ポケットモンスターズファンタジー〜導かれし者達の軌跡〜

















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Epilogue
得て失うもの
Side ウォルタ


 僕はシルクに言われた通りにライトさんに連絡を入れて、アーシアをスイレンがリトを僕が運んで、安全確認をマートルに任せてドリームメイカーズの工場からの脱出を計っていた。だけど、やはり僕達はシルクやリファルさんとスガマサさんが心配で、あんまり遠くまで逃げては無かった。それに、一階層分降りたら竜巻の影響は全く無かったし、何よりドリームメイカーズの手下って言い方で良いのか分からないけれど、とにかく人が何人が物音などに聞き耳を立てて歩き回ってたから身動きが出来ないんだよね...。
 強行突破する案もあるにはあるけれど、怪我人を運びながらの行動はかなりリスクがある。かと言って同じ場所に留まってても、そのうちに来て見つかっちゃうかもしれない可能性もあった。こんな時にミュウさんが居ればどれだけ頼もしい事か...ううん、レイエルでも居てくれると助かったかな.........でも、やっぱりシルクかな...。

「...あっ、みんなもどって。コッチ来てる」
「ん、分かったよ。 ...うーん、あんまり進めないね。それに上に行く階段に戻されてるし...」
「そうですね。って、あれ...風が止んでる? それに、何となく息苦しさも無くなったような...」
「そう?」
「...うん、間違い無い。草タイプの勘でそう思うナノ」
「...あ、このままだとコッチ来るかも。かいだんを使ってよけよう?」
「そうだね。ココはL字になってるし、反対から来られちゃうと挟み撃ちに合うから」
「うん、わかった。うしろを見るね?」

 僕も聞き耳を立てて、後どのくらいで来るのかを感覚で試みてみた。この建物の中は金属のような素材で作られていて、普通に歩くとカンカンと少し高い音がする。低い音と違ってこの音は聞き取りやすいのが救いかな...。

「...うん、今なら行けるよ」
「じゃあ行こう。でも気は抜かないようにね」
「分かったナノ」
「うんっ」

 僕がそう言うとみんなは頷いて階段を登っていく。それと登ってて分かったけど、スイレンが言っていた通り風が全く吹かなくなっていた。最初に降りる時は風が強くて、何度か足を踏み外しそうだったのか嘘みたい。でもこんなに変わるって事は...なにかあったのか、決着が付いたかの二択だよね...大丈夫だよね...シルクとリファルさんだ...

「...ん? Gギアが震えてる...マートル出れる?」
「ふぇ? あ、ブルブル止めてたから分からなかった。でるよ?」
「お願いナノ。アタシ達は二人を担いでるし」
「...えっと、どうしたの?」
『繋がった! みんな大丈夫!? 怪我は!?』
「うわわ!? 声が大きいよ...ちょっと小さくして?」
『ごめん。それで大丈夫なの?』
「うんっと...アーシアお姉ちゃんはねむってて、リトお姉ちゃんも同じかな。あとはウォルタお兄ちゃんとスイレンお姉ちゃんがいるよ」
『えっ...シルクやリファルは? シルクに関しては弱いながらに反応あるけど、リファルの反応は全く無いんだよね。しかも反応が無くなる前に異常なバイタルが検出されてたし...とにかく、近くに居たら接触を試みてくれない? 無論、その異常バイタル反応が現れてからダークライが作り出したであろう異常気象反応は停止。及び時空間の乱れは危険値から安全数値まで下がってる』
「それってつまり...? シルクとリファルさんの二人でか、リファルさんだけでダークライを止めたって事?」
『その可能性は大だよ。けれど本当にそうなのか君達の目で確認して欲しいんだ、通話は繋いでおくから気をつけて確認してもらえる?』
「うん。えと、ウォルタお兄ちゃん」
「言いたいことは分かってるよ。行こう、周囲確認任せたよ」
「うん、まかせて」

 胸に手を当ててマートルは頷いて、階段を登り始めた。なんだろ、最初は少し臆病だったのに今ではこんなに頼もしくなって、最年少なのに僕達と同じくらいに強くなってる。特に危機察知能力に関してはリファルさんと同等あって、マートルと居る時のリファルは凄い嬉しそうな顔してたのが印象的だったなぁ。
 ふと思うと、最初のリファルさんは怖いイメージが強かったけど、マートルが強くなりたいって言ってマンツーマンで特訓を開始してから、僕達に対しても棘のある言葉から少し減ってたり、冗談も言うようにもなったんだよね。まあ、最初の冗談にはみんな驚いちゃって反応が出来なかったけど...うん。

「...うん、ここは居ないみたい。後はさっきの部屋まで戻ればいいんだね。みんな...大丈夫かな......」
「きっと大丈夫ナノ。シルクさんも強いし、リファルさんなんてもっと強いから...」
「ほんと、何事も無くみんなと帰れると良いなぁ...。さてと、ここまで来たね」
「うわぁ、グッチャグチャ...所々で床抜けてるし、あそこの壁なんか大穴が空いちゃってる。床も抜ける可能性があるから...ちょっとみんなここで待ってて、ウォーグルの姿で運んでくるから」
「お願いしますナノ。気を付けて...」
「二人とスイレンちゃんはボクが守るよー」
「うん、頼んだよ。何かあったら呼んでね......ってと、行ってくる」

 頭の中でウォーグルの姿を想像しながら僕は目を閉じた。少しして再び目を開けると、僕の姿はミズゴロウからウォーグルへと姿が変わっていた。取り敢えず中途半端に扉が邪魔だったから、開け放ってから飛び上がって中へと入った。
 にしてもほんとに凄いことになってるね...穴ボコだらけで、一部は三階層分空いてたり、ホントに飛んで侵入するのは正解だったかもしれない。最悪分からず落ちて...ちょっと待って、まさか落ちてないよね?

「...あっ、居た! スガマサさんも大丈夫で......え、ちょっと待って...」

 ...嘘だよね?
 僕は近寄りながら何度も瞬きするけれど、目の前の光景が変わることが無かった。これ、スイレンになんて言えば良いんだろう...伝えないといけない事だろうけれど、言えないよこんな事......。

「...ん、あそこに転がってるのはPギア? リストバンドの部分が凄く鋭利な刃物で切られたみたいな感じ...まさかね」

 僕はその考えが嘘だと良いなと思いながらGギアを操作して、目的の人物を選択して呼び出しボタンを押して見る。暫くの間があって、片手に持つPギアが震えてディスプレイには僕の名前が表示されていた...いま通話をした人物はリファルさん。つまりコレはリファルさんの持ち物で間違いないと言う事。一体リファルさんに何が...周りにはそれらしき人も居ない。

「...取り敢えずシルクを運ぼう。ずっとこのまま居るのも危ない気がするし」

 そう思って、僕はシルクを傷付けないように掴んで飛び上がろうとする。いつもなら助走付けるなりジャンプして飛び上がるけれど、床が危ないので羽ばたきだけで飛び上がってマートルやスイレンのところに戻り始めた。
 そんな時、僕は丁度さっきまでいた場所から非常に嫌な音が聞こえた。それはミシミシとガラガラと崩れるような音...そして、僕は振り返ると絶望をした。何故なら、まさにその場所だけ床が抜けてスガマサさんの姿が無かったから...なんで、こんなにも運命は悲痛なの...?
 つまりスイレンは...父の姿を見ることなく、せっかく会えたのに...こんなの...こんなのってないよ...。でも伝えなきゃ...そう心に言い聞かせて、僕はマートル達が待つ入り口まで戻っていく。伝えると言っても、どんな風に伝えれば良いのかな...。

「...ウォルタさん、シルクさんを早く」
「あぁ...ごめん。スイレン、頼んだよ」
「...ウォルタお兄ちゃん、かなしいの?」
「えっ...」
「アロマセラピー...。ウォルタさん、お父さんは何処...?」
「お、お父さんは...」

 ダメだ、言い出せない。しっかりと言うって決めたのに。でも、本当になんて言ってあげれば良いの...?
 真実を伝えつつ、それに対して少しでも緩和出来そうな言葉...。

「...ウォルタお兄ちゃん? スイレンのパパは?」
「...ごめん、間に合わなかった。もしかしたら聞こえたかもしれないけれど、さっき床が崩れたんだ。その時に...」

 ごめんスイレン、やっぱり僕には荷が重すぎて全て言えないよ...。言おう言おうとしてもどうしても声が突っ掛かっちゃう...。
 そして長い沈黙、けれどそれを破ったのは意外な一言だった。それは...

「...そう、やっぱりなんだ」
「...え?」
「...ごめんなさいウォルタさん。あたしね...見ちゃったんだ。うっかり声を出しそうになったけれど、ココに着いた時に既に嫌な予感はしてたナノ。勘...なのかな、もう既にお父さんが居ないような気がしてたの。 たぶんウォルタさんはあたしを傷付けまいと、心の中で葛藤があったんだよね...? それに...ここからでもお父さんの怪我は見えてた。あの傷は私では助ける事が出来ないってすぐに分かったし、それになんだか...今のあたしは落ち着いてるの。おかしいよね。 あとね、まだあたしの中ではお父さんは死んでないの。あたしと共に心の中で生き続けて、今もあたしに大丈夫と呼び掛けててくれる。あの優しい声で...今も......」
「...君は、スイレンは...強いよ、凄く。僕には到底敵わない...」
「...ううん、ちょっと強がってるだけナノ。だってね...もう、あたし...ぐすっ......泣き出しそうだもん...。でも、いまココで泣いてたらぐすっ...落ち込んでたら...シルクさんをぐすっ...助けられないから...」
「っ! スイレン...」

 アロマセラピーの光に乱れが出るけれど、直ぐにその乱れを抑えてシルクに流し込み続けていた。そして僕は、その姿を見て何も言えなくなってしまった...。

ティア ( 2017/01/16(月) 18:12 )