第2話偵察任務
大広間の将軍が朝礼のとき顔を出すところの下にもう1つ大きな門がありその奥に階段がある(らしい)。
普通俺たち二等兵などは階段を上がるどころか門を触れることすらできない。
しかし俺とウィルはそのヘブンズゲートを開けようとしている。
俺は息をのむ。もしかすると、2等兵ランクでは俺たちが始めてこの門を開けるんじゃ…。
歴史の重みを感じる大門を今開けた。
他の廊下や階段とは一味違う。壁の色は灰色で他のところとはほぼ同じだが…、空気が違う。
目の前には確かに階段があった。2等兵仲間が興味しんしんに階段を見つめる。
「行ってくるわ」
俺の声に驚いたんだろう。仲間が皆、体をブルリと震わした。これは面白い。後でもう1度やるか。
階段を1歩1歩上る。窓の外には地平線のようにどこまでも続く野原が見える。
廊下が現れた。長い。あの先にあるのが多分…、若い王様のお部屋だ。
しかし王の部屋に行くわけではない。右に右折してバジリオスと書かれた大きなドアを開けなければならない。
緊張ってレベルではない。
深呼吸する。ウィルが「何してんの?」とか聞いてくるが無視した。彼には緊張という言葉を知らない。と言うより緊張しない。
ノックした。
「どうぞ」
暗い、影の様な声が聞こえた。影のような声といわれて意味が分からないだろう。
俺にもこの声についての説明は少し難しい。
ゆっくりとドアを開けた。
締め切った、明かりを通さない部屋では窓の明かりが異常なほどまぶしく見えた。
バジリオスは「ドアを閉めなさい」と、やさしく俺に声をかけた。
影のような黒い体、髪は白髪に見える、襟のような部分は赤い血の色のようだった。
「今日君たちをここに呼んだ理由。それは偵察任務だ」
バジリオスはこちらに顔を向けない。窓の外に広がる草原をじっと見つめていた。
「中立国フランの近くにあるケッキングが治める国、ダイルだ。最近不審な動きをしていてな。誰か偵察に行かせようと考えたんだが…」
初めてバジリオスと俺の目が合った。
「君たちが運悪く当たってしまったんだよ言ってくれるかい?」
ラッキーだ。俺たちは何かで結ばれてんのか?
「これも己の運命。将軍様のご命令は絶対であります」
俺は敬礼をしてそう言った。「よろしい」とバジリオスが答えた。
「君たちにはもう1人ついていく者がいる」
誰だ?
「シエル中佐だ」
聞いた事がある。確か俺たちと同じ朝礼に遅れてくる奴だ。敬語野郎らしいが…。
「シエル君、入ってきなさい」
目つきが鋭いレントラーが入ってきた。きれいな毛並み。かなりの強さがあることがわかる。
「私が彼らの指示に…?」
紳士のような言葉。せっかくに威圧感が台無しだ…。
「君がリーダーになって2匹を動かす。簡単なことだ」
バジリオスは再び窓を見つめた。
「そうですか…。キュカ君、ウィル君かな?」
俺とウィルの顔をまじまじと見つめる。
「え〜、そうですけど…」
ウィルの反応の仕方が腹立つ。
「よろしくお願いします」
シエルは丁寧に言った。こいつ弱いいんじゃ…。
「それでは3匹に偵察任務を与える。目標はダイル。もしかしたら武装兵団がいるかもしらんが、君たちなら大丈夫だろ。笑い狼もいるようだし」
「私その名前嫌いなんですが」
カッコいい名前だ。笑い狼。嫌がるするシエルがうらやましい。
「それでは以上。直ちに準備をせよ。」
バジリオスの声が響き渡る。