冷静沈着な格闘家
〜バンギラスギルド、12:50〜
「えー…という訳で、コジョンド君です!皆仲良くするように!以上!」
「「「え……!?」」」
「待て待て待てリーダー!なにがという訳でコジョンド君ですだ…名前しか紹介していないじゃないか!周り見てみろ!メンバー全員理解追いついていないから口ポカーンしているからな!?」
「いやでもね…キングドラ…急にアブソル君の目の前に現れたーじゃどのみち理解出来ないでしょ?コジョンド君も殆ど何も覚えていない見たいだし……ねぇ?」
「……申し訳ありません……。」
「くっ…アブソルと同じく記憶に問題が見られるということか……ではせめて自己紹介だけでも頼んでいいか?これから共に活動する者として少しでも交流を深めたいんだが……。」
「承りました…それでしたらなんとか…。」
コジョンドは軽い足取りでピョンピョン跳ねるとメンバーの目の前に着地、視線を集める…そしてコホンっと軽く咳払いして口を開いた。
「えっと…マスター、八雲虹の手持ちとして活動していました、シルヴァと申します、今回はマスターのサポーターとしてこのギルドに正式加入となりました。出来るだけ足を引っ張らないよう努力しますので皆様どうぞよろしく……。」
シーンとした一瞬の空気の後、メンバー達はマスター?、八雲虹?、シルヴァ?等一部疑問に思うところがありながらも歓迎の拍手を送った、コジョンド…シルヴァは綺麗にお辞儀をするとメンバーに背を向け、バンギラスの元に戻ってくる…今更だが無表情だ…可愛い顔をしておきながら口をへの字に曲げてスタスタと歩いてくる…正直心境が読めない……。
「シルヴァ君……って言うんだ…名前。」
「はい、マスターから頂いた大切な名前です、大将。」
「へぇ……ん?大将?」
「……どうやら人間世界の風流が少し混ざって難しい単語が出てくる様だな…因みに大将はリーダーの事だ、頭首、皆をまとめる…言わばボスを表す。」
「へー、なんか偉そう!まぁそれはそれとして、シルヴァ君、これからよろしく!」
「よ、よろしくお願いします…。」
シルヴァもなんとかギルドに溶け込みかけている様だ…キングドラもこれに安心してふぅと息を吐く……お前は偉そう以前に偉いんだぞ?という突っ込みを堪えて。
「……所でマスターのご容態は……?」
「え?あぁアブソル君ね…多分まだ寝てるかも、気になるなら行ってみたらどうかな?」
「そうでしたか…では私はこれで…失礼しました。」
シルヴァはマスターの部屋に向かって歩……かずに飛び跳ねるように高速で移動して行った……。
「……速いな…。」
「今の所アブソル君が信頼の要…と言ったとこかな?」
「……溶け込むまで暫くかかりそうか?」
「アブソル君次第。」
「まぁそうなるか…あ、そうだ、リーダー…この間からのことで……。」
「おーーーい!大将!」
「ん?どしたの?シルヴァ君に影響されて早速私を大将呼びに変えたこの間ワンリキーの群れを独断で1人で25体吹き飛ばし、更には昨日人間の遊びをやって見るぜ!と言いながら将棋で歩を全員犠牲にして私の王をクラッシュ!と叫び拳で破壊したボスゴドラ君?」
「長いし遠まわしに思い出語るなよ…しかもほぼボスゴドラが自己嫌悪に陥ったものばかりだし……。」
「あの胸デカイ格闘女の事だけどよー!」
「そしてコイツも挫けずに話続けるんだな……。」
シルヴァがいなくなった後も食堂は相変わらずの賑やかさを保っていた……。
〜アブソルの部屋〜
「…あつい………。」
アブソルはベッドの上に横になりながら今後の方針を考えていた…左右にはロコンとエーフィが寝ている…エーフィに至っては僕の布団に入ってるし…看病に疲れて眠ってしまったのだ…だがちょうど良い、今は2人だけで話がしたかった……。
「コジョンドさん…そこに居ます?」
「…………。」
コジョンドは窓からこちらを観察していた…アブソルに気づかれたと分かると素直に姿を現す。
「すみません…起こしてしまいましたか?」
「いえ、先程からなので大丈夫ですよ…しかし…何故に窓から?」
「…部屋の入口にはこの先危険、立入禁止の看板が掛けられていまして…窓から入るという手段に変更しました。」
「うん…考え方が少しズレていますからこれから気をつけましょう……あと誰ですか…看板置いた人。」
どうやらこの子は真面目ではあれど天然が少々入っているようだ…本人は首を傾げているが……。
「現に私はマスターを危険と認識しています……。」
「え!?」
「いえ、異性を2人も同時に抱くというまさに獣らし……。」
「誤解!誤解ですから!、僕はそういう関係はまだ考えていません!」
「は、はぁ……マスターがそう言うのでしたら…。」
「ふぅ…じ、じゃあ、来てもらって早速悪いんだけど事情を聞いて整理しても良いかな?」
「元よりそのために伺いました、マスターは先を考える方ですから…1人で。」
「自重します…。」
ダメだ……さっきからマスターとして話すべきか1人のポケモンとして話すべきか迷っている…会話も少し変になってしまった…アブソルは顔には出さないようにしていたが内心ではコジョンドの対応に慣れないでいた。
20分後
「…なるほど…マスターは私のことは記憶に……。」
「えぇ、記憶は基本なものばかりで後は……ごめんなさい……。」
「マスターが謝ることは無いのです、私もマスターはデータとしての思い出しか無いので……。」
「……そういえばどうして僕がマスターだと?このようにアブソルにもなっているのに……。」
「私も最初は目の前のマスターに戸惑いました…ですがぎこちない話し方、戦闘好きによる様々な血の匂い、本体から引き継いだ青の目で確定付け、判断しました。」
「す、鋭いですね……。」
「観察は戦術の基本ですので……まぁ間違ってもマスターには攻撃することはありませんが。」
コジョンドはアブソルにムフーと胸を張る、自信があることを伝えたいのだと思うがその姿は心強さ…というより愛いしく感じた。
「……あの…マスター…つかぬ事を伺いますが…私の名前は…記憶にあります?」
「名前……?コジョンドさん…ではなく?」
「……………。」
「え!?コジョンドさん……泣いてる!?」
「いえ、そんなことは…そうでしたか…因みに私の名前はシルヴァです、マスターが付けたものなのでもしかしたらと思い試しに……。」
「シルヴァ…ですか、うん、今度こそ忘れないようにします。」
「………………。」(シュン…)
「あ、あれ?、もしかして…僕まだ何か……。」
「敬語……。」
「え…敬……語?」
「私の事は…側近かメイド当たりの何かだと思って…その…命令するように指示を頂ければ…と思いまして……。」
「…トレーナーとそのポケモンとしての関係を続行したい…ということ…でしょうか?」
「出来ればで良いのです…もしご希望でしたらメイド服やらの軽衣装を…。」
「い、いや…結構です!分かりました…じ、じゃあ…またよろしくね…シルヴァ。」
「ありがとうございます…このシルヴァ…マスターを全力で命をかけてお守り致します…。」
女性に守られるのもなんかなぁ…と思いつつもまぁ僕も戦って信用を得ればいっか…ということでアブソルもこれ以上は深入りしない事にした。