ポケモン不思議のダンジョン 星の探検隊 12の光に導かれし者








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第1章 探検隊エスターズ
M-08 5割報酬は甘くない
「はぁ? 初めて見た時?」

 隣で話を聞いていたマロンは訳が解からないと言いたそうな顔をする。だがライルは真剣に聞いたようで、ハーブからは目を逸らさない。

「……んー、特に何も感じなかったけど?」

「そうですか……じゃあ、何かあの子達から秘密とか……」

「んなもん私が知る訳無いでしょ。どうしたのよ。エスターズ……あの二人に何かあるわけ?」

 ライルとヨウナは顔を見合わせて暫しの間考えると、再びハーブに向き直った。

「……モジャンボは、本来守りに長けているポケモンです。更に、サファイアが電光石火を出した時は、体力的にまだ余裕の色が見て取れました。いくら特性の"適応力"が発動したとはいえ、普通のイーブイがモジャンボの隙を作れるほどのダメージを与えるまではいかないと思って……」

 ハーブも黙ってライルとヨウナの話を聞いている。気が付けば、ごませんべいに伸びる蔓も、いつの間にか動きを止めていた。

「何か、その前の行動に秘密があるんでしょうか……それとも、もともと力や技の威力が強いのか……ひょっとしたら、何か特殊な能力を持っているのかもしれません」

「……特殊な能力ねぇ……ま、分かったら何か教えるわよ」

 ライルとヨウナはまだ首を傾げたままではあったが、ハーブの言葉を聞き、一礼して部屋を出て行った。


「……そうね、特殊な能力があるとしたら……」

「……親方様?」

 アルビスが去った直後、ハーブが独り言のように呟いた。
 マロンが気付いて声をかけても、ハーブはそれには気を留めない。

「……確かに、感じたわ。特にイーブイ……サファイアからは、私と同じ力をね。けれど、まだそれが本当かは分からない。もしかしたら、危険かもしれない……だから、アルビス……あなた達には、言うわけにはいかないの」

〜★〜

 サファイアは、中央が赤く光る探検隊バッジをじっと眺めていた。
 エレッタも後ろからバッジを覗き込み、サファイアに話しかけた。

「ノーマルランクか……よし、サファイア! これから頑張っていこうね!」

 サファイアが答えようとしたとき、扉をコンコンとノックする音が部屋の中に響いた。扉に近かったサファイアが取り次ぎに出ようとバッジを置き、扉を開けようとする。

「どちら様ですかー?」

「マロンだよー、説明したい事があるから開けてくれる?」

「はーい」

 サファイアがガチャリとドアを開けると、リンゴを数個と何かのファイルを持ったマロンが中に入ってきた。

「君達、凄いお尋ね者と戦ったんでしょ? 疲れてるよね?」

「うん、そこそこね。でもアルビスも助けてくれたし、大丈夫……そういえば、アルビスって何者なの?」

 エレッタはずっと気にかけていたらしい。
 アルビスとは一体どんなチームなのか。そして、どのくらいの実力を持つのかを。

「アルビス? 確か、ハイパーランクだったはずだよ」

「「ハイパーランク!?」」

 サファイアもエレッタも、マロンが一瞬身を引くぐらいの声を張り上げてしまった。
 しかし、さっきハーブから軽くランク説明を受けた二人にとっては、ハイパーランクがどれほどの実力を持つのか知っている。

 ハーブの大雑把な説明によると、この大陸にあるギルドではノーマルランクから始まり、ブロンズ、シルバー、ゴールド……といった風に分けられている。
 今のエスターズは、ノーマルランク。もちろん最低ランクだ。
 それに対してハイパーランクといえば、最高ランク群と言われるマスターランクの次に高い、要するに二番目に高いランクとなる。そこまで上り詰めるのには、かなりの根気、労力、時間、そして実力が必要とされているランクなのだ。

「うわぁ……まさかハイパーランクだなんて……強いんじゃないかとは思ってたけど、まさか……」

 サファイアとエレッタは、お互いに顔を見合わせた。
 そんな実績のある探検隊は、大体は必殺仕事人のようなチームかと思っていたけれど……あんなにフレンドリーな探検隊もいるのかと感心してしまう。


「あの……僕の話始めていい?」

 完全にカヤの外扱いだったマロンが、話を戻そうとする。

「……あ! うん、始めて」

「まず、不思議な地図を出して見て欲しいんだ」

 マロンはサファイア達が持ってきた不思議な地図を机の上に広げ、大陸の右下に黄色いシールを貼った。まだサファイアの地図は、雲に覆われていてあまり印されていない。

「ここが探検隊ギルド『ふらわーぽっと』。で、ここから北に見えるのが霧の湖、東には君達が行ったスイレン峠、南に行くとシェルヤ海食洞ってダンジョンがある。未知のダンジョンの依頼を受けたりして、新しいダンジョンの情報を得ると、ここにかかっている雲が何故か自動的に晴れるんだ」

「自動なんだ……」

 当たり前だがサファイアが手で雲を擦っても、雲は晴れない。やはり雲を晴らすには、地道に探検していかなければならないのだろう。


「それと! 君達にはこれも渡さないといけないね」

 マロンは、持っていたファイルを差し出した。
 サファイアが広げてみると、何やら美味しそうな料理の写真とサファイアには訳の分からない文字が並んでいる。

「このギルドでは、夜ご飯は注文制なんだ。注文したいメニューを紙に書いてその日の朝外の箱に入れて置けば、夜には注文したものが食べられるってわけ。勿論、食べないって選択も出来るけどね」

「へー……何かいろいろ書いてあって、おいしそ」

 サファイアの言葉が、途中でぴたりと止まる。エレッタもファイルを覗き込み、思わず叫んでしまった。

「えぇ!? ちょっと待って! お金取るの!?」

「うん。五割徴収じゃ、流石に食費までは賄いきれないからね。グミとかリンゴとかは大量に仕入れるし、安くはしてもらってるけどそれにも限度があるし」

 そう、メニュー名の隣には、200やら500やら一々値段が書いてある。
 一番安いグミドリンクで50ポケ、高いものは余裕で1000ポケを超えている。保冷庫が部屋に置かれているのはこのためだろうか。

「注文の紙はリンゴと一緒に置いておくから! じゃ、お休み!」

 マロンは輝かしいまでの笑顔を振りまくと、さっさと部屋から出ていってしまった。

 一方のサファイア達は、仏頂面でリンゴをかじりながらファイルと睨めっこを始める。

「……食を人質にとった追加徴収だよね、これ……」

 エレッタがぽつりと呟く。もっともサファイアに対して言っているような口ぶりではあったが、サファイアは答えない。


 一個800ポケが基本のグミを丸々使った料理で200ポケである。確かにまともに買うより相当安いが、何故か悔しいというか、騙されたというか、はめられた気がする。
 結局、サファイア達は明日の夕食は無難に好きな味のグミシチューで留めておいた。
 因みに一皿150ポケ、二人合わせて300ポケ也。
 ギルド内のカフェで食べることも出来るらしいが、少なくともしばらくはそんなところでワイワイ食べる気にはなれないだろう。

〜★〜

「……掲示板から依頼を選べって言われてもねぇ」

 次の日の朝、サファイアといつまでも目を覚まさずサファイアに叩き起こされたエレッタは、掲示板の前で困惑していた。
 それもそのはず、ハーブからいきなり「掲示板で好きな依頼を選んで」と言われても、何がなんだかよくわからない。

 それでも、側を通ったマロンを捕まえて依頼選びのポイントを聞いて、とりあえず救助の依頼を受けてみた。

「ダンジョンから出られません! 助けに来て下さい! シェルヤ海食洞奥地」
 依頼の紙にはこう書かれている。シェルヤ海食洞は昨日マロンから説明された、南に行くとあるというダンジョンだ。

 マロン曰く、ダンジョン自体の敵は強くないため、難易度も高くはないはずらしい。
 が、目的地が奥地となると少々事情が異なってくる。
 基本的にダンジョンの奥地というのは一番広く、外敵の侵入にも気付きやすいため、守りやすく攻めやすい。
 故に、そのダンジョンの中に棲息するポケモンのうちでも特に強いポケモンが奥地に縄張りを作ることが多いのだそうだ。きっとこの依頼主も、誤って奥地の縄張りに足を踏み入れてしまったのだろう。

「……海食洞か……」

「大丈夫だよ。マロンも難しくないだろうって言ってたし」

「……そうだね。いつまでも迷ってられないね! 行こう! エレッタ!」

 サファイアとエレッタは、奥地と聞いてもやもや漂っていた心の雲を吹き飛ばし、気を取り直すとシェルヤ海食洞へ向かって走り出した。

すずらん ( 2012/07/12(木) 00:05 )