第2章 『光狼の大地』
P1 復興へと
イグリオ曰く、オレの部屋から望めるアンティーレの景色は素晴らしかった。とのこと。
一瞬だけ見たことはあるが、あの時はそれどころじゃなかったからな。

「あの・・・リシルさん? えっとですね・・・・・・」
「なぜお前がここに居るのだ」

後ろで響く遠慮がちな声と、バッサリと言い放つ声。
アンティーレの長が座るべき椅子に堂々と陣取り、外の景色を眺めていた俺は振り向いた。

「え? いいじゃねえか。別に」

俺のその言葉を聞いてさらにわたわたとするのは、アンティーレの長であるイグリオの部下、ニョロトノのヒグラさんだ。
ちなみにヒグラさんはオスな。
そしてその隣に堂々と立つガブリアス。
彼・・・イグリオこそがもう一つの声の主であり、俺の座っている椅子に、本当に座るべき存在なのだ。
頭を抱えて溜息をつくイグリオを尻目に、俺は再び窓からアンティーレを見下ろす。
ヘルメットをかぶった様々なポケモン・・・主にかくとうタイプ。が木材を抱えて歩いていたり、クギ目掛けてトンカチを振り下ろしていたり。
ガレキの撤去はすでに終わっていて、そこからイグリオの対応の速さがうかがえる。
アルフとの戦争、ラグナロクが起きたのが1か月前。
アルフ兼親友のヴァーリの助けもあって、なんとかラグナロクを止められることができた。
が、町の被害は目も当てられないほど大きい。
そしてラグナロク終結後、町の復興を考えたのはイグリオなのだ。
たった1か月でガレキの撤去が終わるというのは、町の規模からするとかなり早い。

「現実・・・・・・なんだよな・・・・・・」

アルフとの・・・ヴァーリとの出会いは決して夢ではない。
本物の思い出となって、俺の心にいつまでも残るんだ。
視野を少し横にずらすと、そこには形を成している俺たちの学校。
アンティーレの住人は残った建物にぎゅうぎゅうづめで暮らしている。
その建物はもちろん、学校も例外ではない。
今はたくさんの人たちのホームとなっている。
当然ながら授業は無い。
でも、誰かのためになっていると思うと、なんだかうれしくなる。
ふむ・・・・・・

「なぁ、イグリオ、ヒグラさん、あんたたちヒマそうだな」
「なぜ俺にはさんをつけない」

イグリオが怖い顔で睨んでくるもんだから、俺はへへっと笑って見せた。


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「どうするよ?」

時計塔を出た俺の目の前にぬっとあらわれるのは、真剣な表情を下リーオの顔。
2.3歩後退しながら、俺はどうした・・・?と声を出した。
リーオは腕を組んでうなる。

「いやぁ、アルフ研究部についてだよ。ラグナロクが終わった今、研究部の存在意義はなくなったわけじゃん?」
「ああ、なるほど」

つまりリーオは、おそらく部長としての威厳に駆られ、打開策を見つけようとしているのだろう。
納得。

「どうするか・・・かぁ・・・・・・」

ラグナロクに至るまでの間にアルフのことは知り尽くしてしまったし、アルフの存在だけでなくその正体を知っているやつは、今や俺たちだけではない。
このままでは、アルフ研究部がただのまったり部になることは間違いないだろう。
うーん・・・と俺、うあ〜・・・とリーオがうなる。
特にいいアイデアはない。
他の部活に入るのは、いろいろと遅れが出るだろうな。
帰宅部などもってのほかだ。

「あ、リシルくんにリーオくんこんにちは〜・・・・・・どうしたの〜?」

ひょっこり顔を出したティアルは、不思議そうな表情で首をかしげた。

「おう、ティアルか。えっとな、アルフ研究部はこれからどうするかってことをリーオと話してたんだ」
「そっか〜、もうやることないもんね〜・・・あ、そう言えばエイル先生がこれからのことについて何か言っていたような〜・・・」
「「マジでか!!!?」」

ずずいっと詰め寄る俺たちに、ティアルはめずらしく苦笑いを浮かべた。

「確か〜、そのアイデアが・・・・・・」


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「ふうあぅ・・・・・・」

俺はドサッとベッドに倒れ込んだ。
背中を包み込む、羽毛のふわふわとした感触。
この感覚はどうもクセになっちまう。

「新しい部活・・・か・・・・・・」

エイル先生のアイデア。
それはアルフ研究部をそっくりそのまま別の部にしようというものだった。
それで新しくできたのが・・・・・

「オカルト研究部、ね」
「ああ、そうだよフィーネ」

俺はフィーネの発言にそう呟いた。
あんまり変わらない気がするが、そのあたりは気分の問題なのだろう。
一応校長の承認も得て、すでに正式な部となっている。
ふと、床に直接座り込んでいるフィーネが溜息をついた。

「てかリシル、それ私のベッド」
「え? ああ、悪い」

俺はあわてて体を起こした。
ちなみに、今俺がいるのはフィーネの部屋。
ラグナロクによって家が全壊した俺とリーオは、それぞれティアルとフィーネの家に居候している。
アルフ研究部・・・いや、オカルト研究部の4人でお泊り会なるものをよくやっているから、特に抵抗は無い。
人数が4人から2人に減っただけだ。
フィーネは勉強机に座り、ノートと社会の教科書を開きながら言った。

「ねぇリシル、オカルト研究部ってさ、最初は何するのかな」
「多分だけど、調べる物のテーマ決めじゃないか? ナレクさんの意見も取り入れての」
「ああ、なるほど」

フィーネは本当に話を聞いているのだろうか、ノートに向かってペンを走らせている。
おそらく、遅れている分の授業の予習だろう。
フィーネはこういうあたり、結構マメだ。
ベッドから降りてノートを覗き込むと、小さいながらもきれいな文字がびっちり書いてある。
何故一部の女子は字が小さいのだろうか・・・
そんな疑問を抱きながら、俺は溜息を1つ。
床にぺたんと座り込んだ。

「リシルどうしたの?」

フィーネが手を止め、俺を見下ろす。

「ヒマ」
「暇?」
「いぇす」

フィーネは困ったような表情で、すぐ脇の引出しからひもでしばられたカードの束を取り出した。
あれはトランプか。
トランプを俺に投げ渡し、フィーネは再び机に向かう。

「キリのいいところで一旦勉強は中断するから、それまでによく切っておいて。固まってると思うから」

心の中でフィーネに感謝しながら、俺は黙ってトランプを切る。
その夜、俺は合計9回の大富豪、4回のババ抜きにおいて全敗という輝かしい戦績を残し、別に用意された部屋で軽く涙を流しながら眠りについたのは言うまでもない。


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ホッホッホ、始まりましたな、第2章。

今回はラグナロクのその後・・・みたいな話です。
次回は、また新しい奇怪な事象が起こるでしょう。
そこから始まる、リシル君の新たな冒険。
楽しみですな。

では、またお会いしましょう・・・・・・

タクミン ( 2013/02/06(水) 19:56 )