プロローグ
『テレビの前の皆さま、お待たせいたしました!次は待望の、セキエイ・タイトルマッチ開幕戦のニュースです!』
堅苦しいニュースを読んでいたアナウンサーの顔が、一変して明るくなった。その表情から、彼も心の底からこの日を待ち望んでいたことが視聴者へも伝わってくる。
彼は腕を振り上げながら、意気揚々と捲し立てた。
『去年一新された四天王は、4か月無敗という史上稀に見る伝説を打ち立てましたが――今年は一体、どんなドラマが待っているのか!?そして、去年チャンピオンの王座を見事防衛したワタルは、今年もその椅子に座り続けることができるのか!再び――我々は伝説を見ることができるでしょう!それでは、開幕戦の試合内容をダイジェストでお届けいたしますっ』
アナウンサーが手を差し出して合図すると、画面はセキエイスタジアム外の桜並木の録画映像に切り替わった。
『スタジアムの桜並木は、ファンの期待が投影されているかのような満開の花模様。5万人の観客を招き入れております。いよいよ待ちに待ったタイトルマッチ!我々はかつて、冬がこれほど物足りないと思ったことはありません。四天王のポケモンバトルが見られないというのは、なんと退屈なことでしょうか。しかしそのもどかしさも、今日からなくなるのです!』
アナウンサーの大げさなナレーションに合わせて、映像はオープニングイベントに切り替わった。より派手になったスポットライトの演出を四天王が潜り抜けていき、最後に北側ベンチから一人の男が颯爽と歩んでくる。
オーバーコート風のマントに同系色のタキシードを着こなした彼は、大歓声に迎えられながらフィールドに降り立つ直前で丁寧に一礼した。その瞬間、スタンドから一層大きな声援が吹き上がった。
『最後に登場したのはもちろんこの方、チャンピオンのワタルです!去年は二度のチャンピオン防衛に成功。……これは異例の数字です。毎年チャンピオンの元まで勝ち上がってくるのは、平均30人ほどですから。それだけ四天王が実力者だということを証明しています。とはいえ、その頂点に立つ男は実力も十二分。既に敵なしのこの風格!まさにヒーロー!』
ワタルがゆっくりと頭を上げる。
その精悍な顔つきは1年前よりさらに磨きがかかっていた。圧倒的な王者の風格に、観客も息を呑む。
『さあっ、それでは試合の内容へ移りましょう!トップバッターはこのお方、エスパー使いイツキです!』
始めに紹介されたのはイツキの試合である。大きなサングラスをかけ、ネイティオモチーフのドット柄シャツに、アーガイルのニットタイ、テーパードシルエットのカラーパンツという派手な出で立ちの少年が画面に映し出される。
『彼は去年、試合の指名率がトップでした!やはり若さがネックだったのでしょうか?それでもかなり善戦し、勝率8割というルーキーとしては異例の高い数字を残しました。女性の支持も急上昇!今回も黄色い声援を受けながら試合に臨みます』
彼は相棒のネイティオをボールから繰り出すと、一匹であっという間に挑戦者を追い詰めていく。
『さあ挑戦者、もう後がない!ボールから繰り出したのはエルレイド。軽やかな身のこなしで、相当鍛えられているようだ!』
エルレイドはフィールドを縦横無尽に動きながら、空中から攻撃を仕掛けるネイティオにも臆さず斬り込んで行く。フェンスを蹴って跳躍すると、肘の剣を振り上げた。挑戦者が吠える。
「エルレイド、居合を見せろ!」
すかさずイツキも声を上げた。「ネオ、追い風で加速っ!」
ネイティオは追い風を巻き起こすと、速度を上げながらエルレイドの眼前へ飛び込んだ。臆すことなく居合切りの射程距離へ入ってくる相手に、エルレイドは目を見開いて一瞬剣を振るう腕を躊躇った。そのほんの僅かな隙を狙って、イツキは更に指示を出す。
「ビンゴ!油断したね。……とんぼがえり!」
ネイティオはエルレイドの脇をすり抜け、大きく宙返りをした。不意を突かれ、居合は大きく空振りする。
「とどめ!」
イツキがぱちんと指をならすと、ネイティオはエルレイドに背を向けたままサイコキネシスを放った。強力な念波は、相手を気絶させるには十分な威力を誇っていた。アナウンサーも声を荒げる。
『ここでネイティオがサイコキネシスでとどめを刺しました!試合後、イツキ選手は「指を鳴らすとサイコキネシス、というサインを開幕戦に間に合うように教え込みました。上手く決まって良かった!カッコよかったでしょ?」と楽しげなコメント』
イツキ戦のスコアが表示された後、再び画面が試合に切り替わる。
『さて、サインの使い手と言えばこの人!キョウを忘れてはいけません。職人技と名高いそのサインプレー術はトレーナー界に大きな衝撃を呼び、オフシーズンは講習や執筆の依頼が多数あったとのことですが、全て断ったとのことです。それでは、門外不出のリード術をご覧ください!』
テクニカルエリアに降り立ったのは茜色のスカーフを翻し、市松模様を基調としたモードな袴を着こなす四天王、キョウ。手持ちを変えながら二番目の挑戦者を翻弄していき、あっという間に最後のポケモンまで追い込んだ。
『挑戦者が最後に選んだポケモンはキュウコン!その美しさには観客も息を飲むほど!対するキョウが繰り出したのは――マタドガス!』
「ほー、よく手入れされてんなぁ。倒すのが勿体ないが、仕方ない。マタドガス、黒い霧を撒いてけ」
キョウは左手の指を上げ下げしながら、双子であるマタドガスに技を命じた。兄に黒い霧を、弟にサインでもうひとつの指示を出す。
(霧の中に毒ガスを混ぜろ。……いつものアレ)
ドガースは頷くと、キュウコンと少し距離を取りながらフィールドに黒色の霧を散布していく。
「キュウコン、電光石火で攻撃だ!」
その指示を聞き、キョウは素早く両手を叩きながらフォローを出す。
「マタドガス、スモッグ!」
(弟、ガスの濃度を上げろ)
飛びかかってくるキュウコンめがけ、マタドガスは体内に溜めこんでいた毒ガスを一気に放出した。相手と離れていきながら、マタドガスは口を開けた風船のように、くるくると宙を舞いながら縮んでいく。その高さを確認しながら、キョウはスカーフで鼻を覆いつつベンチ際へ後退した。黒い霧で視界が悪くなっているとはいえ、目を回しながら漂うマタドガスは隙だらけで格好の標的である。挑戦者は誇らしげに声を上げた。
「キュウコン!あのマタドガスを撃ち落としてやれ!火炎放射ぁ!」
ふわふわと目を回しながら漂うマタドガスに狙いを定め、キュウコンが炎を含んだ口を開けた瞬間――黒い霧に混ざったガスに引火し、フィールドに大爆発が巻き起こった。黒煙が上がる舞台を観客は呆然と見つめる。スタジアムから歓声は消え去り、衣服に火の粉が燃え移った挑戦者の悲鳴だけがこだまする。
爆発を免れたキョウはすり寄ってきたマタドガスと顔を見合わせると、満足そうに勝利を喜んでいた。
『前代未聞……自らを犠牲にしない大爆発!!この一撃で、キュウコンは戦闘不能。なお試合後、やはりタネ明かしはしていただけず「研究してください」というコメントだけいただきました……』
残念そうに語るアナウンサーの声と共に、キョウのスコアが表示された。しかし次の映像へ移ると、彼は一転して明るさを取り戻す。
『さてお次は、今年も四天王人気ナンバーワン!我らが“アニキ”、シバの時間がやってまいりました。大歓声を受け、鍛え上げた己の肉体……そしてポケモンを披露するーっ!』
今年のシバの衣装は、迷彩柄のミリタリーパンツに黒光りするワークブーツという装いである。もちろん、日々磨きあげている上半身を布で隠すようなことはしない。去年両腕を飾っていたブレスレットは外され、シンプルなスタイルへと変わっていた。ポケモンバトルを極めることがライフワークの彼には、お洒落など必要ないのだ。
次々に挑戦者のポケモンを蹴散らしていくと、あっという間に最後の一匹へと追い込んだ。相手が繰り出したのはドータクン。対するシバが選んだポケモンは、オコリザルである。
『さあ、皆さん。ここからは瞬きせずにご覧ください!』
興奮気味のナレーションに合わせて、ドータクンが動き出す。
「ドータ、サイコウェーブッ」
挑戦者の指示を聞き、ドータクンがさっと両手を広げて念じ始める。その懐へ、オコリザルが間髪入れずに飛び込んだ。
「特訓の成果を見せてやれ!!――気合パンチ!」
シバの絶叫と共にオコリザルはフィールドを強く踏み込むと、身体を大きく捻りながら全身全霊をかけたパンチを繰り出した。鍛え上げられたオコリザルの拳は、相手の180キロ強の肉体をもろともしない。鐘を突くような音と共に、釣鐘のポケモンをフェンスへと叩き込んだ。アナウンサーは狂喜しながら声を上げる。
『フェンス直撃、一撃必殺!!なんとこのたった一発のパンチでドータクンは気絶!本日最速KO記録を叩き出しました!素晴らしい、さすが“アニキ”だーっ!試合後のコメントでは「100点満点!」と満足そうでした。うん、カッコいい!』
やや主観の入ったナレーションが入りつつ、シバのスコアが表示される。
『さあ最後は……紅一点、セキエイに咲く一輪の美しい薔薇。去年、男女問わず人々を魅了したニューヒロイン、そうこの方!……カリン!それでは、試合の内容をダイジェストで!』
大観衆の期待を背負ってフィールドへ降り立ったのは、去年と少し雰囲気を変えたカリンである。レースの黒いキャミソールが透けるセクシーなシフォン地のノースリーブブラウスに、黒レザーのペンシルパンツ。足元は15センチのピンヒールと、非常に攻めたファッションへと変更されていた。去年より更に高くなったヒールを全く気にすることなく、彼女はテクニカルエリアをスマートに歩みながらポケモンへ指示を出していく。
トレーナーも美しく見えるように、というのが彼女のオフの訓練ポイントであった。去年は指示に熱が入って何度かヒールが脱げていたが、今年はそのハプニングをゼロにすべく、簡単なサインを組み合わせた隙がない動きで挑戦者を攻め立てていく。そして最後の一匹、エテボースまで容易く追いつめた。
カリンは右手を挙げて交代のアピールをすると、それまでフィールドに出していたブラッキーを引っ込める。
「それじゃ、こっちも変えるわね。最後はあなたよ、ドンカラス。最初から攻めちゃっていいわよ♪」
スワロフスキーを散りばめたモンスターボールから召喚したのは、手入れが行き届いたドンカラスである。彼は華麗にポーズを決めて観客の声援を集めるや、即座に翼を広げて唸るような声を上げ、エテボースを“驚かせた”。そして相手が怯んだ隙に、容赦なく辻斬りを食らわせる。エテボースは思わずのけ反った。
「エテボース、ダブルアタック!」
掌のような二本の尻尾を鞭のように振るいながら、エテボースはドンカラスを襲撃する。しかし、彼は翼でその攻撃を翻すと、二本とも器用にフィールドへ押さえつけた。カリンがいたずらっぽく微笑む。
「ふふっ、その行動は“先送り”にしてね?まずは、こっちが先よ」
ドンカラスはエテボースの尻尾を後方へ振り払うと、相手の眼前へ飛び込んだ。そして息がかかるような距離でエテボースを圧倒する様な、悪の波動を放った。精神的に打ちのめされる悪意の塊は、大猿の神経を麻痺させる。それがこの至近距離で放たれると効果は大きい。エテボースの意識が数秒途切れた。
「ふふ、落ちたわね。ドンカラス、とどめを刺しなさい!」
その声を聞いて、ドンカラスは即座に翼をエテボースの胴へ打ち込んだ。そのまま彼はフィールドへ崩れ落ち、気絶する。戦闘不能を告げるフラッグが振り上げられ、大観衆がカリンの勝利を称えてくれた。彼女は声援に答えながら、ドンカラスへ歩んでその身体を優しく抱きしめる。
「ありがと♪今年もよろしくね」
ドンカラスは嬉しそうに頷いた。
『うーん、ポケモンが羨ましいっ!試合後のヒーローインタビューでは「ファンの皆さん、今年も応援よろしくお願いします♪」と笑顔を振りまき、会場を魅了していました』
カリンのスコアが表示されたあと、映像はスタジオへ戻ってアナウンサーの雑談へと変わっていった。
このスポーツニュースを小学生くらいの子供たちが10人ほど、テレビの前に座り込んで食い入るように見つめていた。
彼らは四天王のポケモンバトルに夢中で、ニュースが切り替わった後も余韻に浸るように目を輝かせていた。ところが突然打ち鳴らされた手拍子によって、その空気は破られる。
「はーい、もう寝る時間でーす!」
テレビを取り囲む子供たちが、一斉に声の方を振り返った。そこにはロングヘアの女性がやや呆れた顔つきで彼らを見下ろしている。子供たちは悲鳴を上げた。
「ええっ、もうー?」
「もうって……9時だけど?」
女性はテレビ裏の柱に掛けられた時計を指し示した。しかし、彼らは臆することなく反発する。
「タマムシテレビのニュースも見なきゃ!」
これは他局のスポーツニュースをチェックするという意味である。内容はもちろん、開幕戦。女性は呆れながら子供たちを各部屋へ戻るように促したが、誰一人として頑なに動かない。彼女はため息をついた。
「だーめ、子供は寝る時間です。ニュースは一つで十分でしょう?」
「えーっ、さっきのシバの試合もう一回見たい!」
「オコリザルのパンチ、やばかったよな」
「明日も試合、あるでしょう。……うーん、じゃあ録画しておくから、ね?」
頑固な子供たちの顔を見ながら、女性はリモコンを掲げて妥協案を提示する。途端に彼らは目を煌めかせた。
「じゃあナナミ先生、タマムシテレビとヤマブキテレビとコガネテレビのニュース録画しといて!」
「そんなに梯子するの?試合もリアルタイムで見て……ニュースも?」
「かっこいいプレーは何度見ても飽きないもん!」
子供たちの熱意に、女性――ナナミは目を丸くした。彼女自身、ポケモンバトルは好んでテレビ観戦しているが、試合後にスポーツニュースをいくつもチェックする感覚はよく分からない。今年もハードディスクレコーダーの容量は足りるだろうか……と、憂いでいると子供達の部屋へ通じる扉が乱暴に開いて、赤い長髪の少年がホールへ入ってきた。
不機嫌を露にする彼を見て、子供達は一斉に沈黙する。ナナミもその気迫に押されつつ、恐る恐る声をかけた。
「シルバーくん、どうしたの?」
「そいつらがうるさくて眠れねーんだよ、水飲みに来た」
少年は食器棚から自分のコップを取り出しながら、仲間を睨みつけて委縮させる。子供たちの前に立ちはだかりつつ、ナナミは苦笑した。
「ごめんなさいね、さっきタイトルマッチのニュース見てて…」
「くだらねえ。ポケモンバトルなんて……あほくさ」
少年は喉を潤すなり、乱暴に足を踏み鳴らしながら自室へと踵を返す。ナナミはその後ろ姿へ「おやすみ……」と霞むような声をかけた。相変わらず難しい男の子だ……困惑していると、子供の一人がぽつりと呟いた。
「シルバーもポケモンバトル観ればいいのにね。絶対、見ようとしないよね。ずっと一人で筋トレとかしてさあ……つまんなくないのかな」
「なんでこんなに盛り上がってるのか分からない!って言ってるよな。あいつ、いっつもそうだ。みんなと反対のことしてて……運動神経いいだけじゃん」
便乗して陰口をたたき始めた少年達を、ナナミはすかさず制する。
「ダメだよー、悪口は!みんながみんな、ポケモンバトルを好きなワケないでしょう。シルバー君は他のスポーツが好きって言ってたよ」
とはいえ、ポケモンバトルはこの世界で最もポピュラーなスポーツである。既にスポーツという枠さえ超えていると言っていいほど、世間に浸透している。正直、これを避けて生きることなど不可能だ。シルバーはそういった世の中の風潮が気に入らないのだろう。現に、彼は他の競技に興味があるようだ。
そんなことを感じていると、子供たちはさらに不満を漏らした。
「でもナナミ先生……。わざわざテレビ見てるところに文句言いに来るんだもん。『うるせえっ!スタジアムで騒げよ』ってさ。おれ達だって本当は試合見に行きたいよ!折角セキエイ近いのに……」
その少年の言葉を筆頭に、彼女の周りに子供たちが次々たむろして「試合観に行きたい!」とせがみ始めた。ナナミは困惑しつつ、苦い表情で頭を下げる。
「ごめんね、チケット取れなくて……。電話もネットも繋がらなかった……。出てる三か月先までのチケット、即日完売です」
この弁解を一体何度彼らに言い聞かせてきただろう。
何とか夢を見せてあげたくて手を尽くしたが、四天王が一新してからチケットのプラチナ化は一層激しくなった。その状況下で、この児童養護施設にいる子供たち数十名分の席を一度に用意することは無理に等しい。
「ナナミ先生、オーキド博士がおじいちゃんなんでしょ?チケット貰えないの?」
「去年も相談してみたんだけど……難しくて。ごめんね、本当に取れないの」
彼女は申し訳なさそうにしながら俯いた。
「えー……試合、観たいな」
「だよな、シバの試合が見たい」
子供達はがっくりと肩を落としながらため息をついた。こんな姿は彼らの保護者であるナナミにとって胸が痛くなる。
ほぼ不可能に近いこととはいえ、我が子のように想っている彼らの力になれないのは大変もどかしい。これほど子供たちが一丸となって夢中になる事など、他にないのだ。
(何とかしてあげたいな……。もう一度お祖父ちゃんに相談してみようかな?試合は観に行けなくても、何かイベントとかをやっていただけないかしら)
一方、自室に戻ったシルバーは布団に潜り込んでぼんやりと考えていた。
(なんで世間はポケモンバトルばっかりなんだよ。頭沸いてるヤツばっかりだ)
施設の子供が皆一様にテレビに釘付けになっている姿は、傍から見ていて非常に馬鹿馬鹿しい。
試合中継の翌日など、その話でもちきりである。当然、テレビを見ていない自分は蚊帳の外。
それでいいと思っていた。
(オレはあの輪に入りたいとか思わない。下らないし。何がいいんだか……)
同じ考えを持っている仲間なんて誰もいない。
友達なんて一人もいない。
孤独だった。
(いいんだ、オレは。これがあるし)
彼は枕元に置いてある新品のランニングシューズを天井へ掲げてみせる。
先月の10歳の誕生日に施設から贈られた、スポーツブランドの限定モデル。
これだけあれば、十分だ。
(これだけで……)
彼は唇をきつく噛み締めると、瞼をぎゅっと閉じて早く眠るよう自分に言い聞かせた。
今日も一人の一日が終わってしまった。
明日も、また一人だ……。
(いいんだ、それで……)