第3話外出
再びドアを開け、「失礼しました」と、俺はバジリオスに言った。
バジリオスは無言で頷く。
緊張の糸が切れ、倒れそうになった。地面を見た。
「僕もついて行きたいな。偵察任務…。」
軽い、子供のような声が聞こえた。
「楽なもんじゃないよ。ついて来る?」
俺は声のしたほうに振り向く。
驚いた。声の主はマグマラシ。若き国王、アナイスだ。
俺の右側に腕組みをして壁にもたれかかるようにこちらを見ていた。
自由気ままで、責任感が薄く、言動が幼い。そんなことで有名だ。
戦争やポケモンの死を無邪気に楽しんでいるらしい。
「僕も行きたい、行かせてくれよ」
シエルは呆然とする俺を背に立った。
「我が国の国王たるもの、偵察任務なんて野蛮な仕事、やるもんじゃありませんよ」
シエルはそう言った。しかし納得いかないかのようにアナイスは口を開けた。
「アナイス国王、直ちにお部屋にお戻りを」
不意に後ろから声が出た。バジリオスだ。
「ブー」
アナイスはそう言うと、渋々国王の部屋に戻っていった。
「早く行きなさい、ダイルは何を考えているか分からないからな…」
広間に戻った。皆の姿はない。仕事場に戻ったんだろう。
将軍はあの後「渡し忘れた」と、外出許可書を下さった。
外に行くには八個ある大広間の大門の中の南側の門から出なければならない。ちなみに将軍の部屋につながる大門は北の方角にある。
南の大門を開け、少し長めの廊下を歩き、また大門があった。
「久しぶりですね、この門を開けるのは」
シエルは嬉しそうに言った。
目の前には草原が広がっていた。雑草に臭いが鼻をつつく。果てしなく続く雑草の道。木は1本も無く、ずっと遠くには海が見える。
「まだ昼です、夕方にはつくでしょう」
コンパスが北東を指すことを確認し、黙々と歩き始めた
「それにしても彼らも可愛そうだね」
アナイスは3匹のポケモンを見て無邪気に笑った。
「人員削減、仕方が無いことです」