改造と創造の狭間で
「青桐、ブロックルーチンというものを知っているか」
数ヶ月ぶりにポケモンまとめサイトを経営する松房(諸事情によりハンドルネーム仮名を記載)から連絡が入った。
ダイレクトメッセージってやつだ。
言うまでもないが、青桐(こちらもハンドルネームより抜粋)とは自分の事だ。
RS時代からの友人で、話もそれなりに合致する。(言っても、よく喧嘩にはなる)
用語の意味は不明だが、こいつから来る情報は決まってポケモンに関する事だが、何がどうブロックなのかは正直よく分からない。
「ルーチンっていうと、プログラミング用語か?生憎と、この前PCをお釈迦にして、保存してあった二次絵も二次小説も、みんな吹っ飛んだばかりだ。俺には縁の遠い話だぜ。」
「てめーにも分かりやすい話だよ。そのてめーの趣味でやってるポケモン二次のネタになりそうだから教えてやろうと思ったのさ。ま、聞かなきゃよかったと後悔すると思うがな。」
「勿体ぶらねえでとっとと教えな。切り出したのはそっちだぜ。」
と言いつつも、後悔のくだりで嫌な予感はしていたが、俺にも最低限の知識欲はある。振られといて聞かない話もない。
「……結論から言おう、お前、この前の色カプコケコ配信は知っているか?」
「ああ、まぁオンの対戦もそこそこやったし、サンムーンの実機プレイはちょっとご無沙汰だが、ポケんちの特番で見たよ。最近多くなってきた、ゲーフリの色配信だろ?」
ポケナガの頃からか始まった事だが、近年のポケモンは色違いのグッズ展開に明るい。
積極的に色違いのポケモンを配信し、子供達を喜ばせている……かどうかは分からないが、そんなに悪い試みであるとは思えない。
「まー確かに、色伝説のバーゲンセールって見方もあるけどよ、プレシャスボールに入ってんだろ?すぐに配信のポケモンだってバレちまうのが嫌で、結局自分のボールで捕まえたくて粘るプレイヤーもいるだろうよ。」
「粘るプレイヤーだと?そんな奴はもう、いないんだよ……。」
「はぁ……?ど、どういう意味だよ。」
色伝説粘りは、シトロン役の梶くんが公認番組でレックウザ狙いを公表するまでに一般化された、堂々周知の方法である。
やり方は簡単。伝説ポケモンの前でレポートを書いて、後はひたすら色違い伝説ポケモンが出るまで、粘る、粘る、粘りまくる。だがこれが1時間や2時間では済まない。運が良くて一週間は掛かるのだ。
そんな粘り強いプレイヤーがゴロゴロ平日に寝転がっているのがポケモン界隈であった筈。
「サンムーンでは……色カプは出ない。」
「出ないって、どういう事だよ。」
「プログラムの段階で出ないように設定されているんだ!いくら粘ってもカプの色違いは出ない!何万回何億回リセットしたプレイヤーの時間の浪費が、完全に無駄な足掻きだ!」
「ば、馬鹿にしているのか松房!?じゃあなんだ、配信でプレシャスに入ったエーテル財団の冷凍ポケモンみたいな真っ赤っかボール色伝説を、終始オフラインで撫で回せってのか!?それを告知されてない皆の一ヶ月はなんだったんだ!?」
「カプだけじゃない!ウルトラビーストも出ないぞ!」
「う……う……ウツロ……う、嘘だろ……じゃあなんだ……ウツロイドがいっぱい出てきたり、アクジキングが一体しか出現しないのは一体……あれは全て演出なのか!?色厳選の擁護じゃないのか!?」
「全てゲーム演出の為の出現数だ!個体値の厳選でもやって気を紛らわせろ!」
思わず吹くことも忘れ、開いた口は塞がらない。いったい何が起きているんだ!?
だが確か、オンライン対戦を楽しんでいた時期に、色違いのカプを複数見た覚えがある。あれはまさか……!?
「お、おい……じゃあ俺がオンラインで見た、色違いのウルトラビーストやカプたちは……まさか。」
「全て改造だ!だがソルガレオとルナアーラだけは何故か色違いが確認されている!」
「そっちは基本オンじゃ使わねえよ!あっ……まさか。」
「そうだ。色カプや色ビーストを使ってる奴は、全員が改造コード使いの割れ厨プレイヤー。ソルガレオとルナアーラでは判別がつかない。だが、オンライン対戦で使用できるカプとビーストなら、改造プレイヤーの特定が可能!」
「ゲーフリの……大規模な燻り出し作戦!!そ、そんな事のためにカプやビーストを利用したっていうのか!」
「いや……そもそもポケモンを作ったのは向こうなんだが……まぁ、だがこのソースも、改造を利用した違法記事ではないとは言い切れんし……こういう事を知っている事自体、改造行為であると向こうも判断するだろう。」
「だからって……ねぇよ。色伝説を商売に使っておいて、色伝説の価値下げてんじゃねえか……。」
「だが、結果的にこれで、改造ユーザーは撲滅される。大量の3DSが廃棄処分になるだろう。」
「折角サンムーンで3DSの売り上げが伸びたのに……こんなのって……」
「しかも、この情報を明確に知っているのは、ゲームデータの中を見た人間だけだ。俺には、真実を確認するために、ますます改造の手を伸ばすゲームプレイヤーが増える事を懸念せざるを得ない……。」
「……変わっちまった、って一言じゃ言えないか。向こうなりに考えた作戦なんだろうよ。けど、知らないで色カプビーストを受け取っちまった奴は、どうすりゃいいんだよ。」
「だから……お前にこの事を伝えるんだ。これ以上、間違いが起きないように。改造に手を染める人間が生まれないように、お前なりに、このメッセージを、どこか人目につきそうでつかない場所に届けて欲しい。」
「分かった。また会おう、友よ。」
これは、友人から受け取ったメッセージを抜粋、脚色して、自分なりにまとめたものである。
この件に関して、明確な確証はない。
だが、制作元は、これからも色伝説配布を続けるだろう。
大量のキャンペーングッズと共に。