第8話:氷上の妖精
『今シーズン、タイトルマッチで四天王を二人破ったトレーナーは今日まで現れませんでした。しかし今回――いよいよ三人目、カリンに挑む者がようやく登場したのです!プロを打ち崩すのは、またプロ。そう、この少年――若きエスパー使い、イツキだああ!!!!』
実況の大絶叫の後、南側ベンチから休憩を終えたイツキが颯爽と登場する。割れんばかりの大歓声に出迎えられ、彼はやや口元を緩ませながらアンパイヤ席へ真っ直ぐに歩んで行った。対するは四天王のカリン。まとめあげた美しい銀髪を揺らしながら、黒レースのキャミソールが透けるシフォンブラウスに、黒レザーのペンシルパンツ姿は刺激的だ。二人は審判の前に対峙して握手を交わすと、悠々とテクニカルエリアの定位置へ戻って行った。
『エスパー対悪タイプの対決!一般的な見解では、相性は悪タイプが圧倒的に有利です。データとしても、このカードはマスターシリーズで何度も行われていますがイツキの勝率は4割と……、まあ比較的健闘していますが、彼が不利なことに変わりはありませんよね?ワタルさん』
実況がワタルに話を振ると、彼は『ええ……』と言葉を濁した。
快進撃もここで終わるのか?この様子をワンセグを見ていたマツバは、思わず息を呑んだ。
「さすがに悪タイプはなあ……」
「いや、今回は分からんぞ」
平坦な口調で告げるヤナギに、マツバは首を傾げる。
「どういうことですか?」
「まあ……、見ているがいい。今回は、セキエイがショービジネスに堕ちたことがよく分かる試合になる」
その言葉の意味が分からず、追求しようとしたマツバを実況の金切り声が遮った。
『さあっ今、フィールドにボールが投げ入れられました!イツキが繰り出したのは、ブーピッグ!そして対するカリンは――ええっ!?あ、あれ……、これは!?』
突如として取り乱すアナウンサーの声。同様に、観客席からも困惑のどよめきが上がっていた。カリンが召喚したポケモンを見て、マツバも唖然としつつ腰を浮かせた。
ブーピッグと対峙していたのは、やや緊張した面持ちのヤドラン。独特の風格と、カリンがそれを使う違和感は、タイトルマッチを開幕戦から観ている者ならば誰もが感じたはずである。
実況席でぽかんと口を開けていたアナウンサーは、数秒続いた沈黙で我に返ると、難しい顔でフィールドを見つめているワタルへすがりつく。
「このヤドランは、イツキのポケモンでは……!?」
彼はアナウンサーを一瞥すると、小さく息をついてテレビ視聴者へ向けて語りだした。
「今タイトルマッチは、イツキくんの復帰戦を含んでいます。ずっと控えになっていたメンバーを鍛え、彼はここまでやってきた。その復帰の花道を飾るにふさわしく、我々は預かっていた過去のスタメンで勝負をしようと思ったのです。もう一軍や二軍の垣根など、関係ない――それを今、彼は証明します」
始まりはラーメン屋での、イツキのちょっとしたお願いからだった。
ワタルが彼の様子を尋ね、タイトルマッチ挑戦が決まったとき、一軍メンバーのボール返却を拒否したイツキはこう言ったのだ。
「むしろ……、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど。このアイディア、許されるかな?タイトルマッチ前に、練習試合で僕の一軍と二軍を戦わせたいんだ。ちゃんと鍛えたってことを、タイトル前にみんなに証明したくって。でもセルフバトルは難しいし……」
非常に前向きなイツキを見て、ワタルは二つ返事で引き受けた。
「なるほどね、それなら構わないよ。オレが引き受ける。練習場を借りられるか、上へ相談してみるよ」
「ありがとう!ワタルのリードなら負けちゃうかもな〜」
そんな、他愛もないやりとりだったのに。
事態は思わぬ方向へ転び、ワタルは総監に呼び出された。
「聞いたよ、練習試合をするんだって?プロの一軍対二軍って面白いねえ。私も見てみたいなぁ」
椅子に身体をうずめながら微笑む総監を見て、彼は途端に胸騒ぎがした。
「本戦でやってはいかがかな。きっと盛り上がるだろう。咎める者はほとんどいないと思うよ、鳳凰会がまだ存在していたら、冒涜だと怒鳴り込んできたかもしれないがね。今はそこまで力のある団体はいないから」
「しかしトレーナーが……」
狼狽えるワタルに、総監はさらりと言い放つ。
「“三”天王の誰かにやらせればいいじゃないか。彼らはポケモントレーナーのプロフェッショナルだからね、専門外のタイプを使うのも訳ないだろう」
「しかし……、彼らにはポリシーがあります。それは私も同じです」
震える唇で、ワタルはなんとか言葉を紡ぎだした。タイプにこだわるトレーナーは、皆それぞれに強い信念を持っており、それを踏みにじる行為はできない。しかし、総監はそれを容易く跳ね除けた。
「ポリシー?言うじゃないか。君がチャンピオンになりたいって宣言した時、私に言ったよね?プロである以上、どんな挑戦も迎え撃つと――『臆病者は、戦士にあらず』だっけ?確かに、この程度の挑戦を引き受けないようじゃあプロフェッショナル失格だ。戦う資格がない」
凍てつくような冷たい瞳に、ワタルは絶句する。
「ちょっと天狗になっているようだからここで忠告しよう。いいかね、君たちをマネジメントしているのは我々ポケモンリーグ本部なんだ。君がチャンピオンでいて、スターの地位を築いていられるのも、このトレーナーシステムが確立しているからこそ。それを、忘れてはいけないよ」
あの言葉が巨大な壁になるなど、予想だにしなかった。しかし、セキエイがエンターテイメント化しようと、王者の座につきたかったのは他でもない自分である。彼はしばらく苦悩したが、仕方なく提案を呑み込んだ。
「……分かりました。では、一つだけよろしいですか?」
「なんでしょう」
「その試合は、四天王最終戦にしてください。イツキくんが二人勝ち抜いた時に――真の実力を」
「なるほどね、それは構わんよ。そっちの方が盛り上がりそうだ」
総監の思惑通り、どよめいていたスタジアムはすぐに興奮へ変わっていた。実況やカメラクルーも、「これは面白くなりそうだ!」と息巻いている。ワタルはマイクに拾われないよう、小さく溜め息をつくと、フィールドに視線を移した。
+++
「ごめんね、僕の我儘がこんなことになって……」
観客席の高揚を見て呆気にとられつつ、イツキはカリンに小さく頭を下げた。彼女は不満をおくびにも出さず、柔和な微笑みを浮かべながらヤドランを抱き寄せる。
「いいのよ、セキエイは興行の側面もあるものね。ナッピー、頑張ってね♪」
鼻の下を伸ばすヤドランを見て、イツキは苦笑いした。
「ナップ……、僕の元にいる時より嬉しそう……。まあいいや、ピギー、ボードの用意はできてるう?」
その問いかけに、ブーピッグは主人へ向けてグーサインを送った。反対側の手には、光の壁を変化させて作ったボードが用意されている。
「オッケー、じゃあいくよ!あまごいだ!」
ブーピッグが両手を広げて空へ念を送ると、フィールドに篠突く雨が降り注いだ。すかさず、カリンはスタッフからレースの傘を受け取って雫を防ぐ。ヘアスタイルやメイクが崩れるので、彼女は雨乞い時は必ず傘を差すようにしていた。
「あら、そんなことしていいの?こっちに有利よね」
「ふふーん、まあ見ててよ」
イツキは雨に濡れながら、白い歯を見せた。
「そう、じゃあ遠慮なくいくわよ。ナッピー、フィールドを滑走しながら水の波動よ」
その指示を聞いたヤドランはうつ伏せになると、濡れた路面を腹で滑りながら、ブーピッグへ突進していく。こうやってスピードを補うことは、イツキもよくやっていた方法である。「やっぱりね。……ピギー、回避!」ブーピッグはボードをフィールドへ滑らせると、ヤドランの鼻先を足場に宙へと“飛び跳ねた”。その軽やかなトリックに、カリンをはじめ、スタジアム全体が唖然とする。
「決まった〜!そのまま……、ナップに攻撃だ!」
ブーピッグは身体にスピンを掛けながら、ボードの先をヤドランに向け、急降下した。カリンは即座に対策を命じる。
「ナッピー、シェルダーで防ぎなさい!」
空から降ってくる鋭利なボードを、ヤドランは尾に噛みついているシェルダーを向けてガードした。衝突時に火花が散り、衝撃に負けたブーピッグが足にボードを固定したまま、数メートル飛ばされる。
「ピギー、持ち直すんだ!」
イツキの声を聞き、ブーピッグは宙で身体を反転させながらボードを立て直し、華麗にフィールドへ着地した。見事なグランドトリックに、スタンドのあちこちから指笛が鳴り響く。「バブル光線よ!」だが、それに気を良くしたブーピッグの背へ、泡の光線が飛んできた。
「油断しちゃダメだよ!後ろ!」
ブーピッグはボードを蹴ると、素早く身体を捻って光線を回避する。ヤドランに振り向きざま、彼は額の黒真珠から眩い光を発射した。
「パワージェム!」
無駄のない動きは、ヤドランに避ける隙を与えない。相手が大きくのけ反ったところで、ブーピッグは床を蹴って雨が降るフィールドをボードで滑走しながら、ヤドランの前に躍り出た。「早い……!」カリンも思わず悲鳴を上げる。
「いくよ、電・撃・波〜っ!!」
ブーピッグは腕を大きく振りかぶりながら電気を溜めると、体内から押し出すように一気に放出した。稲妻の牙がヤドランを強襲し、閃光が瞬く――効果は抜群だった。この一撃でヤドランは降雨が続くフィールドへ突っ伏し、赤いフラッグが戦闘不能を宣告する。
「やったー!」
イツキはブーピッグとフィストバンプを交わすと、抱き合って勝利を喜んだ。肩越しに気絶しているヤドランが目に入り、ちくりと胸が痛んだが、今は勝利だけを追求しなければならない。彼は気を引き締めるつもりで、ブーピッグを抱擁する力を強めた。
一方で、カリンは歓喜するイツキに目を背けながら、無言で次のボールを手に取った。
「ドンマイ、次があるさ」
背中へ飛んでくる、キョウの声。ふと、先月半ばのやりとりが眼前に浮かんできた。
+++
「イツキが置いていったポケモンで勝負するって……どういうこと!」
タイトルマッチで誰か一人、イツキの一軍ポケモンで戦ってほしい――ロッカールーム内で、申し訳なさそうに顔を伏せるワタルに、カリンはいち早く食ってかかった。彼は苦々しく答える。
「その方がイベントとして盛り上がるんじゃないかって……、総監のお達しだ」
「ふざけてるの?そんなの、プロとして……」
怒りに震える彼女の言葉を、キョウが遮る。
「プロならどんなポケモンでも厭わず戦い、勝つのが当然」冷徹で、重々しい口調。ワタルがサッと顔を上げると、彼は「そう言われたんだろ?」と破顔する。
「ああ……」
ワタルは複雑そうに目線を逸らした。協力してくれたかと思えば突き離し、今度はビジネスに利用される。総監の意図が全く分からなかった。そして彼が予想していたことだが、友人のシバは真っ先に抵抗する。
「一理あるが、おれは絶対にやらんぞ!」
「そうは言っても、上の命令だし……。こんなことを自分の口から告げるのは心苦しいが、先に二人がイツキくんを阻止すれば問題ないことだ。……できないかな?」
四天王の顔色を窺うようなワタルの姿は、彼らにちょっとした衝撃を与えた。ポケモントレーナーの頂点に立つ、誰もが憧れるチャンピオンも権力の前には形無し――カリンはキョウと顔を見合わせると、少し考えて控えめに挙手をする。
「……それなら、私が引き受けてあげてもいいけど」
「カリン……、お前にはプライドと言うものが……!」
すかさず口を挟んだシバの言葉を、彼女は強い口調で遮った。
「『タイプがどうとか、強いポケモン、弱いポケモンなんて人の勝手。好きなポケモンで勝てるようにするのが、本当に強いトレーナー』。デビュー会見でそう宣言したの、私だもの。イツキのポケモンちゃんは素直だから好きだし、やってやろうじゃない。もちろん、あなた達がイツキを負かせるのが前提よ。ふがいない試合は見せないでね?」
挑戦的な上目づかいに、彼はすぐに乗ってきた。
「当然だ!キョウ、今から訓練するぞ!」
「いや、俺はもう家に帰……」呆気にとられて逃げようとしたキョウだったが、仲間の視線を感じて訂正する。「ったく!ああ……、分かったよ。1時間だけな」
並んで練習場へ向かうシバとキョウの背中を見送った後、ワタルは申し訳なさそうにカリンへ頭を下げた。
「カリン、ありがとう……」
「……チャンピオンも、大変ね」
「でも自分で選んだ道だから、仕方ないさ」
そう言いながら苦笑する彼の表情には、隠しきれない苦悩が滲み出ている。
「イツキが謹慎食らわなければ、こんなことにはならなかったのに」
「誰でもスランプってあるからさ。そこに手を差し伸べるのが仲間だよ」
少しはイツキの我儘について、怒ればいいのに――カリンはそう願うが、彼はいつも通り微笑むばかりだ。どんな時もチャンピオンの風格を保っていて、『男の顔』が現れることがない。他の男達のように、自分を『異性』として見てくれることはないのだ。それはセキエイにおいて紅一点で仕事をするカリンにとって助かる反面、虚しくもあった。
「ふうん……。じゃあ、私がスランプの時にも助けてくれる?」
「もちろん」
ワタルは即答する。
「仲間だから?」
「え?もちろんそうだけど……」
戸惑う彼の表情を見て、カリンは寂しげに頬を緩ませた。
「……ありがと。でもあんまり無理しちゃだめよ。あなた、いつも気を遣いすぎなんだから」
「そうだね、ありがとう」
そして、また彼はいつものように笑うのだ。自分の想いなど、知る由もなく。
+++
雨が続くフィールドに、カリンは二番手のボールを投げ入れた。
「行きなさい、ディン!」
次に選んだのは、フーディンである。それを見るなり、イツキは彼女が最後に用意している手も理解した。
「なるほどね、僕のデビュー戦メンバーか……」
「そうよ。あなたは、初心の頃のあなたと戦うの。復帰戦には最高の演出だと思わない?」
彼女は口角を上げて柔和に微笑むが、その目には優しい光など込められてはいなかった。凍りつく背筋を伸ばしつつ、イツキはカリンへ向けて笑顔を返す。
「ありがとう!立ち直った僕のイケてるトコ、見逃さないでね!」
「はたしてそんな時間はあるかしら……。ディン、スプーン曲げよ」
その命令を聞いてフーディンはブーピッグの前にスプーンを掲げると、針金のように容易く曲げて相手の注意を逸らす。イツキはすかさずフォローを入れた。
「気にすることないよ!さあ、ボード用意!いくよ――」
ブーピッグは先ほど形成したボードに足を掛ける。勢いよくフィールドを蹴って滑走しようとした彼だったが、突然つんのめって水たまりの中へ転倒した。「ピギー!?」イツキは目を疑った。先ほどまでそこにあったブーピッグのボードが消え、曲がったスプーンに変わっていたからだ。
「まさか!」
すぐに視線をフーディンへ向ける。予想通り、その手にはボードが移っていた。
「こんな簡単な“トリック”に引っかかっちゃうの?ちゃんと成長した?」
カリンは頭を少し傾けながら、フーディンへ次の指示を出した。「サイコキネシス……」カリンとフーディンの間に、ぎこちない緊張感が走る。一月も特訓していない上に他人の手持ちであるため、彼女特有のポケモンの意志に任せた采配はできない。
「雨をコントロールするのよ。デビュー戦でやったでしょう、雨の矢。あれをまた見せて?」
フーディンは頷くと、両手を広げて強く念じ始めた。途端にスタジアムの空気が揺れ、降り注ぐ雨がピタリと静止する。曲がったスプーンも浮遊し、ブーピッグの目の前で止まった。
「ピギー、水の矢が飛んでくるよ!リフレクターを張って!」
イツキは即座にブーピッグにリフレクターを命じ、身体の四方を見えない盾で囲ませた。それを見たカリンが「素敵な盾をありがとう」と微笑む。イツキが動揺するより早く、「サイドチェンジで入れ替わりなさい」とフーディンに指示を出し、プービックをリフレクターの外へ放り出した。
入れ替わるように盾の中に収まったフーディンは、元々の主人に向けて申し訳なさそうに頭を下げつつ、指を鳴らす――その瞬間、無数の雨粒がマシンガンのごとくブーピッグを襲撃した。フィールドに一点集中した雨風はイツキの眼鏡を曇らせ、あっという間に視界を覆う。
「ピギー!」
彼は眼鏡を外し、テクニカルエリアのライン際まで走って仲間の名を叫んだ。雨はすぐに消し飛び、フィールドが再び澄み渡る。シャツの裾でレンズを拭い、急いでかけ直してブーピッグの容体を確認した。
「ピギー、大丈夫!?」
主人の声を聞いて、ブーピッグは何とか身体を持ち上げた。そのタフな姿に、スタジアムから感心の声が沸き上がるが――フィールドの隅に転がっていたボードが突然顔面に飛んできて、ブーピッグは完全に意識を失ってしまった。審判席に、フーディンの勝利を告げる赤いフラッグがはためく。
「ボードをテレキネシスで武器に……。油断できないな」
イツキは悔しそうにプービックをボールへ戻した。
「当たり前でしょう、あなたのポケモンだもの。これくらいの可能性は考慮しておいたら?」
ようやく雨は上がり、カリンは役目を終えた傘を閉じながら微笑んだ。
「そうだね……。じゃ、次行くよ!アンジー、GO!」
イツキが繰り出したのは、ルージュラである。彼女はボールから現れるなり、スカート状の身体の端をつまみあげてバレリーナのようにスタジアムへ一礼した。その可憐な姿に、スタンドは大きく盛り上がる。
この選択に、キョウは扇子を仰ぎつつ感心していた。
「へえ、あいつルージュラなんて持ってたのか。本格的にヤナギのジジイ仕込みの技を見られるかもな」
「ヤナギ……、チョウジジムのリーダーか。強いのか?詳しく知らないんだが」
耳を傾けるシバに、彼は悪意たっぷりの解説を披露する。
「俺との泥仕合もあのジジイの差し金だよ。『冬のヤナギ』って言われる程、頑固で冷徹、そして陰湿なプレーが売りだな。何故かジムリーダーの間では崇められているが……俺には理解できん」
「ふむ、珍しいな。お前ほどの人間が、相当主観が入った意見を言うとは……」
「俺もたまには怒るよ」
彼は扇子を一振りで閉じると、折れそうなほど強く握りしめながらフィールドに向き直った。
「アンジー、吹雪!フィールドを凍らせちゃえ!」
ルージュラが両手を空へ掲げるなり、フィールドに猛烈な吹雪が吹き荒れ、雨に濡れたフィールドをたちまち凍結させる。
「ディン、サイコキネシスで風の軌道を変えなさい!」
カリンもすかさずこの環境を利用しようと指示を出す。フーディンは凍てつく風に耐えながら、強力な念力で吹雪をルージュラに向けさせた。氷の刃が彼女を強襲するが、ルージュラはフィールドに作ったアイスリンクを軽やかに滑りながら、華麗なステップで次々にかわしていく。ターンやダンスを組み合わせた、フィギュアスケート選手顔負けのステップは観客を一目で魅了させた。
「いいよー、アンジー!綺麗だよ!」
主人に褒められ、ルージュラはさらに調子を上げた。美しい舞いに惹きつけられたフーディンの目の前に、彼女が躍り出ると――相手に回避する隙も与えず、その華奢な身体に渾身のボディブローを叩き込んだ。フーディンは大きく弧を描きながら、カリンの足元へ吹っ飛ばされる。
「ハートスタンプ、決まり〜!!!ディン、ごめんね!」
その見た目からはとても想像できない、シバさえも度肝を抜く拳は、フーディンを一撃でノックアウトさせるには十分な威力を誇っていた。すぐに赤い旗が上がり、イツキはルージュラと勝利を分かち合う。圧倒的な試合運びに、彼は胸の高まりを抑えきれずにいた。
(ディンやナップには悪いけど……、こんなにポケモンバトルが楽しいなんて!)
隠しきれない愉悦は、カリンにも痛い程伝わってきた。イツキが目に入るたびに、焦燥感が募っていく。四天王の誇りに掛けて、チャンピオンの元へ行かせてなるものか――そう誓っても、現実は上手く事が運ばない。プロとはいえ、他人のポケモンをリードするのは大変に困難なのだ。
「勝てない……!でも、負けたくない……っ」
彼女は唇を噛みしめながら、何とか最後のボールを手に取った。その中で、困惑しているネイティオの悲痛な眼差しが突き刺さる。
「……次はあなたよ。主人だからって、手を抜かないでね。容赦なく、いきましょう」
カリンはネイティオの反応を見ずに、フィールドにボールを投げ込んだ。
「最後はあなたよ、ネオ!」
大歓声に迎えられ、フィールドに緑の鳥が舞い降りる。
一か月ぶりに再会した相棒に、イツキは言葉を呑み込んで立ち尽くした。
(ネオ……)
+++
ネイティオは彼の原点であった。
進化前であるネイティを捕獲したばかりの頃。彼は書店で小遣いをはたいて『ネイティ&ネイティオ育成論』という分厚い書籍を買い、公園のベンチに座り込んで読みふけっていた。
「わおっ、キミ最終的にサイコキネシスとか使えるんだ、凄いなー!僕、サイコキネシスなんて大技見たことないよ。そもそもエスパー技をあんまり知らなくて……。何かできない?」
その時、ネイティは主人の言葉をあまり理解できず、首を傾げるばかりだった。イツキは『技の引き出し方』のページをめくった。ポケモンはバトル経験を積み、トレーナーが潜在能力を引き出していくことで、より強力な技を編み出すことができる。
「“小さなエスパーポケモンは超能力がうまくコントロールできないので、トレーナーが上手に引き出してあげましょう。基本的に賢いので、すぐに上達します。”かぁ……」
彼はふと思い立つと、財布から10円玉を取り出してネイティの前に提示した。
「じゃあネオ、まずはこのコインを浮かせてみようっ!」
「……」
ネイティは首を捻る。
「ずーっと見るんだよ!よく分からないけど、たぶんコインよ浮け!って念じるんだ」
一人と一羽でベンチに置いたコインをじっと見つめる姿は、周囲からは可笑しく映った。微かな嘲笑が聞こえても、イツキは聞こえないふりをしてネイティと硬貨を凝視する――10分ほど経過した頃、とうとう縁が震え始めた。
「お、おお……っ!?」
ネイティ自身も自らの力に驚き、イツキと顔を合わせる。その刹那、コインが弾けて空へ舞い上がった。
「凄い……!」
イツキはすぐに落下点を追い、硬貨をキャッチした。
「凄いよ、ネオ!やるじゃーん!超カッコイイ!!」
彼はベンチに留まっているネイティにコインを向ける。高く昇った太陽に煌めく銅貨はネイティにとって眩く、誇らしげに映っていた。
「超能力が使えるポケモンって、カッコいいねーっ!次に捕まえるポケモンも、エスパータイプにしよっと!」
初めて捕まえたポケモンの、初めて使った念力がとても格好よく見えたから、エスパー使いになった。
ただ、それだけ。
そんな理由だけど、厳しい修行に明け暮れて、ようやくここへたどり着いた。
今、僕は『原点』と対峙する。
+++
「いくよ、アンジー!冷凍パンチだ!」
イツキの命を受け、ルージュラは氷の張ったフィールドを蹴って疾駆する。身体を屈め、空気抵抗を減らし、通常の倍速いスピードでネイティオの前へ飛び出した。
「怪しい風で、吹き飛ばしなさい!」
ネイティオが両手を広げて風を起こそうとした隙を狙い、イツキは「アンジー、ネオは脇腹が弱いよ!」と声を張り上げた。凍てつく拳が鳥の脇腹を殴打し、技の発動を妨害する。
苦痛の表情を浮かべながらフィールドへ転がるネイティオを見て、イツキは安否を確認したい衝動をぐっと堪えた。
(ネオは、今は敵!あいつは“ネイティオ”なんだ……)
「空へ逃げなさい!」
攻めてこないルージュラを見るなり、カリンはネイティオを空へ誘導する。イツキが躊躇していることは、彼女にも伝わってくる。それだけ彼はネイティオに依存しており、攻めるチャンスはそこにある。
「ネオ!上から、つばめ返し!」
ネイティオは空中で身を翻すと、疾風の刃をルージュラへ放つ。目にも留まらぬ一撃は、フィールドに張り付いた氷を巻き込み、ルージュラを圧倒した。宙に舞う氷の破片――イツキの脳裏に、次の手が浮かんだ。
(これをサイコキネシスでネオに飛ばせば……)
しかし、そんなことをすればネイティオの身体は切り刻まれてしまう。
(無理!できない!!)
その結論を出すと同時に、ルージュラが破片と共にフィールド上へ倒れ込んだ。イツキの様子が一変したのは、もはや誰の目にも明らかであった。スタジアムが徐々にざわめき始める。
「馬鹿者、何をしている!」
大人しく中継を見ていたヤナギの突然の絶叫に、マツバの身体が跳ね上がる。それを見て我に返った老ジムリーダーは、すぐに顔を逸らした。
「や、やっぱり相棒ですから……」
「プロにそんなものは関係ない!」
マツバの言葉を、ヤナギはきっぱりと跳ね除けた。しばらくして、同様の会話を実況とワタルが繰り広げる。
『……やはり、ネイティオと言えば彼の相棒ですからね。攻撃しづらいのでしょうか?ワタルさんなら、どうしますか』
少し間を置いて、ワタルは答えを導き出す。
『オレのカイリューが敵に回っても、この状況なら倒すしかないと思います。それが、ポケモンバトルを仕事に選んだプロトレーナーの定めですから』
解説の手本のような回答に、ヤナギはテーブルを叩きながら苛立ちを覚えた。
(……本部が持ち上げるのもよく分かる。つくづくプロ向きの人間だな)
立ち止まったイツキを待っているほど、カリンも余裕がない。ネイティオに銀色の風を命じ、倒れたルージュラへ更に追い打ちをかけた。風に飛ばされたルージュラが、イツキの前へ転倒する。
「アンジー!」
反撃しなければ……。
思っていても手足が動かない。指示を乞うようなルージュラの悲痛な瞳が、イツキを追い詰める。
「戦わないといけないよね……」
彼はルージュラの身体を立て直し、次の指示を考えた。技はいくらでも閃き、修行の日々が浮かんでくるが――声に紡ぎだすことができない。ネイティオはフィールド上空を羽ばたきながら、その様子を伺っていた。
「気にすることないわ、ネオ!そのまま急降下して、ルージュラを攻撃しなさい!」
カリンは躊躇するイツキに苛立ちながら、ネイティオへ命令した。その声を受け、鳥は頭を下げてルージュラに狙いを定める。「上から来るぞ!」業を煮やした観客の罵声が、イツキの耳に飛んできた。彼が空を見上げた時――真っ直ぐ向かってくる、相棒と視線が絡み合う。
「ネオ……」
ネイティオはフィールドすれすれまで急降下し、ルージュラに突進しながら身体を捻ると、そのまま彼女をイツキへ向けて投げつけた。イツキはルージュラと共にテクニカルエリアへ倒れ込む。眼前に広がる広大なスタジアムの天井に、緑の鳥が再び羽ばたいた。嫌になるほど視界が鮮明になる眼鏡は、飛行しながら眉をひそめる相棒の想いさえも映し出す。
(僕は何をしているんだ!)
ネイティオの表情に動かされ、イツキはルージュラを抱えながら素早く立ち上がった。
「ごめんっ、ごめんねアンジー。僕が戦わせるポケモンは君なのに、ネオに気を取られてた」
ルージュラは仕方がない、と言うようにかぶりを振る。しかし彼はルージュラの両肩を掴むと、自らにも言い聞かせるように声を荒げた。
「ううん、ここで負けたら修行の意味がないじゃないか。絶対、勝とう!」
張りつめる空気を、カリンとネイティオも感じていた。
「あら……。ようやく、調子を取り戻したのかしら?」
「アンジー、行こう!」イツキの声と共に、ルージュラはひび割れたアイスリンクを滑走する。上空を飛ぶネイティオを、ステップを舞いながら地上から追従した。
「凍える風!」
ルージュラが飛行するネイティオの背中目掛けて、冷気を含んだ風を放った。ヤナギ直伝の技は風切り羽を凍らせ、滞空速度をダウンさせる。思うように飛べなくなって戸惑うネイティオを、カリンはすかさずフォローした。
「心配しないで、飛び続けて!ルージュラへ、エアカッター!」
上空から次々に飛んでくる疾風の刃を、ルージュラはリンクを滑走しながら間一髪で回避していく。スカート状の下半身が翻る、その姿はさながら花の妖精のダンスの様だ。ネイティオの攻撃でフィールドに張った氷が割れて舞い上がり、照明で煌めいて幻想的な演出を添える。この情景に観客は夢中になった。
『かつてこれほど美しいルージュラがいたでしょうか……!?』
そんな実況のコメントも、少しも誇張に感じられない。ルージュラがネイティオの真下に追いつこうとした時、イツキの頭に「今だ!」とチャンスの鐘が鳴る。
「アンジー、そこでジャンプだ!ネオに届け!」
その鐘の音は、ポケモンともシンクロした。
ルージュラは踏切を付け、身体にスピンを掛けながら高々と宙に浮き上がった。ハイビスカスが一気に開花する、四回転半。念力で氷の破片ごと浮き上がり、氷上の妖精はようやく鳥の前へ躍り出た。ダイヤモンドが散りばめられた空に咲く大輪の花に、スタジアムにいた全ての人間が魅了される――その中で、イツキが夢を破る様なけたたましい声を上げた。
「アンジー、サイコキネシス!」
ルージュラが念力を放出する。ダイヤモンドは刃へ変わり、一斉にネイティオへ襲い掛かって彼をフェンスへ叩きつけた。強力な念波と無数の氷の破片に切り刻まれ、ネイティオはこの一撃で意識を失った。呆然と立ち尽くすカリンの頭上に、粉々に砕けた氷の粒が、あられの様に振ってくる。
攻撃を終えたルージュラは難無くフィールドに着地すると、両手を広げ、5万人の観衆向けて丁寧にお辞儀をした。それをきっかけに、惜しみないスタンディングオベーションがスタジアムに吹き荒れる。
「勝ったあああっっ!!!」
イツキはルージュラをテクニカルエリアに招いてその身体を強く抱きしめた。その両手にはブーピッグともう一匹のボールも握られており、手持ち全員で勝利を分かち合った。とめどなく溢れる嬉しさは、涙となって零れ落ちる。ようやくスランプから抜け、戻ってこられたことを改めて実感し、男泣きを隠すことすらできなかった。社交辞令として握手を交わしに行こうとしたカリンも、彼の様子を見て、そっとしておこうとそのままベンチへ身を翻す。
ワタルはスタジアム2階の実況席から、戻ってきた“四天王”イツキの勇姿を見下ろしていた。ただ純粋にポケモンと勝利を喜ぶ姿を見ていると、これをショーに仕立てた本部の意図など今は頭に入らない。
「まるでフィギュアスケートを思わせるような試合でしたねえ、ワタルさん!」
興奮気味に捲し立てるアナウンサーに、ワタルは穏やかに頷いた。
「ええ、大変美しかった。自身も楽しみ、魅せるポケモンバトルをする……彼は四天王の鑑です」
「そしてとうとう、あなたの出番が来てしまいましたね?」
期待がたっぷりと含まれたアナウンサーの問いに、彼は苦笑しつつ頷いた。
「今年、最初の挑戦者がイツキくんとは……自分でも戸惑っています。明日の試合が楽しみです」
タイトルマッチで四天王に勝ち抜くとチャンピオンへの挑戦権が得られるが、試合は翌日となる。今年初となるチャンピオン戦、しかも挑戦者がイツキということで、スタジアム全体は異様な興奮を引き継いだまま営業を終了した。
+++
試合が終わり、スタジアム内の挑戦者専用ポケモンセンターを訪れたイツキを、女性職員が猫なで声で迎え入れた。
「試合観ましたよぉっ、すごかったですねー!最後のルージュラとか、すっごい綺麗でしたよ」
「見てくれて嬉しいー!よかったら、ここでアンジーのスケートをもう一度披露しちゃうよ!」
すっかり気を良くしたイツキは、ルージュラのボールを見せつけながら鼻の下を伸ばした。すると、背後から「キャー、私も見たーい★」とわざとらしい黄色い声が飛んでくる。聞き覚えのある声色に振り返ると、仏頂面の“三天王”がすぐ後ろに仁王立ちしていた。他人を圧倒する近寄りがたいオーラは、周囲の人々を一斉に遠ざける。
「……なっ、なんでココに?」
恐る恐る尋ねるイツキに、カリンは眉をひそめた。
「バックレた四天王に一言言ってあげようと思って」
一発ずつ殴られる――反射的に土下座しようとしたイツキの目の前に、カリンがディオールの紙袋を突きつけた。中に入っているモンスターボールが彼の目に留まる。
「これ……」
イツキは直ぐに紙袋を手に取り、中身を確かめた。きちんと回復したネイティオと目が合う。
「あなたが置いていった手持ち、返すわ。ここまでお疲れ様」
その口調にはやや怒りが込められていたものの、優しい労いを聞いて、イツキの胸がジワリと熱を帯びる。
「あ、ありがとう……」
「それから、これも」
キョウは羽織の袂から絹のハンカチを取り出すと、間に挟んでいたネイティオのキーホルダーを、イツキの右手に押し込めた。リトルカブのキーに付けていた物で、謹慎前にスタジアムの駐車場に投げ捨てたはずなのだが。
「あっ……、コレ!」
「車のワイパーの間に挟まってたんだよ。この前、返しそびれてた」
「キョウさんのレクサスに!?傷入ってないよね……?」
イツキは青ざめたが、キョウはそれを豪胆に笑い飛ばす。
「そんなプラスチックじゃ、よほど力を入れないと傷を付けるのは無理だな」
「良かった……」安堵するイツキを見て、シバは不愛想に背を向けた。
「用事は済んだ。戻るぞ」
「あら、何も言わずに帰るの?何のために付いてきたのよ」
「負けたおれに何も言う資格はない!」
カリンの言葉を振り切って出口へと向かう大きな背中を見て、キョウは悪意たっぷりの口調で声を張り上げた。
「“アニキ”はな〜、お前がスランプの頃本部に『自分の出番をイツキの後にしてくれ』ってわざわざ申し出ていたんだよ。失望させたファンの心に再び火を灯すのは、一番人気のあるおれだ!とね。さすがだねえ」
イツキとカリンは目を丸くする。「キョ……、キョウ!!それを言うなと……!!」慌ててシバがキョウに掴みかかってきたが、彼はからかうように大笑いしながら、言ってやったとばかりに満足げだ。
「そうだったの!?僕、何も知らなくて一番先にシバを指名しちゃった……。なんか、ごめん……」
仲間の優しさに胸をいっぱいにしながら頭を下げるイツキには、普段のような生意気の欠片も感じられない。シバは狼狽えつつ顔を背けた。
「謝るのは全て終わってからだ!スランプは抜けられたかもしれないが、明日ワタルに惨敗したら承知せんからな!そうでなければ負けたおれ達の面目が立たん!」
これにはカリンやキョウも同意する。
「そうね、頑張りなさいよ?ワタルは強いわよ」
「うん、よく分かってる。でも僕は強くなったんだ。絶対、勝つよ!」
イツキはネイティオのボールを紙袋から取り出すと、大人しく収まっている相棒を見た。
ロッカールームへと戻っていく仲間を見送ったあと、イツキは隅の長椅子に腰を下ろし、ネイティオを召喚する。相変わらずの無表情。
「……迷惑かけて、ごめん」
擦れる様な声で謝罪する主人に、ネイティオは何も反応しない。それを見たイツキは不安げに彼に尋ねる。
「あのさ……、これから言う言葉にただ、頷いて」
イツキはネイティオに向き直って椅子の上に正座すると、シートに額を勢いよくこすり付けた。
「さっきは痛めつけちゃったけど、これからもずっと……ずーーっと僕の相棒でいてくださいっ!お願いっ!」
ネイティオは主人を見下ろしながら、たっぷりと間を置き――ちらりとイツキがこちらを確認したところで、ゆっくりと頷いた。たちまちイツキに高揚感と涙が込み上げ、彼は「ただいま〜!!!」と叫びながら力強く相棒を抱きしめる。
「君のいない生活は長かったよお、今夜話聞いてよ〜っ!僕の師匠がとんでもないドSでさぁ……!」
スランプ前の様に気を緩ませる主を見て、ネイティオはそれを咎めるようにかぶりを振った。
「そ、そっか。まだタイトルは終わってないね!」
いつも通りのポーカーフェイスで頷く相棒は、どんなポケモンよりも頼もしかった。四天王に快勝したメンバーに、これまで使っていた手持ちが合流したことで、戦力は大きく膨らんだ。この面子ならば、チャンピオンを倒すことも難くないはずだ。
(僕は、絶対に勝つ。このメンバーなら、やれる!)