様々な思い
Side ヨーテル
「みんな、集まったね? まず最初にお疲れ様。一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなって良かったよ。ホントに感謝してもしきれない」
「ぼくたちの力だけじゃダメだったよー? ライトお兄ちゃんやみんなが居たからできたんだよ?」
「うん、マートル君の言う通り僕もそう思う。そもそもに、このGギアが無ければ僕とスイレンはみんなと出会うことは出来なかっただろうし」
「...なにより一番の感謝はリファルさん、よね。リファルさんが鍛えてくれたこそアタシ達は目的を達成出来た。リファルさんのお陰でオカリナの力に頼らずとも、自分の力でみんなを守れた。お礼は山ほどあるのに...なんで消えちゃうのよ......」
「...アレからリファルの事をギルドが捜索終了してから探し続けているけれど、まったく進歩無し。そもそもにこの諸島に居るか分からないし、あっちはラティ達が探してくれてるから、何かあったら連絡あると思うし。そうですよね?」
「はい、そうです。一応他の諸島を探していますが、やはり変わりが無いです。やはり大まかに探すのは困難で...」
「...でもなんだろ。リファルの事だからふらっと帰ってきそうな気がするのよね。そもそもに、見た目が違うとしてもリファルを好きなのは変わらないし、それはみんなもでしょ?」
「当然ナノ! 例えどんな姿であろうとも、リファルさんなのには変わりない!」
「そうだね、僕も同感だよ。だから絶対にリファルの事を僕やギラファ、リーフで探し出すよ」
「...あの、ところでココミさんは?」
周りを見て見当たらなかったので、訪ねてみた。確か行くってリーフさんと話していたのを聞いていたから。
「ココミは新しいギアの開発が忙しいのと、会議が入っちゃったからそっち行っちゃってる。多分抜け出せないって」
「そうですか...ところでなのですが、この機械が現実に戻る装置...ですか?」
「正解だよヨーテル。コレが君達を元の世界に送り届ける装置で、君達はこのリングを通り抜けて目覚めればあっちの世界さ」
「それって、飛ばされる前に戻されるわけ?」
「うん、そうだよ。何か問題あったりする?」
「わたしスマートフォン...っと言っても分からないか、Gギアみたいなディスプレイ付きの端末でココに飛ばされてるから...その、お風呂の中で......」
「あー...リト、ごめん。調整がかなりシビアだから、変更すると逆に君的に危険かも」
「それは違う場所に飛んじゃうからとか?」
「確かにそうなんだけど...その、お風呂の中って事は...」
「...あっ」
「そ、そう言う事。今は問題無いというか、着てないのが案外普通だからどうにかなるけど...そっちの世界では必須なんでしょ? まったく、こんな事言わせないでよ...」
「ご、ごめんなさい...」
そうなんだ...人間とは中々に不便そう。私も寒い時は一枚羽織ったりするけど、動き難いしなんだかゴワゴワして気分が悪いのですよね。それに尻尾の炎を抑えなきゃいけないから、ちょっと疲れちゃいますし...。
「と、ともかく君達の座標を操作して、もし地面に飛んじゃったり空中に飛んじゃったりしたら嫌だから元の場所にしてるよ」
「...ライト、そろそろ時間だぞ。波長の波が落ち着いてきた」
「装置のセーフティー解除、エネルギー注入を開始します。この後の微調整はあの子に任せます」
「ん、ありがとうギラファにリーフ。さて、送り出す前に良い事を一つお預けにしてたね...良い事とはコレだよ。出てきて」
『...えっと、皆さんお久しぶりです』
「えっ...ウィ、ウィアちゃん? けど、ウィアちゃんは...」
...お久しぶり?
装置の奥からぴょこっと出てきたお方は、所々身体を黒くして、片手に工具を持ったピカチュウの女の人...何故でしょ、見た目と雰囲気がウィアちゃんに似ているような......。
因みに同じように思って声を上げたのはアーシアさん。ウィアちゃんとアーシアさんは結構話していた場面を見た事があったから、そう思ったのかもしれない。私はネットワーク上の世界でウィアちゃんの分身を見ていたからそんなような気がしたけれども...。
「うーん、ウィアお姉ちゃんにそっくりだ! でもピチューじゃなくてピカチュウじゃないけど...」
「で、でもウィアちゃんはネットワーク上の存在でしょ? でも...まるでこの人...ライト、説明しなさいよ」
「ちょ、なんでレイエルは怒り口調なのさ...。まぁ、うん...ウィアは僕が作ったナビゲーターでネットワーク上の存在...だった。今はドリームメイカーズの整体研究チームのメンバーと協力して、現実でも動けるようにしてもらったんだ。どうやら昔の時代から連れてきた身体は導かれし者達の全員と、行方不明の身体、そしてピカチュウの身体もあったんだ。 それを見つけた僕はウィアの記録と記憶、感情や思想をミュウさんの力も借りて流し込んだんだ。成功するかは五分五分だったけ...」
『マスター、ちょっとお話が長いですよ。まず最初に皆さん本当にお疲れ様でした。あなた方のお陰で世界の崩壊を阻止することが出来ました。 それとモルクさんミミアンさんヨーテルさん...心配を掛けてごめんなさい。けど、あの場はそうするしかなくて...ミミアンさん?』
「...もうっ!」
『いったぁ!? ミミアンさん一体何をす...』
「...ぐすっ、ずっと...ずっと待ってたんだから。ウィアちゃんとまたぐすっ、話せる時を.....」
『...ごめんなさい。まさかデータのわたしをココまで心配して下さるとは...ミミアンさん、ありが...いったぁ!? な、なんで...』
「データだからって関係ないでしょ! ウィアちゃんは私達の大切な仲間なんだから! サヨナラも言わずに消えて...許さないんだからっ!」
『あわわ...ご、ごめんなさい......』
「ミ、ミミアンちゃん落ち着いて。ちゃんと私達の前に帰って来てくれたんだから良いじゃない。ね?」
「...シルクさんがそう言うなら......」
「えっと...何か予想外の展開になったけど、これが良いお知らせだよ。ちなみにさっき言った行方不明の身体に関しては代替の検討が付いたから心配しなくても大丈夫だよ。リーフ、後どのくらいでゲート稼働が出来そう?」
「あともう少し.........行きました、リンク確立。ウィアちゃん、微調整回れる?」
『は、はい!』
「...さて、改めて言うけど君達はこのゲートを通り抜ければあっちの世界で目覚める。流石に時間までは操作は出来なかったけど...それは勘弁してね。じゃあ最後に誰か言いたい事ある人は個人でバイバイして。因みにリーフ、ウィア、フィリアは挨拶が終わり次第調整を手伝ってね」
「あっ、はい」
『マスター、ありがとうございます』
「ありがと、感謝するわ」
...あっ、行っちゃった。うーん、個人でバイバイ...やっぱりリトさんかな。一番長く一緒に過ごしたし。
「リトさん」
「ヨーテルちゃん...お別れだね。一緒に居てとても楽しかったよ。なにより...リトちゃんの家で過ごした一ヶ月間とか、特に。目を瞑れば色んな記憶が思い浮かぶもん」
「それは私も。あの、こんな事言っちゃいけないって分かってるけどぐすっ...ほんとに行っちゃうの?」
「...反則。私だって本当は残りたい反面、帰らなきゃいけない気持ちが乱れて、帰らなきゃならないんだと言い聞かせてたのにぃ...ぐすっ......」
「っ! ごめんなさい...忘れてって言ってももう遅いよね...?」
「当然よぐすっ.........ううん、私やっぱり行く。やっぱり私が生きるべき世界はあっちの世界だもん。だから、あっちに行く勇気として、リトちゃんの事を抱いていい?」
「...ふふ、その言葉が出てちょっと安心しました/// 良いですよ。爪痕が残るくらい思いっきり」
「なら...えいっ!」
リトさんが飛び付いてきたのを、しっかりと足を踏ん張ってそのまま強く抱いた。けど抱いた瞬間に離したくない、このまま一緒に過ごしていたい思いに泣きたくなっちゃうけど、なんとか堪えて抱き続けた。大体約十秒くらいかな、リトさんの手が緩まったから私も緩ませて、改めてとリトさんの姿を見た。目尻は赤いけれど、私に笑いかけて...
「...ヨーテルちゃん、今までありがとね。わたしヨーテルちゃんの事は一生忘れないわ!」
「私もです! あっちでも元気に過ごして下さいね?」
「ええ! ...じゃあ皆さん、ありがとうございました!」
そう言うとリトちゃんはゲートに駆け込んで、背中から入ってた。その時、リトちゃんの見せた笑顔を、いつものリトちゃんを見ることが出来た...。
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Side モルク
「モルクお兄ちゃん...ボク、バイバイしたくないよ......」
「僕だってそうだよ...それにマコトやスイレンちゃんも居なくなるなんて...」
「モルク、ホントにごめんね...。残りたかったけど、戻るチャンスが無いとなれば帰らないと」
「戻れるのなら絶対残ってたナノ...それに、モルクには木の実に感して凄くお世話になった。モルクが居なければシルクさんと共にあの回復薬は作れなかった。本当にありがとうナノ!」
「僕からも感謝するよ。僕が知らない木の実やそれに関する事を色々教えてもらってとても楽しかったっ! まあ、元の世界に無いのが悲しい所かな...」
「な、ならコレを持ってってよ! 植えれば実ってくれる筈だから!」
「気持ちは嬉しいけど...そんな事したら大変な事になっちゃうよ。だから大事にコレは持っとくよ...ありがと」
「うん、分かったよ。それじゃあ...そろそろ行くんでしょ?」
「そうだね...今まで本当にありがと。僕達が帰ってもモルクと過ごした日々、この世界で過ごした日々を絶対に忘れないよ!」
「アタシもナノ! モルク、ありがとね!」
「モルクお兄ちゃん、またね!」
「うん、バイバイ!」
僕は涙を堪えながら三人を見送った。みんな、やっぱり元の世界に戻れるのが嬉しんだね...僕も良かったと思ってる反面、帰らないでと思う気持ちが同じ割合である。それに、もし自分が同じ立場ならだどんな方向を取ってたんだろう...。
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Side アーシア
「えっと、みんなお疲れ様。みんなと出会ってから約半年間のあいだ共に過ごして、たまには辛い事があったり、楽しい事があったり、とても楽しかったわ」
「私もですシルクさん。ホントにお世話になりました」
「私もお世話になったわ。ウォルタさんからも色々と歴史の事とか、調べた資料とか見せてもらって色々と勉強になりました」
「資料量やら情報量に関してはシルクには勝てないけどね...って、そんな話はともかく僕達自身も色々とありがとう。君達が居なければこの世界がどうなっていた事か」
「ううん、これはこっちのセリフですよ。シルクさんやウォルタさんと出会わなかったら無茶し続けて、今頃死んじゃってたかもしれないから」
「縁起でもないこと言わないの。うんっと、このままだとずっとこのままになりそうだから切りましょ」
「そうね。思った以上にリンクの安定が不安定になり始めた。予測なら一時間以上は保ってくれてる筈なのに、なんか変ね...。 閉じちゃう前に戻った方が良いわ」
「そうですね...じゃ、私はお先に。シルクさん、ウォルタさん、フィリアさん、本当にお世話になりました! 本当に楽しかったわ!」
「私もよミミアンちゃん! あっちの世界でも元気に過ごすのよ!」
「はい! それじゃアーちゃん、先行ってるね。もし出会う事が出来たなら、また宜しくね?」
「うん! 宜しくねミミちゃん!」
そう言って、ミミちゃんは走り飛んでゲートを潜って行った。周りを見渡すといつの間に潜っていないのは私だけになっていて、この場に残るのはシルクさん、ウォルタさん、フィリアさん、少し遠くにモルクさんだけになっていた。そう思えばレイエルさんはどこに行ったのだろう...レイエルさんに最初かなりお世話になったからお礼が言いたかったけど...。
それに、元の世界に変えると言い聞かせて、そうすると決めていたのに...決めていたのに......わたし、帰りたくないって思ってる。根本的な問題は解決したけれど、闇に捕われし者はまだ大勢居る。不思議のダンジョンの事件も絶えなくて、未だ行方不明者や怪我人が出てるって噂も聞いてる...。
私達が来た、呼び出した事により時空が歪んでこの世界の住民が被害を受けていて、自分の世界を救えたからバイバイで良いの?
やっぱり、それらの解決をしないと帰っちゃいけないんじゃ...