重罪
〜森林、時間未定〜
アブソル達はハンテール達を退けると急いでバンギラス達と合流するために敵と遭遇した位置に戻ってきた…オロオロと慌てるバンギラスはアブソル達に気づくと安堵の表情を見せ、近づいてくる。
バンギラス「アブソル君!良かった…他のみんなも無事だね!?」
アブソル「こっちはなんとか……バンギラスさん達は…。」
キングドラ「ご覧の通り既に制圧済みだ…敵の裏をかけたお陰で被害もゼロだ…だが…。」
フィオーレ「ボスゴドラ…いないんだよね…?」
バンギラス「…ミミロップから南に向かったと聞いてる…合流も出来たし、すぐに行くよ!」
バンギラスの指示に従い、アブソル達は南の方角へと足を進めていく…そんな中デンリュウはバンギラス達が倒したドククラゲをジーッと見ていた。
デンリュウ「……………。」
キルリア「デンリュウ急いで!ボスゴドラ探さなくちゃ!」
デンリュウ「先…行ってて…。」
キルリア「デンリュウ……?…分かった…出来るだけ合流は早くね!何かあったら叫ぶんだよ!?」
デンリュウ「……了解。」
デンリュウはキルリアが木々に隠れるまで見届けると早速気絶したドククラゲ達に近づく。
デンリュウ(確か…この辺りが光った…ような…。)
出来るだけ起こさないように大量の触手をかき分ける…そしてしばらく続けると光の正体を触手から見つけた……。
デンリュウ(あった…なんだろこれ…白い…機械?)
持って行こうと思いグイーっと引っ張ってみる…が取れない…。
デンリュウ「あれ……?…ふんぬっ…………え?」
改めて確認してデンリュウは焦った…この機械は触手に巻き付けたんじゃない…触手という身体に直接融合させていたのだ…。
デンリュウ(この機械…よく見ると他のドククラゲにもついてる…どうにかして一つでも取りたいんだけど…あ…そうだ。)
ふとまわりをキョロキョロと見渡して誰もいないことを再確認するとデンリュウはドククラゲに「でんじは」をかける、ドククラゲも流石に目を覚ましたが上手く動けない…叫べない…そして機械のついた触手を手に取ると…。
ブチンッ……!!
デンリュウ「千切れば…いっか…。」
切られたところから溢れる大量の血…ドククラゲはでんじはでマヒしているため悲鳴を上げることすら出来ない…。
デンリュウ「ごめんね…これ…もらう…あと…。」
要らない部分をまた切り落とし、機械の部分だけ残るようにコンパクトにするとデンリュウは恐怖に震えるドククラゲに雷を纏った拳を見せる。
デンリュウ「死になさい…悪党…。」
瞬間周りの木に先程とは比べ物にならない量の流血がついた……。
〜森林南、滝〜
キングドラ「…リーダー…あれは!?」
バンギラス「ボスゴドラ君!」
バンギラスは湖に力なく浮かんでいたボスゴドラを流水を恐れずに引き上げる…。
バンギラス「傷だらけ…出血が酷すぎる…エーフィ君!ミミロップ君!救急処置を頼む!」
エーフィ「は、はい!」
ドレディア「親方…私も…。」
バンギラス「ドレディア君はヘラクロス君とシルヴァ君を連れて周りを見てきてくれ!被害者がまだいるかもしれない!」
ドレディア「分かりました!あ…あの、お願いします!」
シルヴァ「承知…すぐに向かいましょう!」
ヘラクロス「いざとなったら俺が戦って守るッス!」
ボスゴドラの処置回復を待つ間…バンギラスはこれからどうするべきか判断を悩んでいた…現にボスゴドラが大怪我を負ってしまっている…これ以上続けると…また…。
キングドラ「しっかりしろリーダー!」
バンギラス「うわっ!?…キングドラか…うん…大丈夫!自己嫌悪は終わってるよ!」
キングドラ「……最終的は判断はリーダーが下す資格がある…重大な責任があるのは分かってるが…。」
バンギラス「分かってるよ…義務は果たすさ…。」
ミミロップ「バンギラス!キングドラ!ちょっと来て!」
キングドラ「ミミロップ……?何があった!?」
ミミロップ「ボスゴドラの身体…なんかおかしいのよ!」
バンギラス「おかしいって何が………え…?」
キングドラ「…………。」
バンギラスとキングドラは己の目を疑った…さっきまでボロボロの傷だらけだったはずのボスゴドラ…今はその傷が無くなっていたのだ…流血もしっかりと止まっており、呼吸も規則正しいものになっている。
エーフィ「キズぐすりの準備をしていたら…いつの間に…。」
バンギラス「キングドラ!アブソル君!ボスゴドラって自己再生かなにか使えたっけ!?」
アブソル「ゲームではそんな技使う所見たことないですね…キングドラさん…何か心当たりあります?」
キングドラ「いや…すまん…俺もさっぱりだ…。」
ボスゴドラ「っ…………!」
ミミロップ「ボスゴドラ!良かった…起きれるかしら?」
ボスゴドラ「…ここは…ヴェレーノ…!あいつはどこに行った!?」
ミミロップ「落ち着いて…お気楽さんなあなたらしくもない…私達が来た時にはあなたしかいなかったわ…逃げられたみたいよ…?」
ボスゴドラ「……クソッ!」
ボスゴドラは悔しさを表し拳を地面に叩きつける…とその時バンギラスが近づいてきた。
ボスゴドラ「大将……?…すまねぇ…俺が不甲斐ないばかりに…。」
バンギラス「そこは気にしなくて良い…生きていたなら良かった…でも…君の身体についてなんだけど…。」
ボスゴドラ「……見たのか?」
エーフィ「傷の回復が明らかに異常なくらい早いです…折れていた筈の骨まで…元通りに…。」
ボスゴドラ「…………。」
キングドラ「ボスゴドラ…さっきからおかしいぞ…?お前自身分かってるんじゃないのか?」
ボスゴドラ「……あぁ…ここまでやられちゃばれるのも仕方ないか…キングドラの言う通り、俺はこの身体のことをよく理解しているつもりだ…もちろん、この回復力の原因もな…。」
アブソル「それって…?」
ボスゴドラ「慌てるな、ちゃんと話す…って言ってももう大将とキングドラは大体察しはついてるだろ?」
バンギラス「…………自然の力…ってやつかな?」
ボスゴドラ「正解だ…俺にあった敵を見つける力、この急速な回復力…これも自然の力を借りることによって使えるもの…つまり俺は…ただのボスゴドラでは無かったってことだ…。」
キングドラ「自然が教えてくれると言うのは比喩だと思っていたが…あれは直接な事実だったのか!?」
ボスゴドラ「まぁな…だがこれは正直言うと嫌いだ…ココドラの時からこの能力に目覚めた俺はお陰で散々な目にあってきてるからな…。」
ミミロップ「さっき言ってた…ヴェレーノって奴と何か関係ありそうね?」
アブソル「ヴェレーノ?」
ボスゴドラ「感が良いなミミロップ、あいつは俺の故郷を奪った…言ってしまえば俺の敵だ…あいつ一人のせいで…俺以外の…フェールヴィルの街のほとんどは殺された…小さい街だから一夜で終わらされた…。」
バンギラス「フェールヴィル…地図から消えた街か…!本当にあったなんて…。」
キングドラ「街の者が大勢亡くなったんだ、更には小さいところと来たら…ちょっと手を回せばなかったことにしてしまうことも出来る…俺達の住む他の所に混乱が起きないように……な。」
エーフィ「そんな……!」
フィオーレ「じ、じゃあボスゴドラはその…亡くなった街のみんなの…復讐に?」
ボスゴドラ「いや…それは違う、これはアブソルが抱え込むような復讐とは全然違う…そうだな…罪滅ぼし…だな。」
ミミロップ「待って?あなたの話を聞いた中じゃ…罪なんて何一つ犯してないと思うけど…。」
ボスゴドラ「…重罪なんだよ…俺はヴェレーノがこの街に来ることを知っておきながら…誰にもその危険を伝えずに一人尻尾撒いて逃げたんだからよ…。」
バンギラス「知ってた…な、なんでそんな大切なこと!」
ボスゴドラ「じゃあ仮に大将がフェールヴィルの街の一人だったとしよう…誰かも知らないココドラが…自然の声がこの街の危険を知らせてるなんて言ったら…信じれるか……?」
バンギラス「それは……!」
ボスゴドラ「俺は小さい頃からこの能力で自然の木々と話していた…周りから奇異な目で見られ続けてようやく分かったよ…俺がおかしいんだ…これは普通じゃないんだってな…でももう遅かった…街のみんなは俺のことはもう信用しなくなっていた…家族もだ…。」
話すのも辛いはずなのにボスゴドラは話を続ける…アブソル達の中には止めるものはいなかった…いや、止めてはいけないと思ったのだ…。
ボスゴドラ「街のみんなから信用を失った俺は森の木や風から話を聞いてあいつ(ヴェレーノ)の場所を見つけた…俺が一人で止めるしかないと考えたんだ…だがこの時の俺はまだココドラ…惨敗だった…それで暫くして目が覚めたら…俺の街は…フェールヴィルという鉄の街は…燃えてしまっていたよ…死体と一緒にな…。」
今でも昨日のように思い出せる…誰か一人でも生きていてほしい…そんなことを考えながら…ボロボロの小さな身体で走って、走って…走って……待っていたのは黒くなった街と鼻を突くほどの焼けた死体の臭い…絶望した…どれ位の涙を声を上げて流したか……。
……ダイジョウブ……?
ココドラ「…うるさい…黙ってくれよ…!なんで…なんでこんなことに……。」
……ドウシテ…?キミハブジダッタノニ…?
ココドラ「それじゃダメなんだよ!僕は…知っていたのに…誰も…助けられなかった…。」
……カナシイネ……。
ココドラ「何を分かったように!お前達に家族や大切な人を失った悲しみが分かるものか!」
……ワカルヨ……
ココドラ「……え?」
…ワタシタチカラシタラ…コノセカイノミンナガ…カゾクダカラ……。
ココドラ「そっか……でも…僕はこれからどうすれば…。」
…ツヨクナッテ…ソウスレバミンナワカッテクレル…
…キミハツヨクテヤサシイ…ワタシタチモヨクシッテル…
ココドラ「…………。」
…キミガタダシイトオモッタミチヲミツケテ…
ココドラ「……分かった…。」
……ガンバロウネ……。
ココドラ「あぁ、これからもよろしく頼むよ。」
俺はこの能力が嫌いだ…身体の痛みもすぐに自然の力で片付けてしまうこの力が…いろいろ綺麗事を並べてくるこの自然の言葉も…だけど…現に俺は…その能力に救われていたんだ…自害なんて許されない…街のみんなの思念に報いなくてはいけないから…自然だってそれを望んでいないから…だから…だからせめて…その元凶を叩く義務が俺にはある…。
ヴェレーノを殺すことが…俺の…贖罪となる……。