P2 質問だらけの夢の中
幻想的な空間・・・じゃわからないよな。
言うなればそう、万華鏡の中に立っているような、そんな空間だ。
夢か?
だとすると、俺の体はフィーネん家の一室に横たわっているはずだ。
んで、寝息を立てている。
とくればこういうときは・・・
俺は右頬をぎゅう、とつねった。
「・・・・・・痛くないんだけど、マジで夢かよ」
俺はその場に倒れ込んだ。
こういった場面なら、夢じゃない! っていう風な展開になりそうなもんだが・・・
『ようこそ、リザード君』
「あん?」
どこからともなく響いた声に、俺は辺りを見回す。
誰もいない・・・今のはまるで・・・・・・
『頭の中に直接語りかけているよう・・・だね?』
「・・・そうだ」
俺はやや不気味に感じながらも、とりあえず会話を進めることにした。
夢なんだから、その内覚めるだろ。
『君に幾つか質問をしたいんだ。正直に答えてくれ』
「・・・お前さ、ポケダンの最初にいろいろ聞いてくるアレ?」
『そうだよ』
「・・・・・・・・・・」
か、変わった夢もあるもんだな・・・
ちなみに、ポケダンはついこの前に時の探検隊をやったぞ。
『じゃ最初の質問。前を歩いていた友達が結構ハデにすっ転んだ! キミはどうする?』
「もちろんスルーする」
『A すぐに助ける B 思わず笑う』
俺は思わずずっこけた。
選択肢から選ぶタイプでしたか・・・・・・
ゲームどおりですね・・・
「えっと・・・パス」
『ダメ』
「・・・・・・じゃBで」
あさりとした対応にやや腹を立てながらも、俺は小さく呟いた。
『なるほど。じゃ次の質問に・・・』
「待った、ゲームどおりの質問じゃつまんないだろ? オリジナルで行こうぜ」
俺がこう言ったのは、本当に楽しみたいだけだからだ。
もう質問と、最終的に決まる性格のパターンは全て把握している。
『そう? わかった。じゃあ・・・誕生日に友達がプレゼントをくれた! キミはどうする?
A 代わりにかえんほうしゃをプレゼント B逆ギレ』
「他の選択肢はないのかヲイ」
『ないね』
「・・・・・・パスで・・・」
俺はため息交じりにそう言う。
彼(?)は今度はダメではなく、わかったと一言。
『じゃあ次ね。ぶっちゃけ自分のチャームポイントは何だと思ってる?
A cute B cuese C beautiful』
「パスだパス! 次行け!! ってかお前curseって意味知らねえだろ! 呪いって意味だぞそれ! どこがどうなればチャームポイントになんだよ!」
『え〜・・・しょうがないなぁ・・・』
あーもう、なんなのだコイツは。
俺はほんっとにもうイライラしながら、次の質問を待つ。
『学校の宿題を忘れてしまった! 先生は起こると怖い! キミはどうする?
A嘆く B怒る C悲しむ』
「・・・パス」
『次。お小遣いをもらったぞ! キミはどうする?
A 友達に欲しいものをおごる』
「・・・・・・あれ、Bはないのか?」
『うん』
正直・・・・・・殺意がわいた。
なんというか、恐ろしくウザったい。
俺はこんなわけわからん空間で何をしているんだろう・・・と思いながら、小さくAで・・・と呟いた。
『じゃあ、最後の質問ね』
「マトモなの頼むぜ」
『君は男の子? 女の子?』
「・・・・・・うぁぅ・・・」
これは悪夢だ。
ただの悪夢・・・・・・
『じゃあ、女の子でいいかな』
「男だ!!」
もう帰りたい、っていうか、早く眼覚めてくれよ・・・
『君は、どうやら無邪気な人みたいだね』
「はい?」
『持ち前の明るさで周りの皆をなごませることができる。けど、たまに自分の周りが見えなくなることがあるから注意してね。そんな君は・・・』
「そんな君は?」
『リザードだ!』
「知っとるわそんなこと!」
ていうか、俺がまともに答えたのは最初のやつだけなんだけど!
ああもう! それより・・・
「なぁ、これって俺の夢の中なんだよな」
『そうだね、夢だよ』
「特別な夢、なんかのお告げか?」
『強いて言うなら・・・出発点だね』
出発点・・・・・・か・・・
『じゃあ、そろそろ本題に入ろうか』
「これから本題!? なっげえ前置きだなオイ!」
『いや、まあ・・・ここからは大事だから』
「で、なんだ?」
俺がそう聞いたとき、突如目の前に光が収束し始めた。
光がかたどったのは、小さな青いクリスタル。
青く、淡い光を放つそれはとても神秘的で、俺は思わず見入っていた。
『危なくなったら、使ってね』
クリスタルはカシャアァン! と華麗な音を立て、無数の光となる。
光は、俺の胸の中に入っていった。
「これは?」
『まぁお守りみたいなものだよ。さて、じゃあ早速だけど、これからキミを異世界に飛ばすね』
「・・・・・・へ?」
い、異世界?
それってどういう・・・・・・
『キミにはやりとげるべき使命がある。じゃあがんばってね!』
「あ、ちょっ! 待て!」
瞬間、世界がブレた。
めまいを起こしたかのような感覚に、俺の体はドサリと倒れる。
「あれ・・・・・・俺・・・・・・・・・」
世界が闇に包まれた。
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俺が目を覚ましたのは、見知らぬ路地裏。
辺りを囲む壁・・・いや、これは建物か? はアンティーレの図書館並みに高い。
体を起こして触れてみると、コンクリートのひんやりとした感触。
俺は小さい頃、リーオたちと一緒にアンティーレを駆け回っていた。
けど、こんな場所は見たことがない。
「ん?」
ふと聞こえてくる騒音に気づいた俺は、その発生源に向かって歩いていく。
騒音というか、商店街のようなにぎやかな声や物音。
向こうに光を見つけ、そろりそろりと歩いていく。
そして建物の間からそーっと外を覗いた。
思わず息をのむ。
「どこだよ・・・ここは・・・・・・!!」
道を行き交うたくさんの人間。
立ち並ぶ高い建物。
上の方にある赤、黄、青のライト。
大きい音を立てて走り去る、中に人が乗った機械。
本で読んだことがある。
俺が住む世界とは違う、まったく別の世界・・・・・・
「人・・・間・・・・・・界・・・・・・」
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第2章の舞台はなんと人間界!
ホッホッホ、これは胸が躍りますな。
何故か人間界に飛ばされてしまったリシル君。
そしてまた新たな出会いが・・・
次回をお楽しみに・・・・・・