ポケモン不思議のダンジョン 星の探検隊 12の光に導かれし者








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第2章 神話に残る3つの力
M-32 水流、蓮道、迷路パズル
 まず、手分けして情報を集めることにしたサファイアは、倉庫のガルーラおばちゃんとカクレオン兄弟に聞き込みをしていた。
 急流の湖といえばそこそこ有名なダンジョンらしく、フロールタウンでもほとんどのポケモンは知っているだろうということだ。
 ただ、水流についてはやはりどうしようもないらしい。船なんて作っても持ち運べない、水流で壊れる、極めつけは壁に詰まって進めないというトリプルパンチが待っている。

 しかも、カクレオンが更に変な情報を持ってきてくれた。

「あのダンジョンでは、本来あるはずの床が、湖の底になっているんです。で、基本的に探検隊は水面の上を歩かなくてはいけないんですよ」

「歩くって……どうやって?」

 サファイアの脳内に、アメタマのように水面を滑る光景がひょっこりと顔を出した。あれを探検隊がやるのは無理だろう。

「蓮が湖に浮いているんですよ、まるで通路や部屋みたいな形に。その上にアイテムとかが落ちていて、階段までは蓮で繋がっているんだそうです」

 カクレオン曰く、なんと水面に浮いた蓮をつたって行かないと奥へは進めないらしい。よほど重いポケモンでもない限り沈むことはないだろうが、勿論周りは水だらけである。

「それって……一歩踏み外したら転落ってこと?」

「恐らくそうでしょう……すみません、私はそれくらいしか知りません……」

「ううん。十分だよ。ありがとう!」

 サファイアの方は中々順調に情報は集まったようである。
 後は、エレッタやミラがどれだけ情報を集めて来るか、期待することにする。


「へー、ミラさんでもお一人で何か聞いてくるなんてことがあるんですね」

「それ、どういう意味?」

 ミラは銀行を経営しているヨルノズクに話を聞いていた。
 会話をしたがらないミラにとって単独での情報収集など明らかに向いていない気がするが、挑戦者が少ないダンジョンということもあって文献には期待できない。
 無理に資料室に篭るよりも、ちょっと潜ったことくらいならある探検隊も多いので、聞き込みの方がすぐに集まると踏んだのだ。
 もっとも、踏み込んだ探検隊の殆どが途中で飽きて地下五階くらいで帰ってしまうので、地下何階まであるかもよく分かっていなかったりする。地下五階から湖底が見えたらしいので、そんなに深くはないようだが。

「蓮の上を歩いて行けばいいんですけど、時々ハスボー系統のポケモンが混じっていることがあるんです。もちろん、上から踏み付けようものなら襲われますよ。それとあそこは水流が多くて、普通なら蓮が弱めに絡み合って流されないからどこにあるか分からないんですけど、ポケモンが乗ると力が加わって水流に乗って流されるらしいですよ。いつでも気は抜けませんね」

 ヨルノズクはカクレオンやガルーラにも劣らぬほど探検隊に接しているためか、一気に情報が集まった。
 サファイア達が集めているであろう情報量に期待し、適当にお礼を言って話を切り上げ、そこを離れる。

 どうやら湖はトラップだらけのダンジョンのようだ。今まで以上に気を引きしめて行かなければと思いつつ、ミラは予め決めてあった集合場所へと歩いて行った。


「あらあら……エレッタちゃん、久し振り。また修業に来たの?」

「いえ……急流の湖っていうダンジョンの情報を聞きに……」

「ほ〜ほ〜、勉強熱心なこと……私も全面的に応援するわ、何でも教えてあげるよ〜」

「あう……ありがとう……ございます……」

 エレッタでさえも押されっぱなしになるほどの勢いをもつこの人物こそ、かの訓練場のムウマージ、レイシアだった。
 どうも話をしっかり聞いているのか聞いていないのか分からない感が拭えないのだが、これでもフロールタウンの施設の主なだけあって頼れる情報人なのだそうだ。

「まずは〜、あのダンジョンでは水流が強いのは知ってるわよね? あれは、いつも同じ方向に流れている訳じゃないのよ」

「ん〜……時間や天気によって変わるんですか?」

「それもそうだけど、他には風、水温、季節。わずかに変わっただけでも、まるで海の潮の流れのように目まぐるしく変動するわ。少しでも楽をしたいのなら……風が弱くて天気の良い、朝方に行けばいいんじゃないかしら?」

 風が弱くて天気のいい朝方。そんな日があればいいのだが、幸いあの近くは風が弱い日が多いらしい。それなら晴れさえすれば問題あるまい。

 そんな情報が手に入ったことを感謝しつつ、エレッタは二人がいるであろう街の施設へと向かう。三人が集合すると、お互いに情報を出し合いながら突入方針を大まかに立てた。

〜★〜

 そして、次の日の朝早く。
 レイシアの助言に従って、サファイア達は早めに起きて急流の湖に来た。
 既に入口からして水面は蓮に覆われている。強度はなかなかのものだが、何せ蓮はただ浮いているだけだ。歩くとぴちゃぴちゃと水が撥ねるため、サファイア達にとっては少し動きにくい床になっていた。

「これだと、もし敵に襲われても回避し辛いね……ってか、滑りそう」

「ハスボー踏んだらすぐに攻撃来るんでしょ? どうするの?」

「……出来るだけ広いところまで誘い込む。出来たら、の話だけど」

 足に纏わり付く湖水をなるべく振り払うように、慎重に進まなければ階段には辿り着けない。

 最初の道を通ると、どうやら湖の中心部に出たようだった。蓮が群生しており、そこから幾つもの蓮の道が出来上がっている。

「うっわ……かなり広いダンジョンみたいだね」

「とりあえず、ここの道から調べてみようか?」

 エレッタが何気なく蓮の道を渡り、ミラとサファイアが続いて道に入り――

「……止まって!」

 ミラが突然大きな声を上げ、二人を止まらせた。と、同時に……

「うぉわ!?」

 サファイア達が乗っている蓮の塊が、ゴッソリ道から切り離され――水流に流され始めた。流れは予想していたよりも速い。

「ちょ、落ちる落ちる! 早く止まってー!」

 エレッタががちゃがちゃ騒いで、ミラとサファイアがそれに構わずじっとしていると……やがて水流に流された蓮は、別の蓮の道にぶつかって止まった。

「うわっと! ……止まった?」

「みたいだね。こんなんじゃ、階段なんて辿り着けるのかな……」

 今度はサファイアを先頭に、ゆっくりと新たな蓮道を踏み締める。すると、またすぐに蓮が大きく揺れた。

「また……!」

「エレッタ! 早く!」

 またもや水流に引っ掛かったらしく、慌てて三人は固まって流される蓮の上でバランスをとる。
 今回は少し弱い水流だったのだろう、少し行って蓮にぶつかり、サファイアが再び歩き出す。

「うっわ〜……気を抜いたらアウトだね、これ……」

 エレッタは脇に浮かぶ蓮を見つめ、少し踏んでみる。
 意外にも蓮の繋がりは丈夫で、少し引っ張っただけではびくともしない。

「まだ、敵は出て来てないけど……何が出てくるんだろ……」

 サファイアが歩みを進めると、やがて一体のコイキングが水面を跳ねているのを見つけた。
 近くにはヒンバスの姿も。この二種なら、戦闘でそれ程苦戦することもなさそうだ。

「コイキングにヒンバスね〜。ま、体当たりされる前に倒せばいいし……ひゃあ!?」

 細い蓮道を渡っていたサファイア目掛け、コイキングが勢いよく跳ねてきた。
 そいつはサファイアとぶつかり、コイキングは押し戻されて再び水中へと潜る。
 しかし、その勢いに押され、サファイアも水の中へ勢いよく水しぶきを立てて落下してしまった。

「え!? サファイア!?」

 水の中から空気の泡が浮かんで来るのでどこにいるかは検討がつくが、水上に残された二人も泳げないので、出来ることと言えば近くの長い水草を切って差し出すしかない。

「サファイア! 捕まって!」

 水の中に長い葉をさし入れると、微かにぐっと引かれる手応えを感じた。エレッタはそれを引っ張ってみるものの、意外と重く引き出すまでには至らない。

「ミラ! 引っ張って!」

 ミラの力も借り、サファイアを水面下から引きずり出す。サファイアは蓮に着地すると、水でも飲んだのか思い切りむせながら毛に纏わり付いている水分を払いのけた。

「あーあーあー……コイキングっていっても油断は禁物だよ? ここ、ダンジョンの中だし」

「……今のでよく分かった。気をつけるよ」

 どれだけ力(レベル)の差があろうと、己に適した環境にいるポケモンは見違えるほど強くなる。元ニンゲンのサファイアは、それを完全には理解しきれていなかったのだった。
 サファイアが一通り水滴を振り払うと、気を取り直して三人は歩みを再開する。途中でヒンバスに出くわしたが、何かされる前にとっとと立ち去った。


 地下一階では息を潜めていたポケモン達も、地下二階からは普通に襲いかかってくるようになった。
 広いところで戦うならまだしも、細い通路の横から、更に流されている間にいきなり奇襲されたりして、サファイア達にも段々と疲労が蓄積されていく。 多めに用意しておいたオレンの実はまだ残っているが、気軽にホイホイ使える程の量はない。
 出て来るポケモンがコイキング、ニョロモ、ヒンバス、ドジョッチ……と比較的対処がしやすいのがせめてもの救いだ。

 しかし、更に歩みを進めてやっとのことで地下五階に着くと、もう階段を降りた時点で視界がすごいことになっていた。

「これ……無限ループしてる気分にならない?」

「ああぁ、もう疲れた……帰ってパイルジェラート食べたい……」

「前半部は同意する。帰って寝たい……」

 サファイアのぼやきにエレッタとミラが同調した。ここまで来るともう水流だらけでさっきから流されっぱなしである。
 やっと蓮の塊にぶつかったと思ったら、一歩進んだところでまた流されていく。
 敵も勿論出て来るから、気を抜けばまた体力を減らされるし、水鉄砲でも食らって湖に落ちようものなら最悪だ。
 落とされた仲間と蓮の上の仲間が、必ず同じ方向に流されるとも分からない。

 それでも延々蓮の上でくたばっているサファイア達に救いの手が伸ばされたのか、やっと階段の近くに流された。
 後は蓮の道を歩いて、敵が出ない内に階段へ飛び込むだけである。

「うう……やっとか……多くの探検隊がここで帰るのも、納得がいく気が……」

 まずサファイア、続いてミラ、最後にエレッタが移動する。
 階段を目の前にして、ふっと気を抜いてしまったサファイアは……突然下から突き上げられてバランスを崩してしまった。

「……ま、まずい、ハスボー踏んだ……!」

 今の突き上げで水の振動を感じ取ったのか、蓮の塊に紛れていたハスボーが姿を現し、階段への道を塞ぐ。

「んー、どいてくれそうにもないよねー。強行突破する?」

 エレッタは火花をパチパチと飛ばし、ミラも手に電気の塊を作る。
 すると、ハスボーも危険を察知したのだろうか、水の中へ隠れてしまった。

「あれ? どいてくれた……珍しい、いや今のうちに……」

 一瞬その光景に呆気に取られたが、すぐに気を取り直して進もうとするサファイアを、両脇の水しぶきが阻んだ。
 それは先程よりも多いハスボー達の群れで……更に悪いことに、親玉であろうルンパッパまでお目見えである。

「……囲まれた!?」

 サファイアが後ろを振り返ると、既にエレッタとミラが既に戦闘準備を調えている。 細い通路を取り囲むようにハスボーの大群がこちらを威嚇する。
 逃げる間もなくルンパッパが1歩こちらに近寄るのを合図に、ハスボー達は一斉に三人に襲いかかってきてしまった。

すずらん ( 2012/12/16(日) 00:05 )