重りを外して
〜アブソルの部屋前、19:00〜
キュウコン「…………。」
ロコンは遂にキュウコンに進化することが出来た…ギルドに帰ってからは皆におめでとうやら良かったねなど、沢山の賞賛の声に浸っていたがここに来ると全てを忘れる…アブソルは自身の部屋に戻ってからまだ出てこない…エーフィから聞いたから確かだろう…この中でアブソルは今も尚考えている…自分が何を優先するかを…。
キュウコン「アブソル?私…入っても大丈夫?」
ノックをしてから声を掛けてみたが応答がない…寝てるのかな…と思いつつドアノブに手をかけるとあっさりと開いた…慎重に中を覗くといつものメモ帳を読み返してる暗い顔をしたアブソルが見える。
キュウコン「アブソル……?おーい…アブソル〜。」
アブソル「……ん?」
キュウコンが沢山ある尻尾の1本をアブソルの顔前に振ることでようやく視線を向けさせることが出来た、今アブソルの目の前には姿の変わったパートナーが映っている。
キュウコン「…………えっと…た、ただいま?」
アブソル「……おかえりです…進化…おめでとうございます…ロコ…フィオーレ様……。」
キュウコン「あらら…気づかれちゃってたか…。」
アブソル「今日バンギラスさんから聞いてようやく。」
キュウコン「…黙っててごめんね…驚いたでしょ?」
アブソル「えぇ…すごく、ですが黙っていたのは理由があるからでしょう?、僕が始めてフィオーレ様にあった時に人間だということを隠していたのと一緒です。」
キュウコン「アブソルは話の理解が早いから助かるよ…正解…お嬢様とか呼ばれるのは嫌なの…私はみんなと変わらない1人のポケモン…だから同じ立場のポケモンになりたくて本名を隠してた……。」
アブソル「バンギラスさんは家族が理由かも…って。」
キュウコン「うん…そこはまた今度話すよ…今は優先したいことがあるからね。」
アブソル「優先……ですか?」
キュウコン「そ、アブソル…私はロコンじゃない…キュウコンになった…今までとは違って攻撃も出来る、もちろん今までのようにサポートにも回れる…強くなったの…だから…その…。」
もう守らなくて良い…私という名の重りを外して欲しい…そう伝えたいのだが上手くいかない…どうしても行き詰まってしまうのだ。
キュウコン「お願い…私も…戦わせて……。」
絞り込んでようやく言えたセリフはこれだけだった…だが伝えるには充分なはず…後は…アブソルの返答を待つのみ……。
アブソル「…ありがとう…フィオーレ……。」
キュウコン「アブソル…今私の事……。」
答えはOKとして捉えても良いだろう、そんなことよりフィオーレはアブソルの対応に驚いていた…敬語が抜けたことによるのも一つだが一番の理由は名前…本来の名前で呼んでくれたのだ。
アブソル「フィオーレは付いてくると言ってくれた。僕が行動で避けても何度も…何度も…だから今度はちゃんと向き合うよ…ヘルガーだけじゃない…自分自身の…現実にね。」
そう言うとアブソルは笑みを見せる…あぁ…これだ…私が見たかったのは…誰かの為を思って難しい顔をせず、心から彼に…笑って欲しかった。
アブソル「脱走したヘルガーのことは一度忘れることにする…休暇はまだ…一日残ってるから。」
フィオーレ「……うん、それが良いよ…私も賛成。」
彼からようやく重りが外れた…その事を目の色から確信し、私はようやく目的の達成に成功した。
アブソル「では、皆さんも待っているでしょうし、夕食を食べに行きますか…リオル君とも話してみたいし。」
アブソルはメモ帳を机に投げると自室を出る…と思ったがチラッとフィオーレの方を見る。
フィオーレ「どしたの?忘れ物?」
アブソル「いえ……えっと…その…。」
黒い顔を珍しく赤くしながら下を向きもぞもぞ動くアブソル…そして意を決したのかようやく顔を上げると…。
アブソル「…その姿…凄く可愛いですね……。」
フィオーレ「ふえっ!?…あ、うん…自信はあったんだ…ありがとう…。」
アブソル「で、ではお先に!」
それだけ伝えるとアブソルは電光石火を使っているのと同じくらいの速さで走っていった…。
フィオーレ「か、可愛い…アブソルが…私に……?」
フィオーレはというとアブソルの言葉を受け止めきれず、その場でオーバーヒート状態にしばらく陥っていた。
〜翌日、バンギラスギルド7:00〜
アブソルとフィオーレの関係が回復した翌日…バンギラスは目の前の物に目を輝かせていた。
バンギラス「つ、ついに来てしまった……。」
キングドラ「最後の休暇だな。」
バンギラス「そ、それもあるけど…まさかこの日に来てしまうとは……。」
キングドラ「ここでって…リーダー…その黄色の紙…まさかあれか?」
バンギラス「あぁ、アブソル君のお陰で…チャンス到来だよ!」
〜バンギラスギルド食堂〜
バンギラス「という事で全員揃ってもらったのは他でもない!なんと!なんとなんと!、取材の依頼が来ましたー!」
全員「……………………。」
バンギラス「……あれ?みんな反応薄くない……?」
キルリア「……あの…取材が来るのは分かったんですけど…そこまで喜ぶ意味が理解しきれなくて……。」
全員(首を縦に2回振る。)
バンギラス「あ…確かに…普通ならで?ってなるか…。」
キングドラ「…じゃあ前もって今俺から事情を簡潔に伝えよう、アブソル、キルリア、デンリュウが殺害事件の犯人、ヘルガーを捕らえたことによってこのギルドの名が広まった…その流れに付いて今回、ギルドの仕組みやメンバーと共に、事件の内容についても知りたいという奴が出たという訳だ。」
アブソル「あの〜、つまりは僕達が中心の…。」
キングドラ「企画番組が出来上がる、デンリュウとキルリアにも話を聞きたいと言うことだから準備を頼みたい。」
フィオーレ「ギルドに興味を持つ人も増えるかも…ってそう言えばデンリュウは?」
キルリア「え?あれ?さっきまで隣にいたんだけど…。」
エーフィ「あの…先程慌てて部屋を出て……。」
キルリア「キングドラさん!デンリュウが逃げました!」
バンギラス「今のこの説明の間に!?キングドラ…やっぱりデンリュウ君は人見知りだから取材はちょっと……。」
キングドラ「…ふむ…まぁいい、あの手を使うか。」
バンギラス「あの手って何!?怖いんだけど!?」
キングドラ「取材は午後からだ…自然体を撮るために皆いつも通りに過ごしてくれ…俺からは以上。」
バンギラス「スルーされた!?」
周りが取材について盛り上がる中、フィオーレはアブソルの様子を横目で伺う。
フィオーレ「アブソル、大丈夫そう?」
アブソル「………………。」
リオル「先生?……あの師匠…これは……?」
シルヴァ「緊張で固まってますね。」
フィオーレ「かたまっ!?アブソル!ちょっとしっかりして!アブソルがここでやらなきゃ取材の対応キルリアだけになっちゃうよ!?」
尻尾を2本使い、アブソルの身体をがくんがくんと振りまくるフィオーレ…その光景を見るだけの師弟……。
リオル「先生…大丈夫ですかね……?」
シルヴァ「マスターは追い詰められれば追い詰められるほど真価を発揮します、信じるのです。」
リオル「なるほど!流石です師匠!」
バンギラス(2人の中は回復…良かった。)
キングドラ(いや…悪化してないか?)
フィオーレ「アブソルゥゥゥゥゥゥ!!!」(尻尾を4本に増やして)
因みにその後3分間ずっとフィオーレの尻尾ブンブンをくらうことでアブソルはようやく正気を取り戻しました。
(オマケ)
バンギラス「BK!さんじゅっぷん位クッキング〜!」
キングドラ「…病院行くか?」
バンギラス「ざっくり酷い!?アブソル君達がもし取材が出来なかったらの時を考えて私が代役をしようと思ったのに!」
キングドラ「B(バンギラス)K(クッキング)か…で、これは予行練習だった……と。」
バンギラス「そういうこと!まぁ見てて、今回作るのは私自作!ギルド特性オリジナルカレーです!」
キングドラ「あぁ、そう来たか…カレーとは王道な…と思ったがオリジナルなら良いんじゃないか?」
バンギラス「よし来た!じゃあ早速材料の紹介から!え〜…にんじん、ピーマン、玉ねぎ、ナス、馬鈴薯、ゴボウ…キュウリ…トマト…キャベツ……(まだまだ続く。)」
キングドラ「……野菜炒めと間違えてないか?」
バンギラス「キングドラ!どうしよう!私ミキサー(野菜ジュース作る時に使用)の使い方しか知らない!」
キングドラ「じゃあ最初からクッキングなんて辞めてしまえ!」