休暇です……え…鍛錬禁止?
ヘルガーを捕らえた2日後、アブソル達にはバンギラスからの長期休暇命令が来ていた…最近依頼の詰め込みすぎで疲労が顔に出ているのでとの理由、キングドラの判断だ。急な休みの入手に喜ぶものは多かったが反面、予定を慌ててたてる者が見られている。
「キングドラ…私も休みたい……。」
「ダメだ、リーダーにはヘルガーの事件に対する報告書を14枚書いてもらわなくてはな。」
「多くて終わるきがしないよー……。」
「俺も手伝ってやるから……ほら…メソメソしてる暇があるなら動け。」
「あ〜い……。」
立案者の方は事後処理に追われている……そんな彼らには見向きもせず、アブソル達も今日の予定を立てようとしていた。
「休暇…ですか……。」
「はい、アブソルさんが人間の頃の世界で言うと…ゴールデンウィーク…って言うものですかね?、5日の休みを貰っています。」
「アブソル、今日からはゆっくり出来るよ!何する?」
「お菓子作りやってみませんか?、みんなでパフェとか作ってみたいです!」
「いいね〜!候補に入れるよ!他に何かあるかな?」
「……ギルドから出て…思いっきり買い物……とか?」
「デンリュウの案も候補に!他ある?」
ロコンを中心にして話し合いは進み、エーフィ、デンリュウ、キルリアの案はどんどん採用されていく…。
(槍の鍛錬しよっと……。)
休みを自己鍛錬に当てようとしたアブソルはその場を離れようとした……が。
「アブソルちょっとストップ!どこ行く気!?」
ロコンに気付かれ呼び止められた…。
「…3階のトレーニングルームに鍛錬でもと思って…。」
「ダメです!アブソルさんはただでさえ戦い尽くしなのにそれでは休暇の意味がありません!」
「しかし僕は特に予定もないので…ヘラクロスさんと一緒に…。」
「むむむ……。」
何とかしてアブソルに休んでもらいたい…そう考えたロコンは何か止める口実はないかと試行錯誤する…するとデンリュウがふと思いつき、助け舟を出した。
「ヘラクロス…実家…帰る…言ってた…。」
「いや…先程トレーニングルームに向かってるの見ま…。」
「か、帰る……!言ってた…!」
(デンリュウが論破されまいと必死だ!?)
頬を赤らめながらもアブソルを必死に止めようとするデンリュウ…その姿を見てアブソルもついに…。
「……分かりました…折角の休暇ですもんね…ここは甘えて休ませて貰いましょう…。」
「アブソル…それがいい…!」
デンリュウに根負けした…。
〜20分後、アブソルの部屋10:40〜
「…あの…何で僕の槍ロコンさんが持ってるのです?」
「アブソル暇があったら振り回しちゃうから!、だからこれは暫く没収!」
「えぇ……僕の生きがいが…。」
「生きがいって…それほど戦いに執着しちゃってるってこと!、だから修行はダメ!ゆーあんだすたん!?」
「い、Yes……。」
「お話終わりました?」
「あ、エーフィ…何か用だった?」
「えぇ…先程の件…お菓子作りに決定しまして…その事でアブソルさんにちょっと。」
「僕に…?何でしょう?」
「アブソルさんってギルドの近くにある街…まだゆっくり見ていないのでは?」
「…そういえば確かに…ロコンさんとスピアーがいた森から抜け出た時にちょっと通っただけでしたね…。」
「街には便利なものとか沢山ありますよ!これからアブソルさんも多く利用すると思いますし…どうです?お菓子の材料を買うついでに私が案内しますよ?」
「それは心強い…是非お願いします。」
「分かりました!…………ヨシッ!」
「よし?」
「わぁぁ!何でもありません!、では10分後にギルドの外で!」
「り、了解です…。」
エーフィはアブソルの部屋から急ぎ足で出ていった…アブソルはまだエーフィの心境を理解出来ていない…。
「…何だったのでしょう……ロコンさん、何か知りません?」
「さ、さぁ……?」
思いが伝わるのは先が遠いなぁ……とロコンは苦笑いしながらも内心、エーフィの恋心に気づかないアブソルの鈍感さに安心していた。
〜10分後…ギルド外〜
「……エーフィさん…いない?」
アブソルは軽くお金(ポケ)の準備を終え、集合時間3分前に待ち合わせ場所に来ていた…ロコンも最初は付いていくと言っていたのだが…デンリュウとキルリアに道具の準備がどーのこーので連れていかれた…最後にエーフィ係の振り分けで謀ったな!と言う言葉が聞こえたような気がしたが…多分気のせいだろう……。
「ご、ごめんなさいアブソルさん!準備に時間がかかってしまって……。」
「いえ、僕も今さっき来たところなので大丈夫ですよ。」
少し遅れてエーフィが合流した、相当準備とやらに時間をかけていたのだろう…息まで乱しちゃってる…可愛い白の帽子も被ってるな…尻尾には赤いリボンも…あとなんか良い匂いする……果物の…甘い香り…?
「で、では行きましょうか!」
「あ、はい…よろしくお願いします。」
二人は横に並んで街へと歩き出す…妙にエーフィが機嫌良さそうなのが気になった……。
〜ギルド外、中央街〜
「……やっぱり人が多いですね…。」
「そりゃあほとんど何でも揃ってますから!、色んなポケモンが自由に物や技術を売ったりしてるんですよ!」
「なるほど…生活用品を整えるには有難い場所ですね。」
「そういうことです!では早速材料を買いに行きましょう!」
「え…?あの!?ちょっとエーフィさん!?」
エーフィはアブソルの足を尻尾で巻き止め、引っ張っていく。その光景を見つけるポケモン達からは次々と声が掛けられる。
「おや…?エーフィちゃん、その子は?」
「新しく入ったアブソルさんです!今日は一緒に買い物なのです!」
「あらあら…デートなんて熱いねぇ…。」
「えへへ……。」
(あれ……?これデートと間違えられてる!?)
この後はアブソルからしたら苦労の連続だった…周りからは良かったなエーフィちゃん!とか新入り君!幸せにするんだぞ!とか…とにかく買い物をしているだけで黄色い歓声を沢山浴びせられた…更にはその度にエーフィさんは頬を赤らめて僕に上目遣いで擦り寄ってくるし…もしかしてエーフィさんも満更でもない?と思ってしまうアブソルだった……。
〜アブソルからして体感2時間後……。〜
「つ、疲れた……。」
「ふふっ……お疲れ様です、アブソルさん♪」
「なんか…機嫌良いですね?」
「そうですかー?、えへへ〜♪」
エーフィは相変わらずの変わらないテンション、アブソルの鈍い頭ではその理由も分からず、ただ?マークを頭に踊らせるだけだった……。
「材料も揃ったことですし…私のやりたいことはこれで終わりですけど…アブソルさんどこか行きたいところ無いですか?」
「そう……ですね……ん?あれは確か……。」
何処か面白そうな店がないかとキョロキョロ見渡すアブソルは一つの商店に目が止まった…カクレオンのお店…不思議のダンジョン作品ではお馴染みの所だ。
「カクレオン商店ですか〜…品揃えも良いですよね!行ってみます?」
「えぇ…是非…。」
アブソルはカクレオン商店へと足を進める…と、一つの売り場をじっと見つめていた…エーフィも興味津々のアブソルを気になってのぞき込む。
「アブソルさん?、何を見ているのですか?」
アブソルが見ていたのは円形のディスク、技マシンだった…色んなものに目を通す中…アブソルは一枚のディスクを取り出し…瞬間。
「あった……!」
喜びの笑みを浮かべていた、まるで無くしていた宝物を見つけた子供のように…。
「えっと…その技って…何が入ってるんですか?私No.は記憶できてなくて……。」
「僕からしたらとても心強い技ですよ…あの!これ下さい!」
アブソルはカクレオンの店員と少し会話をして戻ってきた…さり気なくディスクが何枚か増えている…。
「沢山買いましたね〜。」
「えぇ、まさか全部200ポケで買えるとは思いませんでしたよ!」
「200!?安すぎません!?」
「誰かの使い回しだったみたいですよ…?リサイクルが使われた跡が見られるので中古品として安くなったそうです。」
「そんな理由で安くなるんですね…。」
「んで、エーフィさんにはこれを!」
「え?」
そう言ってアブソルは一枚のディスクをエーフィに渡す、まさか自分の為にも選んでいたとは考えておらず、エーフィは一瞬硬直していた。
「エーフィさん?」
「はっ!?い、いえ!ちょっと嬉しすぎて固まってました!あ、ありがとうございますです!」
「喜んでもらえたようでよかったです…エーフィさんフェアリーの技欲しいと言っていたの思い出して…それじゃあギルドへ帰りましょうか、パフェ作り…良いものが出来ると良いですね。」
「はい!」
エーフィは貰った技マシンを大事そうにバックへと入れてアブソルとまた横に並び、ギルドへと帰っていった…。
貰った技マシンはNo.99、マジカルシャインだった。
〜エーフィの部屋〜
パフェ作りはロコン達の協力もあって大成功だった、休暇の1日目から凄く楽しめた…更には恋する人とデートも…その事をエーフィは思い出す度にベッドへとダイブし、枕に顔をうずめて足をパタパタさせながらもがいていた。
「…今日は楽しかったな……。」
そう呟くとエーフィは自身の机の上のアルバムに目を向ける、今日の記念に取ったアブソルとのツーショットが新しく加えられていた…二人揃って赤くなりながらも身体を寄せあっているところを撮って貰っている…それは友達とは思えない…一組の初々しい幸せそうなカップルの様だった。
「お兄様…私、今…とても幸せです……。」
エーフィはアルバムを閉じると割れ物を扱うかのように棚へとしまい込んだ。
「ずっと……こんな日常が続けば良いのに……。」
時間は既に夜、休暇の1日目が終わろうとしている…窓から見える月は…今日は丸い三日月だった。
〜オマケ〜
キルリア「エーフィちゃん!アブソル君からプレゼント貰ったんだって!?」
エーフィ「はい!別のタイプの技を覚えたいと言っていたのを覚えてくれていて…それでマジカルシャインの技マシンを。」
キルリア「そうなんだ〜、アブソル君の仲間思いはバンギラスさんと並ぶ…いや、それ以上かもね。」
エーフィ「その優しさに惹かれたのですよ…私は…。」
キルリア「エーフィちゃんも恋する乙女かぁ……。」
エーフィ「アブソルさんから貰った贈り物…勿体なくて使えません!」
デンリュウ「いや…それは使わなくちゃ……ね?」