メンバーの亀裂
?「…ドラ!……ス……ラ!…ボスゴドラ!!」
誰かに何回か叫ばれてボスゴドラはようやく我を取り戻す…どうやら思い出に耽っていたようだ…いつの間にかメンバーが全員集合して…いや、デンリュウだけ見当たらなかった。
ボスゴドラ「あぁ…すまん…ちょっと昔を思い出してボケーッとしてたわ…ハハッ…。」
アブソル「贖罪のため…ですか…ボスゴドラさんがそこまでしてその…ヴェレーノを追っていたのは…。」
ボスゴドラ「あぁ、だがまた返り討ちだ…感情に身を任せた結果がこれだぜ…笑えるだろ?」
ボスゴドラはそう言うと1人で笑い出す…だがボスゴドラの過去を聞いたアブソル達から見るとその姿は明らかに無理をしているとしか考えれない…。
ボスゴドラ「…俺…嘘つくのって下手だな…。」
バンギラス「うん知ってる。」
キングドラ「上手かったのは最初の時だけだな…ギルド入隊のあれ。」
ボスゴドラ「まぁいいや…直感だが…アブソル…お前の追っているヘルガーと俺の追うヴェレーノ…二つのグループは恐らく同盟を結んでいる。」
アブソル「急に冷静になって話題を変えましたね…因みに根拠とかあります?」
ボスゴドラ「…風に聞いた。」
キングドラ「おまっ…!それが本当だったら俺たちの手には負えなくなるぞ!?」
アブソル「いえ?寧ろ殺りやすいのでは?」
その言葉に全員が驚愕する…だがアブソルは冷静な表情のままだ…更にはボスゴドラから目線を外さない…。
ボスゴドラ「アブソルは大体察しが付いたようだな…同盟を組んだってことは一応形だけは一つになったってことだ…そうなると強化された組織は一部の仕事を任せる事が多い…要は頼るって事だな…だがそのためには…。」
シルヴァ「互いの連絡が必須。」
バンギラス「シルヴァ君!?」
ボスゴドラ「姉貴の言う通りだ…互いの利益になるものに連絡は欠かせないからな…ほら言うだろ?ほうれん草で報告、連絡、双眼ってな。」
アブソル「双眼ではなく相談では?」
キングドラ「かっこよく決めるつもりが仇に出たな。」
ボスゴドラ「……と、とりあえずだな!俺たちの住む街とは違って奴らのアジトには電気は通ってないはず…つまりは電話とかの連絡手段が使えないってことだ!」
ヘラクロス「話逸らしたッス…。」
フィオーレ「真面目になったり普段通りお気楽さんになったり…忙しいのね。」
キングドラ「…そこまでは分かった…じゃあ連絡手段が無いことが俺たちにとってどうチャンスにとれる?」
シルヴァ「連絡手段が無い以上…彼らは歩いてアジトに行くはずです…。」
アブソル「まぁ…簡単に言えば成果を報告にきた片方の組織がやって来たらまとめて潰すって事ですね。」
バンギラス「あぁなるほどそういうことか…ってできる訳無いでしょ!?何考えてるんだいアブソル君、それって両組織を一度に相手するってことでしょ!?」
エーフィ「相手の戦力数も分からないのに無闇に探して乗り込むのは危険ですアブソルさん…ボスゴドラさんとシルヴァさんも冷静になって下さい…第一そのアジトの場所はまだ分からな…。」
デンリュウ「あ…探すだけなら…出来るかも…?」
キルリア「あ、おかえりデンリュウ!良かった…無事だよね!?」
デンリュウ「うん…あと気になることも調べれた…アブソル…これを。」
アブソル「え?僕ですか?」
デンリュウはアブソルにドククラゲから得た戦利品を渡す…それはドククラゲと融合してたあの機械だった…。
デンリュウ「アブソル…私達の世界にこんな技術は多分無い…でもアブソルのいる人間の世界になら…って思って…どう…かな?」
アブソル「これは……改造…ですか…。」
バンギラス「え!?今改造って言った!?アブソル君の人間世界には改造人間とかでるの!?」
エーフィ「親方さっきから驚いてばかりですね…。」
アブソル「あ、すみません…補足を…一部の人が娯楽で使うゲーム機ハッキングツール…ですかね?簡単にいうと……改造コードって僕達は呼んでました。」
ボスゴドラ「…………。」
フィオーレ「ねぇアブソル…もしそれを使ったら…データの私達はどうなってるの?」
アブソル「……ほぼ最強になれます、攻撃を倍増させたり受けるダメージをゼロにしたり。」
キングドラ「…最…強か…人間は面白いことを考える…。」
ドレディア「じゃあもう…私達…いえ、この世界のみんなで力を合わせても勝てないのですか…?」
デンリュウ「?…でも私達勝ったよ?」
アブソル「え?…勝った…ですか?」
デンリュウ「というか…さっきのドククラゲからそれ…取れた。」
リオル(取れた……?)
キングドラ「ってことは俺たちはその改造コードを使った相手に戦えてる…のか、アブソル…?」
アブソル「もしかしたらまだ完成品じゃ無いのかも…勝機はまだあります!」
フィオーレ「戦力はまだ未知数のままだけどね…。」
バンギラス「デンリュウ君…さっき君は探すなら大丈夫って言ってたけど…どうやるんだい?」
デンリュウ「私の電流…残りの2匹のドククラゲに付いてた機械に流した…それを…その、辿ります。」
ボスゴドラ「一度流した電流の位置を特定できるのか!?」
ボスゴドラの問いにデンリュウはコクリと頷く…アブソル達はデンリュウの器用な電気の使い方に驚いた。
フィオーレ「デンリュウ…凄い!」
シルヴァ「ではあとは……。」
バンギラス「…ごめん…私は反対だ…例え居場所が分かっても相手の数すら今は分からない…もう少し情報を集めて見た方が良い…!」
アブソル「しかしそれでは手遅れになるかも知れませんよ!?」
バンギラス「だからこそエーフィ君が言ったみたいに一度冷静に…!」
シルヴァ「冷静になった所で今の打開策が浮かぶとはとても思えません…大将…。」
バンギラス「でも…だからって…。」
キングドラ「あ〜!もうお前ら一旦黙れ!」
全員「…………………………。」
両者の意見が分かれる中…キングドラは大声で無理矢理その場を沈めた…普段の彼女とは思えない行動に全員は思えず目を丸くしてキングドラに視線を集める…。
キングドラ「良し、収まったな…みんな焦りすぎだ…よくよく考えてみろ…無理に一つにまとめることはないんじゃないか?」
バンギラス「でもキングドラ…。」
キングドラ「もしミスを犯したらそれはそれで連帯責任だ、そうなればどうなるか…みんなは百も承知だぞ…リーダー。」
バンギラス「……………分かった、多分私は考えすぎたのだろうね…メンバー…分けようか…。」
〜20分後〜
話し合いの結果、ギルドに一度戻る組と遠征を続行する組でメンバーで分けることになった、遠征を続けるメンバーはアブソル、フィオーレ、シルヴァ、リオル、ボスゴドラ、デンリュウ、キングドラの7人だ。
キングドラ「さて、ここから先に進むのは俺を含むお前達のみだ…どうだ?引き返すなら今のうちだか?」
シルヴァ「愚問です、答えなど決まっています。」
バンギラス「無理だと感じたらすぐに戻るんだよ?」
アブソル「分かってます、バンギラスさん達こそ気をつけて…ギルドに直接…ってことも有り得ますから…。」
バンギラス「うん、対策を練っておくよ…あと…。」
アブソル「あと…なんですか?」
バンギラス「……みんなの事…よろしく頼む。」
アブソル「……そういうのはキングドラさんに言うべきでは?」
バンギラス「そうかもしれない…でも…今の君なら…キングドラと同じくらいに頼りになるってことで。」
アブソル「ではその期待に答えれるように僕も努力しなくては…ですね。」
フィオーレ「アブソル!そろそろ出発したいって!」
アブソル「分かりましたー!、ではバンギラスさん…僕はこれで。」
アブソルはバンギラス達に背を向けると走り去っていく…バンギラスはその姿が消えるまで目視していた。
バンギラス(私も…君のようになれたら良かったな…。)
そんなことを思いつつ、バンギラス達も自分達のギルドへと戻って行った。
デンリュウ「アブソル…ごめん…ちょっと…。」
アブソル「どうしました?声まで小さくして…。」
デンリュウ「耳…かして…。」
言われるがままにアブソルはデンリュウに近づく…デンリュウは周りのフィオーレ達が聞いていないことを確認するとそっと耳打ちした。
デンリュウ「そのコード…ドククラゲについてたんじゃなくて…埋め込まれてた…。」
アブソル「…だからこんなに血の匂いがするのですね…。」
デンリュウ「…ごめん…気づいてたんだ…。」
アブソル「謝ることはありませんよ…私でも同じ立場ならそうしたはずです…でもデンリュウさんがそんな荒業を使うなんて驚きましたよ。」
デンリュウ「悪党は…みんな死ぬべき…。」
アブソル「えぇ…でも正義の悪党ってのも…いるかもですよ?」
デンリュウ「…どういう意味?」
アブソル「運が良ければそのうち会えるかもです、置いていかれそうなので先行きますね!」
デンリュウ「正義の…悪党…そんなの…意味分からない…。」
デンリュウはアブソルの言う悪の意味が理解できないまま、その後を追って行った。