第一章
「ねえ、イオン。私達はどこに向かってるのかな。」
「それはわからないなぁ。リン、当ててみてよ。」
地上から離れたはるか上空―――二匹のポケモンがだべっていた。
それは楽しそうでもあり、退屈しているようでもある。
一匹はオオタチ。リンと呼ばれていた方だ。
肩にかけたカバンが強風でばたばたと鳴った。その表情はやわらかい。
二匹目はピジョット。こちらはイオンという名前である。
リンと荷物を背中にかかえ、ゆったりと空を泳いでいた。
「こんなんじゃ、やっぱり旅は続けられないね。どうする、施設に戻る?」
楽しそうに、おかしそうに、イオンは背中のリンに聞いた。
「戻らないよ、あんなとこ。」
リンはそれに険しい顔でこたえる。かわいらしい顔がたちまち怖くなった。
「そんなこと聞かないで。わかってるんでしょ?ほら―――」
リンは地平線の向こうを指さす。
「国だ。」
イオンは笑った。高らかに、楽しそうに。
リンにはかなわないなー。イオンはそうつぶやくと、もともと高かったスピードをもっとあげる。
城壁に向かって―――。