ポケモン不思議のダンジョン 星の探検隊 12の光に導かれし者








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第1章 探検隊エスターズ
M-04 ギルドの名前はふらわーぽっと
「ここがフロールタウンの探検隊をまとめるギルド、正式名称は"ふらわーぽっと"っていう建物だよ。あそこにあるのが入口なんだ」
「へえ……この建物が?」

 サファイアとエレッタは、トゲチックにギルドという建物の前に案内された。目の前にある花瓶のような形の建物がそうらしい。
 しかし、正式表記はあくまで"フラワーポット"ではなく"ふらわーぽっと"であるらしい。サファイアには細かい違いは分からないが、なんとなく柔らかい印象を受ける。
 サファイアたちはそのままトゲチックに連れられ、入口から中に入った。

 建物の中には広場に掲示板、たくさんの部屋に繋がる階段があった。そして、正面玄関の一番奥にある、とても大きな扉が印象的だ。

「あれはこのギルドの親方様の部屋だよ。んじゃ、チーム登録するからついてきて!」

 またも勝手に話を進めるトゲチック。止めに入ろうとするサファイアだったが、エレッタにこっそりとストップをかけられた。

「エレッタ? どうしたの?」
「サファイア。今のうちに説明しておくけど、探検隊っていうのは救助とかいろんな依頼を受けたり、文字通り探検ができるんだよ。便利な装備も貰えるし、探検隊になればちょっと安い値段で食糧や道具が買えたりするんだ。ギルドに弟子入りして真面目に頑張れば、暮らしは保障してくれるって聞いたことがあるよ」

 エレッタはトゲチックには聞こえないくらいの小さな声で、サファイアに簡単に探検隊とやらの説明をしてくれる。

「それにさ、依頼とかでいろんなところに行けるってことは、それだけ流れ星の情報も集めやすいってことでしょ? 後は、依頼っていうのは困っているポケモンが出すもの。それを解決してあげるのって、すごく気分が良くなると思うよ? だからこの際、思い切って探検隊になっちゃわない? あたしも、実は前から興味はあったんだ」

 エレッタのこの提案を聞き、確かにその通りだ、とサファイアは納得した。どのみち、いつまでもエレッタの住家に居候するわけにはいかないサファイアには願ってもない話だ。

 もちろん、不安が完全に消えたわけではない。
 サファイアはまだ何も技を使えない、というのもあるが、自分自身が何者かすら分かっていないようなポケモンが、困っている依頼主を助けることなど出来るのだろうか、と。

「君達、親方様がお呼びだよ。入って」

 そんなサファイア達にマロンから声がかけられ、二人は言われるままに豪勢なドアのついた部屋の中に入る。

 意外にも、部屋の中の装飾ははシンプルで落ち着いていた。
 机、明かり、本棚。ぱっと目についたのはそれくらいのものだ。机の上には何故か枕と書類が並べられており、不規則に積み上がって今にも雪崩を起こしそうな状態の書類柱の向こうに、ポケモンの姿が見える。

「んー? この子たちが新探検隊希望者?」

 親方様、と呼ばれたポケモンが、サファイア達を見るとにゅっと首をこちらに伸ばしてきた。
 薄緑色の首には鮮やかな花が咲き、頭に触覚のようなものが生え、金色の瞳がサファイア達を映す。
 この特徴は、メガニウムというポケモンのものだ。口調からしてどうやら♀のようである。

「あ、はい」
「ふーん……分かったわ。じゃ、チーム名と名前と探検隊のリーダーを教えて」

 チーム名。リーダー。そんな予想もしなかった単語に、サファイアは驚いて反射的に聞き返す。

「ええ!? チーム名!? 今ここで付けるんですか!?」
「そりゃそうよ。まさか名無しの探検隊なんてやるつもり?」
「うっ……それは……」

 サファイアは言葉に詰まり、エレッタに向き直り、首を傾げた。

「エレッタ、どうしよう? 私全く考えてないんだけど」
「うん、あたしも考えてないよ!」

 はっきりきっぱりと笑って言い切ったのはエレッタ。サファイアとしては、この一言でどれだけ脱力したか、エレッタにはよーく考えて欲しいものだ。
 サファイアは少ない語彙を総動員して、それなりに相応しそうなものを探す。そんなサファイアの頭に浮かんだのは――夜空に浮かぶ、星だった。

「チーム名ね……じゃあ、"エスターズ"ってのはどう??」
「エスターズ? それ、どんな意味があるの?」

 サファイアの考えたチーム名に、一瞬首を傾げたエレッタ。

「うん。これは確かどこかで、星を"エストレジャ"っていう所があった気がして、そこからとってみたんだ。星みたいに、輝く探検隊っていう意味で」
「星かあ……分かった! もちろんOKだよ! じゃ、リーダーはチーム名を決めたサファイアね!」
「……ええ!? 今度はそう来る!?」

 これはこれでこじつけのような気もする。当然サファイアは抗議したが、エレッタはサファイアからさっと目を逸らした。

「ふんふん。サファイアとエレッタ、エスターズね……よし! 登録完了!」

 この会話を聞いていたメガニウムが、さっさとこの名前を登録してしまった。まだサファイアはエレッタに言いたいことがたくさんあったが、登録されてはこの際仕方がない。
 大人しく黙り込んだサファイアの代わりに、親方のメガニウムが話し始める。

「私はこのギルドの親方、ハーブ。こっちのトゲチックは、副親方のマロンよ」
「僕がマロンだよ。これからよろしくねー」

 さらりと自己紹介を終えると、ハーブは机の中に首から出した蔓を伸ばすと、中にあるものを取り出した。
 それはオレンジ色の鞄、羽のついた小さなバッジ、それに地図と鍵のようなものの一セットを、二つ。

「まず、これは探検隊バッジ。ポケモンや自分に向けるとダンジョンから一瞬で帰れたり、救助したポケモンや倒したお尋ね者をフロールタウンまで送れるスグレモノよ。もちろん、自分達は探検隊ですっていうことを証明するための身分証でもあるの。貴方達はまだ見習いだからバッジも間に合わせのものだけど……明日、初依頼をやってもらうわ。それを成功させたら、ランクアップということで新しいものと変えるから」

 ハーブは蔓で鞄にバッジを詰め、説明を再開する。

「そしてこれは"トレジャーバッグ"。一定数までなら道具を入れても重さが変わらないの。ある程度活躍したら、もう少し容量も増えるわ。そんでこっちは不思議な地図。これは……ええい面倒くさい、見習いからランクアップしたらマロンが教えてくれるわ」
「えぇ……僕がですか……」

 どうやら面倒臭がりらしいハーブは、地図の説明をマロンに丸投げしてしまった。まだ今日は急いで説明する必要はないようだが、それにしても探検隊にとって必要なものなのだから説明くらいはして欲しい。

「んでこれは、ギルドの住み込み用部屋の鍵。いくら建物の中とはいえ、防犯は大事よ! ということでマロン、これも後で案内してあげてね」
「はーい……」

 親方ハーブは、にこにこ喋りながら着々とマロンに仕事を押し付け、もとい仕事を増やしている。

「えーっと、説明はこのぐらいにしておくわ。マロン、後はよろしく!」
「はあ、分かりましたよ……じゃあ、ついてきて、二人とも!」

 マロンはハーブには分からないような自然なため息をつくと、サファイアとエレッタを呼び寄せ親方部屋の外に出た。
 三人がいなくなった親方部屋で、ハーブは一つあくびをかますと机の上の枕に頭を乗せた。

「……ふぁーぅあ……こんな大変な時でも弟子入り希望者なんて来るものなのね……あー眠い。外に行ってリフレッシュしたい」


 さっきも見た階段を上り、サファイア達は三階の廊下を歩いていた。どうやらここは探検隊の部屋が集まっている階らしい。

「確か、その鍵だとここだったかな? ここが今日から君達の部屋。明日にちょっとした依頼が入るから、今日はタウンの施設とかいろいろ見て回るといいよ。他の探検隊達はまだ帰ってきてないし挨拶周りとかは特にしなくてもいいけど、フロールタウンの店主達にはちゃんと挨拶しておいてね。じゃ、また明日!」

 マロンは部屋の扉の鍵を開けて中に入ると、サファイア達を案内してからふわりと空中に浮かび、再び扉を開けて部屋から去って行った。

 マロンが去った後に部屋を見渡すと、この部屋はなかなか設備が整っているようだ。
 藁で出来た予想以上に寝心地のいいベッドに、木の机は大きな円卓と小さな四角いものの二種類が備えつけられ、棚や氷の入った保冷庫までついてきた。
 正直保冷庫レベルとなるとここに必要なのかと疑いたくなるが、とりあえず今は使わなくてもいつか役に立つ時が来るのだろう。
 だが、マロンによると明日から依頼の仕事が入るらしい。その前にマロンの言った通り、これからお世話になるであろうフロールタウンのポケモン達に挨拶をしておく必要がある。

「ま、部屋の状態は分かったし、とりあえず街の様子を見てこよっか!」
「了解!」

 早速、施設のポケモン達に接触しようということで、二人はギルドの外のフロールタウンへと向かうことにした。

すずらん ( 2014/02/22(土) 00:07 )