第1章 『天界の使者』
P7 招かざる客
ォォォォォ・・・・・
ひゅぅぅぅぅぅぅううううううう!

「あぎゃっ!!」
「きゃふう!!」
「ぐえっ!!」
「ぎゃっ!!」
「きゃいっ!!」

上からリーオ、ティアル、俺、エイル先生、フィーネの順である。
十人十色とはこのことを言うんだろうか。
にしても、いって・・・・・・

「フェリル・・・あのヤロ・・・・・・」

リーオは怒気をたっぷりと含んだ声でそう呟く。
上を見上げると、ホウオウにへんしんしたメタモンのフェリルが飛び去っていくのが見えた。
しばらく全員が仰向けに倒れ、息を荒げ必死に呼吸を整えていたが、エイル先生が力なく笑うと、俺たちはぱらぱらとそれに続いた。
生きてる。
俺たちは生きてる。

「俺たち生きてるぜ、リーオ・・・」
「だな。けど、帰りにはフェリルにお灸をすえてやんねぇとな・・・」
「まったくだ・・・」

命の危険があった状況に置かれていたにも関わらず、心は穏やかだった。
なんかそういうのを、本かなんかで読んだ気がする。
危機を脱した時、生物は笑うものだってな。
俺は左手を動かして、俺たちの横たわる地面を触ってみた。
コンクリートのように固くない。
地面・・・いや、俺たちを乗せた雲は、スポンジのように体を優しく受け止めてくれたのだ。
ふぅ、助かった・・・・・・

「ねぇ皆、やっぱりあれって・・・」

フィーネは、まだ痛みが残っているであろう体を起こしてそう言った。
俺たちも同じく立ち上がると、目の前にそびえるそれを見上げる。
高さは25メートルほどあろうか、

『天界』

ずっと追い求めていたアルフ。
ナレクさんに聞いた限りでは、その居場所。
俺たちを見下ろす壮大な宮殿は力強くありながらも、儚く散ってしまいそうな。
それほどまでに尊く、美しかった。

「エイル先生〜、入ってみます〜?」
「まー、肝心のアルフはここにはいないみたいだし、入るしかないな」
「オウ、来客者じゃねーか」

ぴくぅっ!!

俺たちの背中をゾッとした悪寒がかけぬけ、場に戦慄がはしる。
今の声はリーオでも、ティアルでも、フィーネでも、エイル先生でも、ましてや俺でもない。
まさか・・・・・・
冷たい汗を流しながら、俺はゆっくりと振り向いた。

「ここに来客者っていうのはめずらしいもんだな。どっから入ってきやがったんだ? まぁいい。詳しくいうとお前らは招かざる客ってとこだ。丁重に送り返してやるよ」

俺は驚愕の光景に目を見開いた。
オノノクスが宙に浮いて・・・・・・いや、翼で飛んでいる。
まるで天使のような、純白の翼で・・・
こいつ・・・・・・

「強いな・・・・・・俺たちより遥かに」

エイル先生の呟きに、俺は心の中でうなずいた。
醸し出すオーラが明らかに違う。
それが強烈だとか、そういうわけじゃない。
美しいんだ。
よどみなく流れ出るオーラは、異質とも呼べるくらいに美しい。
そこまで考えた俺の中に溢れだしてきたのは純粋な恐怖。
怖い。
下手をすれば、殺される。
俺は震える口を懸命に落ち着かせ、なんとか声をひねり出した。

「・・・・・・あんた・・・・・・あんたはアルフか?」
「そうだ。俺様はアルフ」

オノノクスは俺をまっすぐ見据えた。

「名前はトーレル。よろしくな少年」

あこがれの存在、アルフ。
それが目の前にいるのに、不思議と心は落ち着いていた。
おそらく、皆同じであろう。
集中すべきは目前の戦闘のみ。

「ん? お前は・・・・・・」

トーレルはエイル先生を見つめ、そう呟く。
が、すぐ首を横に振った。

「まさか・・・な」

トーレルはゆっくりと両手を上げると、両手の間にどこからともなく現れた水が収束していく。

「じゃあな地上の民。消し飛ばすつもりで攻撃するが、運が良ければ下界に戻れるかもしれないな」

トーレルは生成した水の塊、いや、乱回転した水の小さな嵐をさらに圧縮させた。

「ハイドラストリーム」

俺たちに向けて放たれたアルフの技。
後ろで皆が何か叫んでいる。
けど俺には聞こえない。
俺が聞いているのは、乱回転する水の轟音。
俺が見ているのは、目前に迫る小さな嵐。
世界が暗闇に包まれた。


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「おばあさん、焼き団子2本お願いします」
「あいよー!」

アンティーレっていう町から、少し外れたところの道にそれはある。
「だんご」と書かれたのれんを下げ、この店は今日もニドクインのおばあさんが上新粉っていう粉から団子を作る。
丸めて、串を通して、1つ1つじっくりと焼いていく。
うん、この香りがたまらない・・・

「おまちどお! 120ポケだよ!」
「ありがとうございます」

団子を受け取った僕は手近な椅子に座り、早速一つを口に運ぶ。
咀嚼するたびに口内に広がるのは醤油の香ばしい香り・・・

「にしても今日も来たんだね、ヴァーリちゃん。団子は美味しいかい?」
「今日もおいしいです。あと、ちゃん付けないでくださいって言ってるじゃないですか。僕男ですよ?」
「でもかわいい見た目してるし、声も高いんだから、おばあちゃんはそれでいいと思うわよ?」
「そう・・・ですか・・・・・・」

縁が黒くなっている巨大な耳。
真っ黒なしっぽ。
黄色を基調にした小さい体。
ピチューっていうのは、いかがなものなんだろうか・・・・・・

「ん?」

窓にうっすらとうつる自分を見ていた僕は、曇り空から大地に落ちていく5つの影を見つけた。
結構距離があって、なんなのかは見えない。
あれ、そういえばこの上って・・・・・・

「・・・・・・・・・まさか、来訪者?」

僕はあわてて残り7個の団子を口に詰め込んだ。

「おばあはん、ごひほうはまでひた!(おばあさん、ごちそうさまでした)」
「あいよ! またおいで!」

そしてそのまま店を飛び出す。
5つの影はまだまだ上空。
落下予想地点を大雑把に割り出し、僕は駆け出した。


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ホッホッホ、だんだんとシリアスになりつつあるような気がしますな。

ところでシリアスってどんな意味なんですか?
おや、あなたは作者?
・・・・・・フムフムなるほど。
あ、いや、失礼失礼。

さて、アルフであるトーレルの攻撃を受けたリシル君たち一同は無事なんですかねぇ・・・
ま、私は知ってるわけですが・・・・・・
最期のヴァーリというピチューも、物語のキーとなる存在になるでしょう。

ではそろそろ休憩にいたしましょうか。
次回もお楽しみに・・・・・・


タクミン ( 2013/01/09(水) 17:45 )