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第1章
第22話:ヒーロー登場
『さあいよいよ始まります、新生セキエイ・タイトルマッチ!!この会場を包む熱気!!5万人収容のスタジアムは人で埋め尽くされ、会場外のパブリックビューイングも満員御礼!新たなセキエイの幕開けを祝福するかのような人の数に期待が高まっていますね!さらにこの様子は、テレビ、ラジオ、インターネットでも放送されております!!……みなさん、もうすぐ始まりますよ〜っ!!!』
 スタジアムDJがフィールド外へ登場して客席を鼓舞すると、満員の観客席から割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。熱気はさらに上昇する。これまで類を見ない盛り上がりに、あちこちで待機するスタッフたちも緊張の色を隠せない。
 いよいよ、この時がやってきたのだ。
 朝からスタジアム外には大行列ができ、ホテルも満室。ショッピングモールも人で溢れ、セキエイ高原はかつての賑わいを完全に取り戻していた。一時の死にかけていた様子が嘘のようである。
 オープニングまで残すところあと10分。
 
「すごいねー、本当にすごい……」
 スタンド中段辺りで、アンズが呆気にとられたようにスタジアムを見渡していた。ネットが消えた会場は、とても見晴らしが良く興奮がありありと伝わってくる。
 一緒にやって来たセキチクシティ応援団に囲まれる中、彼女の膝は震えていた。
 いくら足踏みしたりばたつかせても、震えは収まらない。その様子を隣に座っていた老家政婦のアキコがいち早く気づいた。
「緊張しているんですか?」
「う、うん……」
「旦那様の方が緊張されてますよ」
 アキコは微笑みながら、そっとアンズの肩を抱く。
「だよねえ……」
 掌に『人』と30回なぞって飲み込むも、全く状況は変わらない。
 彼女は膝を抱えながら、椅子の上に座り込む。
(お父さん……『人』3回じゃ足りないよー!)
 
 アンズのいる列の一番下、最前列ではキクコが楽しそうにフィールドを眺めていた。
 スタンドから観戦するのは初めてで、なかなか新鮮な感覚である。邪魔なネットも無くなり、視界はとても良好だ。
(これ、本当に安全なのかね?)
 おもむろに杖で見えない壁をつついてみるが、透過度が高すぎて本当にどこで仕切られているのか分からない。あれこれ探っていると、近くにいた男性スタッフが飛んできた。
「壁を傷める行為はご遠慮くださ……あっ!」
 彼は老婆がキクコと気づくや、すぐに頭を下げた。
「……これ、大丈夫なのかい?」
 怪訝そうに尋ねる彼女に、スタッフは自信満々に答える。
「もちろんです!ワタルさんや四天王さんが今日までずっとテストをしていましたが、一度も不具合は起こっていません」
「ふーん……」
「楽しみにしててください♪」
「なんだい、ヘラヘラして。さっさと仕事に戻りな!」
 嬉しそうなスタッフを見ていると腹立たしさを覚え、キクコは杖を振って彼を追い払った。
「こんなにいいもの、あたしの時に導入してほしかったよ……」
 これがあれば、より大胆なバトルも可能だっただろう。悔しさを噛みしめつつ、これから始まるバトルへ気持ちを切り替える。
 かつての同僚は、一体どれほど成長をしたのだろうか。楽しみで仕方がない。
 
 そこからフィールドを挟んで反対側のスタンド、最上段でカンナはぼんやりとスタジアム全体を眺めていた。
 フィールドに注目する観客たちは、帽子を目深にかぶりサングラスをかけた彼女の存在には気づかない。騒がれるのも困り者だが、全く声を掛けられないのも寂しいものである。
(少し前まではあそこにいたのになー)
 ベンチを見つめ、ため息をつきながら売店で買ってきたワインを飲む。売店のメニューも様変わりしており、女性向けのメニューが充実していたのだ。これはきっとカリンの提案だろう。白のスパークリングワインは爽やかで飲みやすく、観戦にはちょうどいい。
(ま、新たなスタートを見届けましょ……)
 
 一方、北側ベンチ上部のスタンドは本部やスポンサー関係者で埋め尽くされていた。ここはエキスパートトレーナー達から最も近く、見晴らしが良い席である。
 役員に囲まれ、総監もビールを片手に試合を楽しみに待つ。その隣にはオーキドが座っていた。
「素晴らしい眺めだねえ……。こんなに盛り上がってるの、初めてじゃない?」
 総監がビールを飲みながらオーキドに尋ねる。
「うむ。まさかここまで盛り上がるとは思わなかった」
「イツキ君の怪我の件、見えないフェンスに鳳凰会糾弾。それからまあ色々あって、全部プラスに動いたのはでかいな。チャンピオンの力なのかな。真の王者は、運さえも味方につける、と」
「彼はまっすぐで、いつも前を向いているからな。……孫も、それを見習ってまたやり直してる」
「へえ。……今となっては、グリーン君に感謝しないとな。こんなにセキエイを変えてくれたんだから」
 やや皮肉交じりの一言に、オーキドは苦笑しつつ立ち上がった。
「もう始まるぞ」
「わしは放送席で見るんでな。解説者だよ」
 そう言いながら、オーキドは総監に実況放送のタイムスケジュールを見せつけた。彼はこれまでのタイトルマッチでも度々解説の仕事を行っている。
「そうなのか。くだらん雑談で潰すなよ。お前、試合の流れを無視して雑談ばかりしている事が多すぎる。殆どキクコの愚痴で終わる日もあったし」
「な……!ひどいな、ちゃんと仕事するわいっ」
 やや思い当たる節がある彼は否定せずに顔を逸らし、そそくさと席を離れた。
 
 そこから少し離れた客席上段で、二人の男が並んで座っていた。
 その隣をオーキドが足早に通り過ぎて行く。二人の存在はオーキドにとっては五万人の観客の一部で、目もくれない。
「さすが、この馬鹿騒ぎでは我々の存在も気づかれないですね。ついこの間まで、散々ニュースで取り上げられていたというのに。祭り効果でしょうか」
 オーキドの後ろ姿を追いつつ、紫色のシャツを着た男が呟く。年の頃は、30代前半といったところ。
「……それだけ、注目度が大きいということだ」
 隣の黒いジャケットを着た男がビールを飲みながら小声で頷く。彼はシャツを着た男より、一回りほど年上に見えた。
「サカキ様もわざわざ観に来られた訳ですしね」
「ふふ、かつて育てた新人ジムリーダーと、俺を抜くと大口叩いたガキがどう成長したのか、気になるんだよ」
 サカキと呼ばれたジャケットの男は口元を緩ませる。付き添いの男は不満そうに顔を歪めた。
「……二人とも、我が組織に爪痕を立てる程ですしね」
「アポロ、貴様が術中に陥ったのは“あの男”を軽視しすぎたからだ。あいつはそこいらのジムリーダーとは違うんだよ。本来なら、こんなところにはいない人間だ」
 機嫌よく話すサカキに、アポロは唇を噛みしめた。
「高学歴のエリート会社員が突然ジムリーダーになって、すぐに潰れると思っていたんだが。困難を乗り越える、目から鼻へ抜けるような頭脳は素晴らしい。組織へ入れたかったが叶わずじまいだ」
「……スカウトしたんですか」
 アポロは目を見張る。サカキのことをよく知る彼にとって、それは非常に異例のことであった。
「しようとしたが……あいつは俺の目の前で名刺を破り捨てたよ。あれはタイミングが悪かったな」
 サカキは自嘲的な笑いを浮かべる。
「サカキ様を小馬鹿にしすぎでは……!」
「まァ、構わん。断ってからだな、いきなり保護司を始めたり警察向けのポケモンスクールを引き受けたり……それであいつとサツとの繋がりが強くなり、ロケット団がセキチクで活動しにくくなった。取り込んでいたジムの男も逃げられたんだろう?……そういう男だよ、キョウは。町の名士みたいな顔してるが、猛毒を持っている。貴様なんぞでは歯が立たん」
「……っ!」はっきりと告げられ、アポロは動揺を隠せなかった。組織ナンバー2を自負している自分が、ここまでコケにされるなんて。その様子をサカキは特に気にすることなく、右手に持っていたビールに口を付ける。
「ところで、鳳凰会リーダーの実刑は確定したのか?」
「……はい。しかしこちらの弁護士を送り込み、なんとか懲役2年でまとまりました。鳳凰会に潜入させていたメンバーや、チョウジ企画はサツの手からは全員何とか逃げ切っています」
 彼は震える声でボスに報告した。
 ランスが吊るし上げられてから、すぐにアポロの元にも警察の手が伸びてきた。這う這うの体で逃げ切り、裏切った弟子の男を捕まえようとしたが、既に自宅はもぬけの殻。噂ではイッシュ地方へ高飛びしたという。ロケット団のフロント企業だったチョウジ企画は休業を余儀なくされ、倒産も秒読みだ。だがサカキの言うとおり、セキチクではロケット団は非常に活動しにくく復讐もままならない。
「ふむ。またやり直しだな。調子に乗りすぎだ」
「……申し訳ございません」
 完全な敗北。屈辱だった。
「鳳凰会のリーダーには申し訳ないことをしたな。シャバへ出てきた頃にフォローしてやれ」
「はい……」
 アポロは悔しそうに拳を握りしめた。こみ上げてくる憤りが抑えきれず、彼は話題を変える。
「……ところで、もう一人の大口をたたいたガキ、とは?イツキですか?」
「違う……。このスタジアムを支配する、新しい王者だ」
 サカキは楽しそうに観客を見渡す。スタジアムは、大半がワタルのフラッグを持ったファンたちで埋め尽くされていた。
「……ワタルですか」
「会った時は、弱々しいお坊ちゃんだったんだがな。今やすっかり大スターだ」
「一体どこで会われたんです?」
「ま、ちょっとした旅の途中でな」
 サカキは13年前の出来事を思い出す――大怪我を負っても、トレーナーの自分に挑もうとしたあの勇敢な顔付き。とても良い顔をしていた。あれ程挑戦的な男は、彼の人生でも数えるほどしか見ていない。その後の活躍はテレビ等で何度か目にしていたが、鳳凰会糾弾の中継や先月の会見は特にサカキを感心させた。更なる成長を感じさせたのだ。
(さて……、君は晴れてヒーローになれるかな)
 サカキは口元を緩め、フィールドに注目する。
 
 ふいにスタジアム内の照明が落ち、ドラムロールが流れ始めた。
 色とりどりの照明がスタジアムを駆け巡り、フィールドへ集まって幻想的な舞いを見せる。
 観客がうっとりとそれを眺めていると、光が一つに集結し、スタジアムDJへ照らされ、音楽が鳴りやむ。
 会場は静まり返り、視線は一点にそこへ集中した。
 
+++
 
『お待たせいたしました!それではいよいよ、新生セキエイ・マスター達の登場です!』
 地鳴りの如く沸き上がってくる歓声に、スタジアムDJは思わず失神しそうな眩暈を覚えた。一呼吸置き、腹の奥底から声を振り絞る。
『皆様、拍手で迎えてくださーいっ!』
 鐘の音共に、神々しく壮大なオーケストラが流れ始める。DJを照らしていたスポットが消え、北側のベンチを明るく照らした。
『それではまずは四天王から!!――稀代のシンデレラボーイ、実力は充分!エスパー使い、イツキー!』
 ベンチの奥から、イツキが観客に手を振りながら笑顔で走ってくる。
 衣装はタータンチェックのシャツに黒の燕尾ベスト、ストライプのエンジ柄テーパードパンツに首元にはグリーンの蝶ネクタイ。非常に派手で目立つスタイルに、大きな度入りのサングラスをかけていた。割れんばかりの大歓声が、彼を出迎える。イツキはベンチからフィールドへ軽くジャンプして降り立ち、骨折の完治をアピールすると一斉に黄色い歓声が上がった。
「イツキくん、怪我完治おめでとうっ」
 持ち前の子犬顔と、ドキュメンタリー等の効果もあり、女性人気はうなぎ登りだった。客席のあちこちへ手を振りながら、テレビカメラ向けてもダブルピース。中継を見ている実家やエンジュジムへのアピールだった。
「す、すごすぎる……」
 しかしふいに冷静になると、途端に身体は硬直してしまう。経験したことがない大歓声は、気を緩めるとあっと言う間に飲まれてしまいそうだった。引きつった笑顔で、後続を待つ。
『最年少のお次は最年長トレーナー!史上初、ジムリーダーからの大出世!!毒使いのキョウー!!』
 二つ目のライトがベンチを照らし出す。再び、歓声の大波がやって来た。キョウはやや朗らかな表情で登場すると、フィールドに降りる前にスタジアムに敬意を払うように一礼した。
 今回の衣装は、黒ストライプの御召にグレーの襦袢、幾何学模様の帯を締め黒の羽織を着るというややモードな出で立ちである。足元も鼠色の足袋に黒の草履。
「わー、お父さん素敵ー!」
 普段のフォーマルな着物姿とは異なる父親のファッションに、アンズは目を輝かせた。セキチクからやってきた応援団は大盛り上がりだが、場所を伝えていなかったため本人には気付かれない。
 キョウは特に会場を見回すことなく、イツキの隣へと移動し小さく息をつく。
「こりゃすごいな」
「うん……こうして会話してないと倒れそう……」
 イツキは既に緊張で真っ青だ。
「だから一番は辞めとけって言ったのに……」
 二人で真面目な顔をして並びつつ、リラックスするように小声で会話を交わしていると、スタジアムDJが声を張り上げた。
『さあ続きまして、スタジアムを揺らす大男が戻ってきた!!我らが格闘使い――シバァァアア!!!』
 眩く照らされたベンチから仏頂面のシバがのそりと現れ、割れんばかりの大歓声が出迎えた。イツキとキョウは、シバの人気の高さに目を丸くする。
 歓声を気にすることなく、彼はベンチからフィールドに降りてきた。衣装は両腕に付けたクロムハーツのブレスレットとこなれた雰囲気のグレーのデニムパンツにモンキーブーツのみ。上半身は何も纏わず、鍛え上げた肉体を惜しげもなく晒していた。シバは観客を見回し一応アンズの姿を確認するも、会場は薄暗く最前列にいる観客の顔さえも分からない。ふてくされながらキョウの隣にやや距離を置いて立つ。
「……おいキョウ。家族に手を振らんでいいのか」
「席番聞くの忘れたんだよ。まあどこかで見てるならそれでいいんじゃないか」
「……」
 呑気に答えるキョウにやや苛立ちつつ、シバは一文字に結び、むくれるように腕を組んだ。
『さあ四天王最後は――、紅一点!!フィールドに降り立つ一輪の麗しき花。悪使いカリーン!!』
 スポットライトが照らされ、ベンチの奥からカリンが手を振りながらにこやかに現れる。女性客の歓声が一層高まり、彼女を出迎えた。衣装は繊細な刺繍が施された黒のストラップレスのAラインミニワンピースにグレーの薄いショールを羽織っていた。足元はセクシーな黒ストッキングに、ゴールドのグリッターパンプス。髪はアップでまとめて黒いリボンのカチューシャをアクセント。モデル顔負けのスタイルと美貌にあちこちから感嘆の声が漏れる中、カリンは颯爽と仲間たちの元に歩むと、シバの隣で立ち止まった。彼女はその定位置につくと、小さく息を吐きつつクールな表情を保ったまま仲間に話しかける。
「はあ……これ本当にポケモンバトルするところ?もはやコンサート会場よね」
「……ああ、確かにな。ここまですることなかっただろう」
 シバもカメラに分からない程度に頷く。ぽつぽつと小声で会話しながら緊張を解しているが、観客やテレビカメラ越しに見る彼らは真面目でクール、近寄りがたい雰囲気さえ醸し出していた。
『さあ!いよいよラストです!!!皆様、お待ちかね!』
 スタジアムDJが声を発するより早く、今日一番の大歓声がスタジアムを包み込む。天井を突き抜けてしまいそうな声量が、会場の雰囲気を更にヒートアップさせた。その熱気と興奮は、四天王さえも鳥肌が立つほど。
『紆余曲折を乗り越え、セキエイをここまで導いたスーパーヒーロー!!全国5000万人のポケモントレーナーの頂に立つ王者!!!チャンピオン、ワタルーーー!!!!』
 大きなスポットライトがベンチを照らす。
 黒いマントを翻しながら、ロイヤルブルーの礼服のような衣装に身を包んだワタルが颯爽と現れる。威風堂々とベンチを歩き、フィールドの前で恭しく一礼すると、あちこちでカメラのフラッシュが瞬き、嵐のようなスタンディングオベーションが巻き起こった。まだ23歳とはいえ、その佇まいはチャンピオンの名に相応しい。
 彼は真剣な表情を崩さず、四天王の元へ歩み寄る。四人の真ん中を割って少し前に出ると、スタンドを見渡して再び一礼した。四天王もそれに続く。豪雨のような拍手が彼らに降り注いだ。
 このような出迎えを受けて、ワタルは心底感激していた。顔を崩して、観客一人一人に礼を言いたいくらいだが――今この場ではチャンピオンとして堂々と構え黙しなければならない。先ほどまで小声で会話を交わしていた四天王も、ワタルの背中を見て居住まいを正し、口を結んだ。
『さて!この実力者たちに本日勝負を挑む、誇り高き勇者たちを紹介しましょう!!』
 スタジアムDJが右腕を南側のベンチへ振りかざす。スポットライトがそちらを照らすと、4人のポケモントレーナーが並んで立っていた。皆、緊張の面持ちでエキスパートトレーナーを見つめている。
『挑戦者は彼らだけではありません!本日の特別ゲスト!……ご紹介いたしましょう!マサラタウンが輩出した殿堂入りトレーナー!レーーーッド!!!』
 ベンチの奥から、赤い帽子を被った少年が現れる。出迎える大歓声に臆することなく挑戦者の間を抜け、先頭に立ってワタルを睨み据えた。その眼差しからは普段の大人しい雰囲気は消え、壮大なドラゴンへ挑む戦士の眼光へと変わっている。睨まれたのはこれで二度目だ。一度目は、自分が四天王として彼の挑戦を受けた時。あの時は、接戦の末敗れてしまったが――今回は、負ける訳にはいかない。
 
+++
 
『第一戦は、イツキさんと挑戦者カズマさんの試合です!』
 入場パフォーマンスが終了し、いよいよ試合が始まろうとしていた。
 イツキはベンチ前で簡単にストレッチして、体と緊張を解きほぐす。だいぶ、この雰囲気にも慣れてきた。
「こけるなよ」
 シバの忠告に、イツキはむっとしながら振り返る。
「そんなダサいことしないし!」
 ワタルはベンチシートへ座る前に、ふと思いたち仲間を呼んだ。
「イツキ、みんな。ちょっと」
「なあに?」
「円陣、組もう。ポケモンバトルは個人戦だけど、オレはみんなと一つのチームだと思ってるから」
 彼がきっぱりとそう告げると、四天王も断れなくなり、黙って円に立つ。
 ポーズは決まっていた。
 ワタルは自身の右手を握って、目の前に差し出す。仲間たちもそれに従い、拳円陣が組まれた。
「それじゃ、みんな。いよいよ本番だ。……最高のショーを披露しよう!」
 声が重なり合う。
 ショーの幕は完全に上がっていた。

鈴志木 ( 2013/07/26(金) 16:34 )