P3 こういう話は題名に困る
何も、アルフ研究部が集うのは放課後だけではない。
今日は日曜日であり、当然ながら学校は休みだ。
エイル先生が校長に頼んで校外活動を認めてくれたんだが、放課後だけでは時間に無理がある。
こうして休日に集まるのも、俺たちがそれほどまでにアルフに魅了されたということなのだろうか。
さて、俺たちがいるのは町の大通り。
あたりは数々のポケモンが行き交っており、たくさんの市場にはみずみずしそうな木の実から、奇妙なアクセサリまで多種多様な商品が並んでいる。
「では、今日も張り切って調査していこうぜー!!」
その道の真ん中で高らかに叫ぶリーオ。
道行く人々──人って言ってるけど全員ポケモンな──はいぶかしげな眼でリーオを見ている。
中にはリーオを指さして、「ママ! あのアリゲイツのおにーちゃんなんか言ってるよ!」と叫ぶ子供の手を引いて、さっさと立ち去る母親らしきポケモンもいる。
俺とフィーネは、そろって頭を抱えると盛大に溜息をついた。
ティアルはにこにこと笑っているだけである。
「フィーネ、リーフストームいけるか?」
「まだ練習中だから威力低いけど、1日2回までなら撃てるわよ」
「周りを巻き込むなよ」
「わかってる、エネルギーはリーオの1点にしぼるから」
「じゃ、頼む」
この後の展開?
それは皆さんの創造におまかせしよう。
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「そうだな・・・・・・俺様は確かに現場にいたが、雲の向こうに飛んで行ったくらいしかわかんねぇな」
「そうですか〜。怖そうなラッタのお兄さん、ありがとうございま〜す」
「いいってことよドレディアのお嬢ちゃん。それより、この後一緒に食事でも・・・」
「今はちょっと忙しいので〜。お誘いはありがたいのですが、また今度の機会に〜」
そう言ってティアルは笑顔で一礼すると、次に向けて歩き出す。
店の柱によりかかって、手に持った缶ジュースをぐいっと飲みながらそれを見ていた俺は、
感嘆の息をもらした。
ちなみに、後ろに座っているマリルリの店主さんが不思議そうな目で俺を見ていることなど、俺は知る由もない。
ま、それはどうでもいいとして・・・
ティアルはモテる。
いきなり何を言い出すんだと思うかもしれないが、とりあえず聞いてくれ。
なんというか、男付き合いがうまいというんだろうか。
さっきのラッタのように相手を落胆させずに断るっていう。
・・・・・・わかるよな。
実際、学校でもティアルに詰め寄る輩は多いし、ティアルはそのすべてをうまく流している。
そういう固有の能力っていうのかな、があるといろいろと便利なんだろうな。
・・・・・・恐ろしくどうでもいい話だったな、悪い。
俺は缶ジュースの残りを口に流し込むと、傍らのごみ箱に放り込む。
「さて・・・・・・と」
休憩は終わり。
俺もアルフについての聞き込みを再開するか。
あのガラの悪そうな、ニドキングのお兄さんなんかに聞いてみっかな・・・・・・
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「3時間粘って、結局収穫無しか〜・・・」
クラボの実入りのピリ辛ハンバーガーにかぶりつきながら、リーオはそう呟く。
「ま、聞き込みなんてずいぶん前からやってるからね・・・情報は全部吸い尽くしちゃったでしょ。 にしてもムカツクやろーだったなアイツ・・・・・・」
フィーネはストローで容器の底に残ったジュースを思いっきり吸い上げる。
少々乙女にはふさわしくない音が響くが、まぁ気持ちはわかる。
フィーネが先ほど話しかけたメスのケンホロウ。
アルフについて聞いてるのに、あんなのはガセだ、存在しないなどと言い、挙句の果て
無いものの調査なんてバカげてると吐き捨てたのだ。
俺達はアルフを信じ、真剣に調査しているのだからそれを否定されればピキッとくるものがある。
まぁ十人十色っていう言葉があるように、考え方は一人一人違うのは仕方ないんだがな。
俺はテーブルに頬杖をつきながらポテトを1本口に運び、咀嚼せず口に咥える。
枝がポテトになり、葉っぱ無しの赤いジュプトルの完成である。
隣に座るティアルから行儀悪いよ〜、と指摘を受けた俺は、とりあえず頬杖をやめて
ポテトを飲み込んだ。
しかし、ファーストフード店というのは便利なものだ。
安いし、近いし、うまいし。
休日、研究部が集まる時の昼はここでとるということになっている。
俺には不満はない。
「午後は、中央図書館に行ってみよ。学校の図書室にはない本なんかもたくさんあるし」
フィーネの発言に、リーオはげんなりとした顔でうめき声をあげた。
そこまでいやなのか? お前。
「だって眠くなるじゃんか・・・」
「誰に言ってるのよ」
ふむ、リーオにはテレパシーが使えるのだろうか。
心に疑問を残しつつ、容器に残ったポテトのカケラをザッと口の中に流し込む。
再びティアルの指摘が飛び、俺はそっと溜息をついた。
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俺たちの住む町、前も呟いたが、名前は『アンティーレ』
歴史ある古代の町って意味だ。
意味だけじゃない。実際に古の町って呼ばれてて、大昔からあったらしいぞ。
その割にはまぁ、なんとも都会チックな町だ。
俺たち一行が目指す中央図書館は、文字通り町の中央、時計塔のふもとにある。
市役所や公民館と言った施設もそこに集まっており、なんともわかりやすい配置である。
そしてそこから放射状に3キロほどの道が8本続いており、俺たちが歩いているのはそのうちの1本。
道の周囲は民家や店が立ち並ぶ、住宅地だ。
簡単に説明するとだな、丸を一つ描いて、その中央に小さい丸を描く。
小さい丸は公共施設等で、それ以外の部分は住宅地。
わかるか?
えっと・・・あれだ、RPGに出てくる街を想像してくれ。
真ん中にでっかい塔が立っていて、その周囲が住宅地になっているようなやつ。
あれだ、あれ。
んで、住宅地を1本の大きい川が貫いている。
俺がこの前昼寝してたとこのだな。
まぁインパクトに欠けるなんとも微妙な町だが、住みやすいというかなんというか・・・
13年間も過ごせばそりゃあ愛着もわくというものだろう。
「なぁなぁ」
リーオのだらしない声に、俺はハッと現実に戻った。
先頭を歩くリーオは頭の後ろで手を組み、こちらを見据えている。
「どうしたんだよリーオ、そんなに改まって」
「なにか大切な物壊したの〜?」
「怒らないから、ハッキリ言いなさい」
「いや、俺そこまで信用無いのか? ・・・ちょっと思ったんだけどさ」
リーオは青く澄んだ空を見上げる。
わずかに漂う雲は風に揺れてなんとも心地よさそうに思えた。
「アルフって、なんで俺たちの前に姿を現したんだろうな」
「でも、俺たちの視線に気づいたとたんにどっか行っちまったんだろ? 小さい子が迷子になったとか、なんらかのトラブルかなんかじゃないのか?」
たんたんと意見を述べる俺に対し、リーオは腕を組んでう〜んと目を閉じる。
「なんか意味があるような気がするんだよなぁ・・・もしアルフが大昔から存在していたなら、今さらになって見つかるのは大問題になるだろ。おれたちにしても、アルフにしても」
「まぁ・・・現にそうなったからね・・・で、リーオは何が言いたいの?」
「何らかの警告とかって考えられないかなって」
リーオの言葉を聞いて、俺の背中に悪寒がはしった。
もしそうだとしたら・・・俺たち地上の民が過ちを犯したのなら、アルフは俺達を滅ぼすのかもしれない。
いつのまにか、俺の右手は固く握られていた。
「さすがにそう決めつけるのは早いと思うわよ。まだ調査は途中なんだから」
フィーネがそう言って話を完結させると、俺たちは再び歩き出す。
だが、俺の不安は頑なにほぐれなかった。
もし、アルフが地上の民を滅ぼそうとするのなら・・・・・・
「・・・・・・ッ・・・」
俺は頭をブンブン振って、先を行く3人に追いつくべく、走り出した。
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ホッホッホ、今回は次への繋ぎとでもいいましょうか。
・・・・・・・え? その笑い飽きた?
では・・・・・・
ヘッヘッヘ、こんなんはどうですかな。
・・・・・・・え? 怖い?
なら最初ので我慢してください。
次回は図書館での話になりますな。
タイクツなら、寝ておられても構いませぬぞ?
生物は睡眠中も周りの音を聞いておるのです。
むしろ寝ているときしか聞こえない音も・・・・・・
・・・・・・あるのかもしれませんな。
ではまた次回・・・・・・