第8話 イルダ VSグラエナ部隊
満月が沈みかけていた。もうすぐ朝が来る。
東の空が徐々に赤く染まっていく。しかし、そんな太陽より真っ赤な血と炎がイルダの町を赤く染めていた。
柵を一気に飛び越し村に潜入する。
近くにいたグラエナを一気に片付け、俺は村の中央に向かう。
「私はブライ王に会いに行きます!ウィル!キュカ!頼みますよ!!」
「分かった!!」俺が大きく叫ぶ。「理ー解」ウィルがゆっくりと俺の後を付いてくる。
さほど大きな村ではないがなかなか住みやすそうな家を作ってやがる。
「ウィル!!早くコイ!!」
俺が大きく叫んだ。あいつ今まで何やってたんだ?やっと柵を潜り抜け見たいだな…。俺がため息をした。すると前方からナマケロ達がのっそりのっそりとやってきた。
「お前ら遅いぞ!!」
1匹のナマケロに襲おうとしたグラエナを思い切り切り裂いてやった。
「ウィル!!増援!!早くコイ!!」
ひーひー言いながらウィルが駆けつけてくる。あいつ、走ることが嫌いみたいだな。
前方から30匹ぐらいのグラエナが集団でやってくる。
「マジックプラント早くしろ!!」
やっと俺のとこまで来たウィルに叫ぶ。
「む、無理…ゲフンゲフン!!」
「うわ、汚ね!!むせ込むな。冗談無しだぜ。死ぬぞ!」
「2分ぐらいしたら…、使える…」
「さっさとし…、うわ!!」
グラエナが飛び込んでくる。30ぐらいいるな。
「2分だな!!」
「うん…」
「上等じゃ…」
飛び込んできたグラエナに切り裂くを食らわしてやる。
「この野郎!!!」
飛び込んでくるグラエナ達に360度回転のトリプルチョップを食らわした。
ここから先シアル視点1人称(私)
「お前ら、逃げなかったのか!!」
私の顔につばが数滴かかる。まったく、失礼な…。
「ええ…、私の部下が助けています。早く村の真ん中で合流しましょう」
私が冷静に答えた。ブライは強く頷く。
「分かった!!その前に前に進まなければ!!」
ブライが思い切りグラエナの顔面を殴った。ホームラン汲ですね…。助太刀して差し上げましょう。
「ヤルキモノたちは何匹残ってますか?」
ブライが1匹のヤルキモノに残り数を訊ねた。
「20匹だ…」
少し残念そうに答える。20匹で襲ってくるグラエナ達を相手させるか…。しかし今ここで兵を失っては後が面倒なことになりますね…。
「ブライ王、私と一緒に前衛に出ましょう。ヤルキモノたちを後衛に送ります、今ここで兵を失ってはいけませんからね…。あなたはグラエナ達を一気に倒すことはできますね?」
「無論だ」
「それじゃお願いしますね」
足元に転がるグラエナ達に俺の心は達成感であふれた。結構簡単に倒せたな…。
「キュカ〜、マジック出せるよ〜」
「5分経ってるぞ!!3分って言ったじゃないか!!」
「ごめんよ〜。なんか結構疲れてて…」
「ウィル、1発牙で切らせて」
「無理、死んじゃうもん」
噴水が見えた。アレが真ん中かな?あの影は…、グラエナ部隊のリーダーか?連続かよ…。
「ウィル、戦闘準備だ」
「いえっさ〜」
俺とウィルが一気に走る。しかし影の正体がすぐ分かった。
「シアル?ブライ?」
俺たちより先に広場についてるなんて…。
「はっはっは、遅かったじゃないか」
「所詮グラエナ部隊、これぐらい軽いです」
余裕顔の2匹。あくまでウィルが何もしなかっただけでウィルが手伝ってくれといてくれれば…。
「リーダーは?」
俺は2匹に訊いた。ブライは顔を動かした。
「あれだ…」
ブライが指差す。少々大きめな家だ。3階建てか。なるほど…、立てこもっているのか。
「それじゃ、向かいましょう」
シアルの静かに言った
(グラエナ部隊リーダー視点)
「お前らー、戦況はどうなってる?」
グラエナ部隊リーダー、すなわち俺の声がぼろい3階建ての家の中で響く。1匹のグラエナが焦り声で答えた。
「全滅です!!やつらここにいることが分かったみたいで…」
「何だとー!!増援は!?」
俺が窓の外を覗く。大きな影2つと小さな影2つ、大量のヤルキモノと思われるポケモンがこっちに迫ってきていた。体が震える。
「リーダー、「増援はイラーン!」とか言って追い返したじゃないですか!?」
確かにそうだ。俺が将軍にお褒めの言葉をいただこうと思って言ったんだ…。
「ヒジョーにヤバイじゃない。どうにかならな…」
下の階で何かが蹴飛ばされた音が俺の発した言葉を飲み込んだ。
嫌な汗が体の中に流れる。俺は真っ先に1階に向かう。
「待たせたな!」
1匹のキバゴの声が響き渡る。
(キュカ視点)
「リーダー!!落とし前付けに来たぜ!!」
「ダイルの刃、特と味わうがいい!!」
「さっさと終わらせて帰ろうよ〜」
「…どこに帰るんですか?」
ヤルキモノ達が一気にグラエナたちを襲う。
「くそーーー!!。全員でかかれ!!」
リーダーが2階で他の奴らに命令している声が聞こえる。
階段から一気にグラエナが降りてくる。奇跡的にドミノ倒しが起きなかった。
リーダーグラエナが3階に非難する。それを俺がきっちり見ていた。
「待て!!お前!!」
俺がスピードを上げて3階へ進む。他の奴らはグラエナ達の相手をしているようだ。
3階に着いた。腐ったドアを触るのが嫌なので、切り裂くでドアを真っ二つ。自然にドアが開くと一気に中に入る。
誰もいない…。
なるほど…。そういうパターンか…。少し大きめな部屋からどこから襲い掛かってくるか分からないリーダーに目を光らせる。
「上だ」
天井から声が聞こえる。不意をつかれ、上を向く。
その時、方の横を何かが通り過ぎる。銀色の色をした尻尾ではたかれる。
壁に叩きつけられた。
「グワ…」
俺は立ち上がろうとする。アイアンテールか…。こいつ、強い!!俺はゆっくり立ち上がった。
「ここで俺がお前を死刑に上げーる!!死ねい!!」
普通のグラエナよりずっと早い。俺が構えるよりも早く、つっこんで来た。尻尾をぶつけてくる。不意打ち…。
こいつ早いだけじゃない。壁に張り付くこともできるらしい…。
ならば…。
「終わりだー!!ケケー!!」
変な声を出しながら襲い掛かってくる。また不意打ちか…。
襲い掛かってくる尻尾を俺が手を止めた。
「え!!うわ!!」
俺がニヤリと笑った。キバをゆっくり天井に向ける。
「ヒイーーーー!」
リーダーの顔が青ざめる。一気に顔を振り落とした。
その後みんなが駆けつけてくれた。
グラエナ団リーダーは皆からの袋叩きに悲運な最後を迎えた。
俺たちは村の中心に集まる。
ヤルキモノ達はあのグラエナの大群に1匹も倒されることはなく、皆笑顔を見せてくれた。
「何とか乗り切ったな」
俺が呟く。
「安心するのは、はやいぞ。奴らはすぐに、新たなグラエナ部隊を仕立ててもどってくるだろう…。こちらには、もうそれを押しとどめるだけの力はない…」
ブライが深刻そうな顔で答える。
「……。村を捨てて逃げるしか、手はないでしょうね…」
シアルがいいにくそうな声で言った。ブライが腕を組む。
「逃げるだと?どこへ…?我らダイルと戦争を仕掛けたぺダンを受け入れる国がどこにあるのだ?」
俺が困った顔のブライに提案した。
「中立国聖都フラン…。何てどうだ?」
「フランか…」
ブライがフランがある北西を見つめた。
「確かにフランなら、今の俺たちでも快く迎え入れてもらえるはずだ」
ブライが寂しそうな目で村を見つめた。
「城を追われて、このイルダも失い、中立国ごときに助けを求めるのか…。多くの仲間が、勇敢にぺダンに立ち向かい、倒れていった。なのに…。この俺達が、身を惜しみ、敵に背を向け、逃げ出すというのか!!」
大きな叫び声が村に響き渡る。俺はビクついてしまった。
「退くことも、また誇りです。いまはまだ、全てを失ったわけではありません。」
シアルが冷静にブライに説得する。
「…」
ブライは目を細める。そこにヤルキモノが話に割り込んできた。
「王よ!!この戦いが終われば、また戻ってくればいい」
それをみたもう1匹のヤルキモノも説得をする。
「そうですとも。もう1度、いちから、やり直すだけのこと。より大きく、より美しい、新たなるイルダ…。そしてあらたなイルダを…、そしてあらたなダイル城を、みんなの手で!」
「そうだそうだ」と、ナマケロ達もゆっくりと叫ぶ。
「そうか…。そうだな。命さえあればやり直せる。何度でも、何度でも。」
ブライが俺たちに振り向く。その顔は誇りに満ちていた。
「よし、わかった。イルダを捨てみんなでフランを目指そう」
国民にしたわれる王はいつになく自慢げにそう言った。
「ぺダンは世界に挑戦状をぶち込んだからな…」