトルを攻撃する。いいか、アーシアが連れて行かれそうになったら最優先で阻止しろ」
「了解ナノっ!!」
「了解!! ...さっそく使わせてもらうよ。この技を」
スイレンは先手必勝でストライクへと駈け込む。マコトは聞こえない声量で技名を口にしてから同じようにフーデンの前まで駆け込んだ。
一方リファルはその場でほんの数秒目を閉じ、リファルの周りにキラキラとした物が漂い始めた所でリファルも敵の前まで駆け込む。その状態でエナジーボールを連発するが、ジュプトルは冷静に全てのエナジーボールをリーフブレードで断裂しながら切りかかってくる。
「ちっ、ちょこまかと動きやがって...」
「すばしっこいのが俺だからな。 てめぇーも同じようにちょこまか動いてんじゃねぇ」
マースの皮肉に、皮肉でリファルも返す。言葉的には苦して言っているようには聞こえないが、実際は上下左右に、壁を使ったり、時には空中でリーフブレードとアイアンテールの直撃で小さな衝撃波が発生したりして、かなりハードな戦闘を繰り広げている。
では場面をスイレンに切り替えとし、こちらはストライクのサネゴアとの戦闘。コチラも同じようにエナジーボールを常に展開して飛ばしながら、行けそうなときは体当たりや、脅威的な威力を持つ後ろ蹴りを狙う。そして受けたダメージは走りながら光合成を使って微々たるながら回復をする。
「君、かなりその鎌を振り回すのやめて。 それに、女の子だから少しは手加減してほしいナノ」
「馬鹿言うんじゃね。 手加減なんかしたらこっちの命があぶねぇんだ。それにさっさとアーシアを回収する仕事も残っている上、手短に済ましてぇんだよ」
「アーちゃんは連れて行かせない。 あなた達が何をするのか、何を求めるか知らないけれど、アタシ達はドリームメイカーズと戦って、この世界を平和にするためにアタシ達はココに居るのっ!!」
「…ふふ、そうか。お前は俺達の本当の目的を知らないわけか」
「ほ、本当の目的...?」
「知りたいか? なら、付いてくるが良い。アーシアもその方が安心するだろうし、苦しんでるのも解いてあげるぞ?(その方が言うこと聞くだろうしな...)」
スイレンは緑色のバリアを解き、サネゴアの意見に対して悩み始める。やはりデータ通りまだ子供だとサネゴアは思った。そして、このまま甘い誘惑で落とせるとも。
「...ホントに、アーちゃんを元に戻してくれる? ホントの目的も...教えてくれるの......?」
「ああ、約束しよう。 付いてきてくれるな?」
「...うん......」
ー後書きー
どうも、ティアです。
え、何早いじゃないかって?休日だったのでたまにはPCでゆったり書こうと思ってたらいつの間にかにあら不思議、書き終えてました(