導かれし者
場所は変わって現実世界。外は葉っぱに色つく季節である秋で、所々の場所には落ち葉が降り、それが壁の淵に吹き溜まってオレンジ色の小さな山が出来ていた。そして時々強い風が吹いてその枯葉を吹き上げては落とし、吹き上げては落とし、吹き溜まるのを繰り返していた。
そんなことを横目で見ながら課題をやって片付けてるが私、柴咲 弥生。正直嫌になる程の課題の量で、せっかくの秋休みだというのに何処にも行く時間が取れなかったし、作る時間もなかった。でもどんのな物事もやり続ければいつか終わるのだ。私は終わった課題をホッチキスで ぱちんっ と止めると鞄の中に滑り込ませた。
「さて、これで課題終了っと。んーっ、やっと終わった。 さーてと、時間も時間だしどこにも行けないからサイト見て回ろうかなっ」
そう独り言を言いながら私は、小学校から使っている机の引き出しの最上段の右側から白いノートパソコンを引っ張りだして、電源コード、USBマウスとUSBメモリーを差し込んで電源を入れる。本体自体はちょっと古めだがスペックはまぁまぁある...と思うものを、約二年分の貯金を銀行から下ろして父と母とで電気屋に行って買ってきたパソコン。プロセッサがIntel i7の2.20GHzで、物理メモリは8GBのグラボはIntel HD3000 だったのが今となっては少し不満だった。ただ、HDDの容量が500GBだったのと、USBの新たな規格の3.0が入った中古品の現品限りで6万円弱っという値段だったので、やっぱり微妙な線だった。
そして今はセッティングを済ませ、パソコンを起動してブラウザを立ち上げているところである。そこからブックマークからいつも行くサイトへ...
「えーと...あれ? ブックマークに登録しておいたはずなのに消えてる? 検索かけるしか無いかな。 検索ワードは『ポケボード』っと」
ポケボード、それははポケモンが大好きの人に送る交流の場とも言われるところで、部屋と呼ばれる8つの掲示板で構成されている。
1つ目はピカチュウ部屋。ここではポケモンに関係することをみんなで話すページで、私は毎回は来たらまっさきにこのページに訪れて話すのだ。
2つ目はライチュウ部屋。こっちはポケモン以外のことを話すページで、私は利用したこと無いのでよくわ分からない。
3つ目にソーナンス部屋。ここではいろいろな質問が出来るので、私は不思議のダンジョンシリーズの事をよく聞いたものだった。アンケートも出来るのでどのブイズが一番好きか?っと言うアンケートを出したら、投稿すごい事になったのが今でもはっきりと覚えている。ちなみに私は断然『イーブイ』派だった。
4つ目にペラップ部屋。ここも開いたことがないので分からないが、言葉繋ぎして遊ぶ部屋らしい。
5つ目にラティアス部屋。このページではポケモン小説を書いて投稿するページ。だけど私はすでに他の小説投稿サイトで公開しているので使わなかった。
6つ目にラティオス部屋で、この部屋はラティアス部屋に書いた小説の管理とかを主にしている部屋。
7つ目はポリゴン部屋。このページはポケモンバトルをしたい人が自分のフレンドコード、時間などを指定して対戦を予約したり、大会を作ったりするような部屋。
最後に管理主に連絡や問い合わせを行うプクリン部屋。間違って投稿してしまったスレッド、消せなくなってしまったスレッドを消して欲しいが殆どのコメントだった。
ちなみに私はと言うと、つい最近この掲示板を知って、ここでは《アーシア》っと言うペンネームでこのサイトを出入りし、交流していた。いろいろな人と同じ事で語り、楽しみ、たまには面白い話とか、色々なことを聞きくことが出来た。そして今回もピカチュウ部屋に入って何を話そうかなっと思って入って見たのだが、すぐにとあるスレッドに目が止まった。それはトピック一覧の一番上のスレッドに 助けてください とタイトルが付けられたそのスレッドがあった事。まさかっと不意に感じて他の部屋の全てのページを回ると同じスレッドが立っていた。どれを開いてみても本文にはURLが一行だけ書かれているだけだった。
プクリン部屋にもこれを削除依頼があるようなのだが...あるっという人が少数と無いっという人が大勢居る事である。そして管理人も 無い っという立場の方で対応に困っているようだった。
「これって...荒らし?それにこのアドレス...えーと ドリ...ドリームメイカーズ...夢を作る?どういう事なのよ、このアドレス...」
アドレスの名前を読んでみるとそう書いてあった。ちょっと気になったが、大概このようなサイトに飛ぶと個人情報抜き取られたりパソコンを壊されたりウィルスに感染したり、いいことはあるわけがない。そしてこのような事を 荒らし と呼ぶ事を私は知っていた。でも...荒らしにしては手が巧妙すぎる。だってさっきも言ったように見えない人と見える人が居るのだから。それを踏まえて...
「気になる...騙された振りしてこのアドレスに飛んでみちゃおうかな? どちらにせよインターネットセキュリティは入ってるし、最悪リカバリディスクもあるしね」
そう言いながら不思議なアドレスの上にカーソルを添え、このまま右手の人差指に力が入ればアドレス先に飛ばされることになる。ちょっとドキドキしなが人差し指に力を入れ、
カチッ
というマウスの音が部屋に響いた。だが押した瞬間に体に違和感が起きた。身体が急に軽くなった感覚と急激な加速感がし、目の前が急に暗くなって私の意識が遠のいたのだから...。
ーーーーー
少しして意識は戻ったのだが、身体に妙な浮遊感を覚え、少しずつ鮮明になった私の意識はまた確実に深い闇の中へに沈んでいく...。
「あなたをポケモンだけの世界へと導きます...」
薄れゆく意識の中、頭の中に直接響くような不思議な声が聞こえた...私は周りを見るが真っ暗でなんも見えない...。
「ドリーム メイカーズを...彼らの暴走を...」
その不思議な声は、薄れゆく意識の中でもなぜかはっきりと聞こえる...。
「あなた達が止めてください...現実世界に影響が出る前に...」
徐々に不思議な声も小さくなっていく中で、最後に聞こえてきたのは悲痛の叫びのようなものだった...。
「お願いします...助けてください...」
その言葉を最後に不思議な声も聞こえなくなり、私の意識は闇の中へ完全に沈んだ...。