Episode1『オーキド邸へ』
side―???―
生まれてからの私は一人ぼっちだった…。
私はある特別な力を持って居た事から、マサラタウンの皆から嫉妬や妬みの感情を含んだ眼差しを向けられていた。
大人達からも…。同世代の子供達からも…。
私はその事に対して何時も気持ちが憂鬱になってしまい、負の感情を心の底に抱いてしまう。
文句を言いたくなるも、後に何をしてくるか分らない為に恐れてグッと我慢をするしか出来なかった。
両親も生まれてから直に他界し、私を守ってくれる人なんて誰もいなかったんだ…。傍に居てくれたのは両親が残してくれたポケモン―イーブイ…唯一匹のみ。
でも、そんな私に手を差し伸べてくれた人がいた。その人との出会いが六歳の頃。
世界的に有名なポケモン研究者として名を馳せたオーキド博士だ。
そして、孫であるリーフとも出会い、当時六歳でありながらも、ポケモンバトルの実力はオーキド博士が認める程であった。
その瞬間、私はオーキド博士が認めるこの子を倒せば、マサラタウンの皆も認めてくれるのではないかと言う考えが浮かぶ。
そして彼女に勝てたら、皆から認められ疎外される事は無くなるのではないかと…。
そんな切実な思いを胸にして心の中で彼女に勝負を挑む事を決意する。
でも、結果は彼女の勝ちで私の負け…。
その時になって、やはり考えてしまう―もし、あの力を使っていればあの子に勝てたのではないかと。
そんな風に考える私自身がとても嫌に感じられた。
Episode1『オーキド邸へ』
side―シオン―
蒼穹に広がる空の下、私は船から下船し、マサラタウンの大地へと足を降ろす。
そして、目前に広がるのは膨大な自然に囲まれた数少ない民家と外に出て元気に戯れる子供達とポケモン達。
「着いたんだよ、カントー地方に…。 ―ニャース!」
「ニャー!」
ずっとイッシュ地方から離れる事がなかった私は生まれて初めて見る異国の地にキラキラと目を輝かせながら、ニャースに快調なトーンで問い掛ける。
両手に抱きしめられていたニャースも、カントー地方に戻って来れた事に気分が良好になり満面な笑みを浮べて鳴き声を上げる。
私は唇を綻ばせ、その彼の嬉しそうな反応を見れて本当に来てよかったと心の中で思う。
でも、カントー地方に居るだろうニャースの両親を見つけ出し、そこに連れて行かなければ目的は達成出来たとは言えないのだが…。
「ニャ…?」
「あ、御免ね…ニャース。ちょっと、考え事してただけだから」
不思議そうにニャースが私を見上げてくる。
君の両親を必ず探し出さないといけないと思っていたなんて言ったら、責任を感じてしまうだろうと考えて適当にはぶらかす。
その私の怪しい仕草に一瞬だけ、訝しげに眉を顰めるも追及せずに「これから何処に向かうのか…」と瞳で尋ねてくる。
「そうだね、まずマサラタウンでこのカントー地方の事について情報収集して行こうかな…? はぁ〜、ポケモン語が理解出来ればニャースに色んな事教えて貰えるんだけどなぁー」
ニャースに促されるも、情報収集する法方しか思いつかない。やっぱ、来る前にカントー地方について調べておくべきだったかな…。
どうにかなるだろうと言う安易な考えをしていた私自身に溜め息をつき、昔カントー地方に住んでいたニャースの言葉を理解出来れば…と都合の良い事を考えてしまう。
まぁ…、人がポケモンの言葉を理解するなんて無理だよね…。逆にニャースに人間語を喋ろって言うのも…。
「ニャ〜」
そんな主人である私の反応を予想してしたのか、「やっぱり」と言いたげな表情を浮かべて諦めたような鳴き声を漏らすニャース。
「むか…。まぁ…、まずイラついてる時間があるなら一つでも多くの情報を入手しないとね…。それじゃぁ…、まずあの広場で遊んでる子供達に聞きに行っこかな。―ねぇ、君達に聞きたい事あるんだけどぉー!」
その態度にちょっとイラッとしながらも、何とか怒りを沈ませて近くで遊んでいる子供達への元へと向かっていく。
一刻も早くニャースの両親を見つけ出す為に…。
そして、数時間の時が立ち、私達は船が停泊していた場所へと戻って来ていた。
「まず、オーキド博士の元に行けばいいんだね。ね…、ニャース?」
「ニャー」
情報収集の為に人を探し回るも、殆どが外で遊んでいる子供達ばかりで大人は余り見かけなかった為に、また同じ場所に戻れば違う人が居るのではないかと期待を膨らませていた。
だが、戻って来ても見かけるのは先程と同じで遊んでいる子供達のみ。しかも、その子達はもう聞いた子達だった。
まぁ…、民家もそんなに多くなかったから、仕方ないかな…。
「それにこのカントー地方でニャースの集まる場所とか色々聞いてみたけど全然良い情報なかったね」
「ニャ…」
「暗くなるのはここまでにして、早くオーキド博士の研究所に向かおうか…」
「ニャッニャー!」
元気を取り戻して、オーキド邸へと走り出す。
そこで特別な力を持った少女との運命的な出会いがある事も知らずに…。
―to be continued―