第1章 『天界の使者』
P5 魔獣の森を突破せよ
「みずでっぽう!」
「つるのムチ!」
「先生! リシルくん! そっち行ったよ〜!」
「行くぞ、リシル君」
「わかってるよ、先生!」
「「かえんほうしゃ!!」」

通常の2倍の威力をほこるかえんほうしゃを受け、スピアーは目を回して地面に落下した。

「ふう、なかなかすばしっこかったね・・・」
「フィーネちゃん大活躍〜!」

俺は口内に残ったかすかな炎をボッとはき出し、スピアーが落としたチーゴの実を拾い上げる。
ここは『魔獣の森』っていう不思議のダンジョン。
ブッソウな名前だが、ぶっちゃけ難易度は低い。
学校で軽く戦闘訓練の授業を受けているだけの俺たちでも、難なく攻略できるくらいだ。
さて、なんで俺たちアルフ研究部とその顧問がこんなとこに居るかというと・・・

「結構深いな、このダンジョン。アンゲルス遺跡はまだかぁ?」

このリーオの言葉で察してくれるとありがたい。
そう、俺たちはアンゲルス遺跡に向けて探検中である。
まぁ通るだけだけど、探検ってことで。
正直、エイル先生が同行してくれるとは思わなかった。
さっき、学校の業務はどうした? と聞くと、先生は抜け出してきたと笑った。

「リーオ君、情報によると26Fまであるらしいよ。このダンジョン」
「うへぇ、マジかよ先生・・・」

リーオの口は、フワンテのようにバッテンになった。
本人曰く、疲れた休みたい帰りたいのサインである。

「おいリーオ、アルフの手がかりがあるかもしれないんだぜ? 多分、あと家から学校くらいまでの距離だ。がんばれよ」

口のバッテンはますます固く結ばれた。
ちなみにここは19Fである。
あと7Fっていうのは遠いのかそうでもないのか。
階段見つけてそれを上がるっていう作業を7回って思えば近いように俺は感じる。
俺たちがいる部屋の中央でエイル先生はしばらく辺りを見回していたが、やがて俺の方を向いて顔をしかめた。

「? どうした? エイル先生」
「リシル君、後ろ後ろ」
「後ろ?」

ゆっくり振り返ると、そこには新たなスピアーが多数。
その数6匹。

「うえぇ・・・」

俺に続き、スピアーの集団に気づいたリーオはうめき声をあげた。
フィーネは顔を引き締め、ティアルはにこにことした表情で戦闘態勢を取る。
俺は大きく飛びずさると、同じく戦闘態勢を取った。

「んじゃ、行くぞ皆。俺が2匹落とすから、1人1匹落とせ!!」

エイル先生の声に、俺たちはいっせいに飛び出した。


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「オーディ、ちょっといいかしら」

長く、そして高い廊下と呼ばれる空間に響き渡る、高く澄んだ女性の声。
俺はゆっくりと振り返り、声の主の姿を睨んだ。

「何用だ、シヴ」

彼女・・・シヴは腰に手を当て、まったくもう・・・と今にでも言いそうな表情をした。
いや、本当に言った。

「毎回睨むこと無いでしょ。わたし、何か悪いことした?」
「別に。で、要件はなんだ?」
「あ、そうそう。あの子、また下界に降りてったわよ」
「またか・・・・・・」

溜息と共に、左手で頭を抱える。
好奇心旺盛なのはいいが、毎日下界に降りられてはさすがに困る。

「シヴ、あいつが帰ったらあくまでも使命を忘れるなと言っておけ」
「わかったわよ、オーディ。あんたこそもう睨まないでよ」
「覚えていたら、な」

俺はシヴに背を向け、再び歩き出した。
使命を・・・・・・忘れてはならぬ・・・・・・
俺たちは・・・・・・・・・

                    ・・・アルフ・・・・・・・・・


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「階段めーっけ」

俺が26Fの階段を発見してその言葉を発したのは、ダンジョンに突入してから実に3時間が経過したころだった。
24Fから1人1人別の道を探索するという方法に切り替えていた俺たちは、最後の26Fも同じく1人1人別れた。
そして今に至るというわけである。

「ふむ・・・・・・」

階段の上はやはり外のようで、太陽の光が階段上部から漏れている。
今までは階段を発見したら大声で知らせるという手段で皆を集めていたが、ダンジョンをウロウロしているスピアーやらクサイハナやらを呼び寄せてしまうため、そいつらの相手が面倒だったと階段を見つけたやつから聞いている。
ま、最後だしいっか。
俺はさっき拾った、真円の青い球・・・ふしぎだまを取り出すと、地面にたたきつけた。
ふしぎだまは砕け散り、ダンジョンに四散する。
そしてほんの数秒後、フロアを探索していた他のメンバーが、光と共にワープしてきた。
リーオとフィーネは不思議そうな顔で辺りを見渡し、ティアルはやっぱりにこにこしている。
エイル先生は俺に向かって歩み寄ると、俺の隣にある階段を見つめた。

「リシル君、『あつまれだま』か?」
「そ。呼ぶのめんどっちいから使っちまった。悪かったか?」

エイル先生はふるふると首を横に振った。
にしても、ふしぎだまとは便利なものだ。
敵の動きを封じたり、ダンジョンから脱出できたりと種類は様々。
さっき使ったあつまれだまってのは、フロアの仲間をあつめるふしぎだま。
はぐれた時なんかにゃ便利だな。

「さて、行こうか」

俺たちは、さっさと外へとつながる階段を上っていくエイル先生の後を追った。
ダンジョンを突破する。
俺がその快感を味わうのは、小さいころリーオと一緒に挑んだ小さいダンジョン以来だ。
十数段ほど登っただろうか、ついに足が大地を踏んだ。

「へぇ・・・・・・」

そこはまさにジャングルの中と言うべきか。
辺りは深い森が広がり、目の前には直方体の石が積まれてできた遺跡。
そう、アンゲルス遺跡が堂々と俺たちを見下ろしていた。
予想よりはるかに大きい。
広さは、学校の校庭を含めたのが3つは入りそうだ。
遺跡の最も高い部分は15メートルはあるだろう。
森の外から見えなかったのが不思議なくらいだ。
ここにアルフの手がかりが・・・
そう思うと、俺の胸は高まっていった。

「ふう、ようやく突破か・・・腹減った・・・・・・」

と、後ろで座り込んだリーオがそう言ったのを聞いて、俺は不意に空腹感を覚えた。

「じゃ、ここで一旦お昼にしない? もう1時を回るわよ」
「私は賛成かな〜」
「んじゃ俺も」

フィーネの提案に、全員が賛成の声をあげた。
各々木影に座り、ダンジョンで拾った木の実を口に運んでいく。
俺も同じく木の実を並べ、クラボの実をかみしめた。
俺はじっとアンゲルス遺跡を見つめる。
なんだか、嫌な予感がするんだよな・・・・・・
木の実を咀嚼している間、その思いだけが心を支配していた。


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ホッホッホ、探検はほとんど省かせてもらいました。
え? 面倒くさいだけじゃないのかって?
まぁそれもありますが、そういうのを語るのは得意ではないのです。

さて、次回はいよいよ遺跡に突入。
アルフの謎がついに解き明かされるかもしれませぬ。

その時、当時の私は確か市場で買い物をしておりましたな。
いえ、なんでもありません。

ではまたお会いしましょう・・・・・・


タクミン ( 2013/01/07(月) 20:06 )