第1話 とある朝
目が覚めると…、いつものベッド。左の牙は…無い。
「おーいキュカ君〜。朝だよ〜」
ウィルの声が聞こえる。まだ寝たい。その思いで布団の中にもぐる。
「おーいおきて〜。また上官に怒られるよ」
ウィルはツタージャ。俺が草原で倒れていたときに見つけてくれた。
「起きなよ」
普段はおっとり系のこいつ。でも怒ると、
「起きろ…。僕は怒られたくないんだよ…。分かる?」
怖い…。俺もしぶしぶベッドから抜けだす。
ああ、ベッドから俺が育てた温もりが抜けていく。今日の夜ごろにはもうベッドは冷たくなっているだろうな…。
「それじゃ、行こうか」
俺がドアに向かって走る。ゆっくりとウィルが追いかけてくる。
いつもどおりの朝が始まる。上官に怒られ、仲間に笑われ…。でもこの日は
違った。
ドアを開けるとそこには誰もいなかった。当たり前だ、みんなもう広場に集
合してるだろう。クソ長い廊下をひたすら走る。後ろから
「まって〜」
とか、
「待ってよ〜」
とか、
「僕起こしたじゃないか。待ってくれてもいいんじゃないの?」
とか聞こえたが無視。
やがて長い廊下にも終わりが見えてきた。
大きな門。大広間への入り口だ。
「死、死ぬ〜」
息を荒げたウィルが走ってきた。
「ちょっと休もうよ。」
バカか。こんなところで休んでて誰かに見られたら怒られる所じゃないぞ。
キュカは大門をゆっくりと開けた。
あれ??
キュカは広間の様子を見て唖然とした。
「起きたか、キュカと…、ウィルは?」
仲間の一人が話しかけてきた。
まさか。
大きな扉の裏ではウィルが胡坐をかいて休んでいた。
「あっ…、見つかった」
ウィルが俺に見つけられ、口をあけた。
ウィルは後でフルボッコにしてやる。
俺はそう思いながら、広間の様子を見た。
いつもなら、整列して将軍の朝の挨拶を聞いているとこなのに…。
「今日はかなり遅いな。まだねてんのか?」
俺はこんなこと1度もなかったので驚きと同時に、ラッキーだと思った。寝坊したこと取り消しになったんだから。
「いや、違う、将軍が変わったんだ」
えっ、と俺は驚いた。
「まあ、お前たちは知らないだろうな。昨日の朝礼遅れただろ?前のモッツアレア将軍(仮名)は退職したよ」
確かに遅れた。そして罰としてウィルと俺でトイレ掃除してた。
そして昨日は1度も広間に行かず、トイレ掃除が全ての階が終わったら、すぐベッドに直行。そのまま寝てたな…。
そのことを仲間に全て話した。
「ははは、お前ららしいや」
「うっさい馬鹿」
「ナンだと?牙無しキバゴめ!!」
牙がない…。それは俺にとってのコンプレックス。
キバゴとしての恥だ。
うつむいた俺を仲間が励ました。余計悲しくなる。止めてくれ…。
俺は必死になって話題を変えた。
「そういえば、新しい将軍てっ誰だ?」
俺が質問する。
「ああ、たしかダークライだったな。名前はバジリオス。将軍2日目で寝坊とは…、」
その時、大広間の1番高いところでドアが開いた。
2匹のポケモンが広間を見渡した。ダイケンキとダークライだ。
「おはよう。皆の衆。新たなる朝日が昇り新しい朝が来た!今日は…」
そこから長々30分。将軍様のありがてーお言葉を長々聴かされ、皆ほぼ死んだような目をしていた。
「久しぶりに朝礼聞いたな。お前らよくこんな長い話聞いてられるな…」
俺は仲間にそういって、いつもの仕事場に戻ろうとした。
「待て!。キュカ2等兵、ウィル2等兵!!」
ダイケンキこと、キース大将の叫びが広間をこだました。
ウィルと俺は広間の1番高いところを見る。
「後で将軍様の部屋に来るように!」
あれ?なんか俺悪い事した?ウィルもキース大将を睨んで、ポカンとしている。
「僕なんか悪い事した?」
俺が聞きたい。とりあえず将軍の部屋に行くことにしよう。