戦法と進化
〜ギルド、トレーニングルーム〜
アブソルがロコン……フィオーレの正体をどう受け止めるか考えている間、シルヴァはバンギラスに頼まれて本来アブソルが相手する筈のリオルを代わりに先生?となって戦闘訓練をしていた…。
リオル「くっ……!」
打ち付け合う拳と拳…の筈なのだがリオルは焦っていた…シルヴァに攻撃が全く当たらない…全て躱すか受け流されてしまうのだ。
リオル「はぁぁっ!」
シルヴァ「甘いです。」
それでも立ち上がって放つ右振りもシルヴァは顔を左に少し傾け、掠るかギリギリの所で回避する。
リオル「ハァ……ハァ……。」
シルヴァ「息が切れてますよ…少し休憩を挟みませんか……?」
リオル「い、いえ!俺はまだ行けます!あと少し…お願い出来ませんか!?」
シルヴァ「ほぅ…小柄ながらも体力はありますね…良いでしょう…来なさい。」
リオル「ありがとうございます!では早速!」
シルヴァの了承を得るとリオルはでんこうせっかで距離を詰め、再び連撃へ移る。
そんな様子を少し離れた所からバンギラス、キングドラ、デンリュウ、エーフィの四名は見守っていた。
キングドラ「どうだった?アブソルは……。」
バンギラス「あ、あれ!?キングドラ!?、ロコン君ともう帰ったの!?あと3時間はかかるかと……。」
キングドラ「戦闘は控えめでいけた……石も3Fで回収…今は一人で考える時間を与えている。」
バンギラス「そ、そう……ありがとう。」
キングドラ「……で?そっちはどうだ?」
バンギラス「ロコン君の本来の姿を教えた…後はどう変わるか…だよ。」
キングドラ「大きく動かしたな…だがそれが今のアブソルとロコンには丁度良いのかもな。」
デンリュウ「ごーいんぐまぃうぇい……。」
バンギラス「えっ!?」
キングドラ「どうしたリーダー?、急に驚くとは珍しい……。」
バンギラス「ん?あぁ!な、何でもない!何でもないよ!」
キングドラ「そ、そうか…二人がこれを境に関係を修復できたら良いな。」
バンギラス「そ、そだねー…ハハッ……!」
キングドラ「?」
デンリュウ「クスクス……。」
バンギラス(デンリュウ君…まさか!?いや……彼女に限ってそんなこと……でもあのセリフは……。)
バァン……!!!
バンギラス「え…何!?今の音!?」
エーフィ「……あ〜、バンギラスさん…あれ……。」
急な大きな音で考えることを止めたバンギラスはエーフィが指さす方向に目を向ける。
シルヴァ「……ふぅ……あ…。」
リオル「…………むきゅう……。」
キングドラ「ほぉ…そ、そう来たか……。」
デンリュウ「…エーフィ…手当…一緒に。」
エーフィ「あ、そうでした!すぐに道具取ってきます!」
バンギラス「…………え?」
そこにはシルヴァがリオルの頭を掴み、地面にヒビが入るほどに叩きつけているという訓練とは思えない惨事が広がっていた……キングドラも流石に絶句した。
〜30分後〜
エーフィ「はい、動いちゃダメですよ〜♪」
リオル「あ、はい!お、お願いします!」
エーフィ「では早速消毒してー…薬塗って〜、軽く吹いてから、絆創膏を…んで包帯で固定…。」
リオル(な、なんて仕事が早いんだ……!流石先生所属のギルド…戦闘以外でも色んなスキルがある方も沢山……)
エーフィ「バァン!!」(耳元で)
リオル「うわぁぁぁ!」
エーフィ「こーらっ!ボーッとしてちゃダメですよー?、旦那様みたいになりたいのでしょう?」
リオル「そ、そうでした!俺もまだまだ未熟…って旦那様!?」
エーフィ「そうです!今はまだ気づいていませんがあと少ししたら私がきっと……。」
デンリュウ「エーフィ…なんか…変?」
シルヴァ「勝手にマスターを婿入りさせないでください…リオル…頭の傷…申し訳ありません…つい私も力が……。」
リオル「あ、俺石頭なのかほとんど無事でした……あの…それよりもシルヴァさんに聞きたいことが…。」
シルヴァ「何ですか?マスターなら先程申し上げたように今日は来れないかもと……。」
リオル「あ、いえ!シルヴァさんの戦闘スタイルについてです!」
キングドラ「スタイル?、シルヴァ…お前なんか変わったことしてたか?」
シルヴァ「いえ…特に変わったことはしてない……かと。」
シルヴァは立ち上がって先程の戦闘を思い出す…そして構えをもう一度取ってみた…攻撃特化の低姿勢…防御重視の腕の構え…色々とってみたがリオルにはピンと来ないようだ…となると……。
シルヴァ「……もしかして…これですか?」
最後にシルヴァが得意とする戦闘スタイルの構えをとる、両腕を前に軽く出し、手のひらは広げ、腰は低めに左足を一歩後ろに…。
リオル「あ、それです!俺の攻撃を裁くやつ!」
キングドラ「シルヴァ…それは?」
シルヴァ「人間の武術の一つ、合気道です。」
キングドラ「ほう、それがか…興味深い……。」
リオル「シルヴァさん…そのやり方、俺に教えてください!」
シルヴァ「…………。」
キングドラ「どうした?教えたくないのか?」
シルヴァ「いえ、決してそんなことは…ただこれは主に防御系でして…受け流すのが主流のものなのです。」
リオル「つまり攻撃に移るのが難しい……と、そうでしたか…俺にはまだ早かった……。」
バンギラス「じゃあ変えれば良いじゃん!自分の合うスタイルの合気道に!」
キングドラ「お前さっきからデンリュウ達と話してると思ったらいつの間に……!」
シルヴァ「大将…変えると簡単におっしゃいますが…具体的にはどのようにですか?」
バンギラス「シルヴァ君はこう言いたいんでしょう?リオル君は攻撃に特化したポケモンだからまずは攻撃方法を見つけてから覚えてもらいたいって、受け流すだけの合気道だけじゃ不利なんだ……って。」
シルヴァ「え、えぇ……まとめると…そうなりますけど……。」
バンギラス「じゃあ防御を生かして変えようよ!攻撃に!」
シルヴァ「防御を……?」
キングドラ「攻撃にか……?」
リオル「活かす…防御…攻撃……あ!」
バンギラスの言葉を繋ぎ合わせ考える…すると3人は一つの答えに結びついた。
リオル「カウンター…!」
バンギラス「正解!そう!カウンターにすれば防御も取れるし攻撃にもすぐに繋がるからね、で、どうかなシルヴァ君…何か良い方法無い?」
シルヴァ「そうですね……合気道と武術を混ぜて器用に扱えたら…身体の扱い方次第では戦闘を有利に進められます!」
バンギラス「不可能じゃないんだね!?ならやってみる価値アリだよ!後は……。」
シルヴァ「本人次第……ですね。」
シルヴァ達はリオルへと視線を向ける。
リオル「………………。」
その目はキラキラとまるで有名人にあって感動してる人みたいな事になっていた…心なしか本当に星が見えるきがする……。
バンギラス「やる気あり…だね。」
キングドラ「リオル……行けるか?」
リオル「…………ハッ!も、もちろんです!、絶対にマスターして見せます!」
シルヴァ「よくぞ言ったリオル!それでこそ私の教え子!さぁ!ここからはもっと厳しくなる…同じ格闘家の私を超えてみせろ!自己流の体技を見つけるのです!」
リオル「は、はいっ!えっと……師匠!!」
バンギラス「あ、ランク上がった。」
キングドラ「というかシルヴァもキャラ変わってないか?」
バンギラス「それ君が言う?」
デンリュウ「あつくなれよー…。」
エーフィ「デンリュウさん、何ですかそれ?」
デンリュウ「……何でもない。」
それから日が沈むまでシルヴァとリオルの修行は続いた……だがアブソルとロコンの姿は最後まで見ることが出来なかった……。
〜?〜
ロコン「炎の石…私は…ここで…!」
ロコンは炎の石を握り、森を歩く…行き先は己の進化を認めてもらう場所…。
ロコン「着いた……ここが……進化の泉!」
森に囲まれながらその形を丸く保つ泉…ロコンはゆっくりとそこに足を入れた……。
?「汝……進化を望むものか……?」
どこからか声が聞こえる…キングドラから聞いた通りだ…この声の問に答え…認めてもらうのだ…進化をすることを……。
ロコン「はい!私は進化を望みます!」
?「その心意気よし、進化を認める、汝、道具を使用するか?」
ロコン「使います!この炎の石です!」
?「……条件はすべて整った…だが最後に確認しよう…進化とは即ち神秘、己の姿を変えるものだ…その変化はあらゆる恩恵を与えてくれる…一度姿を変えると…元には戻れない……良いか?」
ロコン「……構いません!私には支えたい人がいる!守りたい人がいる!大切な……私を変えてくれた人を……絶対に!」
?「その強く変わらない意思……しかと受け取った、汝が行く先の未来に幸福と理想とした夢があらんことを……。」
ロコン「……っ!?」
声が途絶えると同時に泉は強い光を放ち、ロコンを飲み込んで行く……しばらくするとその光は消え、辺りは元の進化の泉に戻っていた…ロコンは泉に映る自分をみる…。
?「……これが私…!待っててね…アブソル!」
そこにはロコンの姿は跡形も無く…全身を太陽のように輝かせる黄色の身体……神秘を超えて美しき九尾が存在していた。