HEROSHOW










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season.01 ヒーローショー
第7話:ドラゴンスター見参
――ヒーロー登場から少し時間を遡る。
 屋上へ到着したシルバーは柵の傍まで近寄ると、真っ先にポケモンバトルへ目を向けた。テレビ越しに見る試合は迫力に欠けるが、間近で観戦するとそれはあまりにダイナミックだ。バトル嫌いの彼も、すぐに釘付けになった。
「すげえ……」
 これは施設の子供たちが熱中するのも頷ける。そして同時に、パルクールの人気など到底ポケモンバトルに勝つことができない――そう実感した。
「どうだい、プロの試合は」
 背後で声がしたので振り返ると、すぐ後ろにワタルが立っていた。シルバーは距離を置きつつ、素っ気なく顔を逸らす。
「……別に」
 全く素直じゃない少年だ……ワタルは苦笑する。
「さっき、凄いって褒めてくれていたような?」
「……うるせえなぁ。つーか、ポケモンバトルするって聞いてなかったんだけど。隠すなよ」
「サ、サプライズだよ」
 ワタルは引きつった笑いで誤魔化しながら、ステージの方へ視線を移した。子供達は今日一番の明るい笑顔で、カリンとシバへ声援を送っている。大人も同様だ。ナナミを始めとする職員全員が試合に釘づけで、そこはまるでスタジアムのように変貌していた。それを見ていると、ワタルは大真面目にポケモンの使用申請を【セミナー】で出してしまったことを後悔する。事前にケーシィ・テックと掛け合って機材を用意してもらった方が良かったのかもしれない。
「やっぱり、ポケモンバトルが一番盛り上がるね。子供達……楽しそうだなぁ」
「そりゃだって……バトルは一番メジャーなスポーツだから、盛り上がるだろうよ」
 シルバーは柵の前に座り込みながら、深いため息をついた。これに比べれば、自分のスポーツなんて……落ち込む横顔を見て、ワタルは彼の隣に腰を下ろす。
「君の得意なパルクールも楽しませてもらったけどね。あまり詳しくはないけど、いいセンスしてると思うよ。オレのハクリューが翻弄されるなんて、参ったよ」
 今まであまり褒められることがなかったシルバーは、目を丸くしつつ「う……うん」と頷いた。まさか大スターに称えられるとは。歓心が静かにこみ上げ、頬が緩んだ。
「いつから練習しているんだい?」
「3年位前から。ネットの動画で見てかっこいいなぁって思って、ずっと一人で練習してた。パルクールでトップになってやろうって……」
 目線を合わせて向き合ってくれることが嬉しくて、ワタルという有名人が話しかけてくれたことが誇らしくて、シルバーはやや饒舌になった。
「一人か……やるなあ」
「オレ友達いないから」
 きっぱりと告げる彼の言葉に、ワタルは目を見開いた。何かフォローの言葉を掛けようと考えていると、庭からリーフストームが吹き上がる。シルバーは吃驚の声を上げたあと、ワタルを一瞥した。
「でもいいんだ、関係ないから。チャンピオンは孤独だろ?馴れ合いはいらない」
 そう語る少年の瞳は、悲哀の影を湛えていた。見た目から察するに、まだ10歳前後といったところだろう。年が近くても、例えばキョウの娘アンズとは全く雰囲気が違う。親や身内に愛されてきた彼女とは違って、ずっと一人で生きてきたような孤独感が垣間見えた。
(こういう人間にこそ、ポケモンは必要なんだが……)
 どうすればその心を解せるだろう?
 無理に押し付けてはならないが――悩んでいると、シルバーが尋ねた。
「ずっと王座を守り続けるのってどんな気分?」
 すると今度は竜巻が爆発し、空高く火柱が噴き上がった。「うわっ、すげえ!」これにはシルバーも興奮を隠しきれない。ポケモンバトルを楽しむ横顔は、年相応の子供たちと同じである。ワタルはそれを楽しげに眺めながら、ゆっくりと口を開いた。
「……そうだな。人間的には孤独な部分も少しあるけど」
 バトルフィールドではシバのカポエラーが爆風からカリンのマニューラを守りきり、大喝采が巻き起こっていた。彼は本当にポケモンとの連携が取れている。ワタルは感心しながら、シルバーを向いて話を続けた。
「でもポケモントレーナーはポケモンがいてこその存在。自分を慕ってついてきてくれるポケモンと目標を共有し、互いの実力を高め合える。だから、チャンピオンの椅子に座り続けることに苦痛は感じないよ。最初こそプレッシャーだったけど……最近は、どんな猛者が来るんだろうって楽しみで仕方がないんだ。それは四天王……オレの仲間たちが頼もし過ぎるっていうのもあるね。まあとにかく一人で守っている訳じゃないんだよ、セキエイの椅子は。オレ一人が座っているように思えるかもしれないけど、実際は違うんだよ」
 はっきりと告げる彼の姿は、凛々しくて威風堂々としており、まさにチャンピオンの名に相応しい風格だ。シルバーは圧倒され、「……そうなんだ」と何とか言葉を紡ぎだした。
 明らかに委縮する彼を見たワタルは、すぐに相好を崩して取っつき難い雰囲気を取り払った。
「それはパルクールも同じなんじゃないかな。なんでもそう。切磋琢磨できる仲間と――頂点を支える挑戦者達の存在があってこそ、チャンピオンは成り立つんだ。挑戦しようとする者は誇り高く、輝いている。もちろん、君もそうだ」
「ありがとう……」
 
 それだけ返すのが、精いっぱいだった。
 やっぱり彼は他の人間とは違う。眩しすぎて、誰よりもクール。
 悪戯心で彼のパスケースを盗んだなんて――自分が恥ずかしすぎる。
 
「これ、返すよ。盗んだりして……ごめん」
 シルバーは握りしめていたパスケースをさっとワタルの前に差し出した。すると彼は、にこやかに受け取りを拒否する。
「ポケモンバトルが終わるまで、預かっていてもらえるかな?この衣装、ポケットがないんだ」
 困惑するシルバーに、ワタルは目線を庭へ移した。舞台上で倒れているマニューラの姿がすぐ目に留まる。
「仲間が負けてしまったようだ。次はオレの出番だ」
 ワタルはマントの襟を正すと、腰に装着していたボールから一つ選んで投げる。すると、鞍を持ったカイリューが現れた。2メートルを超える巨体にシルバーが呆然としている横で、彼は慣れた手つきで相棒に鞍を装着していく。
「あの悪役スゲェ強そう……勝てるの?」
「ああ、負けないよ」
 カイリューを引き連れながら頷くチャンピオンは、とても勇ましく、負ける気がしない。シルバーは心躍らせながら、拳をワタルの前に掲げた。
「応援してる!頑張れよ、ヒーロー!」
 ワタルは一笑すると、それに応えるように自身の拳を突き合わせる。
 
+++
 
「そこまでだ、悪党ども!」
 屋上から現れたワタルを見て、イツキが興奮気味にキョウの傍へ寄ってくる。
「わお、真打ち登場!どうする、伯爵?」
 まずは説明である。キョウは蝙蝠傘をワタルへ向けながら、平坦な口調で話し始めた。
「現れたなドラゴンスター、待ちくたびれたぞ……。お前が油売ってる間に、この施設はリフレクターと蜘蛛の巣で完全防備した!抜けてる仲間のお陰で窓ガラスを割ってしまったが、修理代など我々の年俸からすれば微々たるものだ。後でどうとでもなる。私の力を遣えばこの通り、大爆発にも耐えられる『見えない壁』を作ることができる。ついでにお前のクソ真面目なポケモンの使用申請を【セミナー】から【プロモーション】へ書き換えることもな!これだけ盛り上がってるんだ、今更ポケモンの使用がどうとか野暮なことは言うなよ。免許のスピーカーをテープで塞いで、全力でかかってくるがいい」
 この内容で、ワタルは全てを理解した。
「す、すべて理解できたが2対1はちょっと不公平じゃないか?」
 すかさずイツキが憤慨する。
「悪党に不公平なんてないよ!自分は絶対王者じゃん、マスターシリーズで負けたことないくせに!」
 毎週一回、四天王同士が試合を行うマスターシリーズでは、勝ち上がった者が月末にワタルへ挑戦できる。昨年彼は無敗であり、その経緯があるので、カリンやシバも手を貸すつもりなど無いとばかりに頷いていた。
 ワタルはやや孤独感を感じつつ、居住まいを正してドラゴンスターの役へ切り替える。
「分かった……。では、容赦なくいかせてもらうぞ!――カイリュー!」
 カイリューは頷くと、楽しそうに飛翔した。
 その圧倒的な姿に、施設関係者から驚嘆の声が上がる。ワタルはマントを翻し、軽やかに相棒へ飛び乗るとシルバーへ注意する。
「君、流れ弾には気を付けてくれ」
「そんなヘマしねえよ」
 彼は自信たっぷりに微笑んだ。運動神経がいいので問題はないだろう。
 ワタルはカイリューを大きく羽ばたかせながら、舞台上空へと移動した。子供たちはすっかりドラゴンスターに夢中で四天王など眼中にない。カリンは呆れながら、シバの腕を引いた。
「あーあ、おいしいところ全部持っていっちゃって……。シバ、私たちも離れて観戦しましょ。ここは危ないわ」
「そうだな……。カイリューに騎乗とは、ワタルもなかなか本気だな」
 二人はドータクンとアリアドスが避難している、とばっちりが来ない場所へ移動した。これで準備は万全である。
 イツキは緊張気味に、キョウに尋ねた。
「……ど、どうやって攻める?またリーフストームとガス爆発のコンボで――」
「おいおい、ワタルを殺す気か?」
 呆れ返っている隙をつき、ワタルは手綱を引きながらカイリューに命じる。
「遠慮なく攻めるよ、カイリュー!破壊光線っ」
 先制は派手に――カイリューは素早く破壊光線を放つと、ナッシーとマタドガスを蹴散らした。エネルギーを殆ど溜めていない慣らしの一撃ということで、受けたダメージは意外にも少ない。だが、会場を沸かせるには十分であった。
 慌てて避難していたイツキが喚き散らして憤慨する。
「危ないよ!ワタルが僕らを殺す気じゃないの!?」
「大丈夫さ、トレーナーは狙ってないから。みんな、ポケモンを使って人に攻撃するのは犯罪だからね!絶対やめよう!」
 ワタルが子供たちに向かって笑顔で手を上げると、彼らは「ハーイ!」と元気よく返事をする。
 そんな平和で余裕のある姿が、悪役の闘争心に火を付けた。
「……上等だ。イツキ、タネマシンガン浴びせてやれ。その後に――」
 キョウが小声で指示を出すと、イツキも直ぐに頷いた。
「なるほど、それいいね!じゃあマタドガスもサポートしてよ?」
「おう。マタドガス、煙幕!」
 主人の声を聞いて、マタドガスが動いた。カイリューの周囲を旋回しながら、黒煙をまき散らしワタルの視界を覆っていく。ポケモンに騎乗している状態で前が見えなくなるというのは非常に危険である。ワタルは直ぐに手を打った。
「カイリュー、暴風を起こして煙幕を――」
 だが技を仕掛ける前に、カイリューの腹めがけて無数のタネマシンガンが襲い掛かってきた。「うわっ……!」200キロを超える中の巨体をも押し上げるような威力に、彼は思わずバランスを崩す。動きを取られていると、種が一斉に芽吹いて蔦となり、カイリューへ絡みついた。
「これは……!」
 しめた、とばかりイツキが声を弾ませた。
「ふふっ、“くさむすび”だよ!そのまま地面とキスしちゃいなよ!」
 このまま落ちればダメージは大きい。
「カイリュー!エアカッターで蔦を斬れっ」
「させるかよ。マタドガス、ヘドロ攻撃」
 キョウが自分の目を示しながらマタドガスに命令すると、彼はカイリューがエアカッターを放つ前にその顔へヘドロを投げつけ、技を妨害した。激臭がワタルの鼻を刺す。そのまま蔦が竜を地面へ叩き落とそうとしたとき――彼は素早く手綱を引いた。
「頑張れ!落ちるなら、そのまま突っ込もう!」
 カイリューは身を捻りながら、全身の力を振り絞ってナッシーへと突撃する。「ドラゴンダイブ!」キョウは直ぐにその場を離れつつ、凄まじい勢いで飛びかかってくる竜を前に腰を抜かしているイツキをがなり立てた。
「ボサっとするな、迎え撃て!」
「わ、わわかったっ、ウ……ウッドハンマァァーッ!」
 ナッシーは両脚を強く踏み込むと、腹へ力を込めて突進してきたカイリューを受け止めた。巨大なドラゴンの衝撃は大きく、反動が身体を強く揺らす。ワタルは即座に手綱を引くと、相手が動く前にカイリューの体制を立て直し、再び空へ舞い上がった。
「に……逃がさないよ、サイコキネシス!」
 イツキは地上からその背中を追いながら、ナッシーに強力な念波を放たせた。しかしカイリューは振り向きざま、相手に向けて破壊光線で応戦する。被弾エリアに入っていた相方を、キョウが素早く襟首を掴んで避難させた。結果、ナッシーだけが攻撃を受ける。
「だからお前は!すぐ動くなと……」
 詰め寄るキョウを遮って、イツキが反発した。
「だって、今いけると思ったから攻撃したんだよ!僕は負けたくない、たとえ二対一でも――ワタルに勝ちたい!」
 そう語る彼は、悪役なぞらーの役目などすっかり忘れていた。
 ただ純粋に強い者に勝ちたいという、ポケモントレーナーの姿――四天王・イツキに戻っていた。すっかり逞しくなった佇まいに、キョウは思わず口ごもった。
 
 そのやりとりを遠巻きに眺めながら、カリンは首を傾げる。
「イツキ、悪役ってこと忘れてない?オジサマはいつも通りのエグいプレーが様になってるけど」
「ああ……だが、ここで悪役だからとわざとらしく負けるのも興ざめする。本気で戦ってほしいものだ」
 シバも舞台そっちのけで、食い入るようにポケモンバトルを観戦していた。どいつもいつも……カリンは呆れながら、カイリューに乗って浮上しているワタルを見る。
「だけど騎乗してると、トレーナーに気を遣って技も制限されちゃうわよね。ヒーローらしいけど、ちょっとズルいかも」
 
 自分を睨みつけるイツキの眼差しを察したワタルは、鐙の上に立ってマントを翻した。
「なぞらー君!オレはどんな技でも迎え撃つぞ。ここで命を落とすことがあっても、その程度の人間ということだから」
 プロとしての誇りを傷つけないため、イツキへ挑戦的な言葉を投げかける。それを受け、彼はナッシーの元へ走りながらワタルへ中指を立てた。
「ふ、ふん。僕だって、破壊光線なんて目じゃないからね。どんどん撃ってこいよ!――いけ、ココ!リーフストームッ」
「カイリュー、暴風で応戦だ」
 地上から鋭利な木の葉と共に吹き上がる竜巻を、カイリューは豪風を起こして打ち消した。チャンピオンのドラゴンが巻き起こす風は威力が桁違いで、施設のすぐ後ろに広がるトキワの森の木々をも大きく揺らし、枝で休んでいたポッポの群れが一斉に飛翔した。屋上で観戦していたシルバーもこれには目を見張る。
 疾風はそのままナッシーを捕え、塀へ叩きつけた。もうすでに彼の身体はぼろぼろだ。
「うえ……、やっぱカイリューは強い……!キョウさん助けて!ココがやられちゃう」
 縋り付くイツキに苛立ちを覚えながら、キョウはワタルがノーマークしていたマタドガスを動かした。
「ったく、もう少し考えろよ……マタドガス、ベノムショック」
 掌を拳で叩きながら指示を出すと、マタドガスは鐙めがけて毒液を発射する。これはトレーナーを狙え、という露骨なサインである。主人を守るため、カイリューが反射的に身をよじってそれを腹で受け止めた。
「カイリュー、毒を受けてないか?オレを気にしなくても――」
 彼女は首を振って、異常がないことを知らせる。手元に免許端末がないので断定はできないが、僅かな様子の変化は気になった。ワタルは相手と距離を取りつつ、体調を確認するため上空を旋回し始めた。観客席からの止まないドラゴンスターコールを聞きながら、キョウはイツキに尋ねる。
「……今のうちに。お前のナッシー、あとどれくらい戦える?」
「も、もうあと一撃で倒れそう……。技も規模が大きいのは使えないと思う……」
 ナッシーは息も絶え絶えで、このような状態では大技も繰り出せない。だが、キョウは口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。
「十分だ。調子こいたヒーローを叩き落とせる」
「どうすればいい?」
「ひとまず、ナッシーを落ち着かせてだな……」
 彼は、縋り付く様に食いついてきたイツキに耳打ちした。
 
 ワタルは何度もカイリューのコンディションをチェックし、飛行速度の低下具合や顔色で、毒を受けていることを判断した。
「カイリュー、おそらく君は毒にかかっていると思う。キョウさんの毒は並みのポケモンと威力が違うから、すぐに反動が来るだろう。早いところ、カタを付けてしまおうか」
 毒ポケモンのプロフェッショナルである彼は毒技の精度も磨き上げており、通常のポケモンのそれより威力が高く効きも早い。長期戦に持ち込まれると圧倒的に不利である。
 そんなことを考えていると、地上からイツキがステッキを振り回しながらワタルを煽りだした。
「ヘーイ、ドラゴンスター!そろそろ決着を付けようじゃん!でもその前に……なぞなぞだよ!!」
 なぞらーのキャラクターが戻ってきたことにワタルは拍子抜けしたが、イツキは気にすることなく、おどけるように問いかけた。
「空から降ってくる甘ーいおやつって……な〜んだ?」
「それは……」
 すかさずシルバーが「あめ!」と口を挟んだ。目を丸くするヒーローに、彼は照れながら白い歯を見せる。その無邪気な姿を見たナナミは、ほっと胸を撫で下ろした。場がやや和んだのもつかの間――ふいに、イツキの背後にあった池の水がふわりと空へ浮き上がる。
 意表を突く行動に、観客はもちろんのことワタルやシバたちも目を見張った。
「ピンポーン★じゃあ、正解したお友達……の近くにいるワタルさんには雨をプレゼントしちゃうよ!雨乞いが覚えられなくたって、こうすれば大雨を降らせることができるんだ。もちろん、僕くらいエスパーポケモンを鍛えてないとダメだけどね!いくよお、ココ!――テレキネシス!!」
 ナッシーの念力が池の水を底から浚い、ボールの様に丸めてカイリューより高く浮き上がらせる。イツキが指を鳴らす合図で水は弾け、文字通りバケツをひっくり返したような土砂降りが施設へと襲い掛かった。
(……なんでこんなことを?まさか――)
 意図を察したワタルが目線を移した先に、蝙蝠傘を差した男が立っていた。
「たとえドラゴンとはいえ、毒で弱わり、濡れた身体に食らう電気は最高だろうなァ……」
 悪賢い微笑みを浮かべる彼の目の前に、電気を溜めたマタドガスが現れた。
「行け……、かみなり!」
 回避する暇はない。
 閃光が瞬いたかと思うと、カイリューの頭に鋭い稲妻が撃ち落とされた。

鈴志木 ( 2013/02/26(火) 18:19 )